最近気温が高くなってきてコックスにとって乗艇が辛い季節が終わろうとしています。
どうも、1回生の片岡です。
僕はインドア派で活動的ではないので、春休みの余暇は読書を楽しんでいます。
最近はAmazonのKindleを購入したこともあって、洋書を読んだりしています。どんな本を読むかはその時の気分次第ですが、最近ローイング関係で少し面白い本を読みましたので、ここで紹介したいと思います。
本のタイトルは “ The boys in the boat “
1936年のベルリンオリンピックの8+の優勝クルー(アメリカ代表)の話です。この本の面白さをかいつまんで述べると、①ボート知識が無くともボートレースの臨場感が伝わってくる②主人公を含めた漕手、コックスだけでなく、ボート設計者やコーチの過去が詳細に述べられており、彼らのユニークな人生を垣間見れる③当時の社会背景が知ることができる(特にナチスドイツ主導の下、オリンピック開催に至るまで社会がどいった風に変化していくか等)です。
やはり、ローイングを経験している人間からすると上に挙げた①が魅力的でしょうか。特に漕手と同等か、レースによってはそれ以上にコックスの描写が多かったのも僕にとっては楽しめた要素でした。(個人的には②も面白かったです。)
当時のアメリカでは大学クルーと海軍クルーがナショナル大会にて競い、数年越しの結果で、代表クルーを決定する方式がとられていました。この本の主人公:Joe Rantzが所属するのはワシントン大学のクルーで、物語の大半はベルリンオリンピック代表クルー選考のレースでのワシントン大学とカルフォルニア大学の対決が描かれています。ちなみに、このクルーのコックス:Bobby Mochの描写はというと、この過程ではほとんど皆無で、むしろ敗北するクルーのコックスの焦るコールや様子が詳細に描かれています。ちょ、そんなんよりもっとボビーのこと書いてーと思いながら読み進めてたんですが、オリンピック決勝で彼はやってくれました。
ベルリンオリンピック決勝では、ワシントンクルーは3つのハンデを背負って戦うことになります。第一に、風の影響をもろに受ける一番アウト側の6レーンに指名されたこと(ちなみに、1-3レーンは、イタリア、スウェーデン、ドイツ。そして5レーンはイギリス。分かりやすいなあ。)第二に、スタート合図がドイツ語であったこと(結果、5、6レーンはスタートに気づかず、大幅に出遅れることに)そしてダメ押しの第三にクルーが絶大の信頼を置いていたストロークが予選直後から高熱でダウンし、決勝当日も熱が出ていたこと。普通だったら、そんなコンディションのストロークを他の控え選手に変えるところですが、ワシントンクルーの総意で、このストロークなしでは勝利はあり得ないという結論に。結果、何とダウン寸前の病人を引っ張り出してレースに挑むことになります。
ワシントンの一貫した戦略は後半まではレートを控え目に大きく漕ぎ、最後にレートを上げて突き放すというシンプルかつ王道的なもの。しかし、スタートが出遅れた以上そうは言っていられないので、当然コックスのMochはレートを上げようとします。しかし、ストロークが全然反応してくれない、というかやっぱり何か様子が変。半死人の形相で漕ぐストロークにはもはやコックスの声は響いていなかった。そこでMochはある戦略を思いつきます。
「ストロークの役割を他の人間に移してしまおうか?」
しかし、失敗すればリズムを大きく崩し、漕ぎそのものが空中分解して勝利する可能性が0になります。かといってこのままレートが上がらなければ、追い付ける可能性も0です。悩んだ末に彼は賭けに出ます。3番のJoeにアイコンタクトで役割譲渡の合図を送り、いよいよストロークをJoeへ移行しようと試みます。その瞬間、そのことに気づいたストロークがプライドからか、奇跡的に復活し、レートが上がり始めます。これがMochの偉業その1です。
とは言え、レース最終局面では先行するイタリア、ドイツとまだ差があり、勝利は絶望的な状況でした。Mochは考えます。ただ普通に煽るだけではダメだ、漕手の120%の力を出し切るくらいでないと勝てないと。そこで彼がしたことは、漕手に後○○ストロークと言いつつも、残り10ストロークくらいでもう一度カウントを増やして、フィードバックするということでした。要は漕手を騙して、煽り続けたということですね。
コックスのトリッキーな戦略と煽り、そして漕手の漕ぎが合わさって、勝利を得る瞬間はまさに圧巻の一言。読んでいて胸が熱くなりました。ここまで大胆に振舞えなくとも、漕手の士気を高めるコールやそれに至る戦略を立てれるコックスは本当に凄いと感じました。僕も来る朝日レガッタで現在のクルーの力を出せるコックスへと成長できるよう頑張りたいです。
色々書きましたが、読みやすい英語で書かれているので興味のある方は是非原文で読んでみてください。