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パリ よもやま話 番外編 特別号

パリ在住十年+の日本人女性が、パリ生活で起こるよもやま話を綴る徒然日記と帰国後のお話

パリのオレオレ詐欺

2009年11月23日 | パリでスラレて
今週、 奈良の実家に初めて 「オレオレ」詐欺の電話がかかってきたという。

母が電話に出ると 「ボクボク、ボクボク」 とボク をくり返す。

「オレオレ」の知名度は上がっているから 今度は「ボクボク」で 、という考えなのだろう。


しかし この「オレオレ詐欺」 手口は日本だけではないようだ。



オレオレ の場合「赤の他人」が「赤の他人」を騙す というものだろうが、 私は今回「ちょっとした知り合い」から オレオレ詐欺まがいなプチ詐欺に合った。


その人とは もう数年来連絡も取り合っていないし、また会う程の間柄でもなかった。



地方に住む彼女が パリに出てきたと言って、突然私に電話をしてきた。

明日の夜、ぜひ会ってほしい。」と。 


つわりが一番きつい時期に来ている今、 彼女の必死の頼みに負けて、私は「吐き袋」を携帯して彼女に会いに行った。


何か私に話したいことがあるそうだ。 

レストランに入ると彼女は言った。


「今日は私のおごりですから」

私は おごってもらうのは困るので、せめて「割り勘」で と思っていた。


結局「会って話しをしたい」という程の会話もなく、彼女は食事を平らげ、私は レシートが私側に置いてあるのでそれを手に席を立った。


すると、彼女は 「スーーーっ」と 無言で 黒子さんのようにレストランを出、私が勘定を済ませるのをガラス越しに横目で見ていた。

「ええええぇ!!? 」 


内心「ギョっ」としたが、 彼女は 「ありがとう」のお礼もなく そのままソソクサと地下鉄で帰って行った。

「一体 なんだったんだ!!?」  

狐につままれた気分で家に帰り、その話を旦那にした。


「いやぁ、実は僕も今週 同じような目 に合ったんだ」 と旦那がポロリと告白した。



今週、旦那に「以前ちょこっと知り合った人」 から、今パリに来ているので会いたい、話をしたい、と連絡が来ていたのは私も知っていた。 

その人が指定した サンジェルマンデプレのある場所に旦那か゛夜到着すると、 その男性は 「妻のために」買ってきた という高級チョコレート店の箱をぶら下げていた。

そして 旦那にまずこう言ったという。


「いやぁ、僕、全く ユーロの現金を持って来なかったんだよ」

チョコは どうやって買ったんだろう、 旦那は不思議に思ったが

レストランはそういうことで旦那が支払った。

「会って話したい」と言っていたその男性は、食事中何も会話をしてこない。

「何を話したくて僕に会ったのかな」

旦那は首をかしげたが、私の話を聞いて自分の身に起こったこととの共通点を発見した。


私に連絡してきたその女性は また 「いついつ パリに来るので、ぜひまた会いたい」 と言っていたが、 私もそこまで間抜けではない。  



しかし旦那が「騙される」ほうで 本当に良かった、と思ったものだ。




フランスの社会保障

2009年11月18日 | パリでスラレて
フランスで働くと、給料の何割かは社会保障に差し引かれる。

それが社会健康保険費用となるわけだが、出産に関しては、この社会保障でほぼ全額負担される。


妊娠が分かってから行われる数々の診察に検査、出産から入院までの間、自分が社会保障に加入しているか否かを知ることは大変重要なことだ。


私の健康保険がつい最近切れ、それ以降は旦那の健康保険に加入することとなった。


妊娠の初診を午後に控えた朝、私は区の社会保険庁に足を運び、自分の名前を旦那の保険カードに入れてもらいに行った。




いつもながら人がごった返している。番号札を取り自分の番を待つ。


受付のふてぶてしい感じのおばちゃんが私の番号を呼び、旦那の健康保険カードを調べた。



「あんた、このカード とっくに切れてるわよ。お宅の旦那、社会保障にもう入ってないわ」



!!!ぇえぇぇぇ?? うちの旦那、毎年かなりの額を社会保障に振り込んでますよ!! それに、私今日から妊娠の初診や検査が色々始まるんですよ!!!」


目を白黒させて 私は訴えた。

「とにかくねぇ、  あんたの旦那にもう権利はないの。今すぐこのカード、破壊するからね。 それと旦那の今までのデータも全て滅却するから」 


そういって あばちゃんはピピっとコンピューター処理して、いとも簡単に旦那の今までの登録データを滅却してしまったのだった!!!

私は半泣きになって

旦那の健康保険カードだけでも返してください。それ、旦那のなんです。私が勝手に紛失してしまってはいけません、、、旦那にちゃんと確認してから戻ってきますから、、、、、、ウッウッウ、、、」


ダメダメっ!!

