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マグロチャンピオンの料理道場

人気バラエティー番組、TVチャンピオンの「マグロ料理人選手権」優勝者が、本格料理を分かりやすく教えるブログ。

豚肉になぜ「痩肉精」を使うのか?

2011年07月31日 | 中国 食の安全性
先日、(お節介じいさん)さんからコメントをいただき、ありがとう。

相原茂先生のエッセイは、今週号の情報誌(フリーペーパー)に続編が載っていたが、今回は「対不起」(ごめんなさい)は、「ごめんね、デブチン」と覚えて、人に謝る場面では「デブチン」といえば大丈夫だと書いてあった。「ドゥイブチー」が「デブチン」で通じるの?と思って、早速、店の若いホールスタッフ相手に使ってみようかと考えたのだが、うちのスタッフは皆、日本語を勉強しているので、「デブ」とか「ブス」とか「バカ」とかの日本語が分かる連中が多いので、今回は諦めた。中国人の女を怒らすと後が怖い。

さて、今回は豚肉になぜ「痩肉精」を使うのか?その話をしたいと思う。

まず、「痩肉精」という呼び名だが、この名前だけだとカロリーオーバーの女性の「ダイエット薬」のように聞こえる。

中国語では「痩肉」というのは脂身が少ない赤身肉という意味でバラ肉などは肥肉という。ちなみに「味の素」のことは「味精」というので「痩肉精」は「肉を赤くする素」のような意味だろう。

さて、この「痩肉精」だが、正式には「塩酸クレンブテロール」という、気管支を広げる「ぜんそく」の薬で、これを豚の飼料に混ぜて食べさせると赤身が増えて肉の色も良くなる。

中国では肉と言ったら「豚肉」のことを指すが、特に色の赤い肉が高級とされ好まれるので、この薬は中国の養豚業者にあっという間に広がった。

しかし、この薬を使用した豚肉を人間が摂取すると、手足の震えや発熱などの食中毒症状の他に動悸やめまい、呼吸困難などが起き、最悪の場合は死にいたることもある。

実は、この薬の豚への使用を最初に考案したのは中国人ではなくアメリカの企業だ。

1980年代にアメリカのある企業で、若い研究員が誤って、この薬を豚の餌に使用したことで、その効果が発見されたそうだが、この説にはなぜが疑問を感じる。

話が少しそれるが、日本酒は以前は「どぶろく」のように濁った酒をそのまま飲んでいた。

江戸時代に、ある酒屋の番頭が婿養子を反対された腹いせに酒蔵の仕込み桶に炭を入れて夜逃げしてしまい、せっかく発酵した酒をダメにされてしまった。

困りはてた酒屋の店主がためしに真っ黒になってしまった酒をろ過すると透明な清酒ができたという逸話である。

この日本酒の話には「フフ~ん」と思える説得力があるが、誤って豚の飼料に「塩酸クレンブテロール」を入れるってことはあるのだろうか?「ぜんそくの豚」ってどう鳴くのだろうか。

さて、豚の飼料に「塩酸クレンブテロール」を誤って入れて大儲けしたアメリカの企業だが、やがて思いがけない事件が起こることになる。

最初の事件は1990年3月、スペインで43軒の家庭の135人が「牛レバースープ」を食べて集団食中毒にかかった。その後、3月から7月までの間にスペインでは125件もの同じような中毒事件が起きた。
そして、被害はさらにイタリア、フランスにも広がった。

スペインでの中毒事件から2年後、欧米の科学者達が「肉を赤くする薬」の危険性に対応し始めた頃、中国の学者達が「我々の科学技術の成果」として、「肉を赤くする薬」を中国の飼料 加工工場や養豚業者に広めていった。しかし、この薬の効果を紹介しただけで、この薬の危険性や欧米では既に使用禁止になったことは黙っていた。

中国で最初に肉赤身化剤の危険性が報道されたのは1998年で、香港で中国産の豚肉を食べた17名の中毒事件が起こり各メディアで大きく報道された。

1997年3月、中国農業部(農業を統括する役所)は畜産における「肉を赤くする薬」使用禁止令を出したが、未だに、この薬を使用した食中毒事件は後を絶たない状況だ。

最近の報道によれば、「塩酸クレンブテロール」という「塩酸ラクトパミン」に構造が類似した薬をインターネットで販売したとして「武漢」の飼料会社が摘発されている。

この「塩酸ラクトパミン」は動物での残留性が低いので、人や動物に対する作用の仕方や活性の強さが「塩酸クレンブテロール」とは大きく異なり安全ということで、アメリカでは以前はたくさん使用されていたが、今は家畜の飼料への使用は禁止されているし、もちろん中国でも禁止されている。

しかし、中国では現在でもクレンブテロールやラクトパミンのコピー商品が違法に作られ、広範に使われている。

一番、懸念されるのは生肉以外にも豚肉加工品にこれらの薬が残留することだ。

日本では中国の豚肉は「口蹄疫」の問題で加熱しないと輸入できないのでスーパーマーケットの店頭に中国産の豚肉がそのまま生肉で並べて売られていることはない。 

しかし、弁当や総菜用の冷凍食品やハムなどの加工品、冷凍食品のチャーハンや餃子などに、中国産の豚肉は多く使われている。 

平成21年2月18日から平成21年2月20日にかけて中国広州市にて 市民70人が豚肉による食中毒の情報を受けて日本の厚生労働省もやっとモニタリング検査を実施しているようだが、是非とも日本にこのような薬が残留した食品が入らないように水際で防いでもらいたい。

次回は、安徽省合肥市で問題となっている、90分で「豚肉」を「牛肉」に変える“魔法の薬”の話をしよう。

「牛肉膏」を使えば90分で「豚肉」が「牛肉」になるという。


















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2 コメント

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Unknown (kyohey)
2011-08-03 22:18:20
食品加工の裏側を見てしまうと
実に怖すぎますね。
今中国の冷凍食品を口にする事が
多いのですがこれを見たら…
控える事にします。。。
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質問 (kyohey)
2011-08-05 23:15:02
今加工ってほどでもないんですが
旨い豚骨ラーメンを作る研究をしています。
鶏がらとゲンコツを使い
塩、香味野菜、グルタミン酸ナトリウム
で作ったシンプルなベースから
味の幅を広げ、濃厚さを出していきたいのですが
なかなか上手くいきません。

そこでmaguro-champion さんに
お聞きしたいのですが
旨い豚骨ラーメンのレシピってご存知ですか?
もしご存知であればしえてください。

突然こんな質問してすみません。
可能であればよろしくお願いします。
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