

早大の客員教授で工学博士の吉村作治さんは、友禅職人の父から、「人間は肩書きじゃないよ。」と言われて育ったのだそうです。この父上には、わが子を叱って育てる気が一切なく、好きにやらせておこうということだったようで、長じた吉村さんがエジプトに行きたいと言い出した時も、「どうぞ、ご自由に」と言われただけだったのだそうですので、かなりの人物だということが伺われます。唯一つだけ「勤めはするな」という持論の持ち主でいらしたようです。いろいろなトーク番組を観ていると、芸能人や文化人の中にも、このような育てられ方をした人をまれにですがお見受けすることがあります。その方たちに共通の特徴は、「そういう親に育てられたから、ものの見方や考え方が、今でも、固定観念や社会通念に縛られることがない。とても有り難いことだ。そのおかげで自分独自の世界観が育てられた。ゆえに、自分なりの個性豊かな生き方を実現させることができた。」という感想を述べられている点にあります。羨ましいです。

芸能人や文化人ではないですが、私の身近にも、そのような人が一人います。周囲から、怪しまれ、なかなか単純な人間であることを認めてもらえない私ですが、世の中の多くの人とは、見方の違うその人が、ここ数年、私の傍にいてくれたおかげで、私は少しずつ、今までの堅苦しい生き方の殻から抜け出すことができるようになっているのかもしれないと思っています。

「勤めはするな」なんて言ってくれる親がこの世に存在することを、私は知りませんでした。