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(つづき)あそこで、あなたの論評を週毎読みながら、論評があなたにだんだん負担にならなくなってきていることに、気づいていたわ。
(ジェローム) 今から一二年したら、ぼくはどんな夕暮者の水準にも達しているだろう。
(アリアーヌ) 夕暮者って何?
(ジェローム) 基本を理解していない事柄について、敢然と話し始める時、その時から、夕暮者なんだよ…
(アリアーヌ) どういうこと?
(ジェローム) ぼくには専門技術的な知識は無い。そのことはよく知ってるだろ。その上、音楽にうんざりする時が、ぼくにはあるんだ。
(アリアーヌ) 調子がよくない時ね。
(ジェローム) それがかなりしばしばあるんだよ。
(アリアーヌ) どうして?
(ジェローム、それには答えずに。) とりわけぼくをひどくいらだたせるのは、音楽を宗教のように扱う或る種の人々が持っている流儀なんだ。音楽は宗教じゃない。娯楽だ。
(アリアーヌ) でも、あなた、私は、あなた自身が言うのを聞いたことを覚えているけど…
(ジェローム) もちろん、ぼくにも(つづく)
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(つづき)その反対のことを言うことはあった。だがその後… 音楽がむさぼり食ってしまう生活があって、それがぼくには耐えられないんだ。
(アリアーヌ) 誰のことを当てこすっているの?
(ジェローム、身を引いて。) 特別に誰のことでも。とてもよくあることだよ。
(アリアーヌ) でもあらゆる情熱は… むさぼり食うものよ。
(ジェローム) 情熱!
(アリアーヌ) たしかに、あなたは様子が良くないわね。少し痩せたのではないの?
(ジェローム) それは分からないし、そうとは思わない。
(アリアーヌ) 確かめなくては。私の居ないとき、充分食べているのかしら。レンジの記録を見て、あなたは毎日同じものを注文していたのが判ったわ。もうちょっといろいろ食べなくちゃ。けっきょく、私が、あなたのために注文しなければならないわね。
(ジェローム) 向こうに居てかい?
(アリアーヌ) どうしていけないの?… それにフィリップはさっき、私が心配になることを言ったわ… あなた、私の居ないとき、ちょっと余りに倹約しすぎていない?
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(ジェローム) フィリップも口を出すなら自分と関係あることにすればいいのに。
(アリアーヌ) 彼に要求するほどのことでもないわ… じゃあ、本当?
(ジェローム) 何が?
(アリアーヌ) あなたは、出来る限りお金を使わないように心掛けているということ?
(ジェローム) じつに当然のことだよ。
(アリアーヌ) 私はそう思わないわ。
(ジェローム) 安心しな。何も我慢してはいないよ。
(アリアーヌ) 欠けているのはもうあれしかないわね、それにしても!… 衣類のために使うようなものね。明日一緒にティエルスリエの処に行って、あなたのために三つ揃いの背広二着とタキシードを一着注文しましょう。
(ジェローム) まだ要るのかい?
(アリアーヌ) 私のために恥ずかしくないようにしてもらいたいのよ。帽子屋にも寄って、ねえ… あそこの名前、分からないわ。
(ジェローム) ぼくのフェルト帽は新品だよ。
(アリアーヌ) あれは気に入らないのよ。きっと、良い質のものではないわ。(沈黙。)