たんぽぽのちえ

2008-05-10 15:08:48 | 物語
小学校の宿題に毎日の音読があります。
国語の教科書を声に出して読むことです。

健杜は2年生です。
春らしく「たんぽぽ」や「ふきのとう」の話が続いてます。
今習ってるのが「たんぽぽの ちえ」というお話ですが、
コレがなかなか興味深いお話なんですよ。
続きが知りたくて、宿題分より多く読ませました(笑)

たんぽぽって道端にボソッと咲いてるでしょ?
わざわざ調べようとか興味を持つって事がないので
あらためて「スゴイんやな~植物の神秘~」って感動ですよ。

「たんぽぽの ちえ」

 春になると、たんぽぽの 黄色い きれいな 花がさきます。

 ニ、三日 たつと、その 花は しぼんで、
だんだん くろっぽい 色に かわって いきます。

そうして、たんぽぽの 花の じくは、
ぐったりと じめんに たおれて しまいます。

 けれども、たんぽぽは、かれて しまったのでは ありません。
花と じくを しずかに 休ませて、
たねに、たくさんの えいようを おくって いるのです。
こうして、たんぽぽは、たねを どんどん 太らせるのです。

 やがて、花は すっかり かれて、その あとに、
白い わた毛が できて きます。

 この わた毛の 一つ一つは、ひろがると、
ちょうど らっかさんのように なります。
たんぽぽは、この わた毛に ついて いる たねを、
ふわふわと とばすのです。

 この ころに なると、それまで たおれて いた 
花の じくが、また おき上がります。
そうして、せのびを するように、 ぐんぐん のびて いきます。

 なぜ、こんな ことを するのでしょう。
それは、せいを 高く する ほうが、わた毛に 風が
よく あたって、たねを とおくまで とばす ことが できるからです。

 よく 晴れて、風の ある 日には、わた毛の らっかさんは、
いっぱいに ひらいて、とおくまで とんで いきます。

 でも、しめりけの 多い 日や、雨ふりの 日には、
わた毛の らっかさんは、すぼんで しまいます。
それは、わた毛が しめって、おもく なると、
たねを とおくまで とばす ことが できないからです。

 このようの、たんぽぽは、いろいろな ちえを はたらかせて います。
そうして、あちらこちらに たねを ちらして、
新しい なかまを ふやして いくのです。



買っちゃいました(^^)v

2008-02-24 23:46:33 | 物語
NO.6の6巻、買っちゃいました。

オクで全巻揃って2500円で出てましたが、
終了が近づいてくると、やはり皆さん同じ事を考えてるんですね。
ポツリ、ポツリと入札が入ってきました。
これは2500円ではもう無理ですわ。
3000円行くか超えるか・・・
まだ3000円でもお得はお得。

長女がブックオフに行くっていうので、あるか見てきてもらいました。
すると1巻2巻があったそうです。
値段いくらやったって聞くと、
「はっきり憶えてないねんけど、確か1巻は105円やった」

105円?!
めちゃ安いやんッ!!
2巻いくらやったんやろ~同じかなどうかな???
ブックオフでは結構値段下がってるんや~
2冊で210円なら、6巻を新品で買っても大丈夫ちゃうん?
さがせば、どこかのブックオフに3巻~5巻あるかもしれん。
でもとりあえず、続きが読みたいから6巻は欲しい。

よし!買おうじゃないか!

下鴨神社の帰り、京都駅の本屋で探したけどなかった。
アバンティの本屋にも行ってみた。

あった~~~~~
よくぞ、会えましたって感じ。

帰りにブックオフにも寄ってみた。この際やし1・2・6巻を揃えよう。

一番上にありますやん。
踏み台に乗って手に取る。
裏を見る。

・・・・・・・550円ですが・・・・・・


何が105円ですかぁ~~~

ま、とりあえず6巻が手に入ったのでコレでよしとしよう。



文庫が1・2・3巻とハードカバーが6巻。
あとどうやって揃えていくかが問題です・・・

17人待ち・・・・・

2008-02-23 16:26:48 | 物語
NO.6の6巻、17人待ちやそうです。

先週借りた本を、健杜と悠那が返しに行ってきました。
結以はお友達とお出かけしております。

私は寒いので家に居ました

んで、悠那に「6巻返してきてな~」と頼んでおいたんですわ。

雪の降る中、自転車で帰ってきました。

「どうやった?」と尋ねると、

「今、一人の人が借りてはって、あと17人の人が待ってはるねんて」

じゅ、じゅうななにん・・・・・

もう買うしかない。
それか、オクで落とすしかない。

ギリギリまで入札せんとこう!と思ってたのに、
今日入札一人入ってました

2500円がいくらになるやろうか。
3冊文庫で持ってるし、6冊2500円ならかなりお得な買い物やけど。

う~~~~~~

NO.6

2008-02-16 18:33:25 | 物語
バッテリーでおなじみ、あさのあつこさんの作品です。
こっちのが古いのかな?同時進行やったのかな?
ちょっとわかりませんが。

文庫が出たのでやっと読み始めました。
バッテリーのが文庫の数多いし、NO.6のが後かな。

いや~ハマるハマる(笑)
もっと早く読んでおけばよかったわ。

詳しい内容はコチラからWikipedia

近未来の物語なんですが、登場人物にすごく魅かれます
性格も育ってきた環境も真逆の「紫苑」と「ネズミ」
二人は出会った事で人生が180度変わるんです。
そしてお互いがお互いを必要になる。

