舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

某幼児番組におけるフラダンス

2014-08-28 05:40:46 | ダンス話&スタジオM
平日の朝や夕方の時間帯になると、「うたのおねえさん」や「たいそうのおにいさん」達がおなじみの童謡や番組オリジナルソングを歌い踊るたぐいの幼児番組が放映されます(イロイロ差し障りがあるといけませんから具体的な番組名は伏せますが)。
そして今は、こういった番組においてどう見てもフラダンスな楽曲が放映される頻度が大変多くなる季節でございます。

「フラ」じゃなくて「フラダンス」。
私が日頃から「フラ・ダンサー」と「フラダンス愛好家」という言い回しを明確な意図をもって呼び分けているのと同じくらい決定的な差異がそこにはあります。

この番組を見たカタギの皆様が「フラダンスってこーゆーモノなのね」と思ってしまったら…などと考え出すと精神衛生上非常によろしくないので、本日はこういう番組で放映されるフラダンスな楽曲を、明るくツッコミを入れながら笑い飛ばして参りたいと思います。
良識あるフラ・ダンサーの皆様には是非一緒に笑いのネタにして頂ければ幸いですし、フラの実像をご存じない皆様には、「違うんです、本物のフラはこういうのじゃないんです」と啓蒙する一助になる事を願って止みません(笑)。



南の島のハメハメハ大王

まずはメジャーなところから参りましょう。
昨日の記事でも取り上げたとおり、この番組のせいで最近四代目がこの曲を完全に覚えてしまい頭を抱えております。
恐ろしく正確に一語一句覚えている四代目が歌うのに合わせて「メハメハ~、メハメハぁ~~!!!」とスーパーサイヤ人もビックリレベルの力強さで強調しつつ一緒に歌っても、全く意に介してもらえません


そうです。
ハワイ王朝の歴史についてご存じない方の為に申し上げますと、「ハメハメハ」なんつう大王はどこの南の島にも存在しません
正確には「カメハメハ」でございます。
「あれ、本物は何て言うんだっけ」と思ったときは、この歌ではなく前述のスーパーサイヤ人の方を思い浮かべて頂ければチャラヘッチャラ。

ちなみに、ウィキペディアを見たら古い文献だと「ハメハメハ」と表記されてる場合もあるとの事ですが、文法的にはka + mehamehaですし、何よりこの歌詞での大王の描写はあまりにも間違ったイメージを子供たちに植え付けかねないので、もう全く無関係の別人と考えるべきです。


カメハメハ王は全部で5人いらっしゃいますが、「大王」を冠するのは最初のカメハメハ=ハワイ諸島を統一した王だけです。
あとカメハメハ大王の実像は、いろんな伝承をみる限り歌のイメージとはだいぶ違います(笑)。件の歌の「ロマンチックな王様で 風のすべてが彼の歌 星のすべてが彼の夢」というくだりは、どちらかというとハワイ王朝末期のカラーカウア王っぽいですね。

何より違うのは2番で歌われている「女王」!!!
そもそも女王の名前はカアフマヌだからね。大王と同じじゃないからね。
しかもこのカアフマヌ王妃はカメハメハ大王の妃の一人であっただけでなく、カプの撤廃など為政者として様々な力を振るった人物ですから、朝日の後で起きて来て 夕日の前に寝てしまう」ってイメージ捏造にもほどがあるわァァ!!!


