今年は伊勢神宮の式年遷宮の年です。
「式年遷宮」とは、20年に一度新しいお社を建て、ご神体をお遷しするという儀式の事。
遥か昔から行われて来た重要な儀式なのだそうです。
…とか偉そうに言っとりますが、元々私の不得手な分野ゆえ、ほとんど読んだ本の丸パクでございます(笑)。
このたび縁あって伊勢に行く機会を得た為、不得手な分野とか言ってないできちんと予習しとこうってことで、改めて本を揃えて付け焼き刃の知識を吸収しているところでございます。
そんなわけで、今日は本好きの私が選んだ伊勢旅行にピッタリの本のご紹介です。」
まず一冊目。最もベタなところから行きましょう。
るるぶ情報版・近畿21『お伊勢まいり』(2013年、JTBパブリッシング)です。
薄くて写真が多く、本の虫でなくとも気軽に旅先の情報をゲットできる「るるぶ」シリーズだけに、「イセジングウってなにそれおいしいの」状態の人には最適のビギナーズガイドです。
私の縄張りであるハワイを例にすれば、「ハワイでは英語が通じる!」とか「アラモアナは最強ショッピングセンター!」みたいな、わかっている人なら「今更そんな事聞くなよ」と突っ込みたくなるレベルのトピックを無邪気な驚きをもって紹介してくれる事が、初心者に大変親切なのです。
たとえば3ページ目で早速
「伊勢神宮に祀られているのは天照大神!」と、ここから入ってくれる訳ですよ。親切な事この上ありません。
わかっている人からすれば「どっちがミッキーでどっちがミニーなんですか」という質問と同じくらいズッコケそうなレベルだと思いますが、初心者とはそういうものなのです。
私だってこの3・4ページ目を見て
「ははぁ~」「ほほぉ~」の連続でしたもん(笑)。
このガイドブックはこのページ以降もそういうビギナーさん向け記述が続きます。
伊勢の歴史や、伊勢に祀られている天照大神をはじめとした多くの神々の概説と関係、お参りガイダンス(外宮→内宮の順に回る事、鳥居の中央をくぐっちゃダメって事とか手水→お参りの作法)まで懇切丁寧に説明されています。
どれもおそらく、わかっている人には当り前レベルの事だと思いますので、現地に行っても誰も説明してくれないでしょうし、知らない人ってのはとんでもない事をやらかすものですから(例:旅番組の影響でバスタオル巻いたまま温泉入っちゃう女子)、こういう「ビギナーオブビギナーズガイド」が絶対に必要だと私は思います。
さて、ビギナーズガイドで知らなきゃ恥ずかしいレベルの基礎知識をひととおり頭に入れたところで、もうちょっと読み物らしい本に参りましょう。
『伊勢神宮参宮ガイドブック 癸巳版』(2013年、小学館)です。
この本の特に前半は読み物&写真集の色合いが強く、伊勢研究の第一線で活動する方の寄稿や、伊勢専門カメラマンの方が撮影した美しい風景の数々など、ビジュアル・イメージ重視のガイドブックとなっています。
それだけに、るるぶガイドより「伊勢に行きたい」という気持をそそられるページばかりですね。
流石は「参宮事業推進協議会公認」です(笑)。
この本もこれから参宮しようという人向けですから、基礎知識に関する事も親切に紹介されていますが、それでも流石にるるぶの「祀られているのは天照大神!」レベルの知識は既知という前提で(笑)、より踏み込んだ内容が語られています。
これなら、すでに1回や2回程度訪れた事がある人も楽しめる内容なのではないでしょうか。
ただ、この本は機能よりイメージを重視しているだけに
広告が広告っぽくないという事には注意せねばなりません。
本文と統一感のある感じのレイアウトで、続きかと思って読み進めていったら気づくとレストランやホテルの説明にドップリ入ってる、というページがとても多いですね。
この書き方、どこかで見た事あるな。
アレだ。フラ界の3匹目のドジョウ雑誌、フラヘヴンだ(笑)。
