昨日、登山イベントの仕事で、山梨県甲州市と埼玉県秩父郡大滝村の県界尾根上にある笠取山(かさとりやま・1953m)へ行って来ました。登山口は山梨県側の作場平(さくばだいら・1312m)。昨年に続き2回目の訪問です。
この山は、東京都水道局の水源林に含まれており、多摩川の最初の一滴が滴り落ちる場所でもあります。天候が心配されましたが、予想外の晴れ間がのぞく中、やわらかな新緑と奥多摩周辺ではなかなか見られない植物に出会うこともできました。一方で、ここでも「心配なこと」が…。
標高1700m付近。コースは水源林の巡視道として整備されており、歩きやすい。奥多摩よりも内陸にあるためか、新緑もやや遅めです。
沢沿いでは、サンリンソウ(三輪草/キンポウゲ科)が咲いていました。本州中部以北に自生。ニリンソウよりも小型で、茎頂(けいちょう=茎の先端)に2~3個の花をつけます。
こちらはクリンソウ(九輪草)。
(歩道から外れた場所、近づけなかったためこんな写真でごめんなさい!)
上のサンリンソウやニリンソウとは異なり、サクラソウ科の植物です。高さ40~80㎝の花茎に、紅紫色のサクラソウに似た花を2~5段輪生状に付けます。
「小さな分水嶺」と呼ばれる小ピーク(1835m) に到着。後方に見える三角垂が目指す笠取山です。
小さな分水嶺の意味は…?
そう、ここは「多摩川」「富士川」そして「荒川」の分水嶺。この小さな頂の下で、関東を代表する一級河川たちは隔てられているんですね。なぜか…頭の下がる思いです。
尾根上では、キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪/スミレ科)が風に揺られていました。亜高山帯に咲く黄色いスミレで、丸く切れ込みのある葉の形が馬の蹄に似ているところからの名です。 爽やかな色ですね。
笠取山山頂より、来し方西方を振り返ります。国師ヶ岳(こくしがたけ・2591・8m)がガスの中に見え隠れ…。
そして頂上周辺では、今年もこの花が出迎えてくれました。
アズマシャクナゲ(東石楠花/ツツジ科)です。
花冠(かかん=複数の花弁の集まり)が五つに裂け、雄しべ10個が特徴です。いつ見ても、その花のボリューム感と鮮やかな淡紅色は、見応えがあります。ただ、当たり年だった昨年に比べると、今年は花が少なめ?
下山途中、多摩川が産声を上げるとされる場所「水干(みずひ・1865m)」へ。前日までの雨の影響もあり、奥の岩窟(がんくつ)の中には、豊富なしずくが滴っていました。東京湾から138km、人間を含めた多くの生命(いのち)を支えている、まさに「最初の一滴」です。
しかし、ここ笠取山でも…
何かおわかりですか?ある動物によって樹皮を食べられたウラジロモミ(裏白樅/マツ科)です。左側の木は、幹回りを一周剥がされています。形成層(細胞分裂をする組織)を失っているため、やがて枯れて行く運命でしょう。
こちらは先ほどのアズマシャクナゲの葉。
やはり、かじられています。シャクナゲは有毒植物のはずですが…。
犯人は、5/17の本ブログでも「心配なこと」とご紹介したニホンジカです。最近は食べるものに困っているのか、バイケイソウやトリカブトといった有毒植物にまで口?を出しているようです。シカにとってはこれまで、「美味しくないから食べなかった」だけなのでしょうか…!?
のびやかな高原状の風景が美しい笠取山稜線付近。樹皮を剥がされた樹木、それが原因で立ち枯れた樹木、さらに、被害を防ぐために人間により張り巡らされたシカ防護ネットが、痛々しくもありました。
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