このジャンルの走りとしては、深夜アニメ開拓の初期に独立U局系で放映された『同級生2』と『下級生』(オリジナル版)が挙げられます。この両作品は元々18禁のビデオアニメとして出ていたものの性描写を削って放映しただけなので、本来のTVアニメではありませんが、TV放映に当たって新しい主題歌を作ったりもしてこのジャンルの草分け的存在だと言えるでしょう。
本格的にこのジャンルを切り開いたのは『ToHeart』と言えるでしょうが、このアニメ作品はPS用の全年齢バージョンの発売に合わせた放映であり、作品的にも性的要素は完全に排除されています。エロゲのコンシューマー機向けの派生としてのTVアニメ化というパターンを生み出した上でも忘れられない存在です。
それから、今度は完全新作のTVアニメとして『下級生』のアナザストーリー版が出てきました。これは以前に放映されたオリジナル版がそのタイトルとは異なり、主人公のクラスメイトを恋愛対象とした物語として作られていたのを、同じゲームを原作にして今度は本当の下級生キャラをメインにして作り直したものです。
エロゲ原作の美少女アニメはゲームのマルチヒロインシステムを何らかの形で取り込んで、より多くのキャラクターのファン層を繋ぎ止めようとしているのが普通で、『同級生2』にしろ『ToHeart』にしろ、シリーズを通してのメインのヒロインとは別にエピソード毎のヒロインが存在していました。ところが、この『下級生』は元々のオリジナル版は全4話という制限もあってか、マルチヒロインではなくシングルヒロインという性格の強い作品だったのですが、アナザストーリー版ではメインのヒロインを変えただけではなく、話数の増えた部分にゲーム版の他のヒロインを持ってきたエピソードが挿入されたのですが、その使い方が中途半端な感じで、作品的に何が描きたかったのかわからなくなってしまってたのは否めません。
そもそもアナザストーリー版に選ばれた下級生のヒロインキャラは引っ込み思案で積極性が無いから、他のヒロインキャラが出て来るとシナリオしだいでは食われてしまう心配が付きまとっていて、それがために印象の強すぎるオリジナル版のヒロインキャラはこの作品にはほとんど出してもらえなかったみたいです。
同じおとなしめのキャラでも『ToHeart』の近所の幼馴染みとか『同級生2』の義理の妹なら主人公に対する影響力は大きいのですが、クラスも違うタダの下級生キャラともなると主人公との接点がほとんど無い点がネックで、アニメ作品もその点でかなり苦労していたように思います。
『ToHeart』のLeaf作品では次に『こみっくパーティー』がTVアニメ化されています。こちらもDC版の発売に合わせたようなアニメ化でしたが、原作では登場キャラが大学生の設定なのをアニメ版では高校生に変え、より純粋に同人誌の世界を描くという方向に作り変えられていたようです。
この作品では恋愛対象のヒロインは一人で、あとのヒロインは主人公が同人誌の世界に浸っていく過程で出会う、いわば同好の士のような存在であり、そういう意味でキャラクターの関係が固定化されていたのもさっぱりとした作品の性格に影響していたようです。もっとも、それがゆえにどんどん同人誌の世界にはまっていく主人公を何とか矯正しようとしてるヒロインの努力に涙ぐましいものがありましたが……
エロゲの世界でLeafと並び立つのがKeyで、その最初にTVアニメ化された作品が『Kanon』でした。同じマルチヒロインシステムのゲームでもKeyのビジュアルノベル作品は「泣きゲー」とも称され、各ヒロイン毎に独自の物語世界を持っています。アニメ版ではそのすべての物語を網羅するように再構成され、最終的にメインキャラの物語に帰結するようになっています。
ここに来てエロゲ原作の美少女アニメもマルチヒロインによるバリエーションよりも、より深い物語を描く作品が期待されるようになってきました。
『同級生2』『下級生』でこのジャンルに先鞭を付けたKSSはその後『HAPPY☆LESSON』等でのメディアミックス展開を繰り広げていましたが、やがて『らいむいろ戦奇譚』を引っさげてきて新風を吹き起こします。
これまでの作品がエロゲ原作でありながら極力、性というものを排除した健全な作品として作られてきました(18禁OVAを再編集した初期の作品は除く)。いわゆるエッチな描写というのは他の一般作品に見受けられることがあっても、このジャンルでは皆無
