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ザハロワ・ボッレの「ジゼル」

2015-03-15 04:07:15 | BALLET
2015年3月13日(金)19:00~

五反田のゆうぽうとホールにて



スヴェトラ―ナ・ザハロワとロベルト・ボッレの主演で、東京バレエ団の「ジゼル」を観て参りました。

もとから3月12日と15日の2回をこのペアで、14日は柄本弾、渡辺理恵の全東バCASTでの公演として予定されていたのがチケットセールスが良く、11日にザハロワ・ボッレで追加公演が組まれたとあって、この金曜夜公演にも「大入」の表示が・・・。
ザハロワはボリショイ来日公演「バヤデ―ル」での主演のニキヤでも9頭身かと見まごう細身の美しいラインとクラシックのバレエテクニックの権化のような研ぎ澄まされたロシアバレエの粋を見せてくれるはず。
対するボッレは・・フェリの引退公演をTBSが主催して、美味しい引退公演で売れるに違いない企画をバレエ公演主催としては新参者である団体が悪い言い方をすると札びらを切ってスターダンサーを集めた結果、その後の来日公演のギャラに対する出演者の要求水準が高くなり、もとからバレエ団との長い信頼関係を元に売れる作品だけでなく団としてアピールしたい知名度の低い新作なども上演してきたNBSなどクラシックジャンルの大御所プロモーターとの関係が、ダンサーによっては微妙になったとか・・と言われており。
ボッレはその点顕著で、若い頃は気軽に(?)バレフェス常連でしたし、東バの新プリマ売り出し企画の支えの王子様役で来日したりしばしば出演していたのがピタリと来なくなりましたが・・・。
その間の活動をみると、ミラノ・スカラ座バレエ団のプリンシパルとABTを掛け持ちし、ユニセフの文化大使的なポジでの活動、フェラガモなどでのプロモーションへの起用など華やかな容姿からのオファーも多く、バレエ的にも、ロシアの往年の名花アルティナイ・アスィルムラ―トワによる鍛錬などもあり、技術も向上。上背のあるラテン美男子の需要は高く、世界中の長身美女スターダンサーでお相手を務めていない方はいないのでは・・くらいのパートナー客演経験も豊富な彼。今、円熟のボッレをザハロワと・・・。
確かにバレエファンにとっては見逃せない公演ですね
小さな箱での公演で5列目の良席に心浮き立ちます。オブジャニコフさんの指揮も嬉しい。

対する東バは、3月10日付であの東バの男性ダンサーの顔と言って良い高岸直樹さんが引退されたとの報がNBSのHPに出ていて衝撃を受けましたが、世代交代を感じさせる布陣。また、50周年記念での大作上演をア―ティスティックアドバイザーとして指導してきたウラジーミル・マラーホフが全面的に指導しているだけあって色々と向上しているに違いなしとこちらにも期待が高まります。マラーホフ自身アルブレヒト役には一際思い入れのある名演が多い方なのでこの作品にかける情熱はいかばかりだったか・・・と思われます。

<東京バレエ団創立50周年記念シリーズ 10>

「ジゼル」(全2幕)

音楽: アドルフ・アダン
振付:レオニ―ド・ラブロフスキー(ボリショイ劇場版 ジャン・コラ―リ、ジュール・ぺロー、マリウス・プティパの原振付による)
改訂振付(パ・ド・ユイット): ウラジーミル・マラーホフ
美術・衣装: ニコラ・べノワ
衣装: 宮本宣子

◆主な配役◆

ジゼル: スヴェトラーナ・ザハロワ
アルブレヒト: ロベルト・ボッレ
ヒラリオン: 森川茉央

【第1幕】
バチルド姫: 吉岡美佳
公爵: 木村和夫
ウィルフリード: 岸本秀雄
ジゼルの母: 坂井直子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット): 乾友子-原田祥博、吉川留衣-松野乃知、
川島麻実子-梅澤紘貴、河谷まりあ-入戸野伊織
ジゼルの友人(パ・ド・シス): 小川ふみ、加茂雅子、伝田陽美、二瓶加奈子、政本絵美、三雲友里加

