maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

マリインスキー・バレエ2012 ロパートキナの「ラ・バヤデ―ル」

2012-11-16 06:07:42 | BALLET
10月19日の東京初日から通い続けている宝塚宙組「銀河英雄伝説」もあと千秋楽を残すばかり。
11月15日を皮切りに、12月2日まではマリインスキー・バレエ2012来日公演。
ロシアの、いえ、世界のバレエ界における至宝と言われるウリアーナ・ロパートキナ(様)祭りが始まりました!

胸ときめかせて向うのは文京シビックホール。
あまり好きな劇場ではないのですが、1Fど・センター席で全幕物にはピッタリのシチュエーション。
キャラクターダンスも含む、たっぷりとしたロシアンバレエの全幕のゴージャスな質・量の充実ぶりに思わず他CASTの日も買い足そうかと思ってしまいました^^;



2012年11月15日(木) 18:45開演 文京シビックホール
ミンクス ≪ラ・バヤデール≫ 全3幕

音楽:ルードヴィヒ・ミンクス
台本:マリウス・プティパ,セルゲイ・フデコフ
振付:マリウス・プティパ
改訂振付:ウラジーミル・ポノマリョフ, ワフタング・チャブキアーニ
振付増補:コンスタンチン・セルゲーエフ
        ニコライ・ズプコフスキー
舞台装置:ミハイル・シシリアンニコフ
(アドルフ・クワップ,コンスタンチン・イワノフ,
(ピョートル・ランビン,オレスト・アレグリの元デザインに基づく)
照明:ミハイル・シシリアンニコフ
衣装:エフゲニー・ポノマリョフ
指揮:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー劇場管弦楽団

ニキヤ(寺院の舞姫): ウリヤーナ・ロパートキナ
ドゥグマンタ(藩主): アンドレイ・ヤコヴレフ
ガムザッティ(藩主の娘): エカテリーナ・コンダウーロワ
ソロル(戦士): ダニーラ・コルスンツェフ
大僧正: ウラジーミル・ポノマリョフ
トロラグワ(戦士): イスロム・バイムラードフ
奴隷: アンドレイ・エルマコフ
マグダヴェヤ(托鉢僧): グリゴリー・ポポフ
アイヤ(ガムザッティの召使): エレーナ・バジェーノワ
ジャンペの踊り: ヴィクトリア・クラスノクツカヤ
           アナスタシア・ニキーチナ
マヌー(壺の踊り): ナデジダ・バトーエワ
舞姫たち(バヤデルカ):アンナ・ラヴリネンコ
                エレーナ・チミリ
                エレーナ・フィルソーワ
                スヴェトラーナ・イワノワ
グラン・パ・クラシック:ヴィクトリア・クラスノクツカヤ
               ダリア・ヴァスネツォーワ
               ヴィクトリア・ブリリョーワ
               ユリアナ・チェレシケヴィチ
               アンドレイ・エルマコフ
               アンドレイ・ソロヴィヨフ
インドの踊り: アナスタシア・ペトゥシコーワ
          カレン・イオアンニシアン
太鼓の踊り: オレグ・デムチェンコ
金の仏像: アレクセイ・ティモフェーエフ
精霊たち: マリーヤ・シリンキナ
         アナスタシア・ニキーチナ
         ダリア・ヴァスネツォーワ
子役:日本ジュニアバレヱ(指導:鈴木理奈)
上演時間 第1幕45分- 休憩 20分 -第2幕 45分- 休憩 20分 -第3幕40分

このところ、東バで観ているナタリア・マカロワ版のプティパの第4幕寺院崩壊を入れて、キャラクターダンスなどを省いたバージョンに慣れていた目には、ポノマニョフ・チャブキア―ニ版の豊富なキャラクターダンス、マイムの多用、そして第3幕「影の王国」で終了、という流れは却って新鮮。