バッテリーでもそうでしたが、
あさのあつこさんの描く男の子ってすごい魅力的ですね。
物語のなかで生き生きとしてます。
もう自分が本の中に入り込んで覗き見てる気分(笑)

ボーイズラブではないんですよ。多分。
二人ともノーマルやと思います。多分。
でもプラスとマイナスみたいな二人で・・・
昔なくしたモノを見つけて惹かれあう?違うかな~
いろんな解釈はあると思うねん。多分。
なんかすごく表現しにくい間柄。なんやろな・・・

でも今のところ、セルジュ&ジルベールではない。
これからもそんな風にはならんと思う。多分。

主人公二人のファンサイトもあるという・・・
画像や小説を中心にした同人誌っぽいものが多いです。

物語の中の二人で遊びたくなる~って心理?

文庫は3巻までしか発売されてないんです。
YA!ENTERTAINMEMTからは6巻まで出てます。
児童書扱いなんですが、内容は大人でも十分楽しめます。
(児童書でいいのか?!・・・以下自粛)

3巻までパートの行き帰りに読み、続きがめちゃめちゃ読みたくなり、
子供らに「学校で借りてきてくれ!」と頼んだけど、無理やった。
なので地域の図書館まで行って来た。

4巻5巻ゲット



文庫化されるまでしばらくかかるやろな~
6巻はいつ読めるのやろうか・・・
3巻まで文庫やし、全部文庫で揃えたいやん。
でも、とりあえず内容が知りたいし4と5借りたけど・・・

すぐに6巻も読みたくなるやろな~
図書館に今日はなかったけど、貸し出し中なんかな?
去年の9月に発売してるしね。
返却しに行ったときにあるといいな・・・

~白いぼうし~

2005-04-20 23:15:35 | 物語
「これは、レモンのにおいですか。」
ほりばたで乗せたお客のしんしが、話しかけました。
「いいえ、夏みかんですよ。」
信号が赤なので、ブレーキをかけてから、運転手の松井さんは、にこにこして答えました。
 今日は、六月の初め。
 夏がいきなり始まったような暑い日です。松井さんもお客も、白いワイシャツのそでを、うでまでたくし上げていました。
「ほう、夏みかんてのは、こんなににおうものですか。」
「もぎたてなのです。きのう、いなかのおふくろが、速達で送ってくれました。においまでわたしにとどけたかったのでしょう。」
「ほう、ほう。」
「あまりにうれしかったので、いちばん大きいのを、この車にのせてきたのですよ。」
信号が青に変わると、たくさんの車がいっせいに走り出しました。その大通りを曲がって、細いうら通りに入った所で、しんしはおりていきました。

 アクセルをふもうとしたとき、松井さんは、はっとしました。
「おや、車道のあんなすぐそばに、小さなぼうしが落ちているぞ。風がもうひとふきすれば、車がひいてしまうわい。」
 緑がゆれているやなぎの下に、かわいい白いぼうしが、ちょこんと置いてあります。松井さんは車から出ました。」
 そして、ぼうしをつまみ上げたとたん、ふわっと何かが飛び出しました。
「あれっ。」
 もんしろちょうです。あわててぼうしをふり回しました。そんな松井さんの目の前を、ちょうはひらひら高くまい上がると、なみ木の緑の向こうに見えなくなってしまいました。
「ははあ、わざわざここに置いたんだな。」
 ぼうしのうらに、赤いししゅう糸で、小さくぬい取りがしてあります。
 「たけやまようちえん たけの たけお」
 小さなぼうしをつかんで、ため息をついている松井さんの横を、太ったおまわりさんが、じろじろ見ながら通りすぎました。
「せっかくのえものがいなくなっていたら、この子は、どんなにがっかりするだろう。」
 ちょっとの間、かたをすぼめてつっ立っていた松井さんは、何を思いついたのか、急いで車にもどりました。
 運転席から取り出したのは、あの夏みかんです。まるで、あたたかい日の光をそのままそめ付けたような、見事な色でした。すっぱい、いいにおいが、風で辺りに広がりました。
 松井さんは、その夏みかんに白いぼうしをかぶせると、飛ばないように、石でつばをおさえました。

 車にもどると、おかっぱのかわいい女の子が、ちょこんと後ろのシートにすわっています。
「道にまよったの。行っても行っても、四角い建物ばかりだもん。」
つかれたような声でした。
「ええと、どちらまで。」
「え。―――ええ、あの、あのね、菜の花横町ってあるかしら。」
「菜の花橋のことですね。」
 エンジンをかけたとき、遠くから、元気そうな男の子の声が近づいてきました。
「あのぼうしの下さあ。お母ちゃん、本当だよ。本当のちょうちょがいたんだもん。」
 水色の新しい虫とりあみをかかえた男の子が、エプロンを着けたままのお母さんの手を、ぐいぐい引っぱってきます。
「ぼくが、あのぼうしを開けるよ。だから、お母ちゃんは、このあみでおさえてね。あれっ、石がのせてあらあ。」
 客席の女の子が、後ろから乗り出して、せかせかと言いました。
「早く、おじちゃん。早く行ってちょうだい。」
 松井さんは、あわててアクセルをふみました。やなぎのなみ木が、みるみる後ろに流れていきます。