に近いものでした。ところがこの作品は露骨な性描写こそ無いものの、いわゆる際どい表現が散見され、むしろそれが売りになっていた様子です。
もっとも、この作品の原作者があかほりさとるであり、他の一般作品でエッチな描写のある作品を量産してる作家の手によるものだということを考えると、たとえ原作がエロゲでなくてもこれくらいのエッチな描写はあったものだとも考えられます。ところが、この作品にこれだけの描写があることを知らずに夕方6時代に放映してしまったサンテレビが批判にさらされていたのも記憶に新しいところです。
エロゲ原作のTVアニメというとつい見落とされがちなのですが、BS-iで放映されていた『ぽぽたん』もこのジャンルの1本です。物語はゲームとは違って3姉妹が時間を旅しながら伝説のぽぽたんを探す過程で様々な人に出会っていくという内容で、もちろん露骨な性描写はありませんが、入浴シーンで乳首が描かれてたりというBSの深夜ならではの規制の緩やかな面も見せていました。また性行為の存在を暗示している描写もありましたが、いずれも物語としての表現のレベルであり、エロゲ原作だからという性格のものでは無かったように思います。
ところで、それまでこのジャンルの作品は1シーズンに1作品あれば良い方という放映数だったのですが、2003年の秋前後にはいくつかの作品が集中して来ました。
まず夏に放映が始まったのがCIRCUSの『D.C.~ダ・カーポ~』です。一見、普通のマルチヒロインシステムの作品のように思われますが、メインヒロインである義理の妹のシナリオと準メインヒロインである従姉妹のシナリオが複雑に絡んでいて、それがこの作品世界全体の成り立ちや他のヒロインキャラの秘密にも関わっていたという奥深いものがありました。一方、1クールが普通のこのジャンルにしては2クールという比較的長期の放送だったので、前半は普通のマルチヒロインシステム的な展開、後半になって各キャラクターの物語の収束を図っていくという仕組みで、えてしてTVアニメだけではサブヒロインの描写が足りないというこのジャンルの作品の欠点を克服していたように思います。
また、前半では本編終了後に毎回短編のアナザストーリーが付いていたのですが、これの存在も視聴者を作品世界に馴染ませることに効果的だったと思います。
いわば、マルチヒロインシステムのアニメ化の一つの完成形がここに出現したものだと言えるでしょう。
そして秋に始まった作品の一つがアージュの『君が望む永遠』。これも一見すればマルチヒロインシステムの作品の一つと見られてしまいますが、実のところはヒロイン交代システムの作品なのですね。物語は主人公が高校時代に付き合い始めた彼女が自己で眠ったままになってしまい、その自己が原因で主人公は人生が狂ってヘタレに成り下がって、同じく人生が狂った彼女の親友といつのまにかくっつくようになったのだけど、そんな時に元の彼女が意識を取り戻したとかいうシリアスなお話。
もちろんマルチヒロインシステムの要素はあるにはあるのですが、アニメの物語は原作に用意されたメインシナリオ一直線。キャラクターのバリエーションを楽しむというより主人公(あるいは2人のヒロイン)に課せられた恋愛模様を描いていく本格的なドラマ志向の物語なのです。
いわばキャラクターを売り物にした作品ではなくドラマを売り物にした作品なので、必要な限りにおいて性行為の描写も厭いません(といってもあくまで一般作品なので普通のドラマ番組あたりと同じ程度の描写が限界ですが)。エロゲ原作の作品がエロゲ原作であるゆえに封印されてきた性描写を、一般的な範囲という限定であっても初めて解き放った作品だと言えるでしょう。
同じく秋に始まったのが『真月譚 月姫』。こちらもマルチヒロインシステムの要素を持ちながらもアニメは原作のメインシナリオ一直線ということで、キャラクターよりも作品の物語世界を売り物にした作品と言えます。特筆すべきはこの原作が同人作品であったということで、いまや内容さえあれば何でもアニメの原作にしてしまえるという状況を体現した作品だと言えるでしょう。
もっとも、この作品はシナリオを消化したとはいえ、アニメ作品としてキャラの魅力を描ききってたようには思えず、作品としての出来には疑問が残ります。それでいて、『君が望む永遠』同様に性行為の描写が1箇所ありましたが、作品的に必然性があったのかどうかは疑問です。
エロゲ原作のアニメというと、やはり何らかの形で恋愛が作品の大きな要素であることが期待されていると思われますが、この作品は作品世界の宿命を追い掛けることで精一杯で恋愛的な要素が淡白すぎたのが欠点ですね。
