万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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0126 石川女郎

2006-05-06 | 巻二 相聞
石川女郎贈大伴宿祢田主歌一首

遊士跡 吾者聞流乎 屋戸不借 吾乎還利 於曽能風流士

遊士(みやびお)と 我れは聞けるを やど貸さず 我れを帰せり おその風流士(みやびお)

大伴田主字曰仲郎 容姿佳艶風流秀絶 見人聞者靡不歎息也 時有石川女郎 自成雙栖之感恒悲獨守之難 意欲寄書未逢良信 爰作方便而似賎嫗 己提堝子而到寝側 哽音□足叩戸諮曰 東隣貧女将取火来矣 於是仲郎 暗裏非識冒隠之形 慮外不堪拘接之計 任念取火就跡歸去也 明後女郎 既恥自媒之可愧 復恨心契之弗果 因作斯歌以贈謔戯焉


石川郎女、大伴宿祢田主に贈る歌一首

「あなたはイケメンだと、噂に聞いていたわ。だけど、私を家に泊めないで、追い返したでしょ?全くダサメンだわ!」

大伴田主は通称を仲郎という。眉目秀麗、風流子であった。ときに石川郎女という者がいた。石川郎女は、なんとかして仲郎とステディな仲になりたいと願いつつ、独身のつらさを嘆いていた。ラブレターを届けようにも『つて』がない。

そこで、郎女は策略をめぐらし、貧しい老婆に変装し、寝所(ベッドルーム)に潜り込むがため、土鍋を下げて仲郎の自宅に向かう。老婆の声色を使い、おぼつかない足取りでドアをノックし、「東隣の貧しい老婆が火種を頂戴しようと来ました」と言う。仲郎は暗闇で郎女の変装とは思わず、また驚いてしまったので、郎女の策略とは全く気付かない。仲郎は老婆(郎女)に勝手に火を取らせて帰宅させた。

一夜が明け、郎女は仲人を立てず、男の家を訪問したことを恥じ、悲願が果たせなかったことを悔やんだ。そこで、仲郎あてにこの歌を作り、ジョークとしてプレゼントした。