「情」を軸に・・・

2008-08-23 00:16:06 | ・こころ
金曜日、子どもたちを見送って、いつもならすぐにお家に帰るのだけれど、今日一日のいくつかのちょっとしたうれしかったことも重なって、なんだか気持ちも明るく、そのまま地元商店街まで歩いて行った。そしたら、なじみの小さな古本屋さんで(建物の間口が狭いのよ)感激の出会いが待ち受けていた。

★「建築有情」長谷川堯 著 中央新書 帯付き!  この本は神田の古書店ではかなりの高値がついている。おなじく長谷川さんの「建築旅愁」(中央新書)こちらも中古本で見つけて既に所持している。初版は昭和52年と54年発行。すごくうれしくて、そして、その場ですぐにページをめくってみた。

かつて早稲田での建築教育に長い間たずさわってこられた二人の先生のお話が綴られていた。そのページが眼に飛び込んできた。内容をまとめると・・。

 建築家の今井兼次さんがしばらく健康を害し、病院で静養をされていた。今井さんにとって師であり、同僚であり、友人であった今和次郎さんが亡くなられたことを聞いた日に、病院の屋上へのぼって、たぶんこの方角が今先生の家のあるところと見当をつけて、その方角に見える東京の夕景色をスケッチをした。その一枚のスケッチ、それをお見舞いにこられた著者の長谷川さんにベッドの上で示された。長谷川さんはそのお話を聞き、その描線の絵を見ながら、深い感動を味わった。すぐれた一人の人物の死の意味が、その画像のなかに悲しみとともに凝結し、それはどんな弔辞にもまさって、描いた人の哀惜の情をあらわしていたと。

私は胸が熱くなった。顔なじみの女店主の方に「この本ほしかったんですよー。うれしい。」と、思わず言ったほどだ。100円でよろしいのか、なんともありがたい。大事に読みます。

これが昨日の今日のことで、この偶然!? 不思議に思いつつも、個人的にちょっとキテル・・つながっているなと、そしてまた明日へと結ばれているのだと感じずにはいられなかった。私にとって眼に心に映る東京の街並みや景色はもはやただの景色ではなくなっている。それは長谷川さんのおっしゃるところの「建築に向かう人の思慕とか詩情を引き出す何かがある・・」きっとそんなところに通じるのだろうと思う。