車椅子のびすこ

2005-01-27 20:36:04 | 物語
犬を飼いだすと、犬関連の本についつい目が行ってしまいます。
この本も表紙に目がいき、数ページ立ち読みしたところ
読みやすさからか内容からか、あっという間に引き込まれていました。

作者の職業は漫画家です。
彼女には小さい頃から夢がありました。
一つは、漫画家になること。
二つめは、漫画家になったら独立して自分の城を持つこと。
三つめは、独立したら犬を飼うこと。
人付き合いの苦手な彼女は、一人で出来る仕事と、一人で暮らせる家と、
言葉を持たない犬と暮らすという隠居老人のような生活が理想だったそうです。

念願の自分の城を持った彼女が次にしたことは犬探し。
コーギーが欲しかったそうです。
今でこそコーギーは珍しくない犬種ですが、この当時はまだ店頭にいなく
ペットショップに問い合わせて探し出したということです。

やっと見つけたコーギーに『びすこ』と名づけます。
自分の城に初めて招き入れる様子や、マニュアルどおりにいかない犬のしつけ。
理想と何もかもが違っていたことなど・・・おもしろおかしく書かれています。

あまりの大変なしつけに根を上げた作者は、訓練学校にびすこを入れますが、
離れている間の寂しさや自分を忘れてしまわないかという不安・・・
3ヶ月ぶりに訓練学校から作者の下に帰ってきます。
犬のくせに自分の気持ちを表現するのが苦手なびすこは
物足りなさを感じる作者の布団の中に、夜中になってゴソゴソ
入って安心したように眠っていたそうです。

中でも面白かったのが彼氏(作者のご主人)と初めて犬が出会うシーン。
作者が警戒しない人物には、基本的には吠えたりしないけど、
だからといって彼女以外の人間になつくということもないびすこは
常に人間と一定の距離を保っていたらしい(愛犬との一体感を求めていた作者には寂しい話)。
訓練所から帰ってきても、子供と男性には触られるのを極端に嫌がったびすこは、
もし手を出してこようものなら、威嚇して近寄らせなかったそうです。
ところが彼氏が始めて家に来た時、『可愛いな』と触ろうとした彼氏の手に
一瞬にしてガブリとびすこは噛み付いたそうです。
実家でも犬を飼っていて、犬慣れしてる彼氏は少しも慌てず、
びすこの首根っこをつかむと、そのままばっしーんと壁に投げつけました。
作者もびっくりしたけど、びすこもかなりびっくりした様子だったそうです。
耳を伏せて、床にぴたりとはいつくばったびすこは
彼氏が低い声で『こい、びすこ』と言うと、はいつくばったままじりじりと
近づいていき、彼氏のされるがままになったらしいです。
それ以来、心を開いたかどうかは否だけど、彼氏に服従を誓ったらしいです。

もう一つ、食いしん坊のコーギーならでは(?)の事件。
テニスボールまで飲み込んでしまったことのあるびすこは、
胃腸はいたって丈夫だったそうで、数日後バラバラになって
排泄物と一緒にボールは出た来たそうです。
固めるテンプルも食べたことがあるらしい・・・

出かける時には細心の注意を払って出るらしいのですが、
その日帰宅すると、いつもなら玄関の鍵の音で出迎えてくれる二匹の犬達
(一匹ではかわいそうともう一匹『あんこ』というコーギーを飼いだした)がそこには居ない!?
不安になった作者は急いで家の奥に駆け込んでいくと、
キッチンの床に二頭のトドが横たわっていたらしい。
お腹をパンパンに膨らませたびすことあんこがトドのような体型になって
ウーウーとうめきながら横たわっていたらしいです。
そのあと3日間ほど絶食を強いられたことは想像できました。

毎日の生活に犬が加わることは、小さい頃から飼っていた人には
なんていうこともないんでしょうが、初めて飼うとなると驚き・戸惑いの連続。
私も半年に達してませんが、色々ありました。
『カイロ』を食べていた時はびっくりしました。
12月31日の夜中で、もし具合が悪くなった場合どうすんの?!って思いましたよ。
しばらく真っ黒のウンチをしていましたが大事には到りませんでした。

びすこはこの先、半身不随になって歩けなくなります。
原因不明のてんかんで、口からは自分の歯で傷つけた舌の血液混じりの泡を吹いて、
糞尿は垂れ流し、病院で処方された薬を飲ませると半ば朦朧とした目つき表情。
かわいそうで仕方ない状態になってしまいます。
でも作者は、歩けないなら自分がびすこの足になって散歩に連れ出します。
バスタオルでびすこの下半身を巻き、持ち上げるようにして散歩したそうです。
作者の肩と腰にも並ならぬ負担がかかったことは言うまでもないでしょう。
アスファルトで足が傷つかないようにと芝生の公園まで自転車で行きます。
おしっこをする場合も、人間が腰を持ち上げてあげないと下半身は汚れてしまいます。
夜中も寝てる間に部屋は糞尿でいっぱいになります。
それでもびすこを見捨てず、献身な介助をしてあげます。
なんどか危ない状態に陥ったびすこですが、食欲だけはあったそうです。
食べてるうちは大丈夫。少しでも動けるうちは大丈夫。
動物は動けなくなると終わりだというそうです。
今でも作者に見守られて公園を車椅子で散歩してる事と思います。


私も、犬を飼うまでは“たかが犬ごときに”なんて思ってましたが、
感情表現がストレートなのにはびっくりしました。
置いていかれると悲しい、一緒に行けると嬉しい。
帰ってくると全身で喜んでくれる。
私のことを待っていてくれる。私の感情を読み取る。
これは犬を飼ってみないと知らずに終わってしまう貴重な事実。
まさに人間の子供と一緒です。
犬も人間と一緒の家族だから。
悲しいときには慰めてくれる家族だから。
嬉しい時も一緒に笑いあえる家族だから。

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2 コメント

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ダメ飼い主 ()
2005-01-31 10:34:53
るなっちのおかげで、自分では手に取らないような本が読めて、うれしいです。

家の人間に吠え、よその人大好きという、

我が家のダイスケの、ダメ飼い主としては、

(でもかわいいんだ♪)どうなっても

最後まで面倒みてやるぞ!って気にさせられました。(ダイスケ!るなちに感謝しろ!)
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いえいえ。 (るなち)
2005-01-31 12:55:54
私って感動の押し売りをしたいタイプの人なんですよ(笑)

共感してもらえてあたりまえ!って思ってるフシがある・・・

でもすごく読みやすくって面白かったですよ。

途中ボロボロ泣けるシーンもあったけど・・・

去年の11月に出版されてて、

あとがきには「びすこ」は元気ですって載ってたけど

今どうしてるかな?気になるわ~



>家の人間に吠え、よその人大好き

うちの子供らみたい(笑)
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