かの雑誌はフラ雑誌というより「フラ雑誌の皮を被ったフラ関連広告集」なので、店名にしろ教室名にしろ
固有名詞が出て来たら全て広告という事を念頭に入れた上で読む必要があります。
まあ、そういう意味ではこの業界だと2匹目のドジョウ(と言えばわかりますね、
素敵なあの雑誌です)なんてもっとあからさまで、教室向けの取材先募集のお知らせにハッキリ「
掲載は広告を出している教室様を優先します」とモロに書いてあるからね。
広告を載せてやるんだからという事で、寄稿した物の原稿料を減らされたという話も聞いてます。その方はとても優秀なスペシャリストなのに。酷い話だぜ。
あの素敵な雑誌を読む時は、いくらおすすめの店とか良い教室とか優秀な先生紹介という感じで書いてあっても、巻末の広告と照らし合わせながら読んだ方がいいですよ。
うぉわ。またもや話が横道にそれたわね。
ともあれ、広告や記事を何でもかんでも鵜呑みにするんでなく、客観的に・多角的に調べた方がいいよね、というお話でありました。
2冊のガイドブックで伊勢や神々の基礎知識をひととおり知ったところで、フィクションに参りましょう。
荻原規子『空色勾玉』(2005年、徳間書店)です。
異世界ファンタジーの少女小説を書かせたら、この作家さんの右に出る方はいないと言ってもいいでしょう。
小野不由美主上の十二国記が好きと言ってる時点でバレバレなように、私は異世界モノが大好きです。現代のこの世界から遠く離れれば離れるほど好きです。
そして荻原さんは、遥か遠く離れたところを舞台としながら、息遣いまで身近に感じられるほどリアルな人間ドラマを描き出す名手なのです。
この小説の舞台は数千年前の日本。
なんと、伊勢神宮に祀られている神々が登場人(?)物として出てきます。
彼らが古代日本を闊歩し、戦いを繰り広げたり、人間達と心を通わせたりする物語です。
もちろん神様ですので、並外れた能力も外見も充分に超人的な存在として描かれていますが、それでもときに苦悩し、我を失い、過ちさえおかす姿は、下手な人間より人間らしいリアリティに溢れています。
たとえば天照大神(照日王)。
たぐいまれなる麗質をもちながら不屈の将でもあり、鎧兜に身を包んで日本古来の神々を滅ぼして征服せんとし、その目的の為ならヒロインや自分の弟を殺める事にも一瞬も躊躇わない、ペレよりおっかない姉ちゃんです。
彼女の行いには迷いが無く、ひたすら突っ走るのみですが、それもひとえに父である輝の大御神(自分の目から照日王を産み落とした神)を一途に慕うゆえの事。
天上におわします父に早く会いたい、父の望みに沿いたいと強く思うあまり、他の事が見えなくなってしまっています。
そんな彼女と対をなすのが月讀尊(月代王)、父神の反対の目から産まれた、照日王の双子の弟君です。
姉君と瓜二つの美貌を持ち、将として無敵の力も持ちながら、姉の激しい気性とは対照的な憂いがあります。
彼に翻弄されるヒロインを見ていると、実はペレよりおっかない姉ちゃんよりもっとタチが悪いんじゃないかという気がしてきます(笑)。
このように、たとえお詣りに行こうと遠くて漠然とした存在でしかない神々に生き生きとした人間味を与え、おそろしくも抗いがたい魅力をもったキャラクターとして描き出す荻原さんの筆力にはただただ感嘆する他ありません。
この作品を読んでから神宮をたずねれば、神々の存在をぐっと身近に感じられるでしょう。
それに、彼らの織りなす壮大なストーリーが非常に速いテンポで展開し、一気にラストまで駆け抜ける疾走感は、この作品を一作目とする「勾玉シリーズ」の中でも群を抜いています。
伊勢のお供に限らず、小説としておすすめの作品の一つです。
以上、現時点で読破済みの本だけ3冊ご紹介してみました。
今後も伊勢にゆかりある良作に出会えたらまた載せたいと思います。