 「お母さんが、虫とりあみをかまえて、あの子がぼうしをそうっと開けたとき―――。」と、ハンドルを回しながら、松井さんは思います。「あの子は、どんなに目を丸くしただろう。」
 すると、ぽかっと口をOの字に開けている男の子の顔が、見えてきます。
「おどろいただろうな。まほうのみかんと思うかな。なにしろ、ちょうが化けたんだから―――。」
「ふふふっ。」
ひとりでに笑いがこみ上げてきました。でも、次に、
「おや。」
松井さんはあわてました。バックミラーには、だれもうつっていません。ふり返っても、だれもいません。
「おかしいな。」
松井さんは車を止めて、考え考え、まどの外を見ました。
 そこは、小さな団地の前の小さな野原でした。
 白いちょうが、二十も三十も、いえ、もっとたくさん飛んでいました。クローバーが青々と広がり、わた毛と黄色の花の交ざったたんぽぽが、点々のもようになってさいています。その上を、おどるように飛んでいるちょうをぼんやり見ているうち、松井さんには、こんな声が聞こえてきました。
「よかったね。」
 「よかったよ。」
「よかったね。」
 「よかったよ。」
それは、シャボン玉のはじけるような、小さな小さな声でした。
 車の中には、まだかすかに、夏みかんのにおいが残っています。




長女の小学四年生の国語の教科書に載っていたお話です。
作者はあまんきみこさん。どこかで聞いたことのある名前だなと呟くと、すかさず長女が
「ちいちゃんのかげおくり」を書かはった人と教えてくれました。
「ちいちゃんのかげおくり」というのは
夏のはじめのある朝、小さな女の子のいのちが、空にきえました。
--悲惨な戦争の中に幼い命をとじた女の子の姿を、静かに描いた作品です
読んでいても、表現が可愛いらしいだけに内容を考えると切ない話でした。

今回の「白いぼうし」ですが、これは心がフワっとするお話ですね。
娘の前で目で読んでいたのですが、途中、団地の前の小さな野原に
白いちょうがたくさん飛んでいる風景を想像していたとき、
急に「あっ」と声を出してしまいました。
娘は「どうしたん?!」と聞きましたが、この小さな感動を自分で感じて欲しいと思い、
「あっ」の答えは言いませんでした。その後娘に読み聞かせた後、私の「あっ」の意味が
わかったかどうか尋ねましたが、「わからん」とのこと。
女の子の行方を聞くと「降りたんとちがう?」とか「幽霊やな」という答が返ってきました。
幽霊・・・ほんのちょっと私も思ったけどね(笑)

う~ん。わかってくれなかったのね
でも、可愛いお話ですよね

~お使い~

2005-03-19 00:19:24 | 物語

お月さま、
私は使いにまいります。
よその嬢ちゃんのいいおべべ、
しっかり胸に抱きしめて。

お月さま、
あなたも行ってくださるの、
私の駆けてゆくとこへ。

お月さま、
いたずらっこに逢わなけりゃ、
いつも私はうれしいの。
おかあさんのおしごとを、
よそへ届けにゆくことは。

それに、それに、
お月さま、
私はほんとにうれしいの。
あなたがまあるくなるころに、
私も春着ができるから。


うさぎとかめ・・・の続き

2005-03-16 00:03:23 | 物語
「うさぎとかめ」…有名な昔話なので知らない方はいないでしょう。
でも結末ってご存知ですか?

寝ていたウサギを追い越してカメが勝利
めでたしめでたし

だと私も思っていたのです。が
最近聞いてるラジオ(有線の世界の童話チャンネル)ではちょっと違いました。
続きがあったのです。


負けウサギがウサギ村に帰ると、他のウサギたちに

「カメなんかに負けおって!ウサギ村の面汚しめ!出て行け!」
と追い出されてしまいました。
行くところのなくなった負けウサギですが、ある日こんな噂を耳にしました。

“狼たちがウサギ村の子ウサギを3匹よこせと言ってきた”

負けウサギは、これは村に帰れるチャンスだと思いました。
ウサギ村に行った負けウサギ。

「何しに来たんだ!」「ウサギ村の恥さらし!帰れ!」

罵声を浴びせられましたが、一つ提案しました。
「狼に子ウサギを持っていかなくても良くなるようにすれば
 自分をこの村に帰してくれるかい?」


「よし、上手く行けば戻ってきていいぞ」

さて、狼のところに一人で行った負けウサギ。
狼:
「子ウサギはどうした!?」
負けウサギ:「狼さん、お願いがあるのです。
 子ウサギ達をつれてこようと思ったのですが、
 狼さんの顔があまりに恐ろしく来れないというのです。
 どうでしょう。しばらくの間後ろを向いていてくれませんか?
 その間に子ウサギ達を連れてきます。
 狼さんが向こうを向いていてくれたら子ウサギたちも大丈夫だと思います」

