センター試験があった先週の日曜日。私は近所の高校で学生たちに混じって、TOEICを受けていました。TOEIC受験は実に10年ぶり。もちろん、韓国での受験は初めてです。今日は、韓国でのTOEIC受験体験や韓国の高校を通して、あまり日本人に知られていない韓国をご紹介しようと思います。
受験の動機ですか....。?特にありません(笑)ハングル漬けの毎日への刺激ですかねえ....。たまたま、大使館の方から、韓国での受験体験談を聞き、「よしっ!僕もチャレンジしてみよう!」と決心しました。
韓国の学生にとって、TOEICは運転免許証のようなもの。入社時にTOEICのスコアを要求されます。語学留学する人も、日本とは比較にならないくらい多く、大手企業への就職には800点以上が当たり前という雰囲気。我々もうかうかしていられません。
1.受験の申し込み
受験はインターネットで申し込みます。試験は年間15回。午前の部と午後の部がありますから、最大で年間30回(!)の受験が可能です。マークシートの試験には慣れも重要ですから、年に30回も受験すると、それなりに点数アップが期待できるでしょう。
2.受験会場
私が受験したのは、京畿(キョンギ)高等学校という公立高校です。大韓帝国時代の1900年(明治33年)創立の伝統校で、おそらく韓国一、有名な高校ではないかと思います。
京畿高等の校門で。ご覧のとおり、立派な作りです。写真にはベンツが写っていますが、これは偶然ではありません。
校門をくぐると、まず最初に目に飛び込んでくるのがこの碑文。校訓が漢字で横書きされています。
ブログで理屈っぽい話をするのは気が引けるのですが、(せっかくの機会ですから)韓国で最も有名なこの高校の、校訓にこめられた意味を訳出しておきたいと思います。
自由人:自由は他人の拘束と受けないものとして尊きものであり、さらに身体的、精神的に自由な状態において開かれた心を持っているときに、創意力が高度に発揮されます。従って、自由を愛し、自らも自由であろうとする自由人の姿勢は、知識を基盤とする社会において、創造的知識を創出するときの基本となります。
文化人:民主社会の成熟した市民として、個人的に生活の質を向上させるのはもちろん、社会全般の文化水準を先導するために、完熟した人格の上に自らの資質と徳性を磨き上げ、高い文化的眼識と教養を兼ね備えた文化人の姿勢をもつべきでしょう。
平和人:人種と民族と理念を超越し、弘益人間(韓国の建国理念とされるキーワード。広く人類社会を益する、という意味です。)の理念のもと、人間の尊厳性を自覚し、世界市民としての資質を持ち、人類の共存と繁栄のために邁進し、正しい歴史認識をもとに、未来志向的な眼識と平和を愛する心をもった平和人になるべきでしょう。
お疲れ様でした!ほとんどの人は、「長ったらしい文章だなあ...」と思われたと思います。(最近は変わりつつありますが)「本当の韓国社会」では、このような理念的な文章を目にすることが多く、戦後の乾いた(hard-boiled)文章表現に慣らされた日本人の目には、言葉遊びをしているように見えるほどです。
とにかく広い、京畿高等の敷地。江南(カンナム)の一等地にもかかわらず、緑に囲まれていて、まるで、大学のキャンパスのようです。
この日の受験者一覧。外国人は私を含めて3名。日本人は私一人でした。
廊下で見た、生徒の作品集。デッサン力を感じます。江南は韓国の教育一等地。幼児の頃から、楽器、絵、英語と「ケイコとマナブ」一色の生活を送るのですが、その成果でしょうか?習い事の月謝はトータルで10万円ほど。両親の負担は半端ではありません!
受験の際の座席表。C5が私の座席です。
教室の風景。私が高校生の頃とあまり変わらないような気がします。最近の徳島の高校はどうですか?日本と韓国の高校の違いをいくつか挙げてみると....。
1.あくまで一般論ですが、韓国では公立私立を問わず、中学、高校は男女別学が基本です。
2.教室の正面には必ず国旗(大極旗)が掲げられています。
3.進学校では、正規の授業が終わった後も、夜10~11時頃まで学校に残って、自主学習(韓国語でいう、自律学習,자율학습)が行われます。その間、両親は運動場にクルマを停めて、子供が出てくるのを待ちます。生徒の負担もさることながら、先生方の負担も大変なものです。
4.日本同様、公立高校には学区制があります。日本と違うのは、子供を名門公立高校に入学させるために、本当に引っ越したという話をごく普通に聞くことです。私は複数の韓国人から「孟母三遷(맹모삼천)」の逸話を聞かされましたが、教育熱の高い学区に移転する教育ママ(韓国語では熱誠ママ,열성엄마)が後を絶ちません。
時間割表。内容は私が高校生の頃とほぼ同じですが、創意的体験活動(創体)という時間が週2回、美術が週3回もあります。
創意的体験活動とは、(一概に言うのは難しいのですが)1.自主的に行う何らかの活動(生徒会等)、2.サークル活動、3.奉仕活動、4.進路活動(自分の進路を考える活動)で、重要なのは、これが大学入試の加算点になるということです。日本でも、奉仕活動や部活動で顕著な実績があるとか、何か他人にはない、特技がある、等の理由で大学に入学できる制度があると聞いていますが、どうでしょうか?
試験の前の注意書き。
1.試験中に携帯電話(電子機器)の所持が摘発→試験無効
2.試験中に携帯電話(電子機器)のベル(振動)が鳴った→試験無効
3.試験後、答案マーキング摘発→試験無効
携帯電話を使った不正が後を絶たず、受験者は電源を切って、付箋に名前を記入し、監督官に提出しなければいけません。
解答用紙を見て、驚いたのは、個人情報に関する質問事項の多さ。まず、氏名の記載覧。最大で4文字しか入力できません。外国人はどうすれば良いのでしょう!あと、職業の記載はともかく、役職の記載覧があったことです。年収の記載覧は....さすがにありませんでした。
TOEICの試験を受けた経験がある人はお分かりでしょうが、Readingはとにかく時間との戦いです。私は時間配分に失敗して、最後の数問は問題文を読むことすらできませんでした。
人生の折り返し点をターンした私ですが、人生の前半戦で達成できなかった重要課題がまだ、いくつか残っています。若い頃のライフプランでは、30代の後半ごろに英語ペラペラの国際人になっているはずでしたが、現実は、英語ではなく、韓国語でした....。
何とか、後半戦で英語を完全にマスターして、日本語、韓国語、英語を5秒間隔でジャグリングできるようになりたいです。それから、余力があれば中国語も....。私のパソコンのキーボードは3ヶ国語でのチャンポン入力が可能ですが、これに中国語が加わると、いったいどうなるのでしょう!想像するだけでワクワクします。
京畿(キョンギ)高等学校からの景色。奥に見えるのは、江南の億ション。(ちなみに、江南エリアでは億ションが常識です。)手前に見えるの資産家の「お屋敷」です。