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アニメ及び周辺文化に関する雑感

【DCSS】初音島桜前線注意報(4) アイシアと魔法学校

2005年08月03日 | アニメ
 第4話は風見学園に潜入したアイシアによって騒動が起こるというお約束の定番エピソードでしたが、騒動の原因というのがアイシアが風見学園を魔法学校だと思い込み、平然と魔法を使っていたことのようです。なおかつ、アイシアはこれまで学校に通ったことが無いことが明かされています。
 もちろん、風見学園は魔法学校なんかではなく、枯れない桜が枯れ、さくらのいなくなった現在は純一が和菓子を出すくらいのことしか魔法の欠片はありません。でも、それを何の疑問もなく魔法学校と思い込んでしまう辺り、アイシアの知識は相当に特殊で世間知らずとしかいえません。

 そもそもアイシアはどこから来たのでしょうか? 作品中ではアイシアの持ってた地図の文字を杉並が北欧系の文字だと判断しただけで、アイシア自身はどこから来たとかいう話はしていません。北欧でない可能性も大きいです。ま、外見的には白人系の西洋人と見て間違いはないようですが……
 アイシアは学校に行ってない理由として、すぐに別の場所に引っ越すからということを言っています。そこから考えられることは

(1)ジプシーのような不定住民族の出身
(2)サーカスのような巡業を家業とする家庭
(3)トラブル等で居住地を追われることが多い問題家庭

(1)の不定住民族の場合、不定住と言っても短期間に移動を繰り返すわけじゃないから国によっては短期間でも学校に通わせたりするし、学校に行かなくてもその中で一定の社会が形成されているのである程度の教育は行われていると考えるのが現実的です。アイシアのような世間知らずに育つことはありません。
(2)の場合ですが、日本の公立学校ではこういう短期巡業者の子女も受け入れられてるようですが、外国だとそういうわけにはいかないこともあるでしょう。大規模なサーカス団なら各地の巡業も長期に渡ることが多いだろうし、団員が面倒を見てくるでしょうが、個人芸の旅芸人なんかだと日頃から接するのが肉親だけとかいう可能性も大きくなります。そんな環境で育ったなら世間知らずもやむなしでしょう。
(3)は様々な場合があります。家族が借金漬けで夜逃げを繰り返してるとかじゃ、子供を学校に通わせたりしたら足が着きやすいという話もあります。その場合はやはり世間知らずに育つしかありません。
 ただ、トラブルの原因がアイシア自身ってこともあります。魔法や超能力を隠すために転校を繰り返してるとかいう設定のキャラがマンガやアニメでは少なくはありませんが、そのバリエーションで引越しはするけど学校には通わないというパターンです。しかし、この場合、問題はアイシアにあるわけですからその原因は厳しく躾けられるのが普通だと思われます。ま、過保護で子供は甘やかしてるだけって可能性もなくはありませんが。

 学校に行けないこととアイシアの魔法が関係してるとするなら(3)の可能性が一番高いでしょう。ただし、(1)のようなパターンとして魔法をもった不定住民族の出身とかいう可能性もなくはありません。

 ところでアイシアの家庭環境はどうだったんでしょうか? まだ、作品中では全然触れられてないのだけど、アイシアの発言を拾っていくとどうも「おばあちゃん」と一緒に住んでいて、この「おばあちゃん」から魔法を習ったみたいです。ここで注意する必要があるのはアイシアの発言中の「おばあちゃん」と「芳乃おばあさん」は別人だということです。
「芳乃おばあさん」は言うまでもなく純一とさくらの祖母のことですが、アイシアが初音島にやってきたのは何らかの理由(おそらく死別)で「おばあちゃん」と暮らせなくなったから、その次に親しみをもっていた「芳乃おばあさん」を訪ねて来たということでしょう。
 このことから察するに、アイシアは「おばあちゃん」を通じて「芳乃おばあさん」のことを知っていたものと思われますが、直接本人と面識があったかどうかはわかりません。また、「芳乃おばあさん」も死亡時期は不明ですが、2年前の前作ではすでに故人となって久しい感じだったからアイシアの「おばあちゃん」が密接に付き合っていたならそのことは伝わっていて当然と思われますが、アイシアがそれを知らなかったということはあまり親しくない間柄だったのかもしれません。

