マグロチャンピオンの料理道場

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IRON CHEF Thailand で作った料理(ハマチの塩窯焼き)

2012年10月11日 | IRON CHEF THAILAND
今日のバンコクも朝から曇りで、今にも雨が降りそうなうっとうしい天気だ。

雨季なので雨はしかたがないが、毎日、昼の営業時間の12時頃と、夕方の6時半頃から決まったように大雨となり、道路にあふれた水で洪水となり車も大渋滞となる。

昨夜も大雨だったが、夕方6時から予約のお客様6名のうち、最初のお客さん1名がお店に来たのが6時半で、6名全員が揃ったのが8時半で、2時間後というありさまだ。

さて、雨季のことをタイ語で「パンサー」と言い、また、雨季に入ることを「カオパンサー」と言う。

タイ人はほとんどが仏教徒だが、今年の「カオパンサー」は8月2日・3日で、この日はタイでは法令で酒類の販売はできないことになっている。

もちろん飲食店も例外ではなく「酒類」の販売ができない。

また、「酒類」の販売ができない日は他にもあって、たとえば8月10日の王妃の誕生日や選挙の投票日の前日や王様の誕生日等も「酒類」の販売が禁止されている。

飲食店の中では「居酒屋」等の一部で、こっそり「酒類」の販売をしている店もあるようだが、うちの店は開店日にお坊さんに来てもらい、一緒にお店を開店したこともあり、法令はしっかり守っている。

海外で商売をさせてもらっている以上、その国の法令を守るのは当たり前のことだと思う。

さて、「カオパンサー」(入安居/いりあんご)だが、10月30日の「オークパンサー」(出安祭)まで約3か月続くのだが、この間はお坊さんは寺に閉じこもり辛い修行を積まなければならないようで、外出はしてもよいが、夜は必ず寺に戻り外泊は禁止されている。

それを思ってかタイ人の中には、この3か月間はお酒を断つ人が多く、タイ政府も禁酒を促す広報活動を積極的に展開する。

何よりも仏教を大切にしているタイ人らしいと思う。

また、この期間、お坊さんはお寺にこもるがそれには理由があるようだ。

釈迦の教えでは、あらゆる生き物の殺傷を認めなかったが、特に雨の多いこの時期は新しい生命が育まれる時期でもあり、お坊さんは外出して小さな虫や草花を殺してしまわないよう、お寺にこもって極力外出を避けるようだ。

尚、タイでは10月15日から9日間「キンチェ」という「精進料理」しか食べない齋食の行事が行われる。

もともと、タイ南部の中華系の民族のお祭りだったようだが、今ではタイ族にも広まり、この一週間はバンコクでも肉や魚は食べず、野菜しか食べない人が増えている。

ちなみに、この期間にベジタリアン料理を提供するレストランには「齋」という字が掲げられるので気がついた人もいるだろう。

さて、料理の話に入ろう。

今回も「IRON CHEF」に出場した時に作った料理で、「ハマチの塩釜焼き」を紹介しよう。

「塩釜焼き」と言えば「鯛の塩釜焼き」を思い浮かべる人が多いと思うが、鯛は高級魚でもあり、結婚式など祝いの場や宴席などで、鏡開きのように木づちで割って開運を願うようで、「塩釜焼き」は大変喜ばれているようだ。

その塩釜焼きを一人前づつ小さくしたのがこの「ハマチの塩釜焼き」だ。

昆布の上に海老と椎茸を乗せ、軽く塩を降ってから昆布で包むようにし、その上からたっぷりの塩を乗せてから、じっくりと蒸し焼きにするが、昆布〆されたハマチが塩窯で焼き上げることで芯までゆっくりと火が通る為、とってもジューシーに焼き上がる。

簡単に作り方を書いてみよう。

◆ハマチの塩窯焼きの作り方

<材料>塩釜2個分

ハマチの切り身       4切れ   
海老(大きなサイズの物)  2尾 
椎茸              4枚         

塩(塩釜用)           1㎏     
卵白              1個分

昆布               適量
塩(味付け用)今回は伊豆大島の「海の精」を使用。

ライム             1個

<作り方>
①昆布をさっと水で洗う。
②昆布の上にハマチを乗せ、昆布で包み「昆布締め」にし、冷蔵庫でに1時間位入れておく。
③卵白を泡立てる。(ケーキ作り等に使う電動ホイッパーを使うと早い)
④ボウルに塩を入れて、①の卵白を加えて混ぜ合わせる。
⑤冷蔵庫から昆布締めしたハマチを取り出し、海老と椎茸を乗せて、軽く塩(海の精)を振る。
⑥昆布で包むように巻き、上から④の塩をかぶせる。
⑦220℃のオーブンで約40分かけて焼き上げる。
⑧焼き上がったらライムと木づちを添える。

分かりやすいように写真を貼りつけておこう。


ハマチの切り身を昆布〆して、上に海老と椎茸をのせ、塩(海の精)を軽く振る。


焼き上がりの写真(ライム)と木づちを添える。


木づちで塩釜を割る。


塩釜を開く


お好みでライムを絞って食べる。

さて、この「塩釜焼き」という調理方だが、由来を調べてみると戦国時代までさかのぼるらしい。
当時は今のようにチルドの物流などはなく、豊臣秀吉が朝鮮出兵の際、玄界灘の鯛を大阪城に居る母親に届ける際に、旨みを損なわないように鯛を塩で包んで焼いたのが塩釜焼きの始まりとされている。

また、塩は当時はとても貴重品で、また人間の生命維持にも欠かせないものだが、上杉謙信が武田信玄に塩を送って「義」の精神を後の世に伝えている。

ところで、この「塩釜焼き」によく似た料理が中国にもある。

叫化雞(ジアオホワジー)という料理だが、叫化 (ジアオホワ)は「乞食」、雞(ジー)は鶏という意味なので、日本では一般に「乞食鶏」と呼ばれている料理だ。

この料理は鶏肉を蓮の葉で包んでから、塩の変わりに「泥」でさらに包んで蒸し焼きにするものだが、塩釜焼きと同じように蒸し焼きにすることで、肉が柔らかくなり、また、味が逃げずに濃厚なうまみに蓮の香りも加わって風味豊かな味になる。

この料理の「乞食鶏」という名前がとても面白いが、乞食が偶然(盗んだという説もある。)に鶏肉を手に入れたが鍋など何も調理器具がなかったので、しかたなく土の中に埋めてその上でたき火をして、後で土を掘って食べてみたところ驚くほど美味しかったという話だが、この話はなんとなくインチキっぽいような気もする。

この「乞食鶏」という料理は「杭州」で実際に食べたことがあるが、小さなサイズの鶏肉を使った「叫化童鶏」で、蒸し焼きにすることで脂分が適度に抜けて、また、蓮の葉の香と八角の香がしてとても美味しく、杭州料理にはあっさり味が多いので日本人にも合うのではないかと思う。

さて、次回は「ハマチのセルクル寿司とカルパッチョ」を紹介しよう。

























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