【第2幕】
ミルタ: 奈良春夏
ドゥ・ウィリ: 乾友子、吉川留衣

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

◆上演時間◆ 第1幕 19:00~19:55(休憩 20分) 第2幕 20:15~21:10

配役表を見て、まずドゥ・ウィリのお二人が嬉しすぎる・・・!クール・ビューティ、端正な中に柔らかさもある乾さんとほっそりしたバレリーナとして理想的な頭身バランスと可愛い小顔の東バの妖精さん吉川留衣ちゃん。
お気に入りの2人が配役されていてテンション高まります。
木村さん公爵に吉岡さんバチルド姫も贅沢。麗しい舞台が期待出来ますね。
森川さんヒラリオンはどんな感じかしら・・・。
わ、パ・ド・ユイットで吉川さんと松野乃知くんが組んでいる!これは麗しいペアだわ!などと一通り目を通して。



ジゼルのお話は、東バではオーソドックスなラブロフスキー版を踏襲。
一幕では身分を隠した貴族のアルブレヒトが名を偽って美しい村娘ジゼルと恋の逢瀬。
彼女に想いを寄せる森番ヒラリオンが怪しみ、公爵ご一行が狩りのため村を訪れたタイミングで偽りの姿のアルブレヒトと引き合わせます。貴族アルブレヒトの婚約者であるバチルド姫とそうとは知らずに恋バナもし、心通わせネックレスまでプレゼントされたジゼルは話に聞いた姫の婚約者が自分の恋人だったことに気づいて精神に錯乱をきたし、もともと心臓が弱かったこともあり、若い命を落とします。
2幕では、夜の墓所が舞台。ヒラリオン、そしてアルブレヒトがジゼルの墓参りにやってきます。
日没後の墓所には結婚前に亡くなった若い娘たちが精霊(ウィリ)となり、男を死にいたるまで踊らせるという伝説が。ウィリの女王ミルタの命により、犠牲になるヒラリオン。
次はアルブレヒト・・・のはずが、ウィリになったジゼルがミルタに命乞いを。拒絶されると今度は彼と共に踊り、守る意思を示します。アルブレヒトが息も絶え絶えに限界を迎えようとするその時に朝が訪れ、精霊の時間が終わりを告げます。ジゼルの献身により守られたアルブレヒトの命・・・。

今回の公演、バレエ・スタッフとして、高岸直樹、斎藤友佳理、吉岡美佳、木村和夫の名前が。
この2ペアで東バの主役を役変わりで演じてきたことを想うと感慨深いですね。
吉岡さんはマラーホフのお気に入りの相手役でもありましたので、柄本・渡辺ペアを指導する時にはマラーホフと吉岡さんが実際に踊って見せながらのレッスンがあったとか・・・。

主要CAST個別に感想を

■スヴェトラ―ナ・ザハロワ(ジゼル)
一幕の村娘は・・・村娘に見えませんね。はかなげで繊細で。アルブレヒトが夢中になるのはわかります^^
一幕、快活で愛らしい村娘、という造形でくるバレリーナが多い中、ザハロワは比較的淡々と。
事実を知って狂乱・・の場面、女優系バレリーナだと幸せだったころを思い出すマイムをたっぷりと演じて観客の紅涙を絞ったりする見せ場の一幕最後も、フワッとあちら側に逝ってしまった風で、村人も貴族も壊れものをみるように哀しく見守るのみ・・・の雰囲気でした。
対する2幕はザハロワワールド全開!
とにかくロマンティックチュチュ姿が似合う!ベタ立ちしていても既に8頭身を超えたバランスで、腕の動きから指先まで繊細で、浮遊感満点。指先からハラハラと白い花を落とす姿が似合いすぎる・・。
と同時に、ミルタに操られて舞台センターで回転する場面、完全なるアティテュ―ドで高速回転するザハロワ。
こんなジゼル初めて見たかも。テクニックが強い彼女ならでは、ですね。
フワリフワリと残像が残るチュチュの下でしっかりと丁寧にステップを刻む足先にパのひとつひとつの確かさを確かめつつ、でも幽玄の世界の住人であるという・・・。2幕が本領発揮、のザハロワのジゼルでした。