主役ニキヤのロパートキナはその姿の崇高な美しさと、ソロルを想う真っすぐな恋心、結婚式での絶望のダンスに観られる透明な哀しみ、そして影の王国での純粋なる慈しみの心の結晶とでもいえる白いバレエの真髄のような演技で目を離せない。
39歳の円熟の境地の彼女をマリインスキーの全幕でたっぷりと観られる幸せ・・・バレエファン冥利に付きます
冒頭で、白い紗のベールを大僧正によってパッと取られてその美貌があらわになる瞬間の崇高な美しさ・・・。
白にブルーグリーンの装飾で縁が飾られた衣装が清純な美を表しています。
ソロルとの秘密の逢瀬でのピンクのバラが花開くような心の高まり、永遠の愛を誓う彼との深い信頼、大僧正の横恋慕をきっぱりとはねつける凛とした様子・・・。
ガムザッティの婚約を祝う踊りを捧げるために呼ばれて、若い男性ダンサーのサポートでリフトされた状態で、高所から白百合の花束をハラハラと落とす祝福と奉納の舞は何も知らないニキヤが、寺院のTOP舞姫としてその清冽な艶やかさを見せるくだりは、パリオペやスカラ座バージョンでは記憶にないので、新鮮でした。
その後、嫉妬に駆られた大僧正が王にソロルとニキヤの関係を密告。破談になることを期待したのに思いがけない王の決断はニキヤを障害として取り除く計画。
2人の関係を立ち聞きしたガムザッティが自室にニキヤを呼び寄せて装飾品と引き換えに身を引くようにと迫ります。
しとやかに登場するも、愛するソロルが婚約者と聞かされて、愛されているのは実は自分、彼は自分に愛を誓ったのですから!と1人の女として王女に対峙する強さに転換する鮮やかな身ごなしの変化。
婚礼の場では一転。赤い薄物のハーレムパンツに赤や透明のラインストーンで縁どられた黒いベルベットのチョリ。
白と金のクラシックチュチュの花嫁姿のガムザッティとは対照的な姿で、静謐な悲しみを踊るニキヤ。
新郎新婦の席に近づいて踊るときに、ソロルは彼女を直視できませんが、ニキヤはすでに彼に対してアピールすることを超えて、自分の舞の世界に浸りきっている様子。
一転、花篭をソロルからと渡されて希望を見出す踊りの快活、ヘビにかまれて、立ち去るソロルを眼の端で捉えて、大僧正の解毒剤をさらりと断り落命するまでのはかなさ。
影の王国での白いチュチュで幻影の世界に登場するニキヤは、現世の想いを捨て去って、ただただ、ソロルに静かな慈しみを与えます。
ニキヤ視線でとらえた全幕を通して、この作品の持つ昼ドラすれすれの世俗性のような要素を、ロパートキナのニキヤとしての誇りと純粋な愛の行方に集中した演技が洗練させていて、エキゾチックな想像の中のインドの風俗に彩られた夢のような世界と幽玄の世界にしばし、忘我の境地で遊ばせていただいた・・・というマリインスキーの「バヤデ―ル」でした。


ロパートキナのパートナーと言えば、ダニ―ラ・コルスンツェフ。
穏やかな表情、素朴といっても良い風情には神殿随一の舞姫、王女を虜にする勇者の面影は薄いのですが、盤石の丁寧なサポート、そしてソロでの意外な伸びやかさ(マネージュの180度以上!の美しい開脚とスピード感には驚かされました)若々しさにおぉっと声にならない声をあげてしまいました^^
ニキヤを裏切るに当たり、王の一存とその後の流れに抗議もままならず、ズルズルと・・・の流れ、婚礼の日に宮殿に呼ばれて・・・踊るニキヤを直視できない弱さなど、優しい風情の彼ならではのソロルの心情も丁寧に演じて。

ガムザッティに、他日ニキヤ役も演じる美貌のコンダウ―ロワが配されているのがなんとも贅沢。
レッド・ブロンズとでもいうべき髪色のロパートキナよりややブロンドよりの、豊かな髪を後頭部で盛って垂らし、パールの連を絡ませた髪形としっかりめに入れたアイラインがゴージャスな姫らしく、ガムザッティらしい強さのある姫君像。
ソロルとニキヤの関係を大僧正から王への密告を立ち聞きすることで知った彼女が、ニキヤを自室に呼びよせて装飾品と引き換えに取引を迫る場面の高飛車な感じ、それに対してしとやかだったニキヤが凛として、彼は自分に永遠の愛を誓った相手と断る強さ、まさに両雄並び立つ、という豪華な場面に息をのみました。

よくローザンヌなどのコンクールでも踊られるガムザッティのヴァリエ―ションもお手本のようにキレイ。

今回はロシアのバレエ団ならでは、で、キャラクターダンスなども一切の省略なしに詰め込まれており、しかもそれぞれのソリストのレベルが高くて、これもまた非常に心踊るポイント。

太鼓の踊りなど、キャラクテールの専門家を置くロシアンバレエならではの良い意味でのアクの強さと鋭さのある場面では一際会場の拍手も大きく。

通常、踊りとしての見どころが少なく、箸休め的な場面である壺の踊りも、ナデジダ・バト―エワの爽やかな演技が新鮮で、魅力的。

黄金の仏像も、通常はソロで舞いますが、ここは、輿で運ばれてきた仏像が台座から降りて、たくさんの黒塗りの子供たちに囲まれての踊りとなります。
婚礼の日の、象や豪奢な輿に乗っての王族の登場ですとか、虎退治のソロルが、ぬいぐるみの虎を踏みつけて披露するとか、いちいちベタなまでの(伝統的な)過剰な演出が、現代のシンプルな舞台に慣れた目には新鮮。

後は、影の王国のソリストのマリーヤ・シリンキナの端正で安定した踊りが良かったです。

それにしても、マリインスキー・バレエのコールドの美しさは・・・・なんとも言い難いものがありますね。
高身長で膝下が長い、美人揃い、ということもありますが、ただ、揃っているとか、スタイルが良い、というレベルを超えた、独特なものがありますね。

8人の並びに奥行き4列、3人のソリスト、そしてロパートキナのニキヤ、と36人のニキヤとその幻影が勢ぞろいしたところは圧巻の美、でした。

マリインスキー歌劇場という大劇場の力を、充実のオーケストラ(前日サントリーホールでゲルギエフが振ったオケかと思うと感慨深い・・・)も含めて全力でたっぷりと楽しめた充実の舞台。
明らかに狭いシビックホールの舞台の隅々まで躍動するダンサーたちを見ながら、東京文化会館で観るこれからの3演目を想って心踊る初日、でした


最新の画像もっと見る

コメントを投稿