私の知る知識の中で、免疫に関する遺伝学の情報をお知らせします。
その第一は、利根川進さんの理論です。
「利根川理論」と病原環境論または適応説
クォーク1987.12「利根川理論のすべて」(平松啓一監修)より
ワトソンとクリック以来の原理は、「体の細胞にあるDNAの遺伝情報はすべての生命現象の基本、一定不変のものである。肝臓や筋肉など、分化した細胞に機能や構造の違いがあるのは、そのどの遺伝子が発現し、どの遺伝子が発現しないかの違いによる。」
利根川理論は
免疫に携わる細胞がどうやって外敵である病原体をやっつける抗体を作り出すかというメカニズムを明らかにした。
DNAは生物の体の中で、不変なものではなく、つねに変化し動きまわるダイナミックな存在である。
抗体はあらゆる抗原とそれぞれに対応する。自然界に存在する抗原の数は数億にのぼる。哺乳類ではDNAに含まれる遺伝子はせいぜい数万である。数万の遺伝子から数億の抗体の蛋白質ができる。それは遺伝子が免疫細胞の中で縦横無尽に変化するからである。
抗体の構造
抗体は免疫グロブリンで、他の蛋白質と同じように、20種類のアミノ酸が鎖状に連なったポリペプチドから構成されている。最も基本的なタイプである免疫グロブリンGでは、4本のポリペプチド鎖からなり、このうちの2本の短い鎖をL鎖、長い鎖をH鎖という。それぞれの鎖は可変部と不変部からなっていて、このうちの抗原と結びつくのは、Y字形の先端部分、すなわち可変部(V)である。不変部(C)は、どの抗体でもアミノ酸の配列は一定である。
利根川博士は、抗体のL鎖の可変領域の遺伝子はVとJの二つからなり、H鎖はV・D・Jの3種類からなることをつきとめた。そして、未成熟な細胞のDNAではV・D・J・Cの各遺伝子の断片が、遠く離れて存在しているが、リンパ球が成熟していく過程で、それぞれから一つずつ選ばれて、組み合わさって抗体が作られる事を証明した。これが遺伝子の再構成である。
マウスのDNAの場合、遺伝子のH鎖のV領域の遺伝子は数百個、J遺伝子は4個、D遺伝子は12個ぐらいある。この3種類の組み合わせで1万種類以上になり、さらにH鎖とL鎖の組み合わせがあるから、1億以上の抗体の産生が可能になる。
以上が利根川理論である。
また、最近の研究では、V領域では非常に頻繁に突然変異が起きていることも判った。そのため、人間の体は、限られたDNA情報を使って、無限の種類の抗体を作る事ができる仕組みになっている。こうしてできたDNAの持つ遺伝子情報は、子孫に伝えられ、歴史的に人間は、いろいろな病気が登場しても何代か経つうちに、克服してきたのである。しかし、単純でないのは、病気を起こす細菌、ウイルス、リケッチヤ―などの微生物や寄生虫も、変化していく。
それぞれの生存がかかっているからで、最終的にはお互いに適応しあって、共存の道を選ぶ事によって生き延びていくのである。しかし、うまく適応できない種は、絶滅していく。変化した環境に適応できなければ、種は絶える。
適応できた種は生き残り、できなかった種は滅びていく。人間の歴史はそれを物語っている。そしてそれは、人間と疫病との関係の歴史でもある。
微生物や寄生虫は、生きていくための餌を求めている。
「免疫生物学」より
利根川進
「Ig可変部の遺伝子が、遺伝子断片の組として遺伝され、それぞれの断片はIg分子を構成するポリペプチドの一部をコードしていること」を発見。
遺伝子断片はDNA組み換えにより、不可逆的に結合され、1本のDNAになり、それが可変部全体をコードする。
数百の遺伝子断片から、何千ものレセプター鎖ができる。
二つの可変部をもつ鎖の組み合わせ、結合する際の追加、除去 により、100万レベルの特異性抗原レセプターができる
各個体には少なくとも1億レベルの異なる特異性をもつリンパ球が存在する。
免疫生物学と上記の本をお読み下さい。以上は、それらからの私の抄録です。
その第一は、利根川進さんの理論です。