狼: 「そんなことならお安い御用だ! よし、後ろを向いてるぞ」
負けウサギ:「もう少しそっちの崖のところで向こうをむいて立っていてください」
そう言って、狼が崖のところに立つと負けウサギは
力いっぱい狼を後ろから押しました。
狼は崖に落ちていきました。
狼を退治した負けウサギは村に帰ることが出来たそうです。


ちょっと私の付け加えも含まれてますが、こんな感じの話でした。(忘れた)
最近、昔話って子供たちには不適格な内容もあるって問題になりましたよね?
その影響からでしょうか?私たちが知ってる内容と少し違う。
結末にフォローがあるんですよ。「うさぎとかめ」だけじゃありません。
いろんな話があるんですが、微妙に違うんですよね~

~さくらの木~

2005-03-15 00:01:46 | 物語

もしも、母さんが叱らなきゃ、
咲いたさくらのあの枝へ、
ちょいとのぼってみたいのよ。

一番目の枝までのぼったら、
町がかすみのなかにみえ、
お伽のくにのようでしょう。

三番目の枝に腰かけて、
お花のなかにつつまれりゃ、
私がお花の姫さまで、
ふしぎな灰でもふりまいて、
咲かせたような、気がしましょう。

もしも誰かがみつけなきゃ、
ちょいとのぼってみたいのよ。

~見えないもの~

2005-03-13 13:05:20 | 物語
  
ねんねした間になにがある。

うすももいろの花びらが、
お床の上に降り積り、
お目目さませば、ふと消える。

誰もみたものないけれど、
誰がうそだといいましょう。

まばたきするまに何がある。

白い天馬が翅のべて、
白羽の矢よりもまだ早く、
青いお空をすぎてゆく。

誰もみたことないけれど、
誰がうそだといえましょう。




金子みすゞさんです。

私は詩というものが今ひとつ理解できなくて敬遠気味だったのですが、
ドラマで金子みすゞさんを知ってから、彼女の詩は好きになりました。

夢見るような言葉で命の尊重を詠ってる
他の方の詩がどんなものかわからないので比べることはできないんですけど、
私はそんな風に感じました。自然の生き物を挙げて、この世からあの世まで。

あと、色がありますよね。派手な色じゃなく季節に応じた素朴な色を感じました。
春には花・夏には金魚・秋には星や月・冬は雪
金平糖や折り紙を鏤めたような可愛い詩が多いです。

他は母子を詠った詩。
特に娘に対する詩が数多くあります。
私も娘があるし、昔は娘だった時代もあるので、
両方の立場を詠ってるのでとても共感できます。


まだまだ詩に対する理解が浅いですが、それなりに楽しんでます。

ハンナのかばん

2005-02-14 20:43:54 | 物語
第二次世界大戦中、アウシュビッツのガス室で
13年の生涯をおえたハンナ・ブレイディ。
半世紀後、偶然、ハンナが残した旅行かばんと
日本でであった、石岡ふみ子。
ハンナはどんな少女だったのだろう・・・・・?
どんな家族にかこまれ、どんな生涯をおくったのだろう?
そして、少女に何がおきたのだろう?
ふみ子のハンナ探しがはじまった。


ナチスのユダヤ人大量虐殺・・・
ホロコーストの歴史の犠牲になったユダヤ人少女をめぐって、
日本に住んでる一人の女性とボランティアグループ『小さなつばさ』の子供たち、
カナダに住んでいる老人とを結びつけた話です。


東京にある『ホロコースト資料館』の所長石岡ふみ子さん
一つの古い旅行カバンをもって全国の小学校を回っています。
ハンナのカバンにまつわる話で、子供たちの中から
いじめや差別をなくすきっかけになればと全国を回ってるそうです。

資料館を訪れる子供たちからこのカバンの持ち主について
いろいろ聞かれた事がきっかけで、少女について現地にまで行き調べました。


ハンナは3つ年上の兄と家族と一緒にチェコスロバキアのノブ・メストで平和に暮らしてました。
しかしヒトラーがナチスの首相になり、ユダヤ人迫害が始まります。
ユダヤ人を差別する法律が出来、公務員職からも追放され、市民権も奪われます。
ドイツ全土でユダヤ人教会や商店に火がつけられ破壊されます。
ユダヤ人はスポーツ競技場・映画館・劇場にも立ち入り禁止。
チェコのユダヤ人においては夜間の外出禁止・通学禁止になります。

ハンナの家族にも手がのび、母親が逮捕され立て続けに父親も逮捕。
ハンナ兄妹は叔父夫婦に預けられます。
ところが、ハンナと兄ジョージもテレジン収容所に送られてしまいます。

小さいハンナは収容所で同じ年頃の子供たちから可愛がられますが、
心の支えでもある大好きな兄とも離されてしまいます。
その後半年の間に、両親がアウシュビッツ(死の収容所)に送られ殺さてしまいます。

兄もアウシュビッツに送られる事が決まり、ハンナは寂しさでいっぱいになりますが、
兄ジョージの“必ずお前を連れて帰るって、父さんと母さんに約束したんだ。
 お兄ちゃんは必ず約束を守るよ。また家族みんなで暮らすんだ”
 
