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よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

自律神経の整え方

2014-11-02 15:00:26 | 健康・病気

 皆様の中にも、体がだるい、体がほてる、動悸がする、頭が重い、胃腸の調子が今ひとつなどなんとなく調子が悪いと感じていらっしゃる方もおられるかもしれません。血液検査や画像検査などの検査を受けても大きな異常がなく、医者から原因はストレス、疲労、睡眠不足で自律神経がうまく働いていないのでしょうと説明をうけることもあると思います。 

 さて自律神経とはどんな働きをしているのでしょう。体の神経には、運動神経、知覚神経、自律神経があります。私達は意識して、運動神経を介して手足を動かすことができますし、知覚神経を介して痛みや触覚などを認識することができます。
 一方自律神経は、私達が意識をしないところで血圧、呼吸、体温の調節、食べ物の消化吸収、排泄など生命活動を維持するために必要な調節をしています。

 自律神経は、交感神経と副交感神経にわけることができます。交感神経は、興奮・緊張する場面で活発に働き、副交感神経は逆にリラックスする場面で働きます。これは、車のアクセルとブレーキの関係に例えられます。アクセルばかりだと車は暴走しますし、ブレーキばかりだと前に進めません。両者がバランスよく働くことによって本来の力を発揮することができるのです。

  現代社会に生きる私達は、普段から多くの肉体的・精神的ストレスにさらされており、交感神経優位になっている人が多いです。したがって、十分な休養をとったり、趣味に興じたり、温泉につかり美味しいものを食べるなどリフレッシュすることにより副交感神経活動を高めて自律神経のバランスを整える必要があります。

  時間のない日常生活の中ですぐに交感神経優位から副交感神経優位に変更する方法はないでしょうか。意識しないところで働いている自律神経を唯一自分の意思でコントロールできる方法は、ずばり呼吸です。

 通常、私達の一分間の呼吸数は15回程度です。副交感神経を活発にする呼吸とは、呼吸数が通常の半分以下の深呼吸です。ゆっくり鼻から息を吸い込み(おなかを膨らませるイメージ)、その倍の時間をかけて息を吐き出します。これは腹式呼吸といわれます。イライラした時は、是非深呼吸してみてください。体がふっと落ち着くことが実感できるでしょう。

  尚、呼吸法には様々なバリエーションがあり、きちんと習得するには修練が必要です。興味のある方はネットで検索して自分にあった呼吸法をみつけるのもお勧めです。 

 


食品添加物の光と影

2014-09-12 14:14:05 | 健康・病気

   飽食の時代にあって、食の安全が問われることが多くなっています。残留農薬、放射線汚染、遺伝子組み換え作物、狂牛病など様々な問題がマスコミで取り上げられています。今回は、食品添加物について考えてみます。

 食品添加物には、大きく分けて天然と合成の二種類があります。天然のものは一概に安全といえるわけではありませんが、問題になることが多いのは合成添加物です。中でも自然界に存在しない合成添加物は、ヒトの体の中で代謝・排泄されず体に悪影響を与えている可能性が示唆されています。 

そもそも現代人の食事において、食品添加物を一切とらないといのはほぼ不可能です。コンビニの弁当、サンドイッチは言うに及ばず、明太子、漬物、ハム、インスタントラーメン、レトルト食品、冷凍食品など加工食品には必ず何種類もの食品添加物が使われています。食品添加物の用途は、見かけを良くする、長持ちさせる、味や香りを整える、分量を多くする、製造コストを下げるなど様々です。このおかげで、私たちは、便利で手軽で安く美味しい?食事を楽しむことができます。

 ではその代償は、どのようなものがあるでしょうか?

