北岳山麓合唱団

ソウルジャパンクラブ(SJC)の男声合唱団です。毎週火曜日、東部二村洞で韓国の歌と日本の歌を練習しています。

韓国の秋の風物詩。エゴマのお話

2015年10月18日 22時46分34秒 | 韓国

韓国はもうすぐ秋の盛り。紅葉のシーズンです。昨日、自転車で春川という地方都市まで足をのばしたのですが、期待していた紅葉はまだ時期尚早と言う感じ。ただ、あちこちでエゴマ(荏胡麻、들깨)の収穫風景を見ることが出来ました。

エゴマ、といっても、韓国に住んでいる方を含め、ほとんどの方はよく分らないと思うのですが、実はこのエゴマ、韓国人の食文化を語る上で欠かせない植物です。まずは真夏の姿から見てみましょう。

韓国にお住まいの方はもうお分かりですね。初めて韓国に来た日本人がシソの葉と間違えて食べてしまうあの葉っぱ(깻잎)です。

同じシソ科に属する植物でシソの親戚と言えるのですが、シソとは似てもつかない独特の香りがあり、在韓〇十年の私もつい最近まで食べられませんでした。

ちなみに韓国の食卓でシソの葉を見ることはまずないのですが、河東マウル(村)という李氏朝鮮時代の伝統家屋の村を訪問した際、家々の壁際に群生しているシソを見て、驚いた記憶があります。

エゴマの苗。ぱっと見はただの雑草ですが、注意すると、ソウルの街角でもあちこちでも見ることができます。

夏が過ぎ10月になるとエゴマの脱穀です。まず下の写真のようにエゴマを乾燥させます。しおれてしまい、真夏の青々とした姿が夢のようですが、実のところ、エゴマは枯れてからが黄金の季節なのです。

次に写真のような殻竿(도리깨,くるり棒)でエゴマを叩いて、実を振い落とします。(先端のフォークのような部分がくるくる回るようになっています。)

最後は、その昔火かきに使ったという棒(부지깽이)で叩いて、最後の一粒までエゴマの実をていねいに払い落とします。

脱穀作業が終わったところ。葉っぱや小枝が混じっているので、ふるいにかけて、エゴマの実だけをより分けます。このより分け作業がけっこう大変らしく、昔から風力を利用した唐箕(とうみ,풍구)という農機具が使われました。

かって使用されていた手回し式の唐箕と手回し/モーター兼用の現代の唐箕。動力は違いますが、基本的な構造は同じです。

 

 

きれいに収穫されたエゴマの実。上の写真でお分かりのように、お百姓さんの大変な人手がかかっています。エゴマは死んでも実を残す、というところでしょうか?

食べ方は色々です。まずは何と言ってもエゴマ油(들기름)ですね。エゴマ油には健康に良いとされるα-リノレン酸が非常に多く含まれているそうです。ゴマ油(참기름。チャムキルム。真の油という意味)と並んで、韓国の食卓に欠かせないもの。ヨーロッパにオリーブ油があるように、韓国にはゴマ油がある!ただ、そうは言うものの、お店に並ぶ「真の油」のほとんどは輸入もので、純粋な韓国産100%のホンモノは非常に高価です。

ちなみに「真」という漢字を韓国の固有語で書くと、「참(チャム)」です。例えば、真実(まこと)の愛は韓国語で、「참사랑」ですね。「露」(つゆ)という漢字の韓国固有語は「이슬(イスル)」です。じゃあ、「真露(ジンロ)」を固有語で書くと?そう、チャミスル(참이슬)ですね。

エゴマの実をそのまますりつぶして、クッパにふりかけたり......

ナムルに和えてみたり、食べ方は色々です。

意外なところで、ソウル在住の方にもあまり知られていませんが、私のイチオシはこれ。エゴマのクッパ(들깻국)です。

胃もたれすることなく、独特の香ばしさがあり、なにより非常な美味です。自然食品でソウル市内ではなかなかお目にかかれないのですが、お勧めの店があるので、ご賞味されたい方は私にご一報ください。

ところで、実をふるい落とした後のエゴマの茎はどうなるのでしょう。燃料にする?肥料にする?粗大ゴミとして引き取ってもらう?この茎ですが、最後は農園や果樹園に送られ、大切な土壌を冬場の乾燥や凍結から守るために使われます。世は健康ブーム。スーパーに行くと、有機栽培と銘打った野菜や果物がたくさん売られていますね。その有機栽培の基本となるのが土壌作りです。ちょっと見てみましょう。

まずは根元に落ち葉(낙엽)を敷き詰めます。街路樹としておなじみのプラタナスの葉を使うところもあるのですが、プラタナスは行き交う車の排気ガスや都市の煤煙に汚染されていて、有機栽培にはふさわしくないという声もあるそうです。

その上から、エゴマの茎を敷きます。

最後はアシ(갈대)をかぶせて終わり。後は微生物の力で豊かな土壌が作られるというわけです。(注:実際の有機栽培はもっと複雑で、アシをかぶせて放置すればよいというものではありません。)

こうして、やがて春を迎え、エゴマは再び土に帰っていきます。どうでしたか?エゴマをめぐる長旅もこれでおしまい。ハウス栽培が普及したせいか?今は365日いつでも新鮮なエゴマの葉を賞味することができます。我々の日常生活のなかから、どんどん季節感が失われているわけですが、自転車旅行で立ち寄った地方のあちこちでエゴマの収穫を見たので、ブログで取り上げてみました。

 

《おまけ画像》

見事に紅葉した大ケヤキ。余談ですが、韓国の街中でこのような大木を見かけることはまずありません。都市化から樹木を守る上で、日本の神社やお寺が果たした役割を軽視してはいけないと思います。

 最後は私の近影を一つ。運動不足を解消するために自転車を始めました。


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