の言葉を信じて頑張ります。
兄ジョージがアウシュビッツに送られた一ヵ月後、とうとうハンナも死の収容所に。

ハンナは翌日のアウシュビッツの出発のため、カバンに荷物を詰め込みます。
兄との再会に胸を躍らせますが、その夜がハンナの最後の夜でした。


ふみ子さんは、日本の子供たちにハンナのことを伝えるために
何か資料が無いかとテレジン収容者博物館を訪ねました。
そこで、テレジン収容所からアウシュビッツに送られた約9万人の名前が載っている
名簿に出会う事が出来、収容者リストの中にハンナと
彼女の兄らしき人物の名前を見つける事が出来ました。
なんとその兄はホロコーストを生きのびてることがわかりました。

現在、ジョージ・ブレンディさんはカナダでご家族と一緒に幸せに暮らしているとの事。

ふみ子さんは早速日本に帰り、『小さなつばさ』の子供たちに
その事を伝えると、ブレンディさんにみんなで手紙をかきました。

日本にハンナのかばんがあること。
ハンナがどんな少女だったのか、どんなことを夢見ていたのか、
幸せだった日々の事を日本の子供たちに教えて欲しい。
ハンナの写真が残っていれば、貸して欲しい。
一人でも多くの子供たちにハンナの事を伝えて、
平和について考えてもらいたい。

ブレンディさんから返事が来て中からハンナの写真もでてきました。

手紙にはハンナが家族に愛されて幸せな日々をすごしていた事や
ブレンディさん自身も、今はカナダで子供や孫たちに囲まれて
幸せに暮らしている事などが書かれていました。

そして遂に、ブレンディさんが17歳の娘ララ・ハンナさんと一緒に
日本にやってくることが実現したのです。
そこでブレンディさんは57年ぶりに妹ハンナのかばんと再会できました。

もしかしたら、学校の先生になりたいと思っていたハンナの夢が
今ここで叶ったのかもしれないとブレンディさんは思いました。
ハンナの13年という短い一生を通して、人種が違えども
同じ人間としてお互いを尊重し認め、思いやりの心を持つという
大切なことを子どもたちは学んでくれてるのかもしれないと。

妹との約束は結果的には守れませんでしたが、
こうやってまたハンナのかばんに出会えたというのは
奇跡にも近いものだと思います。
それだけハンナの家族と一緒にまた暮らしたいという
願いが強かったのかもしれません。


ブレンディさんと娘のララ・ハンナさんは、広島にも訪れ
子供たちや先生たちに、妹ハンナの思い出話を語りました。
そして、ハンナのかばんは今も旅を続けています。

車椅子のびすこ

2005-01-27 20:36:04 | 物語
犬を飼いだすと、犬関連の本についつい目が行ってしまいます。
この本も表紙に目がいき、数ページ立ち読みしたところ
読みやすさからか内容からか、あっという間に引き込まれていました。

作者の職業は漫画家です。
彼女には小さい頃から夢がありました。
一つは、漫画家になること。
二つめは、漫画家になったら独立して自分の城を持つこと。
三つめは、独立したら犬を飼うこと。
人付き合いの苦手な彼女は、一人で出来る仕事と、一人で暮らせる家と、
言葉を持たない犬と暮らすという隠居老人のような生活が理想だったそうです。

念願の自分の城を持った彼女が次にしたことは犬探し。
コーギーが欲しかったそうです。
今でこそコーギーは珍しくない犬種ですが、この当時はまだ店頭にいなく
ペットショップに問い合わせて探し出したということです。

やっと見つけたコーギーに『びすこ』と名づけます。
自分の城に初めて招き入れる様子や、マニュアルどおりにいかない犬のしつけ。
理想と何もかもが違っていたことなど・・・おもしろおかしく書かれています。

あまりの大変なしつけに根を上げた作者は、訓練学校にびすこを入れますが、
離れている間の寂しさや自分を忘れてしまわないかという不安・・・
3ヶ月ぶりに訓練学校から作者の下に帰ってきます。
犬のくせに自分の気持ちを表現するのが苦手なびすこは
物足りなさを感じる作者の布団の中に、夜中になってゴソゴソ
入って安心したように眠っていたそうです。

中でも面白かったのが彼氏(作者のご主人)と初めて犬が出会うシーン。
作者が警戒しない人物には、基本的には吠えたりしないけど、
だからといって彼女以外の人間になつくということもないびすこは
常に人間と一定の距離を保っていたらしい(愛犬との一体感を求めていた作者には寂しい話)。
訓練所から帰ってきても、子供と男性には触られるのを極端に嫌がったびすこは、
もし手を出してこようものなら、威嚇して近寄らせなかったそうです。
ところが彼氏が始めて家に来た時、『可愛いな』と触ろうとした彼氏の手に
一瞬にしてガブリとびすこは噛み付いたそうです。
実家でも犬を飼っていて、犬慣れしてる彼氏は少しも慌てず、
びすこの首根っこをつかむと、そのままばっしーんと壁に投げつけました。
作者もびっくりしたけど、びすこもかなりびっくりした様子だったそうです。
耳を伏せて、床にぴたりとはいつくばったびすこは
彼氏が低い声で『こい、びすこ』と言うと、はいつくばったままじりじりと
近づいていき、彼氏のされるがままになったらしいです。
それ以来、心を開いたかどうかは否だけど、彼氏に服従を誓ったらしいです。

