ピレネーの山の犬 Zion♪シオン

シオンとともに歩く道、ともに見る風景、暮らしと庭の花たち。

白猫の最後の言葉

2013-09-06 | お散歩
散歩の帰り、ケーキ屋さんに吸い込まれてしまった。



「 Zion、ケーキを買う間、中庭で待っていてね 」
「 うん、いいよ 」



中庭は、カフェのテラス席になっている。
ちょうど空いているし、やっぱり、お茶していこうかな。



アールグレイの揺れる湯気を見ていると、あの白い猫のことを思い出した。

東の公園へ行く途中、とある角を曲がった所にある家で
夏の初め頃から、白い猫を見かけていた。

白猫は、いつも駐車場の中にいたので、早朝、ここを通る時は、
Zionは、角にさしかかる手前から、尻尾を大きく振り、
期待に満ち溢れて、駐車場をのぞき込むのだった。



白猫は、扉の傍まで寄って来て、時々、にゃお~と鳴く。
野良猫のようにも見えるが、Zionに懐き、
どこか悲しそうに見える目には、気高さがあった。

Zionは、じっと見ている。
ふたりで何か話しているのだろうか。

納得すると、Zionは立ち去るのだが、
白猫がいない時は、屋根の上まで探していた。



ある朝、いつものように期待に満ちて角を曲がると、
白猫は、駐車場の真ん中あたりにいて、こちらに来ない。
Zionがいくら待っても、来なかった。

次の日、白猫は、駐車場の奥の道具箱の上にいて、やはり、こちらに来ない。
凛としてすわる姿は、とても大きな体に見えた。
じっと見ながら、ひたすらに待つZion。
白猫は何故か、威嚇するように、鋭い目をして、
何か言った。

Zionは、立ち去った。

それ以来、Zionが尻尾を振って角を曲がることはない。
探すこともない。
まるで、何もなかったように・・・

白猫は、もう、どこにもいなかった。



どこへ行ってしまったのだろう。
ふたりは、どんな話をしていたのだろう。

最後に会った日、白猫は何を言ったのだろう・・・



とても知りたいけれど、
それは、Zionだけにしか、分からない。

夏の朝の白い猫・・・
もしかして、幻だったのだろうか。

まさかね・・・


  

今日も会いに来てくれて、ありがとう!




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