「利根川理論」と病原環境論または適応説
クォーク1987.12「利根川理論のすべて」(平松啓一監修)より
ワトソンとクリック以来の原理は、「体の細胞にあるDNAの遺伝情報はすべての生命現象の基本、一定不変のものである。肝臓や筋肉など、分化した細胞に機能や構造の違いがあるのは、そのどの遺伝子が発現し、どの遺伝子が発現しないかの違いによる。」
利根川理論は
免疫に携わる細胞がどうやって外敵である病原体をやっつける抗体を作り出すかというメカニズムを明らかにした。
DNAは生物の体の中で、不変なものではなく、つねに変化し動きまわるダイナミックな存在である。
抗体はあらゆる抗原とそれぞれに対応する。自然界に存在する抗原の数は数億にのぼる。哺乳類ではDNAに含まれる遺伝子はせいぜい数万である。数万の遺伝子から数億の抗体の蛋白質ができる。それは遺伝子が免疫細胞の中で縦横無尽に変化するからである。
抗体の構造
抗体は免疫グロブリンで、他の蛋白質と同じように、20種類のアミノ酸が鎖状に連なったポリペプチドから構成されている。最も基本的なタイプである免疫グロブリンGでは、4本のポリペプチド鎖からなり、このうちの2本の短い鎖をL鎖、長い鎖をH鎖という。それぞれの鎖は可変部と不変部からなっていて、このうちの抗原と結びつくのは、Y字形の先端部分、すなわち可変部(V)である。不変部(C)は、どの抗体でもアミノ酸の配列は一定である。
利根川博士は、抗体のL鎖の可変領域の遺伝子はVとJの二つからなり、H鎖はV・D・Jの3種類からなることをつきとめた。そして、未成熟な細胞のDNAではV・D・J・Cの各遺伝子の断片が、遠く離れて存在しているが、リンパ球が成熟していく過程で、それぞれから一つずつ選ばれて、組み合わさって抗体が作られる事を証明した。これが遺伝子の再構成である。
マウスのDNAの場合、遺伝子のH鎖のV領域の遺伝子は数百個、J遺伝子は4個、D遺伝子は12個ぐらいある。この3種類の組み合わせで1万種類以上になり、さらにH鎖とL鎖の組み合わせがあるから、1億以上の抗体の産生が可能になる。
以上が利根川理論である。
また、最近の研究では、V領域では非常に頻繁に突然変異が起きていることも判った。そのため、人間の体は、限られたDNA情報を使って、無限の種類の抗体を作る事ができる仕組みになっている。こうしてできたDNAの持つ遺伝子情報は、子孫に伝えられ、歴史的に人間は、いろいろな病気が登場しても何代か経つうちに、克服してきたのである。しかし、単純でないのは、病気を起こす細菌、ウイルス、リケッチヤ―などの微生物や寄生虫も、変化していく。
それぞれの生存がかかっているからで、最終的にはお互いに適応しあって、共存の道を選ぶ事によって生き延びていくのである。しかし、うまく適応できない種は、絶滅していく。変化した環境に適応できなければ、種は絶える。
適応できた種は生き残り、できなかった種は滅びていく。人間の歴史はそれを物語っている。そしてそれは、人間と疫病との関係の歴史でもある。
微生物や寄生虫は、生きていくための餌を求めている。
「免疫生物学」より
利根川進
「Ig可変部の遺伝子が、遺伝子断片の組として遺伝され、それぞれの断片はIg分子を構成するポリペプチドの一部をコードしていること」を発見。
遺伝子断片はDNA組み換えにより、不可逆的に結合され、1本のDNAになり、それが可変部全体をコードする。
数百の遺伝子断片から、何千ものレセプター鎖ができる。
二つの可変部をもつ鎖の組み合わせ、結合する際の追加、除去 により、100万レベルの特異性抗原レセプターができる
各個体には少なくとも1億レベルの異なる特異性をもつリンパ球が存在する。
免疫生物学と上記の本をお読み下さい。以上は、それらからの私の抄録です。
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