もう一つ、食いしん坊のコーギーならでは(?)の事件。
テニスボールまで飲み込んでしまったことのあるびすこは、
胃腸はいたって丈夫だったそうで、数日後バラバラになって
排泄物と一緒にボールは出た来たそうです。
固めるテンプルも食べたことがあるらしい・・・

出かける時には細心の注意を払って出るらしいのですが、
その日帰宅すると、いつもなら玄関の鍵の音で出迎えてくれる二匹の犬達
(一匹ではかわいそうともう一匹『あんこ』というコーギーを飼いだした)がそこには居ない!?
不安になった作者は急いで家の奥に駆け込んでいくと、
キッチンの床に二頭のトドが横たわっていたらしい。
お腹をパンパンに膨らませたびすことあんこがトドのような体型になって
ウーウーとうめきながら横たわっていたらしいです。
そのあと3日間ほど絶食を強いられたことは想像できました。

毎日の生活に犬が加わることは、小さい頃から飼っていた人には
なんていうこともないんでしょうが、初めて飼うとなると驚き・戸惑いの連続。
私も半年に達してませんが、色々ありました。
『カイロ』を食べていた時はびっくりしました。
12月31日の夜中で、もし具合が悪くなった場合どうすんの?!って思いましたよ。
しばらく真っ黒のウンチをしていましたが大事には到りませんでした。

びすこはこの先、半身不随になって歩けなくなります。
原因不明のてんかんで、口からは自分の歯で傷つけた舌の血液混じりの泡を吹いて、
糞尿は垂れ流し、病院で処方された薬を飲ませると半ば朦朧とした目つき表情。
かわいそうで仕方ない状態になってしまいます。
でも作者は、歩けないなら自分がびすこの足になって散歩に連れ出します。
バスタオルでびすこの下半身を巻き、持ち上げるようにして散歩したそうです。
作者の肩と腰にも並ならぬ負担がかかったことは言うまでもないでしょう。
アスファルトで足が傷つかないようにと芝生の公園まで自転車で行きます。
おしっこをする場合も、人間が腰を持ち上げてあげないと下半身は汚れてしまいます。
夜中も寝てる間に部屋は糞尿でいっぱいになります。
それでもびすこを見捨てず、献身な介助をしてあげます。
なんどか危ない状態に陥ったびすこですが、食欲だけはあったそうです。
食べてるうちは大丈夫。少しでも動けるうちは大丈夫。
動物は動けなくなると終わりだというそうです。
今でも作者に見守られて公園を車椅子で散歩してる事と思います。


私も、犬を飼うまでは“たかが犬ごときに”なんて思ってましたが、
感情表現がストレートなのにはびっくりしました。
置いていかれると悲しい、一緒に行けると嬉しい。
帰ってくると全身で喜んでくれる。
私のことを待っていてくれる。私の感情を読み取る。
これは犬を飼ってみないと知らずに終わってしまう貴重な事実。
まさに人間の子供と一緒です。
犬も人間と一緒の家族だから。
悲しいときには慰めてくれる家族だから。
嬉しい時も一緒に笑いあえる家族だから。

ずーっと ずっと だいすきだよ

2004-12-21 00:01:48 | 物語
このお話は本屋でなにげなく立ち読みしたら
思わず泣きそうになって焦ったお話です。

偶然、小学校1年生の国語の教科書にも載っていて、
長女が「うちにある絵本と一緒の話が載ってる」と読み聞かせてくれ、
それから2年後、今は次女読み聞かせてくれてます。

子供たちが小さい頃は私が読み聞かせてあげてたのにね。

犬のエルフィー(教科書ではエルフ)と男の子のお話です。

 ~エルフィーのことを、はなします。
    エルフィーは、せかいでいちばん、すばらしい犬です。~

男の子は小さい頃から、小さいエルフィーと一緒に成長してきました。
エルフィーのあったかいおなかをいつも枕にして眠るのが好きで
彼らは一緒に夢をみてきました。
男の子の兄弟たちもエルフィーが好きでした。

イタズラ好きのエルフィーはリスを追いかけるのが好きで
ママの花壇を掘りかえすのも好きでした。
悪さをしたエルフィーを家族は怒りましたが、
しかっていながらもみんなエルフィーが大好きでした。

 ~すきなら、すきといってやればよかったのに
    だれも、いってやらなかった。
    いわなくっても、わかるとおもっていたんだね。~

男の子の背が伸びていくのとともに、エルフィーは太っていきました。
老犬のエルフィーは、寝てることが多くなり散歩を嫌がるようになっていきました。
男の子はとても心配です。

男の子はエルフィーを獣医さんに連れて行きましたが
出来ることはなく、「エルフィーは年をとったんだよ」と言われました。

そのうち階段も上がれなくなっていったエルフィー。
ベッドは2階の男の子の部屋にあります。
男の子はエルフィーをおんぶして部屋に連れて行きます。

   ~ぼくは、エルフィーに、やわらかいまくらをやって、
    寝る前にはかならず「エルフィー、ずーっと、大好きだよ」って言ってやった。
    エルフィーはきっとわかってくれたよね。~

ある朝目を覚ますとエルフィーは亡くなってました。

エルフィーを庭に埋め、家族みんなで泣きました。
兄弟たちもエルフィーが好きでしたが、誰も好きって言ってやりませんでした。
男の子も悲しくってたまらなかったのですが、
毎晩エルフィーに好きって言ってやってたので気持ちがいくらからくでした。



