舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

偉大なる振付師達

2015-01-27 07:04:07 | ダンス話&スタジオM
さて、大イベントの準備&リハーサルが終わったところで、我々は新曲の選定・振付に入る時期となりました。
そう、本番が終わってないウチから次の準備にかかるんですね~。

振付はダンス指導者の業務のうちで最も大変と言っても過言ではないと思います。
我々は振付も二人体制ですが、毎回壮絶な闘いの果てに作ってますもん(笑)。

さらにおそろしい事に、振付は何かを学べば必ず出来るものではない。センスの占める割合が圧倒的に多いのです。
私の親戚の占い師が「弟子入りしたがる人は沢山いるけれど、生年月日からの計算方法は教えられても、肝心の占う部分はどうにもならない」と言っているのにものすごく近いモノを感じます。

そんなわけで、私にとって「素晴らしい振付が創れる人」は、おしなべて尊敬・崇拝の対象になります。
本日はそんな「偉大なる振付師」として尊敬している方々を、5人ほどご紹介させて頂きたいと思います。



(1) ロバート・カジメロ様「卓越した芸術性」



偉大なる振付師として真っ先にご紹介したいのがこの方。
ナー・カマレイ・オ・リリレフア創設40周年を迎え、満を持して今年のメリーモナークにご出場という事で、ますます注目が集まっていますね。

ロバート様と言えば「フラの造詣の深さ」「お弟子さんに慕われている」「お弟子さん同士の結束力の強さ」「音楽的センス(※って当り前すぎて挙げるのも恐縮)」「指導者としての技術」「レイ・メイカーとしての知識とセンス」などなど、一流のクムフラに欠かせない要素を山のようにお持ちなので、それらの中にあるとさほど目立たないかもしれませんが、実はロバート様は振付のセンスも物凄いモノがあるのです。

ロバート様のワークショップを受けた事のある方は、ぜひ一度その振付を脳内再生してみましょう。
動きのひとつひとつがとても美しい事にお気づきいただけるはずです。

特に私が感嘆するのは、動きから動きへの繋ぎ方の美しさです。
振付を脳内再生しても、「アレ?ココからココってどうやって繋げるんだっけ」と悩む箇所は一つも無いのではないでしょうか。

たとえばハワイアンソングの1番冒頭によく出て来る「'Auhea wale 'oe ku'u ipo」なんて歌詞があるとしますね。
その場合、「'auhea」「'oe」「ku'u」「ipo」を動作で表現するわけですが(もちろん必要に応じてどれかを省略したり、一つの動作に複数の意味を持たせたりする場合もアリ)、ココで普通の人は「アナタ」だの「恋人」だのを示す動作を並べればオッケーと思いがちです。

しかし実際にはそれだけではありません。フラは手話ではなく踊りなのですから。

動作ひとつひとつの動きは美しくても(あるいは意味に忠実でも)、その振付が「繋ぎ」を重視したものか否かは全くの別物です。
色々なクムのワークショップを受けてみると、その違いが如実に分りますね。

ロバート様の振付は次の動作へと実にスムーズに繋がっていますので、見た目が美しいだけでなく、一度覚えると忘れにくいという長所もあります。
歌詞とのシンクロ率もかなり高いため、歌を思い浮かべながら踊れば、よりスムーズに頭に入るはずです。

自分自身も振付をやっている人間にいわせると、こういう振付って本当に難しいんですよ。
美しい動作の羅列だけなら出来ても、それらを美しくなおかつ自然に繋げる為には、常に次の動作を考えながら振付しなければなりません。
ましてフラのように動作ひとつひとつに意味があるとなると、繋ぎの作業はより難しいものになります。


ちなみに、一人のダンサーの動作を見ると動きから動きが流れるように繋がっているフラは素敵ですが、カムエラのカウイさんのように敢えて振付の流れを切る事で群舞を揃えたりスピード感を出したりするのも戦略として大いにアリです。
カウイさんのような「敢えて流れを切る」振付は、「単に繋ぎを意識出来ていないだけの振付」とは明らかに異なります。

っていうか、「流れを切った方が揃えやすい」ってとこを考えると、あんなに繋ぎの美しい流れるような動作なのにビシッと揃えて来るナー・カマレイ・オ・リリレフアの皆さんがどんだけ凄いかって話になるんですけどね…。