■ロベルト・ボッレ(アルブレヒト)
長身の貴族の美青年。昔日の甘やかな若き美男子の面影からはかなり大人っぽくなったな、と。
とはいえ、彼ならではのチャーミングな恋人ぶりは健在。
一幕、ベンチの中央にスカートを広げて坐るジゼルの横に立って、目配せし、あら・・と彼女が片側によるとすかさず隣に腰掛けて手を握ろうとするすばやさとか、花占いで花弁を数えてタメ息をつく彼女の背後で元気よく一枚ちぎり捨ててほうら!と向ける笑顔のスウィートさとか。ラテンラヴァーの面目躍如。
最後腕の中で息を引き取るジゼルに驚きうろたえ、走り去る・・の流れも自然。
2幕では、登場時の黒マントに百合の花・・が麗しすぎ。
でも、ここをたっぷり溜めるナルシスト系のダンサーとは異なり、意外と自分の美には無頓着な様子ですぐにマントを脱ぎ棄てて、お墓に向かいます。テクニックの向上も素晴らしく、ミルタに踊らされてアントルシャ・シスを繰り返すところ、後半よく客席から拍手が入るのですが、そこからがまだまだ続く・・・といった感じで、何度繰り返していたことか!
そのスタミナもさることながら、クオリティも素晴らしかったですね。倒れ込む様子やミルタへの命乞いも自然な演技。
ラスト、夜明けとともに精霊たちが姿を消し、ジゼルも下手の墓石にパドブレで消えていきます・・・伸ばす腕と腕・・指先が触れそうで触れない・・長身で手足の長い2人ならではの綺麗なシルエット。ジゼルが消えたあと、墓石の十字架の根元にすがりつき、供えられた白い花をかき抱き、そして立ちあがって舞台中央で、朝の光の中で、目を閉じて頭をそらせる・・・ジゼルを想いながら・・・(きっと)
ここ、アルブレヒトの最後のポーズで幕が下り始めるとすかさず爆裂な拍手が入るのですが、いつも思うのですけれど、そのあと、最後の一音が消える瞬間まで、一秒待てないものかと。拍手入れたくなる気持ちわかるのですが、その最後の一音がとても綺麗なので・・・。

■森川茉央(ヒラリオン)
実は森川さんを個別認識してしっかり見るのはこれが初めて。
長身で日本人離れした立体的な筋肉質の下半身のラインがとても綺麗。
お髭に帽子ではありますが、ちょっと浅野忠信に似た雰囲気のあるステキなヒラリオン。
一幕、木村さんのご指導あってか、ジゼルのことを想いながら仕留めた獲物をドアに掛けてプレゼント・・のところの演技も丁寧。リップ音付きの投げキッスとか、アルブレヒトを怪しむところとか、明確な演技。
2幕で逃げようとしても逃げられず、踊っても踊ってもウィリたちに情け容赦なく踊らされて息も絶え絶え・・・の場面の演技も迫力があって観ごたえがありました。



あと、特筆すべきは2幕の東京バレエ団自慢のコールド。
両サイドからセンターに向かってアラベスクで進んでいくところが揃っていてとても迫力があり、ここ、何度も拍手が起こっていましたね^^

全体にジゼルの役作りがザハロワの個性に従って一幕と2幕のコントラストでそれぞれに見せるというよりはじわじわと2幕に向けてだんだんと盛り上がっていき、2幕の静謐な中での見せ場で心高ぶる、という流れでしたので、好き嫌いはあるかもしれませんが、(実際、こんな良席でありながら一幕寝落ちしたところがありますxx)当代きっての美男美女の旬を楽しむ「ジゼル」、満足な舞台だったと思います





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