goo blog サービス終了のお知らせ 

よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

“肥満”について考えてみよう!(1)

2014-06-17 14:44:08 | 健康・病気

太っていることに悩んでいる方は多いと思います。巷では、何百というダイエット法・治療法が紹介され話題になります。大まかに分類すると食事療法・運動療法・精神療法・手術療法といったところでしょう。人によってうまくいったりいかなかったり、一時的にうまく減量しても長続きせずリバウンドしてまた体重が元に戻ったという話しもよく聞きます。

 

 肥満は、一般にはBMI(body mass index)25で定義されます。すなわち、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)25を超えると肥満といわれます。厳密にいうと増えているのは脂肪であり、水分でむくんでいたり、筋肉質で体重が重い(相撲取りなど)は含めません。脂肪も皮下脂肪と内臓脂肪に分類され、現在医学的に問題になっているのは内臓脂肪ということになります(無論、スタイルの面から皮下脂肪をなんとかしたいと思っている方もいらっしゃるとは思いますが)。

 

 さて、脂肪が増えるとはどういう状態なのでしょう。脂肪には、余分なカロリーを貯蔵する役割(脂肪1kg=7000kcal)があることはよく知られています。

 そこで登場するのが、”入るカロリー/出るカロリー理論”です。すなわち、たくさん食べて(高カロリー食)て、消費するカロリー(運動)が少なければ、太るという論理です。これはあまりにも当然過ぎて疑いのない真実のように思えます。そして肥満者に対して、「食べるのを控え、運動しなさい」とアドバイスします。でもこれは本当に正しいのでしょうか?

 

「ヒトはなぜ太るのか?」(ゲーリー・トーベス著)は、この疑問に明確な答えを提供しています。過去に行われた様々な疫学調査や動物実験から、①高カロリー食が肥満の原因ではなく、炭水化物と糖分が脂肪を増やし肥満になる原因、②運動してもやせない(食欲が増してかえって太る)と論じています。著書には、次の肥満三原則が提唱されています。

 

 第一法則:からだの脂肪は入念に調節されている 

 第二法則:肥満は、非常にわずかな脂肪調節不良によっておこる

 第三法則:肥満させかつ重くするあらゆるものは、過食させる

          (過食は原因ではなく結果である)  


“血糖”について考えてみよう!(2)

2014-04-01 18:47:46 | 健康・病気

 巷では、ダイエット目的で、いろんなカロリーゼロ飲料が売られています。カロリーゼロならと安心して飲まれている方もおられるかもしれませんが、これにも大きな落とし穴があります。 まず、カロリーが本当にゼロではない可能性があります。100gあたり5キロカロリー以内なら「カロリーゼロ」「ノンカロリー」「カロリーフリー」などと表示できるからです。

 

次に、糖の替わりにサッカリン、アスパルテーム、スクラロースなどの人工甘味料が使われていますが、これらは砂糖より数百倍の甘味があります。これらを摂取し続けると、逆に食欲が増進して太りやすくなることがわかってきました。この理由として、①肥満ホルモンといわれるインスリンやインスリン分泌を促すインクレチンを増やす、②甘みに対する味覚が鈍くなり、自然の甘さでは物足りなくなり、食べ過ぎたり砂糖を追加したりする、③食欲増進作用のあるグレリンを胃などの消化管から分泌させる、④薬物依存症と同じように脳の神経伝達物質に影響して甘み依存症をきたす、などが考えられています。

 

さらに、これらのカロリーゼロ飲料を愛飲する人は、ジャンクフードと呼ばれる高カロリー高脂肪の食事を好む傾向があり、食生活が偏っているため糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病になりやすいという実態もあるようです。

 


  では、コーラなど炭酸飲料に入っている異性化糖(別名 果糖ブドウ糖液糖)と呼ばれる天然甘味料は大丈夫でしょうか?
果糖は、ブドウ糖と代謝経路が違い直接血糖を上げることはありません(無論、カロリーはありますし中性脂肪が上がります)。したがって、ブドウ糖を摂取した場合は満腹感が得られても、果糖の摂取では満腹感が得られず食べ過ぎる可能性があります。また果物から果糖を摂取する場合は、食物繊維やビタミンなども同時に摂取できるため適量摂取はメリットもあるのですが、異性化糖入り飲料水から摂取する場合は、カロリーオーバーに注意する必要があります。

 

あの手この手で魅力的(あるいは健康に良さそう)に宣伝された飲料水の「甘い罠」には、皆様くれぐれもご注意くださいね。

 


“血糖”について考えてみよう!(1)

2014-04-01 18:43:20 | 健康・病気

糖尿病の方のみならず、“血糖”という言葉は皆様ご存知だと思います。“血糖”とは、血液中に存在するブドウ糖の濃度で、健常者では空腹時100mg/dl前後で食後でも140mg/dl以下保たれています。

この血糖値が異常に高くなっている状態を高血糖といい、空腹時126mg/dl以上あるいは食後2時間値200mg/dlの方を糖尿病といいます。

一方、ブドウ糖は、脳が唯一利用できるエネルギー源ですから、血糖がある程度以下(50mg/dl以下は特に問題)になると脳の活動が低下して意識消失をきたすことがあります。(これを低血糖といいます)。

 

さてそれでは、ヒトの血液中には一体どれくらいのブドウ糖が溶けているのでしょうか?

