10月28日YAMAHAコンサートで演奏を予定している韓国語混声曲 「별」 と 「비목」 について、
韓国在住ウン十年の前団長Tさんに曲解説をいただきましたので、ご紹介いたします。
「별」
바람이 서늘도 하여 뜰앞에 나섯더니
風がひんやりしたりするから 庭の前に出ていったら
서산(西山) 머리에 하늘은 구름을 벗어나고
西の山の上空に 空は 雲を抜け出して
산뜻한 초사흘 달이 별함께 나오더라
清らかな三日月が 星といっしょに出ていたよ
달은 넘어가고 별만 서로 반짝인다.
月は沈み 星だけが 一緒にきらめいている。
저 별은 뉘 별이며 내 별 또 어느게뇨
あの星は誰の星で 私の星はまたどの星なのか
잠자코 홀로 서서 별을 헤어 보노라
黙然と 独りで 立って 星を彼方に見る。
(曲目解説)
この曲を作詞したイービョンギ(李秉岐, 1891~1968)は、全羅北道益山市生まれの詩人、国文学者です。
日本の植民地であった1926年に「時調(シジョ)とはなにか?」を著し、現代的感覚にあふれた多くの時調(韓国の伝統的定型詩)を発表し、
独立後は韓国古典文学の現代語訳で多くの功績を遺しました。
ビョル(星)はそんな李秉岐の代表作で、韓国の国語教科書にも掲載され、現代時調として広く知られています。
作曲を手掛けたチョ・ソンウン氏は、新進の女性作曲家で、数多くの讃美歌や合唱曲の作曲で知られていますが、
作曲界の長老、李秀仁(イ・スイン)氏による歌曲バージョンもあります。
韓国人の大多数が「ビョル」と聞いて、思い浮かべるのは李秀仁版だと思いますが、機会があれば、聴き比べてみてください。
(参考)
チョ・ソンウン作曲Version
https://www.youtube.com/watch?v=sOZw9cLvylE
イ・スイン作曲Version
https://www.youtube.com/watch?v=YXs_lmZT2Lc
「비목」
초연(硝煙)이 쓸고 간 깊은 계곡(渓谷) 깊은 계곡(渓谷) 양지(陽地) 녘에
硝煙が 吹き抜けていった 深い渓谷の 深い渓谷の 陽だまりに
비바람 긴 세월(歳月)로 이름 모를, 이름 모를 비목(碑木)이여
雨風の 長い歳月で 名も知れぬ、 名も知れぬ 碑木よ
먼 고향(故郷) 초동(初等) 친구(親舊) 두고 온 하늘가 그리워
遠い故郷の 子供の頃の友達を 残してきた 空が 懐かしく
마디마디 이끼 되어 맺혔네
ふしぶしまで 苔むしてきたね
궁노루 산울림 달빛 타고 달빛 타고 흐르는 밤
山鹿の鳴き声が 月明りに乗って 月明り乗って 響き渡る夜
홀로 선 적막감(寂寞感)에 울어 지친 울어 지친 비목(碑木)이여
独り立つ 寂寞感に 泣き疲れた 泣き疲れた 碑木よ
그 옛날 천진(天真)스런 추억(追憶)은 애달퍼
その在りし日の あどけない思い出は やるせない。
서러움 알알이 돌이 되어 쌓였네
やるせない悲しみ 一つ一つが 石になって 重なったんだね。
(曲目解説)
비목(碑木)も作曲家によって2つのバージョンがあります。
一つは張一男(チャン イルナム)によって作曲され、今なお韓国で広く歌われている韓国歌曲のスタンダードナンバーである歌曲「碑木」。
おそらく、年配の韓国人が「碑木」と聞いて、真っ先に思い浮かべるのは張一男版の歌曲であると思います。
もう一つが、新進の女性作曲家、チョーソンウン氏が作曲した合唱曲版の碑木です。
曲の雰囲気は歌曲版とかなり異なりますが、こちらも新しい世代の「碑木」として、コンサート等で取り上げられる機会が増えているようです。
この曲を作詞した韓明熙氏(1939-)は、いわゆるプロの作詞家ではなく、音楽番組担当のプロデューサーでした。
兵役時代に見つけた無名戦士の墓標の記憶をもとに一晩で書き上げたそうですが、忘れ去られていく朝鮮戦争の思い出、名前も知れぬ無名戦士。
故郷への思い。こういったものが、叙情豊かに描かれています。
韓明熙氏はご自身が手掛けた歌曲番組で、数多くの現代歌曲をプロデュースしており、そのいくつかは韓国歌曲のスタンダードナンバーとして
今でも広く歌い継がれています。
(参考)
チョ・ソンウン作曲Version
https://www.youtube.com/watch?v=tfNmbch1SpE
チャン・イルナム作曲Version
https://www.youtube.com/watch?v=ew0G09K1Ix4
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