マグロチャンピオンの料理道場

人気バラエティー番組、TVチャンピオンの「マグロ料理人選手権」優勝者が、本格料理を分かりやすく教えるブログ。

気のつく思いやりのあるサービス(おもてなし)とは?

2008年01月31日 | 中国人の面子とタイ人のマイペンライ
今回は、店でのホールスタッフのサービスの話をしよう。

タイのバンコクから、大連の店に来たばかりの頃は、ホールのスタッフのサービスは本当に最低だったと思う。

前にも話したと思うがホールには日本語の話せるスタッフが一人も居ないような状況で、その当時お店に来ていただいたお客様には、たいへん失礼なことをしたとお詫びの気持ちでいっぱいだ。

日本語のまったく分からないホールスタッフは、お客様が「おしぼり」と言っても分からないし、焼酎のお湯割り用の「お湯」を頼まれたら油を持って行ってしまうような状況だった。これは冗談ではなく本当にあったことだ。

湯(ユゥ) という日本語の発音は中国人には、油(ヨゥ)に聞こえてしまうようで、こういう間違いは他にもたくさんある。

今でもホールのサービスについては頭を悩ませているが、当時の問題点を書いてみると。

1)笑顔が無い

2)お客様から注意されても自分からは謝らない

3)気が付くサービスができない

4)お客様が居ても従業員同士で大きな声で話をする。

5)他の人のことは見て見ぬフリをする。

そもそも、中国人は自分の親兄弟や親戚、そして親友以外は、人をまったく信用しない。

長い間の国内での争いや、他国からの侵略もあり、場合によっては一家親族皆殺しということもあったのだろう。信用できるのは血の繋がった家族だけなのだ。

また、人前で笑うことは、自分を卑下することだと考え、なめられてはいけないと決して笑わない。

そして、他人には無関心で、他の人が悪いことをしていても見て見ぬフリをする場合が多い。

店でもそうだが、お客様からクレームがあって、一人づつ話しを聞くと決まってこう言う。

『俺のミスじゃない!』つまり、自分には関係ないことだと言いたいのだ。

他の人のミスを見かけて、それが明らかに問題になることが分かっていても、決して他人に注意するようなことはしない。

どちらかと言うと、その人がミスをしてくれた方が、自分の株が上がると思っているのだろう。

そして、お客様から何か注意をされたとしても、自分からは謝ることをしない。

自分の親、兄弟にも謝ったことのない連中が、たとえ相手がお客さんであろうと、謝ることは決してないのだ。

そこで、朝礼でホールの女性スタッフ達に、毎日のように同じ話をした。

それは、「自宅に彼氏が来るとしたらどうするか?」という話だ。

『皆さんの家に彼氏が来るとします。その場合に何をしますか?・・・
まずは部屋を綺麗に掃除し、そしてテーブルの上に花を置いて、美味しい料理をつくり、ビールを用意する。
そういう、お客さまを迎え入れる気持ちはレストラン業でもまったく同じです。
良いサービスとは難しいことでは無いのです。彼氏を家に招待する事と同じなのです。』