ヒトの血液量は、体重60kgではおよそ5リットルです。血糖が100mg/dlというのは、逆算すると体中の血液にブドウ糖がわずか5g(ティースプーン1杯!)が溶けている状態ということになります。

 

一般的なジュース350mlの中に溶けている糖分の量は35g程度です。これが吸収されると血糖が一気に上昇します。健常者ではこの時、すい臓から適切なインスリンが分泌されて、ブドウ糖を肝臓や筋肉に取り込んで速やかに血液中の血糖を正常値まで下げることができます。糖尿病の方は、インスリン分泌が少ないか、分泌されたインスリンを有効に活用できない(インスリン抵抗性がある)ことにより、高血糖状態が続き、血管や臓器にダメージを与え続け、のちのち恐ろしい合併症(脳卒中、心筋梗塞、腎不全、網膜症など)を引き起こします。

 

たかがジュース1本といえども、体中の血液に溶けているブドウ糖の何倍も糖を含んでいるのです。医者が、「水分補給はジュースではなく水かお茶にしなさい」と指導する理由がご理解いただけると思います。

では、今流行りのカロリーゼロ飲料は大丈夫でしょうか? 次回はそのあたりについてお話したいと思います。

 


骨粗鬆症について(2)

2014-03-04 18:19:25 | 健康・病気

  診断基準は、腰背部痛、姿勢異常、身長短縮などの身体症状に加えて、脆弱骨折の有無、骨密度低値または脊椎X線像における骨粗鬆化の程度によりおこなわれます。骨密度は、若年成人平均値に比し70%未満が目安です。 

 治療は、食事療法・運動療法・理学療法・薬物療法がおこなわれます。食事は、カルシウムの摂取を増やしなるべく多くの品目の摂取を心掛けます。運動は、骨だけでなく筋力低下防止にも効果があり、散歩、腰痛体操、開眼片足起立訓練などがあります。薬物には、骨吸収を抑制するビスホスホネート、選択的エストロゲン受容体修飾薬、カルシトニン製剤や、骨形成を促進する副甲状腺ホルモン製剤、その他、カルシウムの吸収を高めるビタミンD製剤などがあります。最近では、さきほども述べましたが、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病と骨代謝、骨粗鬆症との間に共通した病因が考えられており、これら生活習慣病を厳重に管理する必要性も求められています。 さらに特に、高齢者における骨折発生には、反射神経機能の低下、筋肉量減少(サルコペニア)による転倒リスクの増大が要因になるため、神経筋肉機能の改善のためのリハビリテーションや、自宅廊下や風呂場に手すりをつけるなどの環境改善も重要です。

 最後に、”ロコモ”という言葉を聞かれたことはありませんか。 骨粗鬆症や関節疾患を含めた運動器障害により、日常生活の自立度が低下し、要介護状態あるいは要介護になるリスクのある状態をロコモティブシンドローム(通称”ロコモ”)といい、最近マスコミにも取り上げられ話題になっています。2013年総務省により発表されたわが国の高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)は25%で、4人に1人が高齢者です。高齢化とともに要介護者は増え、現在要支援・要介護の認定者数は570万人とされています。このうち運動器障害が認定要因になっている方は20%強です。

 高齢化率は2055年には40%になるとの予想もあり、超高齢社会に入った日本では、運動機能の維持と運動器疾患の予防改善することにより介護に頼らないで自立して生きることが求められています。 皆様も“ロコモ”にならずに長生きができるよう日頃から心がけていきましょう。

 


骨粗鬆症について(1)

2014-03-04 18:14:10 | 健康・病気

骨粗鬆症とは、「骨強度の低下により骨が脆弱となり、骨折の危険性が高くなる骨の障害」と定義されます。ここでいう骨強度とは、骨密度と骨の微細構造や骨の基質蛋白により影響を受ける骨質とよばれるものにより決定され、骨密度70%、骨質30%で説明されると考えられています。わかりやすく言い換えると、「骨密度が低下したり骨質が劣化することにより、骨がもろくなり、腰背部痛、骨折、脊柱変形などをきたした疾患群」をさします。

 一般的には、骨は力学的負荷に応じて強度が決定されますが、骨はカルシウムを貯蔵する器官でもあるため、カルシウム平衡をつかさどるホルモンなどによる制御も受けています。

 骨はいったん形成された後も常に古い骨が吸収され、新しい骨に置き換わる骨リモデリング(再構築)により正常な強度が維持されています。健常成人でも年に約10%の骨基質が入れ換わることが知られています。 別の見方をすると、骨基質に埋まった骨細胞、骨形成を担う骨芽細胞、骨吸収を担う破骨細胞により骨は絶えず代謝されているとも言えます。

 さて、加齢に伴う骨の変化はどうなっているでしょう。骨量は、20歳前後で最大となり、45歳以降は減少してきます。女性では、閉経以降1年間に23%低下し、6065歳以上では減少率は0.51%と穏やかになります。男性では、65歳頃から女性と同様に年間0.51.0%の骨量が減少するといわれています。

 骨粗鬆症の種類は、エストロゲン欠乏により骨吸収が亢進して起こる閉経後骨粗鬆症、骨生成が低下して骨密度が減少する老人性骨粗鬆症、慢性腎不全、内分泌疾患あるいは薬剤により起こる続発性骨粗鬆症などが知られています。

 メカニズムとしては、エストロゲン欠乏や加齢、生活習慣病に伴う酸化ストレスの亢進により、(1)破骨細胞の活性化、(2)骨芽細胞機能の低下、(3)コラーゲン架橋の異常を生じ、骨強度の低下をきたすと考えられています。特にコラーゲン架橋の異常は、加齢や糖尿病などによる酸化ストレスによって増加する終末酸化産物の過形成によって生じるとされトピックになっています。

 (2)につづく・・・