多摩、ときどき山

多摩の暮らしと山のブログ

『シカ問題を考える』

2017-10-21 21:30:27 | 自然のこと
~秋雨前線の活発化により先週から雨続きの関東地方ですが、ここにきて非常に強い台風21号が接近中。大きな被害が出ないことを祈るばかりです。こんな時は、(仕事の場合は仕方がないにしても)できるだけ外出を控えて読書に勤しむのもいい…つくづくそう思う最近の空模様です。~





『シカ問題を考える~バランスを崩した自然の行方』


一気に読みました。(もちろん仕事もしながら…笑)

「数ある野生動物のうち、シカだけは人の生活と離れた森林そのものにも大きな影響を与える。しかも、その程度が広範かつ深刻になりつつある」-1990年代から急増したシカによる被害の全国的な実例、シカという動物の生態、シカの増加の背景、問題解決に向けた取り組みなどについて、著者自身の調査結果と各種統計を関連付けながら分析し、一般の読者向けにわかりやすく解説しています。

著者による五葉山(岩手県)での調査から、一歳で25%、二歳では85%という雌ジカの驚異的な妊娠率を紹介。その上で、森林伐採による食糧(伐採により地上に生える植物)の増加、(牧草が豊富な)牧場の存在、地球温暖化による暖冬(積雪量の減少)、狩猟圧の低下(ハンターの高齢化と減少)、ニホンオオカミの絶滅…一般的に指摘されるシカ増加の背景を一つ一つ検証していきます。

「オオカミがいなくてもシカが増えない時代が100年もあったし、ハンターが減少した1980年代にもシカは増えなかった」。決定的な要因は特定できず、その一方で、農山村の衰退と急速な都市化など1970年代から大きく変容した日本社会の構造的な問題を示唆。

「このことは当然、シカと農山村社会の力関係を変えた。ある閾値を超えた段階で、シカの増加ポテンシャルを抑制できなくなってしまったように思われる。そのことは農業人口の減少に伴うハンター人口の減少に代表されるが、実際にはシカにとっての生息地の変化の方が大きな影響力を持った」と推測した上で、シカ問題は「農山村の復活なしに効果は限定的だと思う」との持論を展開されています。

都会から遠く離れた山や森の中だけの問題と捉えるのではなく、社会全体の問題として考えていく大切さ-そのためには「まず現状を知ってもらうこと」と著者。大気保全や水源涵養など多くの恵みをもたらしてくれる日本の豊かな森林を後世に残していくために、少しでも多くの人に読んでほしいと思いました。



シカによる角研ぎと樹皮剥ぎ(2017年7月3日、奥秩父/飛龍山にて)







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