   ~となりの子が子犬をくれると言った。
    もらってもエルフィーは気にしないってわかっていたけど
    ぼくは、いらないって言った。
    かわりに、ぼくがエルフィーのバスケットをあげた。
    ぼくよりそのこの方が、バスケットいるもんね。~

男の子はこれからも他の犬を飼ったり、子猫や金魚も飼うでしょう。

   ~何を飼っても、毎晩きっと言ってやるんだ
     「ずーっと ずっと 大好きだよ」って。~


エルフィーもこれだけ可愛がってもらえたら本望でしょうね。
男の子の優しい気持ちは絶対にエルフィーに伝わったと思います。


やはり!最近の小学校の教科書は侮れません・・・





「ずーっと ずっと だいすきだよ」(作・絵 ハンス・ウィルヘルム) 評論社

忘れ物2

2004-11-30 15:55:36 | 物語
聞いた話なんですが、
車のパワーウィンドウの調子が悪いので見てもらうと
ドアの内張り(?)からハンバーガーが出てきたとか。
製造過程でドアを取りつけるときに
工員がハンバーガーを食べながら仕事をしていたのかも?!
アメリカの話だったらしいですけどホントかな~???

同じ忘れ物でも墨壺とハンバーガーじゃ比べ物になりませんね(笑)
後世に名を残すためにハンバーガーをドアに忍ばせる・・・
カビるんるんが増殖しそう~

忘れ物のもう一つひどい話。これは私の実体験。
ビデオデッキの調子が悪かったんです。
テープの取り出しが何故かできない。
やっと出てきたと思えばテープが絡んでる。
再生中はデッキからこすれるような音が聞こえる。
画質が乱れる・・・などなど。
メーカーに修理に出しても直ってなかった。
(もちろん修理代は取られました)

ある日テレビの調子が悪く電気屋さんが見に来てくれました。
その時にテレビの上に乗っていた
調子の悪いビデオデッキを下におろしたんです。
すかさず電気屋さんが「あれ?何の音?!なんか鳴ってるな?」と。
カラカラ音が鳴るので逆さまにして振ると
ポロット出てきました。カセットテープのケースが。
しかも一部分こすれて擦り減っていました。

それ以来デッキの調子は戻りました。
カセットテープは子供がいたずらしたものだと思います。
しかし!メーカーに修理に出したのは何だったんだ~~~?

忘れ物

2004-11-30 14:57:39 | 物語
パパの職業は大工さんです。
画像は墨壺といいまして、
木材などに印をつけるための道具です。

初めて墨壺を使うところを見たときは感動しました。
糸を引っ張ると墨が滲みて糸口から出てきます。
それを印のつけたい木材の先に差します。
糸の緩みを巻き取り指でつまんではじくと
木の表面に直線がパシッとつくんです。
昔の人の知恵なんですね~凄いですよ。

今はもう墨壺は使ってません。
今はもっと軽くてコンパクトなマーカーを使います。
風情もへったくれもないですけどね。

その墨壺ですが
奈良の東大寺正門の南大門の梁から発見された話があります。
南大門は平安時代に大風で一度倒れたので
今の門は鎌倉時代に再建されたものです。

映画「みんなの家」の中にその話が少し出てきます。
“南大門を建てた大工が自分が建てた証拠に忍ばせておいたんだ。
 でもそれを知ってるのは神様と大工自身なんだ。”

それともそそっかしい大工が忘れてきたのか・・・
でも大工にとって墨壺は三種の神器ってほど大事なもの。
やっぱりわざとでしょうかね~

大工と神様、あともう一人(一体?)仁王さん(金剛力士像)のみぞ知るですね。

泣いてください・・・

2004-11-05 23:30:15 | 物語
“山のふもとに古い電話ボックスがあります。
 人通りも少ないので、電話をかける人はあまりいません。
 電話ボックスは、日暮れになると、ぽっと明りが灯りました。
 ぽつんとした小さな明りは少し淋しそうで、いつもお客さまを待っているようでした。”

NHK教育で放送されてる『おはなしのくに』という朗読番組で取り上げられた、
『きつねのでんわボックス』(作・戸田和子)というお話です。
子供が小さいうちは、見てなくても午前中はNHK教育が流れていました。
これを初めて聞いたときも、ただテレビが勝手についていて、勝手に喋ってる状態でした。
ところがなんとなく気になり、家事をしながら思わず座り込んで聞き入ってしまいました。
朝から掃除をしながら泣きました。自分でもおかしな図だなとは思ったんですが(笑)
今でもこのお話は朗読されてます。

母きつねと子ぎつねが仲良く暮らしていました。
母きつねは子ぎつねが可愛くていとおしくて、とても大事にしていました。
“坊やがうれしいと、かあさんはいつもうれしいのよ”
“ほんと?なんだかへんだな。じゃ、ボクがまほうをつかったらもっとうれしい?”
“まほう?”
“うん、きつねはまほうが使えるんだって。ふくろうおじさんが言ってたよ”
“ほほほ、でもねえ、あれはきっとうそよ。
だってかあさん、どんなにおまじないしてもばけられないもの”

