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フランス版「ロミオとジュリエット」 シアター・オ―ブ 

2012-10-16 11:47:52 | Musical
2012年10月11日(木)13:30~
東急ヒカリエのシアター・オ―ブにて。

ジェラール・プレスギュルヴィック作曲・演出の「ロミオとジュリエット」
フランス版の来日公演を観て参りました。



シアター・オ―ブに行ったのは初めて。
渋谷駅からアクセスの良い東急ヒカリエの11~16Fに今年の7月にOPENした1972席の劇場。
ビルの上階にあるので、エレベーター待ちの時間、会場に入ってから席までの動線などを考えると、
意外と時間がかかるのが難点かも。。。
会社帰りにソワレを、と思うと、渋谷駅に到着してからのストレスが凄そう^^;

今回は、録音の音源使用なのでオケピットがなく、11列目がとても舞台に近く感じました。
内装は黒主体の簡素なもので、赤坂のACTシアターに雰囲気が似ているかも。
席にはしっかりと段差がついているので観やすかったです。

作品自体は2001年、パリのパレ・デ・コングレで上演されて200万人動員のMEGAヒット。
その後、各国版が作られて世界中で上演され、2010年にふたたびパリで凱旋公演。
それを宝塚星組で小池順一郎潤色の日本版の主演メンバー3人が観劇する、CSの番組がありましたが・・・。
そのときのジュリエットと、そのときはベンヴォーリオ役だった人が主演の今回の引っ越し公演です。

小池先生潤色の宝塚版は、2010年の星組、2011年1~3月の雪組、2012年の月組で観ましたし、2011年9~10月の東宝版では城田優主演で観ていますので、オリジナルとは、それらの潤色版を重ねて比較しながらの感想になりそうですが、違いを楽しんで参りました。

小池版との大きな違いは、ティボルトの扱いでしょうか。
ジュリエットの母と怪しい関係・・・という設定はもとのフランス版にはなく、ただ、ジュリエットに憧れていたいとこ、ということになっています。宝塚では、2番手男役の役どころにふさわしくちょっと色男に仕立てるための工夫だったのでしょうね^^
あと、死はLaMort、女性名詞だから。。。ということでもないでしょうが(?)女性ひとり。
東宝版では男性ダンサー、タカラヅカ版では男役の死とセットで女性の姿の男役が演じる愛、が配されていましたから、そこはかなり違いますね。

あと、基本的な違いとしては、主役どころはまず歌手であり、演技者である、ということで、ダンサーではありません。
その分、キャピュレット家、モンタギュー家の人々として各々10人ばかりのメンバーがダンサー専属として配されています。
ですので、主役が踊りまくったり、踊ってすぐに歌ったり、皆で踊りながらコーラスを入れたり、というタカラヅカ版に慣れていると、ちょっと間が抜けているような感じを覚えましたがすぐに慣れました^^;
歌と踊りがそれぞれ専任になっている分、全体的なクォリティは安定していたかと。

総勢40名くらいで、映像で観たPalais des conglesでの舞台と比べるとやや少人数編成なのかも。
ちょうど、星組が梅芸や博多座で上演したときの感じです。

では、個々に感想です

■ロミオ: シリル・ニコライ(Cyril Niccolaï)
スラリとした金髪のサラサラヘアーで、ロングガウンのようなコートがお似合い。
宝塚版のロミオほど初心ではなく、女の子とつきあったけど・・・の歌も、白い柔肌にあきた、などのドッキリ歌詞あり。
ジュリエットと出会ってからは純愛です。

■ジュリエット: ジョイ・エステール(Joy Esther)
彼女のジュリエット振りは素晴らしいですね!
ウェーブのかかったロングのブロンド、センターパーツに細い三つ編みをあしらった髪形といい、キラキラとした両の眼といい・・・。ジュリエットそのもの。健康的で、活き活きとした、愛のために運命に抗おうとする生命力を感じました。

■ベンヴォーリオ: ステファヌ・ネヴィル(Stephane Neville)
長身で細身、ブルネットの髪で、落ち着いた物腰。
どうやって伝えよう・・・の歌も日本勢のようなこぶしを効かせての絶唱はなく、押さえた歌唱でした。

■マーキューシオ: ジョン・エイゼン(John Eyzen)
彼は初演からこの役一筋、なのだそうです^^
お顔は美形枠ではありませんし、髪もクシャクシャですが、おどけもので機知がきき、オーバーアクションのマーキューシオをナチュラルに演じていました。
無骨なティボルトとの対比が効いていて、それはお互い虫が好かない相手だろうな、と納得。

■ティボルト: トム・ロス(Tom Ross)
一番宝塚と違うのはここですね。
孤独で無骨な男の子が成長しても、まだ大人になりきれない、いとこのジュリエットに憧れているけれども告白できない・・・・そんなさみしいティボでした。
「ブロンド、ブルネット・・・様々な女を抱いてきた」のくだりは、原曲も同じ。曲に対して座りの良い歌詞なのでしょう。
マーキューシオをナイフで刺して致命傷を負わせてしまった、と自覚してからの演技はナイフを取り落として(そのナイフがモンタギューサイドに滑って行き、ロミオの手に渡るのですが)、何度もその手をズボンでぬぐおうとする様は、マーキューシオの血で汚された、人を殺めた自分の罪をぬぐおうとするかのような感じを受けました。
ここは、軽く高笑いして女たちを引き連れてすぐに背を向けて杯を干すヅカのティボルトとは随分違いますね。