…は~は~、興奮し過ぎてひっくり返るといけないので程々にせねば…。
ともあれそんなわけで、なまじ「カメハメハ」という大王が実在しただけに、この歌は極めて誤解を招きやすい歌詞であると言えます。
幼稚園・保育園や小学校の音楽の時間にこの歌を子供たちに歌わせる先生方は、ぜひ「※この歌はフィクションです。実在の人物とは一切関係ありません」って事を一緒に教えて頂きたいと切に願っております。


そうそう、内容ネタで興奮し過ぎてダンスについて触れるのを忘れていました。
さらに恐ろしい事に、この歌の映像でのおにいさんやおねえさんはどう見てもスズランテープっぽい安物の腰ミノという恐怖の出で立ちで登場します。
あああ、そのスズランテープ腰ミノの存在自体が間違っていると何度言えば……。

しかし、この曲の曲調がそのわりにハワイアンっぽくないためか、はたまた振付したのが良識ある人だったのか(笑)、踊りがあまりフラっぽくないのが唯一の救いです。
途中で入るステップもどっちかって言うとチャチャチャみたいだし、手の動きもやたらとユラユラクネクネしたりせず、妙に激しくブン回すアグレッシブな振付なので、フラを連想させる事はまずありません。
これにはカメハメハ大王もカアフマヌ王妃も草葉の陰でホッとしておられる事でしょう(しとらんわ)。



ユルリのゆっくりフラダンス

この幼児番組のオリジナルキャラクターに「ユルリ」というのんびり屋の男の子がいます。
この歌は、彼がウクレレを弾きながら歌い、その両脇で女の子のキャラクター達がベタなフラガールの装いで踊っているものです。
曲調も昔ながらのハワイアンソングといった風情のミディアムテンポのナンバーで、これでフラダンスだと言われてもさほど違和感はありません。

ユルリは確かにハワイアンが似合いそうなタイプの少年で、踊り方がついセカセカしがちな日本人ダンサーは是非見習うべき空気感を備えています。
それにバックダンサーの女の子達も、元々わりかし大雑把な絵柄が幸いしてか、見ていて頭痛がして来る類の踊り方にはなっておりません。


問題はコレの実写版です。
実は通常流れる映像はアニメなのですが、ある特番でだけ、うたのおにいさんやおねえさん達がフラダンスな装いに身を包んで歌い踊る恐怖の実写バージョンになるのです

何が恐怖ってまず服装。
見出し画像まんまの装いです。
今一度あの絵をご覧いただきましょう。




特筆すべきは何よりもパウの位置です。
パウをこんなハイウェストで穿くダンサーがおるか~!!!(べしィ!!←ハリセン)
ほんと、パウをウェストのところで穿く人はけっこう見かけるんで今更驚きませんが(笑)、まさか胸のすぐ下から穿く人がいようとは…。
パウはどうか腰で穿いてください!切にお願い致します!!


装飾品もいっそ清々しいほどトゥーマッチです。
私は全体のコーディネートを考えず夥しい数の装飾品を無闇矢鱈に着けまくった状態を夜逃げフラと呼んでいますが、まさにそれ。
せめて首元のボリューミーすぎるレイをククイナッツにするとか、クーペエを無くすとか、何かもう少しスッキリさせる方法は無かったのでしょうか。


さらに、髪型も普段のままなので大変暑苦しいです。
コレをみると、やっぱフラは前髪を上げてスッキリ額を出した髪型が似合うなぁとつくづく思います。
襟足や肩にも髪がかからない方が良いですね。


そして振付がこれまたキテます(笑)。
作った人はおそらくフラの事を何一つ知らなくて、今回の振付の為に何か参考にする事も無く、記憶の中にあるフラダンスのイメージだけで作っちゃったんだろうなぁ。
歌詞と動きも見事なまでに一致してないし、どう見てもフラじゃない動きも大変多いです。

そんな中、出演しているおねえさんやおにいさんは一生懸命フラっぽく動こうという努力が垣間見えます。
案外おにいさん達の方がサマになってます。もしかすると、いくらフラダンスでも男性がクネクネするのは流石におかしいだろうと(本人ないし振り付けた人が)考えて、クネクネを控えめにしたのが良かったのかも。