“なあんだ、がっかり”
“ふふふ、ざんねんね”

幸せな日々がずっと続いていくのだと母子で思っていたのでしょう。
ところが、秋の空気が漂ってきた頃、子ぎつねの様子が変わりました。
くる日もくる日も、母きつねの胸の中で震え続け、とうとうある朝、
小さい体をもっと小さくして冷たくなってしまったのです。
母きつねがいくら呼んでも、子ぎつねは返事をしませんでした。
毎日母きつねは泣き暮らしました。体がとけてしまいそうなほど・・・

山のふもとに電話ボックスがあります。
電話ボックスの小さな明りは、きつねの胸をほんの少しだけあたためました。

“かあさん!”
電話ボックスに毎日やってくる小さな男の子に出会いました。
人間の男の子ですが、母きつねは坊やの姿を重ねていました。
男の子のかわいい仕草を見て、
“まあ、かわいい。私の坊やも人間だったらこのくらいかしら・・・”

毎日、男の子がやってくるのを楽しみにする母きつね。
病気で遠くの病院に入院している母親に、毎日電話しにやってくるのです。

“かあさん、あいたいな・・・”
まるで坊やが生きていて、自分に言ったような気がしてきて、
“ええ、かあさんも、会いたいわ・・・”
母きつねは、思わずそう言ってました。
きつねは飛び出していって、男の子を抱きしめ頭や顔をペロペロ舐めてやりたくなりましたが
そんなことをしたら、男の子は驚いてもう電話ボックスにやってこなくなるでしょう。
母きつねはしっぽを抱いてじっと我慢するしかないのです。

“かあさん、はやくよくなってね。そしたら一緒にハイキングや海へ行こうね”
“はいはい、そうしましょう”
“それまでは電話でいいよボク。電話だってうれしいんだから”
“かあさんもうれしいわ・・・”
“かあさんて、ボクがうれしいと、いつもうれしいって言うんだね”
“ええ、そうよ、そうよ”
きつねは何度も頷きました。

冬が訪れようとする頃、きつねは電話ボックスに明りがついていないのに気づきました。
駆け寄ると、ドアに白い紙が貼られています。でもきつねには読めません。
その時車が通りかかり、男の人が二人話しているのを聞きました。
古いし、かける人もそういないから、きっと取り外してしまうのだろうという事を・・・

母きつねはびっくりしました。電話が使えなくなると、あの男の子はどうなるの?
母親に電話できなくなる・・・目の前に男の子の今にも泣きだしそうな顔が浮かびました。
もうすぐあの子がやって来る。母親に電話をするために。
困っていると、遠くから男の子の走る音が聞こえてきました。

どうすることも出来ないきつねは、かわいそうな男の子を抱くようにそっと前足を伸ばして
“私があの子の電話ボックスのかわりになれたら・・・”と思い、
くやしくなって、足をじたんだ踏んだとき、きつねの姿は電話ボックスに変わっていたのです。

男の子は二つある電話ボックスに驚きましたが、まよわずきつねの電話ボックスに飛び込みました。
男の子はすくっと背を伸ばして受話器をとりました。
コスモスの花のような手のひらから温かさが伝わってきます。
“もしもし、かあさん?”
きつねの胸の中で、男の子の声が聞こえました。ふわんと甘い匂いもしました。
“かあさん、きこえる?”
“は、はい、かあさんよ・・・”
“あのね、きょうおじいちゃんがね・・・”
“はいはい、わかった。大きな町の駅に行ったんでしょう”
“ううん、ちがうよ”

いろんな話をしました。でも幸せなひと時は続かなかったんです。
男の子の話によると、今一緒にすんでいるおじいさんの次の仕事が
母親の病院のある町だという事がわかりました。
“もう電話しなくったって、いいんだ。だって、毎日かあさんに会えるんだもの”
男の子は嬉しそうに話しますが、きつねはもう男の子にあえなくなる悲しみで
胸が押しつぶされそうだったのでしょう。
電話が終わると、男の子は嬉しそうにぴょんと外へ飛び出して行きました。

気がつくと、きつねは夢から覚めたようにぼんやりしていました。
でも、胸の中にはまだ男の子のぬくもりが残っています。
ほっぺの甘い匂いも残っています。

ふと見ると、今まで消えていた電話ボックスの明りがついているのです。
ふるえるようにゆっくりと明りが灯り始めたのです。
電話ボックスの中はあたたかでした。胸の中から元気が沸いてくるようでした。
“よかったわ、あの子がお母さんに会えて。私もあの子のおかげで坊やを思い出すことができたもの・・・”
坊やに声が届きそうな気がして、そっと受話器を取りました。
“もしもし、ぼうや・・・
あのね、かあさん魔法がつかえたのよ。ほんとよ・・・”
返事はありませんでしたが、母きつねはガッカリしませんでした。
坊やは自分の胸の中にいつも一緒に居る事に気づいたからです。

唯一、母きつねが気付かなかったことは、
電話ボックスがきつねのために最後の力で明りを灯したことです。
消えてしまいそうな母きつねの心に再び灯をともしたことを。
電話ボックスの中のきつねの顔は幸せでした。




参考図書:金の星社『きつねのでんわぼっくす』(戸田和子・作/たかすかずみ・絵)