それを男の私が、たどたどしい中国語で、女性のまねをして、ジェスチャーたっぷりで話すのだから、いつの間にか大爆笑になる。

そして彼女達に話を続ける。

『そう、今の笑顔を忘れないで下さい。』

『そして、その笑顔をお客さんに差し上げて下さい。』

『皆さんは、日本語がまだまだ上手ではないので、お客さんの不満も多いと思います。
でも、たいていのことは、あなた達の笑顔があれば乗り越えられます。大丈夫です。』

朝礼では、何度もこの話をしたが、一度だけでは効果が無い。しかし、続けていくうちに必ずその成果が出てくる。

ちゃんと、笑顔ができるスタッフが出てくるまで、決してあきらめないことだ。

他に、店の社長にホールのサービスや料理で問題があった時には、その場で私を呼んで欲しいとお願いした。

たとえば、ホールスタッフに冷たいビールを頼んだのに、ビールが冷えてなかった場合や、料理への苦情は私が呼ばれて社長から注意を受ける。

すると、店のスタッフは何で店長が注意を受けているのか不思議に思う。

そして、別のスタッフは「人のことは見て見ぬフリをする」連中ばかりだから、決まってこう言う。

「自分のミスじゃない」と。。。

だが、店長の私が社長から注意を受けるということは、彼らにはショックだったようだ。

面子を大切にする彼らが、店長の「面子」を潰してしまったのだ・・・

そして、次の日の朝礼では、昨日どういうことが原因で、社長から注意を受けたかを説明するのだが、こういう一言を添えている。

『俺のミスじゃない=店長のミス』これからは皆で気を付けて欲しいと。。。

これは、お客さんからのクレームも全く同じで、必ず私が最初にお客様のところへ行く。そして失礼があった場合には丁寧に謝る。

こういうことを毎日、毎日、続けているうちに、スタッフのミスが少なくなり、お客さんも増え店の売上げも上がってきている。

叱って教育をするのなら、誰にでもできると思う。

まずは、謝るということを皆の前で見せることが必要だと思う。中国人は謝ることをあまりしないが、皆、同じ人間なのだから、どうしなければならないかは、本当はちゃんと分かっているのだ。

手本さえあれば、必ず良い方向に行くし、彼らの口からも自然に『すみません』の一言が出てくるようになるだろう。

尚、店では私のところに来客があって、お茶を持ってきてくれたり、何か用事を頼んだ時には、スタッフに必ず「ありがとう」と言っている。

一日に、何度も、何度も店のスタッフに「ありがとう」を言う。

調理場では、冷蔵庫の前に人が居て、ドアを開けて物を取る時などには「ごめんね」と必ず言うようにしている。それも、一日に何度も何度も言う。

今では、「ごめんね~↓」と、ちょっとアクセントが下がり調子になるが、皆が言うようになった。

キッチンは狭い場所で、火もあれば、高温の天ぷら油もある。

皆が「ごめんね~↓」と声を掛け合えば、安全性も確保できるし、何より気持ち良く仕事ができる。

気持ちの良い職場環境から、助け合い協力しようという心が生まれる。

そうすれば「ありがとう」「どういたしまして」が店内にあふれてくる。

まずは、何をするにも、「ありがとう」の心が大切だと思う。

「おもてなし」とは「ありがとう」の気持ちが自然に出ることだと思う。。。


















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1 コメント

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サービス (jjken)
2008-02-01 07:17:29
飲食業にて洗練されたサービスというのを理解するのは、かなり難しいのでしょうねー。
やっぱり他の事とも同じで欧米のそれがグローバルスダンダードとなるのでしょうか?
そのお店のその地におけるステータスや、客層で求められるサービス内容も変わってくるでしょうしねー。
例えば、日本食レストランの場合、客層が殆ど日本人の場合は日本と同じサービスレベルを可能な限り提供しないと非常にまずいですよね、やっぱり。
でも、あれなんですかね?例えば、中国にある日本食レストランに、中国人のお客さんが来られて中国式のそっけのないサービスしたりしても、中国人のお客さんは普通に感じるのでしょうかね?それとも、すぐに怒り始めるのでしょうか?ナンダ、日式サービスしろっ!とかって(笑)
私も、仕事とか旅行でかなり中国は以前に行った事あるのですが、殆ど庶民の中国人が行く店に行っていたので、ハナからサービスなどは期待してないというか、それが当たり前と思って行ってましたので、あんまり考えた事なかったですね。まあ、サービス悪いなと思っても、中国だから仕方がないと思ってましたね。

ただ、年々こういう点も経済発展するに従って、外国人との接点が増えるにつれ変わってきてると察しますが。

ここ、タイでも相変わらず洗練されたサービスというのはそんなにあったりしないのですがねー。
あ、普段 屋台ばっかりで食ってるからか!失礼しました(笑)
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