一方、とんでもなく残念な事になっているのがたいそうのおねえさんです。
っていうかこの方、たいそうのおねえさんってポジションで良いのかよく分りませんが、とにかく歌ではなくてダンスやパントマイムなどを担当する方です。
そういう役回りの方ですから、なまじ自分のダンススキルに自信があったのが裏目に出たんですかね……。
「フラダンスとはこういうもの!」という彼女の思い込みが前面に出ており、首は新生児並に据わってないし、上半身と下半身が見事なまでに逆方向にズレる、残念極まりない踊りが出来上がっております。

こうなっちゃう人、多いんですよねえ。他のダンスの経験があったり運動神経に自信があったりする人にしばしば見られる傾向です。
実をいうと、映画『フラガール』主要出演者の中にもそういう女優さんが一人いましたね。ダンスの経験を買われてその役に抜擢されたそうだけど、あれだったら逆に何の経験も無い人の方が良かったんじゃないかなあ。

以前、ある書道家さんが某器用な芸人さんの書を見て「作為的なところが鼻につく」と評していましたが、まさにその感じ。シロートが見ると凄そうに見えても、その道の人間からするとしょせんは紛い物であり、むしろ上手ぶっている分だけ鼻につくのです。
それならば単に初心者らしいたどたどしさの方がずっと好感が持てると言うより、そういう人を見てイヤな気持になるプロは決して居ないと断言出来ます。

フラに挑戦したダンス経験のある著名人のうち、私が最も良いと思ったのは黒木瞳さんです。
黒木さんのフラが下手だという声もあったようですが、私はむしろ彼女の経歴を考えると、その経歴をむやみに活かそうとせず、まっさらな初心者の状態からフラに取り組もうとしている姿勢に好感と今後の伸びしろを感じました。
黒木さんがあのまま続けていたら、きっと良い感じに上達出来たんじゃないかしら。


こんな事を長々と書いたのは、何もそのたいそうのおねえさんの悪口を言いたいわけではありません。
ダンスの経験を持つ人がフラの世界に入るにあたり気をつけなければならない事を、この場を借りてよくよくお伝えしたかったのです。
他のダンスはとりあえず脇に置いておいて、まっさらな気持でフラを身につけるようにすれば、やがて本当のフラがどういうものか会得したあかつきには、きっと他のダンスの経験もフラに役立つはずです。
とにかく「十分にフラを見る目と技術を養うまでは、他のダンスを役立てようとしないこと」!これが大切なのです。



この実写版ユルリの他にも、「フ~ララ ホアロハ ラ~」とか「風といっしょにフラダンス」とか、タイトルを聞いただけですでにそうとう香ばしい曲目が目白押しです。
特に「風といっしょに~」なんて、出だしから言ってヒマワリの花に風がアロハ~」ときたもんだ(笑)。
そりゃハワイにもヒマワリはあるよ?あるけどね???(ちなみにヒマワリはハワイ語でナーナーラー=「太陽を見る」といいます)
振付のステップもカーヴェルもどきなどツッコミ所が満載です。


まあ季節柄、フラダンスっぽいものをやりたくなる気持は分らんでもありません。
でも、これだけ日本人にもフラを分っている人が増えた以上、これらの番組を見る子供やお母さんにもフラ・ダンサーは大勢いるわけで、「いやいやいやいやそれは違うだろ」って物をやっちゃうのはマズいと思います。
分っている人が見てネタとしてツッコミ入れつつ楽しむ分には良いけれど、もしカタギの方から「フラダンスはああいう風にスカートをハイウェストではいて踊るのか」「なんだか花がゴテゴテだ」「随分ダサイ格好で踊るんだなぁ」と思われたら、この業界の人間としてまことにツライ(笑)。
まして、その曲を園や学校で踊る事になったりしたら、25年前の私のような苦悩を覚える若きフラ・ダンサーは必ず居るはず。
やはり今日び、本格的なフラをプロに踊らせろとまでは言わずとも、せめて分っている人が最低限のフラのルール(動きは歌詞に合わせる、実在のフラのステップを使うなど)を守った上で振り付けた方が良いのではないでしょうか。






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