黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

大絶滅の時代

2021-03-09 11:09:24 | 感染症
        新型コロナが明らかにした現実-2

     この現実の世界を変えるには何をしたらよいか

 斉藤幸平とマイケル・ハートと共に立ち上がろう




 今、斉藤幸平が明らかにした世界の現実、つまりもう社会運動をして、今の現実社会を変えなければ、地球の第6番目の大絶滅の時代に突入するのではないかという危機意識が、各方面から提起されている。
 これらは1970年代から始まっていた。しかし、今それが明白な妥当性を持って語られるようになり、しかも緊急性をもつようになった。人類の大破滅を招かないために。
 私はここに、入手した情報を私の問題意識のもとに、皆様に提供する。私は現代の日本で多くの分野で新人が台頭してきたことに喜び、経済学哲学分野や社会運動の分野での新人の台頭を渇望してきた。そして斉藤幸平という新人が、世界の、特にマルクス生誕200年、ヘーゲル生誕300年という節目のドイツでドイッチャー賞を最年少で受賞したことを称賛する。待っていた新人が出て来たのです。
★ 無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
(「自由と平等のホモ・サピエンス史」三宅芳夫:世界2021.2.)
 約6億年前からの生物の歴史では、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる生物の大絶滅の短時間(地質学的時間として)に突発した時があった。直前の第5番目の絶滅は、恐竜時代であった。およそ7000万年前に大隕石がもたらした気候変動による恐竜の絶滅である。
 今資本主義社会がもたらした成長を止められない社会が、地球を破滅に向かわせている。だからクルッツェンはこの時代を、ホモ・サピエンス(人)が起こした地質学的時代「人新世」と呼んだのである。
今日の地球温暖化、アマゾンやボルネオ、そしてアフリカなどの熱帯雨林の劇的減少、生物多様性の縮減、未知の感染症のパンデミックなどの、相互に絡み合った危機は、すべて無限の成長を「可能性の条件」とする資本主義と有限な地球生態系との論理的な矛盾であると捉えることができる。ホモ・サピエンスによって作られた資本主義によって、6番目の生物の「大絶滅」が動き出している。
 人類は20万年の間、「バンド」と呼ばれる小集団で移動しながら、狩猟・採集生活を営んでいたと考えられている。この当時の人類の労働時間は、三、四時間を超えることはなく、栄養バランスもよく、虫歯も感染症もなかった。感染症は家畜との「共生」によってもたらされたものである。バンド社会では平等であった。人類史の中でもっとも自由な社会、支配のない社会であった。自由は自然権である。バンド社会は話し合いの社会である。ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由がないから。その後の世界史を三宅芳夫は解き明かした。
〇1万2000年ほど前から一部が植物栽培を伴った定住を始めた。小麦次いでオリーブが栽培され、ヤギ、羊、豚、続いて牛、馬が家畜化された。
〇紀元前3200年頃、メソポタミアで支配階層が出現し、徴税が始まり、国家が出現する。
 定住コミュニティから国家への移行の7000年の期間に、階級分化や、国家による支配、定住による感染症の発生(危険)などへの、狩猟・採集民の「抵抗」があったとスコットは説く。
 この時期には(1)狩猟・採集/バンド社会、(2)経済的格差のない数百人規模の部族社会、(3)農耕を基礎に経済格差のできた人口数千人規模の首長制社会の三つが併存していた。
 (この社会は近現代まで世界の一部には続いていた)。
〇その後、定住・農耕の拡大により、紀元一世紀ころには、ローマ、パルティア、漢の三つの帝国が並立した。農耕による土壌の劣化、建築材料や熱エネルギーは木材によって得られ、古代文明と人口を支えるために、森林の消滅と生態系の消失があった。少数の支配層と多数の民衆に階層分化し、長時間労働、栄養状態の低下、周期的な感染症の流行による大量死が19世紀末まで、20世紀の福祉国家の出現まで続く。(砂漠は人工的に作られたものであったのだ。デュボスは1970年代にそう言っていた)