■乳母: グラディス・フライオリ(Gwladys Fraioli)
ロミオを捜しに来てモンタギューの若者たちにもみくちゃにされる場面は割合とあっさりとしていました。
それよりも、ジュリエットを想う乳母の歌、の内容が、生みの母親と乳母である自分を対比させ、深い愛情を捧げる歌でしみじみさせられました。
ロミオとの結婚のあとに、キャピュレット卿の命でパリスと結婚するように、という流れになったときには、特にコミカルにロミオをくさしてみせるでもなく、自然に家長の命令には逆らえない、という立場で受けの演技。
全体に脇がコミカルなのは小池版の味付けですね。
パリスに至っては、長身で地味で無表情。確かにあんな何を考えているのかわからない男性のもとに嫁がされるのは嫌、というジュリエットの主張にはうなづけます^^;


■キャピュレット夫人: ステファニー・ロドリグ(Stéphanie Rodrigue)
いかにもPARIS好みのヘアメイク&衣装。
80年代のティエリー・ミュグレーのショーに出てきそうな大きなプラチナブロンドの高い位置でのシニヨン、デコルテを強調したマーメイドのボディコンシャスラインのワインカラ―のドレスなど。
小池版の不義の子ジュリエットを生み、甥のティボルトと関係している奔放な母、がいかにも似合いそうなVISUALですが、ジュリエットに説くのは家父長制の下でしいたげられた女の道。
あなたも涙の谷に身をうずめるのです、と望まない結婚を受容したうえで愛人を作れば良いとの教えを説く母。
そんな歌の中でも、夫はわたしの若くて美しい裸身を見たかっただけ、というフレーズなどになまめかしさが匂うのがフランス版ならでは。

■キャピュレット卿: セバスティエン・エル・シャト(Sébastien El Chato)
「娘よ」の歌が聴かせます。
東宝版とは違って、不義の子とは知りつつも娘として愛してきた、というくだりはなく、
手の中の珠として、美しい娘を愛でてきた、という辺りがこれもまたフランス男らしいなぁと。

■モンタギュー夫人: ブリジット・ヴェンディッティ(Brigitte Venditti)
なぜかモンタギュー家においては、当主が表に出てこないので、代表者はこのお母様です^^;
ロミオとジュリエットが墓所でふたりして命を絶っているのをみつけた両家の母が和解する歌は素晴らしかったです。

■ヴェローナ大公: ステファヌ・メトロ(Stéphane Métro)
壮年のギラギラした男、でした。
ヅカ版は黒いマントでベネチアのド―ジェのような静かな重々しさを醸し出す大公設定でしたが、このフランス版は濃い目鼻立ちのスキンヘッドのやり手の貴族男性、と言う感じ。
2幕最初に、日本版ではカットされている、大公の歌、というのがあるのですが、美男で権力に財力にも恵まれた自分・・・という”力(ル・ポワ)”をテーマにした歌もあり、とにかくエネルギッシュ!でした。

■ロレンス神父: フレデリック・シャルテール(Frédéric Charter)
神父様は、特に乳母とともに手を携えて・・・という感じではなく、単独で、神と対話をしながら、若い2人に平和の萌芽を観て、希望を託します。
それだけに、最後の悲劇を目撃したときの嘆きは深く、神への懐疑、自らの信仰生活を問う、キリスト者としての深い衝撃がテーマになっていて、ヨーロッパ世界の話だなぁと。
まぁ、シェイクスピアの原作もそこがテーマの一つだと思うのですが、日本版では、神の存在というよりは運命と愛の相克に上手くすり替えているなと思いました。

■死(La Mort): オレリー・バドル(Aurélie Badol)
まとわりつくような、青白い髪を振り乱して、引き裂かれた布が垂れるドレスをまとった女性の姿で表されます。
彼女が踊ると白いパウダーが舞い散るのですが、どうやらベビーパウダーを大量にふりかけているらしく^^;
踊りはときにアンニュイに、ときに激しく、自在。

最後はフィナーレ・ダンスこそありませんでしたが、出演者が並んだノリ良く音楽に合わせて手拍子を促したり、劇中の歌をリサイタルよろしく数人がマイクを持って歌ったり、とサービス精神満点。
ラストが重々しい終わり方だったのに対して、カーテンコ―ルで盛り上がっての退場となるので、気分が変わりますね。ただ、余韻を大切にしたい方は早々にお席を立っても良いのかも。
ファンがついているらしく、ロミオ、ジュリエット、ティボルトあたりには花束を持って手渡しするファンが何人かいらっしゃいました。

ロビーで出演者が御見送り・・と聞いてどんな感じなのか、楽しみにしていたのですが、
なぜか、ロビー出口と反対方向に向かった何列もしゃがみこんだ観客の列が・・・。

しばらくすると、その奥、視線の先に、ロミオ、ティボルト、マーキューシオらが登場。
ただ、しゃがんだ観客は拍手をしたり、携帯で写真を撮ったりするばかりで、
彼らも、ただ出てきて並んで、観客に対して手を振って帰るだけ・・・なので、混乱もない代わり、
双方のコミュニケーションが取れるような御見送り、ではありませんでした。
(宝塚のトークショーのあとのお見送りのようなものを想像していたので、やや拍子抜け?^^)

あ、主要な役の方たちは、それぞれ個人のFaceBookやTwitterで色々と発信されているようなので、
ご興味のある方は、原語の個人名で検索なさってみると楽しいかもしれません






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