おばちゃんは 私の手の届かない所にカードを置いてしまった。

「もうお宅の旦那のカードは使い物にならなくしといたからね!!」

おばちゃんは 「もっともだ」という風に踏ん反り返った。


私は午後に控えた初診や血液検査に必須の保険カードも、社会的権利も、そして旦那の加入データまでも一気に失ってしまい、根無し草になった気分で社会保険庁を出た。


午後、ゆううつな面持ちで病院の初診に向かった。

受付のお姉さんが

保険カードの提示をお願いいたします」

と言った。

「、、、、実は今朝、カードが社会保険庁で没収されてしまったんです、、、」

お姉さんは「????」 という顔で私を取りあえず待合室に案内した。


{あー、旦那が一生懸命支払ってる社会保障の年会費、どこに消えたんだろうか、、、 私の出産は全て自己負担となるのだなぁ。いくらくらいかかるんだろう}

その時だった。


事情を話しておいた旦那が仕事を終えてから、社会保障に支払っている領収書などを手に病院に駆けつけてきた。

「miehf、 今すぐ社会保険庁に行くんだっ!!!」

旦那は受付のお姉さんに、私の順番を次の人と交換してもらうように懇願した。

「仕方ないですね、、、じゃあ、絶対30分で戻ってきてくださいよ」

特例を頂いて私と旦那は病院を飛び出した。

病院から社会保険庁は 地下鉄で二駅分の距離だ。早足で歩いて片道15分。つまり私が社会保険庁に留まる時間 というものは皆無だった。

途中運良く通ったバスに飛び乗り、旦那と私は社会保険庁に入った。

これまた運良く、今朝のおばちゃんがまだ受付に座っていた。 朝よりももっと人がごったがえしている。


私は番号札ももたずに ドドーっと突進して行き、おばちゃんの机にしがみついた。


「あなたが没収した旦那の保険カード、あれ返して~~~~~~!!!旦那に社会保障の権利はまだあるのよ~~~~~~~~~!!!!(涙)」


「あんた、あれもうとっくに破壊したわよ。データだって全て滅却したんだから!!! とにかくねぇ、番号札とって待ちなさいよ!!!」


そこに旦那が、パッと社会保障支払証明書を出した。


おばちゃんの顔は青ざめ引きつり、 時間のない私はそのまま、旦那を残して病院に走った。

{ ふんだりけったり、、、} そんな言葉が頭に浮かんだ。 

 ギリギリ三十分で病院に戻った私は診察室に入ろうとしていた。

そこに旦那から電話がかかってきた。

「大丈夫だ。 話はついたぞ。 とにかくデータとカードが全て無効になったそうだから、一月後には新しい加入データが出来るそうだ。」

診察室で、担当医が私の疲労した顔を見て聞いてきた

「あなたの妊娠は喜ばしいものなんですか? それとも、、、、、」


「、、えっ!!? あっ あの、もちろん 喜ばしいことですよ」

しかし私の顔色がまた暗くなっていたのだろう。 血圧を測りながら 医師が そっと聞いてきた。

「あなたは 妊娠して本当にうれしいんですか?」


彼女の妊娠は事情のあるものに違いない、でもその事情は誰にも話せないのだろう、そう勘違いされたのだ。 


その夜、 いつものつわりによる吐き気に伴い、興奮しているせいか、今まで一度も起こったことのない 下腹の収縮するような痛みが起こり ヒーヒー言って横たわっている私に旦那は言った。



「この子は初診からこんな苦難にもまれて、強い子になるんだろう」  
























「パリでスラレて」 その二  鬼ばば 編

2008年11月27日 | パリでスラレて
とある年の年末、私は新しく入ってきた仕事のためにこの狭いアパート以外のどこかにもう一部屋を持つ必要があった。

うまい具合に、私の家から程近い大きなアパートの一室を「間借り」させてくれる、という広告を出していた見ず知らずの年配の女性に出会った。

急いでいた私は、年末中大慌てで必要なものをその「間借り」の部屋に運び込み、仕事に適した空間を作っていった。

賃貸契約書とかいらないから、気楽にやりましょ」彼女はそう言って、たいそう親切に私の準備を手伝ってくれたりした。

この間借りの部屋には、ベランダの裏口からいつでも好きなときに入れることになっていた。

前金として一月分を払い終わった後 「悪夢」は起こった。


 一月早々から予定していた仕事をしにその「間借り」部屋に行った。ベランダから入ろうとしたら なんと「内側」からしっかり鍵がかかっているではないか。

 仕事が差し迫っていたので、私は慌ててこの「間借り大家さん」の携帯に電話をした。 「メッセージをどうぞ」の空しい返事が聞こえてくる。

 一月の真冬、私は寒さに震えながらもこの「大家さん」の帰りを待った。

 二時間を過ぎた頃 大家おばちゃんはえらく怒った形相で帰ってきた。
「なんなんですか。あなたは。年始早々失礼な!!!」

 今までのやさしいおばちゃんとはまったく別人物を見ているようであった。

ええっ?!! 私、ここを一月から借りてるんですよ。好きなときに入っていいと仰ってたじゃないですか!!」

「年始はだめです!! 日曜も あと私の友人がいてるときもダメです!!夜もダメ」

 彼女は ダメダメ と言い出して、初めに言っていた「一年中 二十四時間出入り自由」とはかけ離れた条件を口にしていた。

 「初めの条件とは全然違うじゃないですか。その条件だから ここを借りることにしたんですよ!!」 
仕事の予定も差し迫っているので、私は目まいがしそうなのをぐっとこらえて彼女にはむかった。