〇 首長制社会から始まった階級分化は、国家となって確固となり、政治的不平等と経済的不平等は強固な関連があった。
〇 バンド社会は、少ない労働時間、比較的良好な健康状態、そして平等主義であった。
争いは構成メンバーの話し合いで解決された。暴力は成立しない。それは「眠り」の間に報復に対抗できないし、ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由もない。
〇その後、たびたび支配層の消滅により、不平等は一時的に圧縮されるが、再び再建されて現代にいたる。
〇 ペストのパンデミックの後は、労働人口の減少のために、一時的には民衆への労働分配率が上昇し、良い時代であったという。資本主義の登場で「近代社会システム」が形成され、16世紀半ばには「古き良き時代」は終わり、不平等が拡大し続ける。
〇 その後、科学革命、産業革命、動力革命(石炭)、第二次動力革命(電気と石油)と進んだが、16世紀から20世紀までの近代世界の受益者は一部の上層部に限られていた。
〇 世界システムの中心国家群は、20世紀初頭1914年から1945年までの30年戦争に突入した。その初めの時期にスペイン風邪のパンデミックが起きた。この結果、人類史でも稀な、富と所得の大圧縮が起こった。それが最も著しかったのが日本だという。アメリカ並みの不平等な社会から、デンマーク並みの平等な社会に移行した。
欧米でも階級妥協と福祉国家の形成、社会主義国家の成立で、中間層、労働者層をつなぎとめるために、格差の縮小の傾向が一定期間維持された。
〇 その結果、人口の一定部分が、バンド社会以来一万年ぶりに、自由と平等を享受できた時代となった。黄金の30年とも言われた。
〇 しかし、これは1970年代の新自由主義のグローバル化で、かつ資本主義国となった旧ソ連圏と中国をも巻き込んで、世界中で格差は再び急激に拡大し始める。
 それはナオミ・クラインに「新自由主義は、第二次世界大戦後(30年戦争後)に労働者が獲得したものを解体するための階級闘争だ」と言わしめた。こうした急激な不平等の拡大が、資本の自由主義と市民の民主主義の妥協として成立した大戦後の政治システムを不安定化させ、格差の拡大による大量の貧困層の出現が、コロナウイルスのパンデミックの温床となった。
◎資本の複利的再投資の無限の反復が、富となる。年1.5%前後の経済成長が無いと資本主義は崩壊すると考えられている。
 成長のない「定常化社会」へ移行しない限り、地球生態系の危機に対処できない。定常化社会への移行は、資本主義を廃止して初めて可能になる。持続可能な発展などという持続可能な開発目標(SDGs)は本質を隠ぺいする煙幕に過ぎず、斉藤幸平は「現代版の大衆のアヘンだ」という。もうローザ・ルクセンブルクの「社会主義か野蛮か」というテーマしか語られなくなっている。だから「脱成長のコミュニズム」を提唱する斉藤幸平に賛同したい。
 私の孫たちが生き残る社会を残す為に。
★ スラヴォイ・ジジェク(スロベニアのマルクス哲学者) 世界2020.6.より
コロナの出口は、ラディカルな社会変革が必要だという。
それは今までの、つまり既存の世界秩序の枠組みの中では不可能と見えることを実現しなければならないということ。ジジェクはコロナの終息には2年かかりそうという
 権力者たちの真のメッセージは、私たちの社会的倫理の基本的前提を破らなければならないということだ。それが「最適者生存」というトリアージ(選別)である。
 私たちの社会的倫理の基本的前提は、老いた者、弱い者への配慮(ケア)にほかならない。
 このトリアージは戦争の世界でさえしてはいない倫理である。戦時でさえ、真っ先に重症者の治療が行われるべきだとされている。
 イタリアでは既に3月にはこのメッセージ「事態が悪化するなら、80歳以上の人びとや基礎疾患のある人びとの生死に関して、困難な決定がなされることがある」が出されている。
 コロナ問題は、私たちが今の経済的・社会的システム全体をどうやって変えていくべきかということに目を向けなければいけない。
