天使の図書館ブログ

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動物たちの王国【第二部】-16-

2014-03-17 | 創作ノート
【そよ風の朝】キャロル・サクス(オールポスターズの商品ページよりm(_ _)m)


 実をいうと、前回と今回は元の文章では*****という感じの区切りで繋がってるんですよね(^^;)

 なので、こうやって文章を離してしまうと、ますますあっさり目でなんかつまんない感じだなという気がしたり

 でもこのお話、結局結構長いので(たぶんまだ半分も来てないです)、あとで全体として見た場合に、「まあこんなもんでもいっか☆」と納得していただけると幸いです的なww

 そんなわけで本文短いので、前文に何を書こうかと思ったんですけど……先ゆきが長いことを思うと、まずもって書くことがなくなりそうだな~と思う部分があり……そんなわけでまあ、またもやアトゥール・ガワンデ先生の本に頼ることに(笑)

 いえ、なんていうかガワンデ先生は天才だと思うんですよね

 もちろん、わたしは訳されたものを読んでるわけですけど……たぶんガワンデ先生はお医者さん辞めても文章書いてごはん食べていけるんじゃないかなっていうくらい文章が上手いと思います

 あと、わたし「医師は最善を尽くしているか」の他に「コード・ブルー」っていう本を読んだんですけど(どちらも一行の無駄もなく物凄く面白かったです!)、この2冊の本を読んであらためて思ったのは、「日本よりもアメリカのほうが、やっぱり考え方がオープンだなあ☆」ということだったでしょうか。

 ガワンデ先生は本の中で「医者は必ずミスするものだし、失敗からは誰も逃れられない」みたいなことを書いてると思うんですけど、日本ではこの比重がアメリカよりもより重い気がするというか。

 つまり、ガワンデ先生は本の中で「自分もこういう失敗をしたことがある」とかって率直に述べていらっしゃるんですけど……日本の先生が同じような書き方をしたら、たぶん大変だと思うんですよね

 どこらへんが大変かというと、その一言で医師としての評判にすっかりケチがついてしまい、「先生で本当に大丈夫なんでっしゃろな☆」と、無意味に疑い深い目で見られたり、本が出版された翌日には病院にジャンジャン電話がかかってきて、「わたしも△△先生の手術を受けたんですけど……」とか苦情処理に苦慮しそうというか(^^;)

 わたしも書きはじめた時から一応思ってはいたんですよね。「翼に医師としてどうやって失敗させるか」みたいなことは。

 なんでかっていうと、「ミスしない医者」なんて絶対リアルじゃないし(いや、わたしの書いてるのは間違いなくリアルじゃないけど・笑)、そういう苦悩を乗り越えてこそ医者としてなんぼというか、それでようやく人間として共感できる医師像になるんじゃないかな……と思うので。

 でも、まず第一に翼に失敗させるとしたら、「かくかくしかじかで、もうこれは彼をもってしてもどーしょーもないことだった☆」っていう筋立てを考えなくちゃいけないんですよね。

 わたしの場合、その部分の医療的知識が限りなくゼロ☆に近いので、まあ割合すぐに諦めました(笑)

 あと、一種の医者としてのヒーロー像(?)みたいなものとして、一回でも失敗しちゃうと何やらケチがつく……というものからも、主人公として回避させねばならないっていうのもあるというか

 そんなわけで、基本的に恋愛メインの、そこの盛り上がり的なものがなくなったあとは多少ミステリーの要素が絡んでくる……といったよーなお話になってしまったのでした。。。

 ではでは、今回は一応、ドラクエでいったら「ぱふぱふバーでつばさはかんごしのゆいとぱふぱふした!!ω→^p^」みたいな回なのかなと思います。

 それではまた~!!