 一番に考えなければならないのは、体への毒性です。国が認可しているとしても、その根拠は動物実験結果であり、ヒトではありません。また単一の食品添加物では問題なくても、同時に複数の化学合成物質を摂取した時の影響は、誰も知りません。がん・アレルギー・免疫力低下・頭痛など体の不調の原因になる可能性が指摘されています。

 次に食文化の崩壊も危惧されています。ほとんどの加工食品のうまみ成分として使われているとされる、塩分+化学調味料+たんぱく加水分解物による合成されたうまみに慣れてしまうと本来のうまみがわからなくなるという味覚の問題があります。また簡単に安く食事がとれることに慣れてしまうと生命をいただくという食物のありがたさや食の作り手に対する感謝の念が失われてしまうことになります。

  私自身これまで食品添加物についてまったく無頓着でしたが、健康の基本は食事という大原則に立ち返り、達人が教える下記のポイントに注意したいと思います。

 1.加工食品を買う時は、裏のラベルを見る(台所にない、聞いたことないものは食品添加物)

 2.加工度の低いものを選ぶ(手間をとるか、添加物をとるか)

 3.知って食べる(一週間のスパンで考える)

 4.安いものだけにとびつかない(安い食品には訳がある)

 5.素朴な疑問を持つこと(添加物と付き合う最初の第一歩)

                         参考文献:安部司 「食品の裏側-みんな大好きな食品添加物」

 渡辺雄二 「体を壊す10大食品添加物」

 


“肥満”について考えてみよう!(4)

2014-07-18 14:19:10 | 健康・病気

 減量が成功するかどうかは、太らせる原因となる炭水化物や糖分を取り除けるかによります。したがって、ダイエットと称してエネルギー源や細胞や組織を修復するために必要な脂肪や蛋白質まで減らしてしまうと、からだが飢餓状態となり、その結果空腹となり、減量は失敗することになります。

 では炭水化物や糖分を減らした分のカロリーは、脂肪と蛋白質のどちらで補うのがよいのでしょうか?「ヒトはなぜ太るのか?」の著者ゲーリー・トーベスは、高蛋白質の食事は腎臓に負担をかけ有害でありうるため、脂肪75%、蛋白質25%の食事が副作用なく、継続しやすいと論じています(これはイヌイット族の食事のバランスです。でもさすがに日本人には真似できるとは思いませんね。)。 

 摂取する炭水化物を脂肪に置き換えたとき、細胞がエネルギーとして燃やす燃料が変化します。すなわち、ブドウ糖から脂肪(からだの脂肪と食事中の脂肪)への変化です。この際、虚脱感、疲労、悪心、脱水、下痢、便秘、起立性低血圧などの副作用を伴うことがあり、炭水化物の禁断症状と考えられています。

 これまで、やせるためには糖質制限が重要だという話をしてきました。しかし、例えば糖尿病の人すべてに当てはまるかというとまだ議論の余地があります。糖質制限食は続けるのが困難(リバウンドがおこる)、1~2年の観察期間では生命予後に差がない(むしろ悪くなる)といった臨床研究もあります。また腎機能や脂質異常症が悪化する可能性も指摘されており、現時点では日本糖尿病学会は糖質制限を推奨してはいません(炭水化物5060%、蛋白質1520%、脂質2035%)。

 他方、「炭水化物が人類を滅ぼす」の著者夏井睦氏は、ヒトの生物学的進化も踏まえ炭水化物不要論を展開しています。氏は、米、小麦の代わりに豆類を推しています。大胆な仮説もありますが、納得させられるところも多いです。

 私は、糖尿病があって太っている方には、基本的にはマイルドな糖質制限をお勧めしています。体重がなかなか減らず血糖コントロールに難渋されている方には有効だと感じています(ただし、腎機能、脂質異常には十分注意しています)。

 無論、少しぽっちゃりしていても特に病気のない方は無理にやせる必要はありませんし、自然の恵み(炭水化物や糖分)を愉しむことも人生の一部ですよね。

 


“肥満”について考えてみよう!(3)

2014-07-18 14:16:09 | 健康・病気

 前回、やせるためにはインスリン分泌量を減らすことが重要で、炭水化物と糖分を控えることが有効であるというお話をしました。

 無論、同じ量の炭水化物を摂取しても太るヒトと太らないヒトがいます。これは遺伝的素因によると考えられています。インスリンの分泌量、そのインスリンに対して度程度反応するか(インスリン抵抗性)、脂肪細胞、筋肉細胞、肝細胞がそれぞれ違う反応をするなどです。 また同じ個体でも年をとるとインスリン抵抗性が増すなどの現象がみられ、若い頃はやせていても中年になると太ることと関係しているようです。

