電話のコール音が鳴る、彼女が電話に出る。
「はい、山田弁護士事務所です。」
どんどん・・・引き返せなくなる・・・
でも・・・これしかない・・・
そんなことを思いながら、私は、深呼吸して、言った。
「おはよう、私!元気してる?」
彼女は女性で私より一つ年上で、
ずっと巨大弁護士事務所に居候していたが、
最近独立して自分の事務所を開設したのだと、
メールをもらったところだった。
彼女は日本中誰もが知っている大学の法学部を出て、
司法試験にパスし、巨大弁護士事務所に入り、
そこの出資でアメリカのロースクールに入学し
4年国際法について学んだほどの才媛なのだが、
全く気取ったところがない。
経歴を鼻にかけたり、偉そうにすることもない、
普通に話していると、全く普通の人なのに驚くほど、
気さくにざっくぱらんに話せる相手だった。
「うんうんうんうん♪やーどうしたん、久しぶりやん♪」
「あのさ、ちょっと相談に乗って欲しいことがあって・・・」
「うんうん、何々、いいよいいよ?
今日、空いてる?出てこれる?ランチする?」
「いいの?じゃ、行く!昼ごろ近くから、電話するね!」
「はいは~い了解了解、フレンチ行こう行こう♪」
そんな風に、ちゃっちゃとランチのアポが取れた。
私は彼女の、こんなテンポ感も好きだ。
大阪のビジネス街にある、
その事務所に私は初めて訪れた。
ありがちな弁護士事務所ビルではなく、
どちらかというといろんな業種の事務所が混在する
雑居ビルタイプの事務所だったが、
かなり新しい匂いのするビルだったから、
きっといいテナントばかりが入っているのだろうと思った。
「コン・コン・コン」
ノックをして入った。
事務員一人、弁護士一人の事務所と聞いていたが、広い。
彼女が両手を広げてこちらに向かってくる。
「ひっさぶり♪ランチ行こう行こう♪お腹すいたよ~」
そのまま私の肩を抱いて、エレベーターへ向かった。
オフィス街の谷間のフレンチレストランは、
ランチタイム直前とあって、とても混雑していた。
「ここ、美味しいのよ♪」
と先生はにっこり微笑んで、急にマジな顔になった。
「そうそう、今日はどうした?何かあった?痩せたね?」
「う・・・ん、どこから話したらいいのか・・・」
彼女とは結婚して、お互いに子供ができてから、
2度ほど会ったきりである。
あとはメールで近況をやりとりしているだけだったし、
夫婦仲がそんな風になっているとは、
誰にでも言えることではなかったから、
夫とは普通にうまくいっていると思っている人が大半で、
彼女もそのうちの一人だった。
夫との結婚生活、なぜ出てきたか、脱出後の生活と、
今までの流れについて、かなり飛ばし飛ばしではあるが説明した。
彼女はいちいち、目を丸くして驚きながら、
うんうんと頷き、話しを聞いてくれた。
実は夫と彼女は面識がある。
もともと彼女は私の友人だったが、
私が会社を退職するときに、なんでも相談できる弁護士として、
彼女を紹介したのだった。
実際、夫の顧客がトラブルに巻き込まれたときに、
数回山田先生に依頼して、相手方との交渉をしてもらったことがあったらしい。
そういう意味では、夫との共通の知人ということになる。
「うーん」
と腕組みをして、彼女はつぶやいた。
「言わなかったことにしてほしいんだけどね。
まっち~さんを依頼者でなく、友達と思って言うけど・・・」
「うんうん、なになに、」
「ご主人ね、2週間前に来たのよ。私のところに。相談に。」
「ええ?なんの相談ですか、まさか・・・」
「うんうん、まっち~さんとのことね。相談に来たよ。
養育費とか慰謝料とか、調停のこと聞きに来たのよ。
私ね、まっち~さんに電話かメールしようかと思ってたんだけど、
それって弁護士としては、してはいけないことなんだわ。
だから、迷ってた。
夫さんから聞いたこと、言うかわりに、私があなたにしゃべったこと、
口外しないと約束できる?」
「うんうん、もちろん・・・ええ、でもびっくり・・・」
「まあ、よくあることだけど、
ご主人、全然事実と違うこと私に話に来たみたいね。
あなたが病気で、とんでもない選択をしようとしてるって、
そんな場合は、どうやって調停委員を説得したらいいかって、