そして同じ時期に放映されていたのが『ヤミと帽子と本の旅人』。これもマルチヒロインシステムというよりもヒロイン遍歴譚という形で、主人公が旅先でいろいろなヒロインに出会っていくというお話なんだけど、特殊なのは主人公自身も少女だというところ。要するにレズもの作品ということですね。
もちろん、いくら深夜アニメで、比較的規制の緩い放映局とはいえ、やはりTVアニメでレズものというのは問題があるのか、旅先で出会うヒロインたちとはまったく恋愛的な要素は見せません。ただし同行する道案内のキャラ(♀)が主人公に関心を抱いてる素振りを見せたりするとか、主人公自身が消えてしまった自分の姉だったキャラに恋焦がれて捜し求めてるという設定は隠してはいません。
ほとんど規制ギリギリを突く形での主人公の自慰(に見える)シーンや、ラストでの抱擁とキスシーンというのは、一般作品としては限界に近いものがあるでしょう。
結局、この年のこのジャンルの作品の集中によって、エロゲ原作の美少女アニメというのはアニメ濫作時代においては珍しくも無い普通のジャンルになってしまったようです。
それ以降は『月は東に日は西に』『Wind -a breath of heart-』『To Heart~Remember my memoriies~』『下級生2~瞳の中の少女たち~』『魔法少女リリカルなのは』『まじかるカナン』『AIR』『らいむいろ流奇譚~恋、おしへてください。~』『こみっくパーティーRevolution』と、四半期ごとの番組改変期に次から次に新たな作品が誕生してきて枚挙に暇がありません。
さすがに『君が望む永遠』や『ヤミと帽子と本の旅人』みたいなある意味一線を越えてしまった作品が続出するという状況ではありませんが、見られる作品が多いということは良いことです。これからもこのジャンルの作品の発展に期待しましょう。
【練習問題】
上記の文章を読み、記載されている作品の範囲で以下の問いに答えよ。
(ただし、『同級生2』と『下級生』のOVA版は除く)
1.各作品の主人公と主なヒロインの名前を挙げてみなさい。
2.人間以外のヒロインキャラのいる作品とそのキャラ名を挙げなさい。
3.アニメに付き物のペット動物は全部で何匹いるでしょう。
(ただし、ヒロインとして数えられるペットは除く)
4.全作品でもっともスケベな主人公は誰でしょう。
【解答例】
(省略)
本格的にこのジャンルを切り開いたのは『ToHeart』と言えるでしょうが、このアニメ作品はPS用の全年齢バージョンの発売に合わせた放映であり、作品的にも性的要素は完全に排除されています。エロゲのコンシューマー機向けの派生としてのTVアニメ化というパターンを生み出した上でも忘れられない存在です。
それから、今度は完全新作のTVアニメとして『下級生』のアナザストーリー版が出てきました。これは以前に放映されたオリジナル版がそのタイトルとは異なり、主人公のクラスメイトを恋愛対象とした物語として作られていたのを、同じゲームを原作にして今度は本当の下級生キャラをメインにして作り直したものです。
エロゲ原作の美少女アニメはゲームのマルチヒロインシステムを何らかの形で取り込んで、より多くのキャラクターのファン層を繋ぎ止めようとしているのが普通で、『同級生2』にしろ『ToHeart』にしろ、シリーズを通してのメインのヒロインとは別にエピソード毎のヒロインが存在していました。ところが、この『下級生』は元々のオリジナル版は全4話という制限もあってか、マルチヒロインではなくシングルヒロインという性格の強い作品だったのですが、アナザストーリー版ではメインのヒロインを変えただけではなく、話数の増えた部分にゲーム版の他のヒロインを持ってきたエピソードが挿入されたのですが、その使い方が中途半端な感じで、作品的に何が描きたかったのかわからなくなってしまってたのは否めません。
そもそもアナザストーリー版に選ばれた下級生のヒロインキャラは引っ込み思案で積極性が無いから、他のヒロインキャラが出て来るとシナリオしだいでは食われてしまう心配が付きまとっていて、それがために印象の強すぎるオリジナル版のヒロインキャラはこの作品にはほとんど出してもらえなかったみたいです。
同じおとなしめのキャラでも『ToHeart』の近所の幼馴染みとか『同級生2』の義理の妹なら主人公に対する影響力は大きいのですが、クラスも違うタダの下級生キャラともなると主人公との接点がほとんど無い点がネックで、アニメ作品もその点でかなり苦労していたように思います。