 では糖分のなかでも果物に含まれる果糖はどうでしょうか。果糖はブドウ糖と違い急激にインスリンを分泌させることはありませんが、肝臓ですみやかに脂肪に変わると考えられています(最も脂肪を生成する炭水化物)。

 アルコールは、肝臓で少量のエネルギーと大量のクエン酸塩に代謝されます。このクエン酸塩はブドウ糖から脂肪酸をつくる過程を促進させ、アルコール性脂肪肝の原因になります。アルコールは、一般にはエネルギーとして消費され脂肪として蓄積されることはないと考えられていますが、一緒に炭水化物をとると結局脂肪として蓄積されることになります。ちなみに、ビールのカロリーは2/3がアルコールで、1/3が麦芽糖(精製炭水化物)ですので、飲み過ぎればビール腹になります。

 インスリンには空腹感を増す働きもあります。炭水化物や甘いものを食べることについて考えるだけでインスリンは分泌されます。インスリンは栄養を血液循環から一時的に取り除いて貯蔵することで私たちを空腹にし、その結果、最初のひと噛みがよりおいしく感じられるようにします。その結果血糖とインスリンの反応の大きい食物ほど、私達はそれを好み、よりおいしいと感じることになります。 

 この「血糖値とインスリンによるおいしさ」の反応は、太っている人や太りやすい体質の人では、間違いなく増大されています。そして彼らが太るにつれて、インスリンはより効果的に脂肪を脂肪組織に、蛋白質を筋肉に溜め込み、それらを燃料として使えなくするため、ますます炭水化物の多い食物を食べたくなるという理屈です。

 


“肥満”について考えてみよう!(2)

2014-06-17 14:48:38 | 健康・病気

 

 脂肪は、燃料として使われる時は脂肪酸、貯蔵されるときはトリグリセリド(別名、中性脂肪=三つの脂肪酸+グリセリン分子〔ブドウ糖の代謝産物〕)と形態を変えます。

 さて、脂肪組織内の脂肪の量を調節している生物学的因子は何でしょうか?この過程には数十のホルモンや酵素が関与していますが、最も重要なのがインスリンです。

 インスリンの主な作用は、血糖調節です。食後の高血糖に対し、血糖を一定に保つように膵臓から分泌されます。その方法は、ブドウ糖を血液から細胞内に取り込むスピードを速め、細胞は取り込んだブドウ糖の一部分を燃料として直ちに燃やし、それ以外は後で使用するため貯蔵します。筋肉細胞は、ブドウ糖を「グリコーゲン」という分子として貯蔵します。肝細胞は一部をグリコーゲンとして貯蔵し、一部を脂肪に変えます。そして脂肪細胞は、脂肪として貯蔵します。

 

 同時にインスリンは、脂肪の貯蔵と利用を調節する役割も果たします。この仕事は、主に2つの酵素を介して行われます。一つはLPL(リポ蛋白リパーゼ)でもう一つがHSL(ホルモン感受性リパーゼ)です。LPLはさまざまな細胞の細胞膜上にあり、血液から細胞内へと脂肪を取り込む働きがあります。インスリンは脂肪細胞のLPL活性を上げ、脂肪を積極的に貯蔵します(=太る)。一方HSLは、脂肪細胞で中性脂肪を脂肪酸に分解し、脂肪酸が血液循環できるようにする働きがあります。インスリンは、このHSLを抑制し脂肪細胞内の中性脂肪が減らないようにします(=やせない)。さらにインスリンには、新たな脂肪を貯蔵する場所を確保するために脂肪細胞を作る作用もあります。

 要するに、インスリンが行なうことはすべて、貯蔵する脂肪を増やし、燃やす脂肪を減らすように作用し、結果太らせることになります。

 

さて、このインスリン分泌を規定しているのが、血糖を急激に上昇させる炭水化物(その量と質)です。 すなわち、どの程度の脂肪を蓄積させるのか(=太るかどうか)を決めるのは炭水化物ということになります。 また同じ食事内容でも、野菜を先に食べて、お米を最後に食べると血糖の上昇が緩やかになりインスリン分泌量を減らすことができ、その結果太るのを抑えることができます。

最近マスコミでもさかんに取り上げられているやせるための糖質制限は、このことが理論的根拠となっています。