【質問】
 道路交通法の改正で、糖尿病患者やてんかん患者に対する規制が強化されたと聞きました。患者が交通事故を起こした場合、治療に当たる医師や薬を交付した薬剤師も責任を負うことになるのでしょうか。(40代女性)

【回答】
法的責任が生じる可能性はある

回答者 ◎ 小林 郁夫(小林法律事務所 [東京都千代田区] 弁護士)


 

 2013年6月に公布された改正道路交通法が、14年6月1日から施行されました。この改正では、運転免許の取得時と更新時の「一定の病気」の症状に関する質問制度と、虚偽回答に対する罰則が整備されました。

 ここでいう「一定の病気」は、道路交通法施行令で定められており、統合失調症(自動車の安全な運転に必要な能力を欠く恐れがある症状がないものを除く)、てんかん(発作が再発する恐れがないもの、発作が再発しても意識障害・運動障害がもたらされないもの、睡眠中に限り発作が再発するものを除く)、再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気で発作が再発する恐れがあるもの)、無自覚性の低血糖症(人為的に血糖を調節できるものを除く)、双極性障害、そして重度の眠気の症状を呈する睡眠障害です。

 糖尿病では、治療薬の服用や注射などにより低血糖を起こし、意識障害をもたらす可能性があることは知られています。糖尿病患者の治療に当たる医師や、糖尿病治療薬を交付する薬剤師は、低血糖の可能性、服用から低血糖に至るまでの時間、低血糖になる前に糖分などを摂取することなどを患者に対して伝える必要があります。

 また患者の病状と職業によっては、運転や危険な仕事を回避するよう注意を喚起することが必要です。同様に、無自覚性の低血糖症、てんかん、統合失調症などの患者についても、それぞれ状態に応じ対応すべきです。

 糖尿病患者に関する過去の判例では、血糖管理を怠って自動車を運転し、事故を起こした患者の責任が認められています。自動車を運転する糖尿病患者は、自己の血糖を管理する義務があるのです。

 例えば、水戸地方裁判所の12年11月6日判決は、血糖測定後インスリンを注射したが、食事を取らなかったために低血糖の意識障害に陥り、交通事故を発生させた患者に禁固6年を言い渡しました。また東京地方裁判所の13年3月7日判決は、1型糖尿病による無自覚性低血糖でもうろうとした状態で起こした事故について、運転者の事故時の責任能力を否定しましたが、血糖管理義務を怠ったという理由で損害賠償義務を認めました。

 一方で、事故を起こした患者の主治医や、患者に糖尿病治療薬を交付した薬剤師の責任を追及している判例は、今のところ見当たりませんが、今後は法的責任が生じる可能性はあります。

 道路交通法は、「何人も、第1項の規定に違反して車両を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない」(第65条第3項)と規定し、運転者に対する酒類提供を禁止しています。

 もし、医師、薬剤師を酒類提供者と同じ立場であると考えるなら、糖尿病やてんかんの患者が運転する際の意識障害を防ぐ責任が生じます。つまり、意識障害の可能性がある患者に対し予防法や対策を充分に説明して、事故を回避させなければなりません。

 意識障害を生じる可能性のある疾患の患者に対する医師や薬剤師の説明が不十分だった場合や、全く説明をしなかった場合、患者の起こした事故による損害を賠償する責任が発生することも考えられます。

 

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私も、あの「御堂筋の低血糖事故」の時、主治医はなーにやっとったんじゃ!!と思いましたもん。

患者教育こそ、DM治療の第一歩。

怖がらせず、甘くみさせないで欲しいです。

でも、一番悪いのは、運転者ですけどね。

 

まいど、不遜な患者でスマンです。m(_ _)m