(2) ナニ・リム・ヤップ先生&マナオラさん「驚異のシンクロ率」



シンクロ率といえば某ロボット漫画ですね(笑)。
しかし私にとってこの言葉はすっかり元ネタを離れ、フラにおける歌詞と振付の一致を示す言葉になっております。

で、元ネタ的にいえば「シンクロ率400%を超えています!」なのが、ナニ先生とご子息マナオラさんの振付なのであります。


元々ナーレイ・オ・カホロクーは非常にシンクロ率の高いお教室です。
是非、お手元に歌詞をご用意の上でバーニスさんのミスアロハフラ出場曲や同年の群舞をご覧いただきたいと思います。
さっき例に挙げた「'Auhea wale 'oe ku'u ipo」だったら、「'auhea」「'oe」「ku'u」「ipo」のすべてをキッチリ振付の中に入れて来るのがナーレイ・オ・カホロクーの振付です。
もっと複雑な歌詞であっても、ほとんどすべての言葉を省略する事無く動作に入れているのです。

ですから、歌詞を聞いただけで意味が分る人にとってはほとんど手話状態。あまりのシンクロ率に感動すら覚えます。
更に感動的な事に、踊りとしても十分にエレガントで美しいのですから、振付した方のセンスの素晴らしさといったらありません。

最近ナニ先生のショーやワークショップで踊られる曲は、ほとんどご子息のマナオラさんが振付を担当していらっしゃるようですが、驚異のシンクロ率は健在です。
マナオラさんご自身もハワイ語とフラに精通している上、ダンサーとしても優れているからこそ出来る事です。


(3) ジョニー・ラム・ホーさん「無二の天才」

振付の話をする上で欠かせないのがこの方。
私が愛と敬意を込めて「ジョニ御大」とお呼びしている、かのナターシャ・オダさんのクムですね。

彼の振付はあらゆる意味で独創的です。
まずテーマの選定からして凄い。それをフラにするかよォォォ!!!(※褒めている)ってモノばかりです。
あのブットビっぷりはガチでないと出来ません(※しつこいようだが褒めている)。
ジョニ御大を見ていると、マーク様のアウトローっぷりが可愛らしく思えて来ます(笑)。

しかし、ジョニ御大と言えば洗濯とか闘鶏とかロミロミとかエキセントリックすぎるテーマにばかり目がいきがちですが(確かロミロミなんてカヒコだったんだぜ)、実はダンスの振付師としてのセンスが半端ない事に、一体どれほどの人が気づいているでしょうか。

まず音との一体感が凄まじい
ジョニ御大の振付の独特の音の取り方は、覚える時にはものすごく大変ですが、一旦覚えると音楽との一致にひたすら舌を巻きます。
フラの振付師(ほとんどの場合はクム)は、「歌詞との一致」には心を砕いても、「音楽との一致」にこだわる方はさほど多くありません。
音とピッタリ来る振付を創るためには、振付のみならず音楽的センスも必要です。
流石クアナさんやマークさん、ダレンさんを見出した方だけあります。


次に緩急の取り混ぜ方が秀逸
先程の音との一体感と関連した事として、ジョニ御大は曲調に合わせて超アップテンポの中に突然スローの動きを入れたり、ゆっくりな曲で突然ダダッと動いたりする振付が多く、それらがまたニクいほど絶妙に合っているのです。
緩急が取り混ぜられる事で、振付にメリハリが生まれるのですね。


そして最も重要な事。女性の振付がとにかく色っぽい!!
なんであんなに色っぽい動きが創れるんでしょう。しかも色気も素っ気もない曲にさえ色っぽい振付が出来るところに筋金入りのセンスを感じます。
色気だけでなく、可愛さやエレガンスなど、女性を魅力的に見せる動作が多いのがジョニ御大の振付の特徴です。

ただ残念なのは、その振付の魅力を本当に再現出来ているダンサーがあまりにも、あまりにも少ないという事です。
ジョニ御大の振付はとても難易度が高い。もちろん私にもムリだ。論外。全然ダメ(笑)。

本当にジョニ御大の振付を踊れていると言えるのは、アラカイのディーディーさん、その娘であるナターシャさん、カ・ウア・カニレフアのブランディさん、そして……ってあまり挙げていくと「じゃあ踊れてないのは誰なのか」って話になって来ちゃうのでこの辺にします(爆)。
かつてジョニ御大はものすごく厳しい先生だったそうですけれど、たぶんご本人の目から見るともっと「なんで言った通りに出来ないんだッ!?」と感じられると思いますので、致し方なかったのではないでしょうか。

さらにもっと残念なのは、ジョニ御大の踊りを上手に踊れている・色っぽく踊れていると思い込む事で悲惨な代物が出来上がりやすいという事です。
まあ、以前の記事にも書いた通り「色気」は迂闊に手を出すと大怪我しかねないモノですので、取扱には厳重にご注意下さいという事で(乱暴なまとめ方だなオイw)。
だって……ねえ、具体例はさすがにちょっとねえ(核爆)。