 さて、風見学園を前にしてアイシアは「これがおばあちゃんの通っていた魔法学校か」とか言うようなことを言ってますが、別に「おばあちゃん」が風見学園に通っていたというわけではなく、風見学園を「おばあちゃん」が通っていたという魔法学校と同じようなものだと思ったということです。
 つまり、魔法学校云々というアイシアの知識は「おばあちゃん」から教わったということです。では、アイシアの「おばあちゃん」は本当に魔法学校というものに通っていたのでしょうか?
 これが魔法の無い世界なら話は簡単です。「おばあちゃん」はおとぎ話として自分が魔法学校に通っていたと言ったに違いありません。でも、ここは魔法が存在する世界であり、魔法に関係する当事者が語った言葉です。文字通りに受け取るほうが妥当でしょう。

 では、魔法学校は実在するのでしょうか?
 純一1人が辛うじて和菓子を出せる初音島の実情を考えると、そこらに当たり前のように魔法学校が存在するということは考えられません。初音島には魔法学校は存在しないと考えたほうが良いでしょう。
 初音島はどうやら瀬戸内海に浮かぶ島のひとつみたいですが、要するに隔絶された孤島というわけでは無いようです。つまり、初音島の社会は日本全体の社会とそう違ったものではないということで、たぶん日本全国を探しても魔法学校なんてものは普通に存在するものでは無いように思われます。(いや、ま、日本は広いから全国を探せば2つや3つは魔法学校があるのかも知れませんが)
 それでは外国は……という話になってくるのですが、ここで最初にアイシアが引越しを繰り返していた原因というのが関わってきます。

(3)のように魔法が原因で逃げ回らなければいけないほどマイナーな存在だと魔法学校などというものがこの現実世界(というか便宜上ここでは人間界)にあるとは思えません。逆に(1)のように魔法民族というものが一定規模の社会を築いているという状況なら魔法学校があってもおかしくはありません。

 いや、そもそも魔法学校がある場所がこの人間界だという前提が間違ってる可能性もあります。異世界だか多元宇宙だかインフレーション宇宙のどこかだかに魔法の世界があって、その世界の魔法学校で魔法を習ってきた人間が、この人間界で魔法を使えるという話なのかもしれません。魔法学校はフェナリナーサだかフェザースターだかラブリードリームだかジェライヘルムだかマジックキングダムだかとかいう人間界以外の場所にあって、アイシアの「おばあちゃん」はそこで魔法を学んで来たのかもしれません。
 しかし、ここで大きな問題があります。魔法学校のある世界がこの人間界と物理的に連続している同一時空上にあれば問題ないのですが、そうでない場合、世界観の移動によって生じる質量変化という問題は避けて通れません。異世界からの召還魔法と同じ問題をクリアしないと異世界とは行き来できないということです。
 そんなわけで、現実問題として異世界の魔法学校に通うことは極めて困難と考えざるを得ません。アイシアの「おばあちゃん」が魔法学校に通ったというなら、それは人間界に存在する魔法学校と考えた方が妥当と思われます。

 ま、あとはアイシアの「おばあちゃん」の時代にはあったけど、今はもうないという可能性もあります。高名な魔法使いの「芳乃おばあさん」にしたって、孫の純一は和菓子を出すくらいの芸しかありません。魔法が一般的な技術ではないだけに、(あるいは迫害等の対象になったりする可能性もあるだけに、)その技術を受け継ぐ後継者は時代とともに減少してしまい、もはや魔法学校を維持するだけの存在でもなくなってしまったという可能性があります。

 そんなわけで、アイシアが期待している魔法学校への入学はかなり厳しいものがあるように思われます。
(だから風見学園で我慢しとけ>アイシア)