『ToHeart』のLeaf作品では次に『こみっくパーティー』がTVアニメ化されています。こちらもDC版の発売に合わせたようなアニメ化でしたが、原作では登場キャラが大学生の設定なのをアニメ版では高校生に変え、より純粋に同人誌の世界を描くという方向に作り変えられていたようです。
この作品では恋愛対象のヒロインは一人で、あとのヒロインは主人公が同人誌の世界に浸っていく過程で出会う、いわば同好の士のような存在であり、そういう意味でキャラクターの関係が固定化されていたのもさっぱりとした作品の性格に影響していたようです。もっとも、それがゆえにどんどん同人誌の世界にはまっていく主人公を何とか矯正しようとしてるヒロインの努力に涙ぐましいものがありましたが……
エロゲの世界でLeafと並び立つのがKeyで、その最初にTVアニメ化された作品が『Kanon』でした。同じマルチヒロインシステムのゲームでもKeyのビジュアルノベル作品は「泣きゲー」とも称され、各ヒロイン毎に独自の物語世界を持っています。アニメ版ではそのすべての物語を網羅するように再構成され、最終的にメインキャラの物語に帰結するようになっています。
ここに来てエロゲ原作の美少女アニメもマルチヒロインによるバリエーションよりも、より深い物語を描く作品が期待されるようになってきました。
『同級生2』『下級生』でこのジャンルに先鞭を付けたKSSはその後『HAPPY☆LESSON』等でのメディアミックス展開を繰り広げていましたが、やがて『らいむいろ戦奇譚』を引っさげてきて新風を吹き起こします。
これまでの作品がエロゲ原作でありながら極力、性というものを排除した健全な作品として作られてきました(18禁OVAを再編集した初期の作品は除く)。いわゆるエッチな描写というのは他の一般作品に見受けられることがあっても、このジャンルでは皆無
に近いものでした。ところがこの作品は露骨な性描写こそ無いものの、いわゆる際どい表現が散見され、むしろそれが売りになっていた様子です。
もっとも、この作品の原作者があかほりさとるであり、他の一般作品でエッチな描写のある作品を量産してる作家の手によるものだということを考えると、たとえ原作がエロゲでなくてもこれくらいのエッチな描写はあったものだとも考えられます。ところが、この作品にこれだけの描写があることを知らずに夕方6時代に放映してしまったサンテレビが批判にさらされていたのも記憶に新しいところです。
エロゲ原作のTVアニメというとつい見落とされがちなのですが、BS-iで放映されていた『ぽぽたん』もこのジャンルの1本です。物語はゲームとは違って3姉妹が時間を旅しながら伝説のぽぽたんを探す過程で様々な人に出会っていくという内容で、もちろん露骨な性描写はありませんが、入浴シーンで乳首が描かれてたりというBSの深夜ならではの規制の緩やかな面も見せていました。また性行為の存在を暗示している描写もありましたが、いずれも物語としての表現のレベルであり、エロゲ原作だからという性格のものでは無かったように思います。
ところで、それまでこのジャンルの作品は1シーズンに1作品あれば良い方という放映数だったのですが、2003年の秋前後にはいくつかの作品が集中して来ました。
まず夏に放映が始まったのがCIRCUSの『D.C.~ダ・カーポ~』です。一見、普通のマルチヒロインシステムの作品のように思われますが、メインヒロインである義理の妹のシナリオと準メインヒロインである従姉妹のシナリオが複雑に絡んでいて、それがこの作品世界全体の成り立ちや他のヒロインキャラの秘密にも関わっていたという奥深いものがありました。一方、1クールが普通のこのジャンルにしては2クールという比較的長期の放送だったので、前半は普通のマルチヒロインシステム的な展開、後半になって各キャラクターの物語の収束を図っていくという仕組みで、えてしてTVアニメだけではサブヒロインの描写が足りないというこのジャンルの作品の欠点を克服していたように思います。
また、前半では本編終了後に毎回短編のアナザストーリーが付いていたのですが、これの存在も視聴者を作品世界に馴染ませることに効果的だったと思います。
いわば、マルチヒロインシステムのアニメ化の一つの完成形がここに出現したものだと言えるでしょう。