「ダメなものはダメなんです」 

彼女の目は全く無表情だった。一体彼女に何が起こったのだろう。 お金を払った後に急変した彼女は やはり「サギ」なのだろうか。 

「。。。そうですか。それだったらここをお借りできません。お支払いしたお家賃 返してください。」私はとても静かにそう語った。

 彼女は「ビクッ」と体を反応させたかと思うと、突然「ターーーーッ」と走ってアパートを飛び出して行ってしまった。

大きなアパートに取り残された私は放心状態になって「仕事場」に見事変身した空間に立ち尽くした。 

{ 彼女は「返金」したくないから去っていったのかな。}

そう思いながら、私は徐々に片付けを始めた。

三十分が経った頃 ふと彼女が戻ってきた。「まだいたの」といわんばかりだったが、彼女はきっちりと私に家賃を返済してくれた。

「 ああ!!一体これは。。。,,,,,」

正月早々自分に降りかかった災難を責めている時だった。


「シャー、シャー」 と どこからともなく 金物を研ぐ音が聞こえる。

私はふと台所を覗いた。そこには なんとあの彼女が、私が生まれてこの方一度も見たことがない、というくらい くて きい 出刃包丁を研いでいたのだ。「シャーシャー」 はその出刃包丁を研いでいる音だった。

まるでそれは、幼い頃に見ていた「日本昔話」の鬼ばば(やまんば )が、包丁を持って振り返りながら「みーたーなー」と言っている図を彷彿とさせるものであった。
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/fa/9ed1b1d589f34f39b9bd05ab79136ea6.jpg

 私は背筋が「ゾーーッ」として、彼女が振り向く前に大慌てで荷物をまとめて ベランダから逃げ出した。 命からがら危機一髪、 とは正にこの事だろう。


不思議だったのはその直後、この新しい仕事が急遽キャンセルとなって、結局部屋を借りる必要はなくなったことだった。

怖さが薄れてきた頃、気の良い私はここでもまたこう思った。

「ああ、彼女はきっと私のために 」を 「」にして 「ババア」になってくれたんだろうな。 ありがたかったなぁ」と。


パリでスラレて その一

2008年11月26日 | パリでスラレて
皆さんは 「スリ」 に遭われたことがあるだろうか。

私は「ある!!」(自信タップリに)

パリはスリが多いのは知っていたが、ずっと自分は被害にあわなかった。

ところがパリにすっかり馴染んで来た頃「スリ」は私の全てのカードが入っている財布を 見事な手さばき(といっていいのか )でスッていった。

運よく私の背負っていたリュックが開いているのを瞬時に知った私は、さっきから後ろをついてきていた青年がしたのだろう、ととっさに判断して、足早に去っていく彼を追った。

 地下鉄の通路には運悪く私達以外には人一人いなかった。

彼と二人きり、私はしっかりと彼のブルゾンを握って 

「返して頂戴」と言った。

「何いってるんだよ。何のことだよ」

とシラを吹いて、いかにもプロのこの若造は両手をヒラヒラしてみせた。

「返して頂戴」 私は繰り返した。 

傍から見ると、カップルがブルゾンをつかみながらイチャついている、とでも思われそうな風景だったに違いない。

「ブルゾンを放せよ、俺 何もやってないよ。」

私は気がいい(と自分で思っている )。スリとして生きている彼を、たとえ私の大切なものを取ったとしても心底からは憎めないのだった。

怒りはしても、彼の瞳を近くでじっと見つめていると、
「ああ、彼もこうしてスリとして生きていく運命を担っているのたろうなぁ。私は今生では恵まれた運命を頂いているのだなぁ。」 

 などと  にそぐわない思考が私の頭にめぐっていた。
そんなことを考えて彼の瞳を見続けているときだった。
ある瞬間、突然「キラリッ」と彼の瞳が輝いた。

その輝きを私は見逃さなかった。「ギラリっではない。「キラリッだ。間違えないで頂きたい。

 彼の奥に眠る「純粋な魂」を私は「見た」のだった。 

するとどうだろう。彼はソワソワと辺りを見回して、人がいないことを確認してから
「 ほらっ」と私の財布を出して返してくれたのだった。


「ありがとう」(と言うものか? この場合。 )
 
私は彼の「魂」に向かってお礼を言った。


「どういたしまして」(ずうずうしい?!! )

彼は なんだか「良いことをした」後のような晴れ晴れとした顔で、私に手を振って去って行った。

 なので この話の題名は正しく言えば間違っている。

私は「スラレた」のではなくて「カスラレた。」 のだ。