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図305 2011年04月17日(日)
加藤文太郎編 その1
旦夕って?
穂高の屏風岩を登る人や、避難小屋のかわりに横尾谷の岩小屋で寝泊まりできたころの話です。私が10代の頃は、その岩小屋に泊まれましたが、いまは土砂で埋まっています。加藤文太郎は、昭和8年前後に、岩小屋を何度か利用したようです。単独行から雪と岩に魅せられたころで、吹雪のなかを前穂高の北尾根に登り、チムニーで夜を明かして、仲間(吉田)が凍傷にかかります。その後、再び訪れた岩小屋で、知人から 旦夕(たんせき) という言葉を耳にします。その数年後に槍ヶ岳北鎌尾根で、仲間と共に、雪の中を千丈谷に転落、旦夕の予言どおりになってしまいます。
以下は原文から
昨年の三月私は横尾谷にある松商の岩小屋をおとずれたことがある。ちょうどその年の一月屏風岩を登った中村氏らがいて非常に歓待してくれた。
そのとき私は入り口においてある大きな白樺の木へ腰をおろして焚き火にあたっていた。ところが中村氏は私にむかって「君の生命は旦夕にせまっている」というのである。それはどうしてだと聞いてみると、実は去年の今ごろ、今は亡き神戸の三谷氏が友達と二人で君と同じように飄然とここへやってきたが、そのとき三谷氏は現在君のいるところへ全く同じようにそこへ腰をかけていたし、また同じく神戸の金光氏および有明の案内塚田君もやっぱり同じようにそこへ腰をかけていたのだ。だから君ももう長くはないというのである.
cf.参考図書 単独行 加藤文太郎 昭和15年6版 (京都府立図書館)