雪の日

2008-02-03 18:27:40 | ・その他・暮らし・日常
近所のスーパーに買い物に行くと確かめていることがある。
新宿中村屋の月餅と同じく、今日も碌山と黒光は並んでいるか、そうであれば私はついうれしくなってしまうのだ。
でもこのときは良(黒光)より荻原守衛(碌山)のせつない気持ちをおもんぱかる。
(といっても、目の前の彼はお饅頭で彼女は最中なのだが・・)

相馬黒光は樋口一葉の小説『雪の日』を繰り返し読んでそらんじるまでなっていた。
ちょうどフェリスから明治女学校に行きたいと思いがうつっていた少女の頃。
でも、一葉の文章は簡潔このうえなく憎いほど洗練されているのに
一葉より三つ歳下の自分は頭の進みに筆が追いつかず・・なんて感じていた。

見渡すかぎり地は銀沙を敷きて、舞うや胡蝶の羽そで軽く、
枯木も春の六花の眺めを、世にある人は歌にも詠み詩にも作り、
月花に並べて称ゆらんうらやましさよ (『雪の日』冒頭 明治26年3月)


二月三日、一葉が明日逢いたいと葉書を出すと、行き違いに向こうからも
明日来いとはがきが来た。「かくまでに心合ふことのあやしさよ、」
四日は朝から霙まじりの雪になりかけていた、途中 本降りの雪になってきた。
雪の中、ひなっちゃん(本名ひぐちなつ)が訪ねたのは半井先生、半井桃水。
でも先生はまだ寝ていた、上がりがまちで待っていたけれど雪が降り込むので
寒いし心細くなって、わざと咳をするひなっちゃん。
ようやく聞きつけて、寝巻き姿のしどけなさで一葉をみた桃水は、
「や、これは失敬」
先生は新しい同人誌を出そうと計画していて、その仲間にあなたも入れるよう
頼んでおいたから原稿を書くようにと話された。
それで、さっそく勢い込んで持ってきた原稿をみせた。片恋のテーマの小説。
「これで結構、これでいこう。」

先生はお汁粉をつくってひなっちゃんにすすめた。
桃水はお餅を焼いた箸をそのまま一葉に渡す。
雪はますます降りしきり、外は物音ひとつ聞こえない。
一葉はいつまでも、ここにこうして二人きりでいたい気持ちに・・
「もうお暇しなければ・・」
「ひどい降りですよ。今夜はうちへ電報して、ここに泊まっていきなさい。そうなさい」

そんなのダメダメって頭をふるばかりのひなっちゃんは、雪のなか、帰ります。
その日の日記(明治25年2月)→
吹きかくる雪におもてむけがたくて、頭巾の上に肩かけすつぽりとかぶりて・・
さまざまな感情胸にせまりて、雪の日といふ小説一篇あまばやの腹稿なる。


この時19歳のひなっちゃん、すんごくドキドキしてただろうな。わかります。

本日のえどはく

2008-02-03 01:17:07 | ・講演・セミナー・シンポ
両国の駅で何本も電車をやり過ごして
寒さも忘れずっとしばらくみつめていた・・・。
もしもあそこがプラン通り全面ガラスだったら・・・
どうかなぁと。
 
まるい薔薇窓みたいなのは後から仕方なく考えたのね。

2月6日★追記 ↑ちがうぞ。
菊竹さんの江戸博構想のスケッチには最初からあの丸窓はある。
1987.6.15 別の2種類とも。仕方なくなんてマチガイ。訂正。