◆「黒と茶の幻想」
Y島(っても屋久島ってすぐわかります)にJ杉(縄文杉)を見に来た男女4人の物語り。
3泊4日の旅の間、一人づつの視点で過去と現在が語られる。ただそれだけの話だ。それだけの話を、これだけの「物語り」に仕上てくる恩田陸はやっぱりすごい。
しかし、出版社的には売りにくいのか「美しい女が消えた夜へ、幻影の森を歩き続ける」と帯びの文句はなっている。美しい女っていうのは、「麦の海に沈む果実」の梶尾憂理なんだが…。彼女の存在の必要性はわかるし、それは成功してると思うんだが、帯びの文句となるとどうなんだろう?
ともあれ、屋久島という一種浮世離れした場所で、ハイキングしながら現実を幻想を行き来しているような感じは、彼らの30代後半という年齢のあやうさとシンクロしていて上手いなぁとつくづく思う。
数年前に恩田陸の本が立て続けに出版されたので、そろそろそれらが文庫おちしてくるはずだ。
楽しみ、楽しみ。