話してたわ。
彼は、離婚の離の字も考えてないわよ。
それに、まっち~さんの気持ちも、全然関知してないわね。
戻って当然、ってことばかり言ってた。」
「2週間前って、何日かわかりますか?」
「うんうん、ちょっと待ってね・・・えっと・・・」
彼女は、皮の手帳を取り出して、スケジュールを見た。
「8月のこの日だわ。」
カレンダーを指差した。
内容証明が届いた頃だ・・・。
「そうなんだ・・・」
「うん、僕もうつ病なんですよって、
薬で抑えてるんですよって言ってたけど、
私にはごめんね、正直言ってね、そういう風には見えなかったの。」
「そういうふうとは?」
「どういうのかな、しっかりしてるし、
私からどう見られているかちゃんと意識しているというか。(笑)」
「ええっ、それって、うつ病じゃないってこと・・・」
「わかんないよ、でも、
私親しい友人がうつ病になったことあってね。
その子はそううつだったんだけど、
全然、違ったわ。あんなに元気に話したり、できなかった。」
「そうなんだ・・・」
「養育費は払わなきゃだめですか、とか、
慰謝料はどれぐらいが相場ですか、とか、
そんなことも聞いてたなぁ。」
「あっ、私もそれ聞きにきたんだけど。」
「そうか、二人で私に同じこと聞きにね。
うーん、難しいよね、6万でも多い気はするし、4万じゃ少ない気もするし。」
「ええっ、でも養育費の判例タイムスの表なら、
私が無職の場合だと12万って書いてましたよ。」
「12万なんて、ありえないありえない。
普通ね、3万づつぐらいもらえたらいいところじゃないかな。」
「そうなんですか・・・」
「それも、いつ途絶えるかわからないし、
途絶えたら途絶えたでいちいち申し立てしなきゃいけないし、大変よ。」
「・・・・・。」
「まあまあ、あとで見てみるけどね。
彼、「あいつが勝手に出て行ったんだから、勝手にすればいい」
とかいいながら、まっち~さんのことすごい好きとも言ってたから、
やり直せないの?
母子家庭って、大変だよ?
多少変な旦那でも、居た方がいいよ?」
彼女は、自身の親がシングルマザーで彼女を育ててあげ、
かつ、彼女も離婚暦があり、シングルマザーである。
その苦労がわかるからこそ、そう言ってくれている。
「うん、復縁は考えてないねん。」
「そっか、まっち~さんの決めたことだからね・・・
私はまっち~さんの味方だから、応援するよ。
何でも、相談に乗るよ。
でも、お互いの知り合いだから私は、
依頼は受けられないんだけど。」
「ええっ、そうなんだ。」
「うんうん、両方知ってるとね、具合が悪いのよ。
今回両方から同じ相談受けちゃってるじゃない、
だから余計にね。」
「あっでも相談は、いいのかな?」
「うんうん、アドバイスって言ってくれる、
相談だとお金もらわないといけなくなっちゃうから♪」
「うんうん、ありがとうね。・・・そうかぁ、でも、
夫がここに来たのはびっくり・・・」
「うんうん、私も驚いたよ、
普段は音沙汰なしの人だったから。
そうねぇ、半年ぶりぐらいだったかなぁ。」
ほどなくランチのメインが運ばれた。
その日は魚料理がメインだったと思う。
「とりあえず、食べようか♪」
食べながら、彼女の近況を聞いた。
息子さんは、母親が弁護士だけあって、
すごく頭が良い子らしい。
英語のビデオを見せていたら、話せるようになったわ~
話せるから楽しいから、教会の英会話に通わせようか迷ってるの~
などと話していた。
誰でもそうなのだろうが、
自分が大変な悩みを抱えているとき、
他人の他愛もない会話は耳に入ってこない。
まるでワード検索して選択しているように、
離婚だの別居だのそういう言葉はどんどん耳から入ってくるが、
世の中の出来事を含む他愛もない事柄は、
どんどん右から左へすり抜けてしまう。
うんうんと相槌だけ打ちながら聞いていた。
話しに身が入らない私を見て、彼女から話を戻した。
「そうそう、調停ね、結局どうしても離婚したいなら
調停の申し立てになるんだけど、
そうするつもり?」
「うん、どうしても、離婚しなきゃと思ってる。」
「そっか、じゃ調停の流れについてざあっと説明しょうか?