       動物たちの王国【第二部】-16-

 翼が居間に戻ってみると、唯が皿洗いをしているところだった。『べつにおまえが食ったものがあるわけじゃねーんだから、そんなことはいいんだって』と、喉まで言葉が出かかるものの、翼にはやはり何も言えない。

「唯……」

 翼が彼女のことを後ろから抱きすくめると、唯は硬直したように動かなくなった。翼はまるで彼女が再起動するためのスイッチを探すように首筋にキスをしたが、相手から特にこれといった反応はない。

(これ、行けるか?)が、やがて(行っていいのか?)に変わり、さらに(行くところまで行ってしまえ!!)にまでモードが急変化するのに、翼の中でさして時間はかからなかった。

 この日のために寝室の模様替えをしておいて良かったと翼は思いながら、リビングにあるソファに唯のことを押し倒してキスを繰り返したあと、彼女の体を抱き上げてベッドへ向かった。
 
 翼は短期決戦型のせっかちな男なので、7号室で唯を押し倒したその日の夜には、高級家具店でいかにも女性受けしそうな寝具類を注文していた。お陰で以前は黒一色だったシーツもベッドカバーもシルクやサテンといった肌触りのいい上質なものに変わっている。

「おまえ、俺が相手じゃ不満か?」

 唯は少し驚いた顔のまま首を振った。一体誰が彼のような男に対し、不満を持つのだろうとすら思う。けれど……。

「あ、あのっ、やっぱり急にはわたし……」

「ああ、そうだっけ。おまえ、結婚するまでは駄目とかいう、旧石器時代の遺物なんだもんな。江口さんから聞いた」

 ここで唯の顔がそれまで以上に赤くなり、初めて抵抗が激しいものになる。だが翼はといえば、実に手慣れたものだった。浮いた腰の隙間から手を伸ばしてブラジャーのホックを外すと、ブラウスのボタンなど外れていてもいなくてもどうでもいい状態になる。

「もう諦めろ。そのかわり、おまえには俺が全部良くしてやるから、唯……」

 唯にしてもこの時、もっと必死になって抗えば、胸を見られて乳首をなめられたという程度で終わらせることも出来たのかもしれない。けれど、やはり出来なかった。翼になし崩し的に言うなりにされたというよりも――ある瞬間に気づいてしまったから。彼が外科手術をしている時と同じ、真剣な眼差しでこちらを見ているということに……。

 翼にとっては至福の、唯にとっては愛される恐れの満ちたひとときが過ぎ去った時、時刻はちょうど十二時少し前だった。翼は日頃の蓄積した疲労もあってか、すぐ深い眠りへ落ちてしまったが、その前に「心配しなくていい。愛してるから……」と、唯の耳元に囁くことだけは忘れなかった。

 一度短い眠りに落ち、そして深夜に目が覚めた時、唯は翼が最後に言った言葉をもう一度胸の中で反芻していた。

(『心配しなくていい。愛してるから……』彼は本当にそう言った?わたしの気のせいじゃなく?)

 出来ればこのまま着替えて、翼が起きてくる前に唯は帰りたかった。こういう時、他の女性は一体どうしているのだろうと震える心で思うが、唯はこの時本当にどうしていいかわからなかった。

(随分遅い時間だけど、下に行って携帯でタクシーを呼ぶ?でもここ、鴎通りの何丁目の何番地なんだっけ?明日も仕事に行かなくちゃいけないし、お風呂にも入って、それから……)

 そこまで思ってから唯は、不意に隣で寝ている男に目を留め、少しだけ微笑んだ。

(結城先生は少し乱暴だけど、優しい……)

 唯は幸せではあったが、かといって朝までここにいる勇気もないゆえに――バッグの中のメモ帳を一枚はぐと、そこに携帯の番号と<唯>という自分の名前だけを残して翼のマンションを出ることにした。

 幸い、タクシーのほうは近くを走っていた海猫タクシーがすぐ捕まって良かったが、唯はこの時窓から見える闇とも海ともつかぬ景色を眺めてこう思っていた。歓喜もここまで極まると、むしろ日常生活に支障をきたすのではないかということと、もしそれがこれから崩れ去るとしたら、自分は果たして正気を保てるのだろうかということを……。



 >>続く。





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