あああ、3人だけで字数が5,000字になっちゃったよ。
後の2人はフラ以外の分野の方ですのでザックリ行きますね~。



(4) Saroj Khanさん

インド映画で音楽と言えばラフマーンさん、振付と言えばこの方と言えましょう。
なんとあのHum Dil De Chuke SanamもDevdas(もちろん2002年の)も挿入歌の振付はこの方によるものなのですよ。
ってこのブログ読んでくださる方の500人に一人くらいしかご存知ないであろうマニアックなタイトル挙げてどうする。

前者はちょうどスーパースター・ラジニカーント様の主演作Muthuに端を発したインド映画ブームの波に乗り、「ミモラ~心のままに」とかいうディズニー映画もビックリのトンデモ邦題を付けられて日本でも販売・レンタルされているので、是非一度ご覧になる事をおススメします。
こちらはボリウッドですのでラジニ様のタミル映画とは全然違いますが、私ゃどっちも好きだ。
輸入版しか無いかもしれないけど、後者のDevdasもおすすめです。クラシカルでゴージャスな世界観がいいですね。

インド映画は皆様ご存知の通り、突然歌が始まって数人~場合によっては数百人のダンサー軍団がどこからともなく登場して絢爛豪華な踊りを繰り広げるのが醍醐味です。
しかしよく観ていると、踊りの振付けはえらい玉石混淆なのですね。
その中で「おお、コレは素敵!!」と思うダンスシーンに遭遇すると、それは大抵Saroj Khanさんなのですな。

とりわけ先程挙げた2作品は、クラシカルな舞台設定に合わせて踊りも古典舞踊を大いに取り入れ、かなりレベルの高いものに仕上がっています。
そしてさっきからたびたび言及している「音との一体感」も素晴らしい!!
ダンスを嗜む方なら、一度は観ておいて損はありません。

そもそもインドって踊りや音楽が質・量ともに世界でも群を抜いている場所ですからね。
フラの発祥をつきつめていくとインドに至るという説を聞いた事もあります。
あるダンサーさんがダンスを研究する為にインドに行ったきり戻って来なかったというウワサも。何か抗い難い魅力があるんでしょうね。
インドの民族舞踊の数々を観ていると、納得出来る気がして参ります。


(5) ジョンテ・モーニング様

はい出ました、本日お二人目の「様」!!(笑)
というか、この記事を書くキッカケはこの方だったのですよ。

ジョンテ様、この方は世界でも稀有な振付師です。
服装や髪型でイロモノと侮るなかれ、そうとうなダンスの素養が無いと創れない振付を創り、それを完璧なる美しさで踊れる方なのです。

私はジョンテ様の創る振付が大好きです。
凛としていて迫力があり、ゴージャスで色気もある。私の好きな要素てんこ盛りです。
ちょっと前に流れていた東京モード学園のCMで、短時間のシンプルな振付の中にジョンテ様の魅力が凝縮されてました。
私が踊り屋として最もウットリするのはあの方の鮮やかなハイキックなどではなく、最後の立ち姿(特に背中)なんですけどね。


ただ、一流ダンサーが美しく踊れる振付を創る事の出来る振付師は他にも大勢いらっしゃいます。
ジョンテ様の凄いところは、素人にも出来る動きだけで素敵な振付を創れる事です。

教育テレビで平日夕方に放映されている「天才てれびくん」エンディングテーマで踊るジョンテ様を是非ともご覧いただきたいのですが、この曲はダンスの素養の無い小学生でも数回観ていれば踊れるような動きだけで構成されていながら、曲とも完璧に合っているし、ジョンテ様のように優れたダンサーが踊るといくらでもカッコ良く踊れるという、まさに理想的な振付なのです。

私としてはもっとジョンテ様のダンスを拝見したいので、世界で活躍されていてお忙しいとは思いますが、数年前のように日本での活動を増やして頂きたいと思っています。
出来れば舞台で観たい!それもバーレスク小屋のような至近距離で!!!



以上、私の尊敬する5人の振付師をご紹介させて頂きました。
今日挙げた方々にはここでは語り切れてない魅力がもっとありますし、他にも素晴らしい方は大勢いらっしゃいます。
とにかく今日の記事で申し上げたいのは、「振付を創るのは本当に大変だ」という事です。
素敵な振付を創るには卓越したセンスが必要とされますし、どれほど才能あふれる方でも、「産みの苦しみ」無くしては優れた振付にはなりません。
ダンスを踊る時、この事を心の片隅にだけでも留めておいて頂ければ、振付を創る者の端くれとして、これほど嬉しい事はありません。





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