そして秋に始まった作品の一つがアージュの『君が望む永遠』。これも一見すればマルチヒロインシステムの作品の一つと見られてしまいますが、実のところはヒロイン交代システムの作品なのですね。物語は主人公が高校時代に付き合い始めた彼女が自己で眠ったままになってしまい、その自己が原因で主人公は人生が狂ってヘタレに成り下がって、同じく人生が狂った彼女の親友といつのまにかくっつくようになったのだけど、そんな時に元の彼女が意識を取り戻したとかいうシリアスなお話。
もちろんマルチヒロインシステムの要素はあるにはあるのですが、アニメの物語は原作に用意されたメインシナリオ一直線。キャラクターのバリエーションを楽しむというより主人公(あるいは2人のヒロイン)に課せられた恋愛模様を描いていく本格的なドラマ志向の物語なのです。
いわばキャラクターを売り物にした作品ではなくドラマを売り物にした作品なので、必要な限りにおいて性行為の描写も厭いません(といってもあくまで一般作品なので普通のドラマ番組あたりと同じ程度の描写が限界ですが)。エロゲ原作の作品がエロゲ原作であるゆえに封印されてきた性描写を、一般的な範囲という限定であっても初めて解き放った作品だと言えるでしょう。
同じく秋に始まったのが『真月譚 月姫』。こちらもマルチヒロインシステムの要素を持ちながらもアニメは原作のメインシナリオ一直線ということで、キャラクターよりも作品の物語世界を売り物にした作品と言えます。特筆すべきはこの原作が同人作品であったということで、いまや内容さえあれば何でもアニメの原作にしてしまえるという状況を体現した作品だと言えるでしょう。
もっとも、この作品はシナリオを消化したとはいえ、アニメ作品としてキャラの魅力を描ききってたようには思えず、作品としての出来には疑問が残ります。それでいて、『君が望む永遠』同様に性行為の描写が1箇所ありましたが、作品的に必然性があったのかどうかは疑問です。
エロゲ原作のアニメというと、やはり何らかの形で恋愛が作品の大きな要素であることが期待されていると思われますが、この作品は作品世界の宿命を追い掛けることで精一杯で恋愛的な要素が淡白すぎたのが欠点ですね。
そして同じ時期に放映されていたのが『ヤミと帽子と本の旅人』。これもマルチヒロインシステムというよりもヒロイン遍歴譚という形で、主人公が旅先でいろいろなヒロインに出会っていくというお話なんだけど、特殊なのは主人公自身も少女だというところ。要するにレズもの作品ということですね。
もちろん、いくら深夜アニメで、比較的規制の緩い放映局とはいえ、やはりTVアニメでレズものというのは問題があるのか、旅先で出会うヒロインたちとはまったく恋愛的な要素は見せません。ただし同行する道案内のキャラ(♀)が主人公に関心を抱いてる素振りを見せたりするとか、主人公自身が消えてしまった自分の姉だったキャラに恋焦がれて捜し求めてるという設定は隠してはいません。
ほとんど規制ギリギリを突く形での主人公の自慰(に見える)シーンや、ラストでの抱擁とキスシーンというのは、一般作品としては限界に近いものがあるでしょう。
結局、この年のこのジャンルの作品の集中によって、エロゲ原作の美少女アニメというのはアニメ濫作時代においては珍しくも無い普通のジャンルになってしまったようです。
それ以降は『月は東に日は西に』『Wind -a breath of heart-』『To Heart~Remember my memoriies~』『下級生2~瞳の中の少女たち~』『魔法少女リリカルなのは』『まじかるカナン』『AIR』『らいむいろ流奇譚~恋、おしへてください。~』『こみっくパーティーRevolution』と、四半期ごとの番組改変期に次から次に新たな作品が誕生してきて枚挙に暇がありません。
さすがに『君が望む永遠』や『ヤミと帽子と本の旅人』みたいなある意味一線を越えてしまった作品が続出するという状況ではありませんが、見られる作品が多いということは良いことです。これからもこのジャンルの作品の発展に期待しましょう。
【練習問題】
上記の文章を読み、記載されている作品の範囲で以下の問いに答えよ。
(ただし、『同級生2』と『下級生』のOVA版は除く)
1.各作品の主人公と主なヒロインの名前を挙げてみなさい。
2.人間以外のヒロインキャラのいる作品とそのキャラ名を挙げなさい。
3.アニメに付き物のペット動物は全部で何匹いるでしょう。
(ただし、ヒロインとして数えられるペットは除く)
4.全作品でもっともスケベな主人公は誰でしょう。
【解答例】
(省略)