マグロチャンピオンの料理道場

人気バラエティー番組、TVチャンピオンの「マグロ料理人選手権」優勝者が、本格料理を分かりやすく教えるブログ。

IRON CHEF Thailand で作った料理(ハマチの笹焼きとエスプーマ酢味噌)

2012年10月10日 | IRON CHEF THAILAND
バンコクは今、雨季の真っただ中で、毎日、毎日、大雨の日ばかりだが、この雨では道路が洪水になってしまいお客様も少ないので、お客さんが少ない日には早くアパートに戻り、IRON CHEF Thailand に出場した時に作った料理を紹介して行こう。

今回は「ハマチの笹焼き」を紹介するが、「笹焼き」という料理では鮎を使った「鮎の笹焼き」がよく知られている。

まず、鮎に少量の塩を振って炭火焼きにしてから、乾燥させた笹に真っ赤に焼けた炭を入れ、煙りを立たせて軽く燻製にするのだが、笹の煙が香り立ち、とっても清々しい香が立ち込める。

笹の葉には殺菌作用もあるので、笹の葉は水で洗ってから乾燥させておけば、安心して食品に使うことも可能だ。

下の写真が今回「IRON CHEF」の為に考えて、実際にキッチンスタジアムで作った料理を再現したものだが、籠の中の笹の中央部にはコンロが置いてあり、真っ赤に焼けた炭が入っている。



◆ハマチの笹焼きの作り方。
<材料>
ハマチ
季節の野菜(エリンギ、椎茸、パプリカ、しし唐)など
オリーブオイル、塩、コショー

<作り方>
①ハマチとお好みの野菜を一口大に切り串に刺し、軽く塩、コショーを振る。
②オリーブオイルを塗りながらサラマンダーで焼く。(フライパンでもいいだろう。)
③笹の中に赤く焼けた炭を入れて煙りが出てきたら、②のハマチと野菜をのせる。

さて、この料理をどんなタレ(ソース)で食べるのか、ずいずんといろいろなタレを作ってみた。
ポン酢ともみじおろしに浅葱の小口切りはもちろん相性がいい。

意外なところではトマトを使った少し辛めの味付けの「サルサソース」もピッタリだが、今回は「エスプーマ」を使ったソースを幾つも試してみた。

和食にエスプーマ?と思う人も多いと思うが、自分でも今回の試作はとっても勉強になった。

ここで、「エスプーマ」のことをよく知らない人もいると思うので、「エスプーマ」と世界一予約のとれないレストランとして最近では映画にもなった、スペインの「エル・ブリ」とこの店のシェフのフェラン・アドリア氏の話を少ししよう。


(写真はエスプーマと、中に充填する亜酸化窒素ガス(N2O)のボンベ)

世界一予約の取れないとレストランとして知られている「エル・ブリ」はスペインのバルセロナから車で約2時間も掛かる「ロセス」という海辺の町にあり、しかも春から夏にかけて1年の半分しか営業しないレストランで、全45席しかないのに年間200万件の予約申し込みがあるそうだ。

では、冬場の休みの間は何をしているのかといえば、新しい料理の研究に多くの時間を費やしているようで、この店のシェフのフェラン・アドリア氏は100年に一人の天才シェフとも言われている。

そして、彼が食品に亜酸化窒素ガス(N2O)を添加し空気のように軽い泡の料理を生み出したことから世界中のシェフがこの料理を取り入れるようになった。

エスプーマ(ESPUMA)とはスペイン語で「泡」という意味だが、この料理に使用される調理器具(ボンベ)や調理法もエスプーマと呼ばれることが多い。

また、フェラン・アドリア氏の料理には伝統的な料理を新しい素材や調理技法で独創的にアレンジしたものが多く、ヌエバ・コシーナ(新スペイン料理)又はアルタ・コシーナとも呼ばれている。

今回、このエスプーマを使って、幾つもの「泡のソース」を試作したが、食材に絡みやすく、また泡の食感がやさしい味となり、たとえば、「天つゆ」等をエスプーマで泡にしても楽しいだろうし、日本料理にも今後はエスプーマ料理が増えるのではないかと思う。

ただし、今回は泡のソースを作るのにエスプーマを使ったが、最近流行のヌエバ・コシーナ(新スペイン料理)のような化学実験みたいな料理には自分は否定的だ。

以前、とても変わった料理を見掛けたことがあるが、「鯛」を蒸してからペースト状にしてエスプーマで(泡状)にして、同じく 「ウニ」をペースト状にしてからエスプーマで(泡状)にして、目玉焼きそっくりの料理に仕立ててあったが、白身の部分が「鯛」で黄身の部分が「ウニ」でできていた。

でも、高級な「鯛」と「ウニ」という食材を使用して、「目玉焼き」そっくりの料理を作ることに何の意味があるのだろうか。

前にも書いたと思うが「魚は骨付き」のまま料理した方が旨いし、鶏肉も皮と一緒に食べるから旨いのだ。

さて、また話が長くなってしまったので、「エスプーマ」の話に戻すが、今回は幾つもの泡のタレを試作して、最終的に「エスプーマ酢味噌」を「ハマチの笹焼き」のソースにすることにした。

脂が乗ったハマチに泡の酢味噌はとても相性がよく、また、焼いたハマチや野菜に絡みやすくとても優しい味のソースになったと思う。

尚、エスプーマ酢味噌には、泡にする為に粘度を上げねばならず、最初は「粉ゼラチン」を試してみたが、「板ゼラチン」の方が透明度があるので、「板ゼラチン」(下の写真)をお勧めする。



<エスプーマ酢味噌の材料>
白みそ  200g
卵の黄身 3個分
酒    100CC
砂糖    100g
酢    100CC
出汁   200CC
ゼラチン   7g

<作り方>
①白みそ、卵の黄身、酒、砂糖を鍋に入れ弱火に掛けて5分程練り合わせ冷めたら酢を加える。
②出汁を鍋に入れ弱火に掛けてゼラチンを溶かして冷ます。
③全部を混ぜ合わせ、冷めて固まってきたらエスプーマのボトルに入れる。

さて、こうして「エスプーマ酢味噌」も出来上がり、「ハマチの笹焼き」に添えてみよう。



「エスプーマ」という調理法を考案した「エル・ブリ」のフェラン・アドリア氏は素晴らしい料理人だと思うし、頭の下がる思いだ。

ただし、残念ながら「エル・ブリ」は昨年の7月で閉店してしまったようだ。

今後のフェラン・アドリア氏は財団を設立して「料理の研究と料理の発展」に力を入れていくそうだが、料理人にとってお店とお客さんは掛け替えのないものなので、少し残念なような気もする。

さて、次回は「ハマチの塩窯焼き」を紹介することにしよう。。。







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