事務所でコーヒー飲みながらにしょうか?」
「うんうん、ありがとう。忙しくない?」
「大丈夫よ、なかなか他の弁護士にはこんなにフランクに
聞きにくいだろうからね、じゃ出よう!」
その後私は彼女から、
調停というものの流れについて、
じっくりレクチャーを受けることになる。
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早い話が西洋土鍋です。
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いや~、お知り合いが沢山いらっしゃるんですね、
うらやましいです。しかし、元夫さんも、同じ弁護士さんのところに、内容証明が届いた日にやってきていたとは。しかも、物事の捉え方がおもいっきりモラだったってとこが、やっぱり凄いですね。
それにしても、この弁護士さんの調停の流れについてのお話を、まっち~さんのブログを通して教えていただけるなんて、私たちはとてもラッキーです。
これから調停で、またエネルギーを使うことになるんでしょうけれども、今のまっち~さんがお幸せなのを知っているので、以前のお話を安心して読めます。
まさに今こそ知りたい情報が、これから出てくるんですね。わくわく。続きを期待しています。本当に毎日更新、ありがとうございます。励みになります。感謝です!
その能力と気力と忍耐力はもっと違うところに
活用すれば大いなる成果を生みそうですね。
でも、相談した先がお友達の弁護士でよかったですね!まっち~さんの味方ですしね。
現在は、鬱病の診断書は割合簡単にもらえますし、抗うつ剤も心療内科ではなく、内科で普通にもらえます。
ですが、単なる「鬱状態」と「鬱病」は、明確に違うもので、鬱病は、歴とした神経伝達異常なんですよね。「脳内分泌物のバランスの以上」
全ての気力が身体から抜け落ちたようになりますし、どんなに楽しいことでも、心に反応しなくなる。不安や悲しいことは増幅され、何をしても手につかない。ただ、時間が流れていくことを呆然と見ているしかない、というような状態が多いようです。
鬱病になったのであれば、まず、自分自身で計画を立て、実行することがまず出来なくなります。
ましてや、様々な分野のことを調べたり手続きをしたりと言ったこと全てが出来なくなるはずです。
ですから、鬱病と、鬱病を装う人はしっかり見分けなければ行けません。鬱病を装って、利益を得ようとしている人は、本当に鬱病に苦しむ人全体を侮辱しています。
鬱病だから、という人には、必ず、大きい心療内科での診断書を出してもらうようにしましょう。
うつを利用して人の同情を買い人を貶めようと行動する行為が許せない。σ( ̄∇ ̄;)わては躁鬱の可能性があるので、行動できるときとできないときの差がありますが、うつ状態のときは行動しようとする気力が低下して、気づいたら一日が終わっていたという感じになっていて、精力的に動くってことはできないはず。こういう輩がいてるから、心の病に対する偏見が広がるんだよな・・・
そうかぁ・・・やる気が起こらない時って、どんな人でもありうるもんなぁ。
精神に関する病は、いろんな意味で怖いですねぇ・・・。