 ケイト・ジョーンズが述べているように、野生動物から人間への病気の伝染は、「人間の経済発展の隠れたコストである」とジジェクは言うが、私はそうとは思はない。私は、コストではなく、そうやって人間の社会が発展してきた自然の摂理であると思う。
 環境資源学者マーシャル・バークによると、コロナによる経済的混乱に起因する大気汚染減少が救った人命は、ウイルスによる死者数を上回っているのではないかという。彼によると、汚染レベルが二カ月の間に低下しただけで、中国国内に限っても五歳未満の児童四千人と七十歳以上の高齢者七万三千人の命が救われたと推定されるという。
 ジジェクは「今、三重の危機の中にある。医療危機、経済危機、精神衛生の危機である」という。よく言われるように、私たちはみな危機に際しては社会主義者になる。
 今回の伝染病は、ナオミ・クラインが「災害資本主義」と呼んだものの長く悲痛な歴史に新たに一章を付けくわえるだけか、それとも新しい世界秩序が、そこから生まれてくるのだろうか?                       2020.3.18.
△文芸春秋(宮下洋一2020.10)によると、「それは民族の違いや遺伝的な『ファクターX』の有無とは無縁の『命の選別(トリアージ)』による悲劇だった。・・ある集中治療医は、ICUで起きていたトリアージを嘆いていた。・・病院で亡くなった患者数は約九千人、介護施設では約二万人もの死者を生んだ。
★デヴィッド・ハーヴェイ(マルクス主義経済地理学者、ニューヨーク市立大教授)世界2020.6   
 資本の流れの連続性における閉塞と中断は価値喪失をもたらし、それが大きければ、それは危機の始まりを示すという。自然は社会と切り離せない。自然との物質代謝関係がある。この観点からは、真の自然災害というものは存在しない。
 ウイルスは絶えず変異している。しかし、ある突然変異が声明を脅かすようになるといった状況は、人間の行動にかかっている。これには二つの側面がある。
 一つは、突然変異の確率を高めるのに有利な環境的諸条件が存在する。生息環境の急速な変化や、多湿の亜熱帯地域での自然依存型の食料調達システムの存在など。
 第二に、急速な宿主間感染に有利な諸条件は大きく違っている。人口密度の高さなど。
 △新自由主義での四十年の下でのパンデミック
 当初は、たかをくくられていた。武漢や韓国の流行は一部の流行とみなされた。しかしイタリアでの急激な流行が火を付けた。公的機関と医療サービス制度は殆どあらゆる所で人手不足に見舞われた。四十年にわたる新自由主義によって、人びとはこの種類の公衆衛生危機に無防備にも完全にさらされたままとなった。
 利益の上がらない感染症研究には、営利企業である大手製薬企業は関心をよせず、抗生物質からは手を引き、専ら儲かるワクチン製造にだけ力を入れている。(だからコロナの治療薬の話が無く、専らワクチンだと言っている)
 公衆衛生危機への準備体制に投資することはしていないし関心もない。
 おそらく象徴的なのは、新自由主義化の程度の小さい国々――中国、韓国、台湾、シンガポール――が、イタリアより良好な形でパンデミックを切り抜けたことである。
 この経済の最も大きな脆弱性は、短期の回転期間をともなう消費形態にあった。
 その象徴は、観光業である。接客業、外食、さらに文化イベントなどの体験型消費様式もおしまいで、現代資本主義の最先端モデルの消費様式は機能できない。
 現代資本主義経済の7割か8割を牽引しているのは消費である。最富裕国の中心で消費の崩壊が起きている。終わりなき資本蓄積(利潤追求)という形態が崩壊した。
 最前線にさらされる「新しい労働者階級」の人たち。経済的、社会的影響は「慣習的」差別を介して引き起こされる。
 第一に、増加する患者を介護するはずの労働力は、ほぼ世界中にわたって通常、極度にジェンダー化され、人種化され、民族化されている。(日本は未だ少ない)→それで世界中でブラック・ライブズ・マター運動が広がったのだ。
 また空港などの物流部門を見ると、階級に基づく労働力の現状を示している。この「新しい労働者階級」は最前線にいる。新型コロナウイルス感染症の進展は、階級的、ジェンダー差別的、人種差別的な世界的大流行の特徴を示している。「頑張ろうね」には懐柔策が潜んでいる。「この事態がどの位続くのか」長くなるほど、労働力の価値喪失も大きくなる。このままだと、1930年代に匹敵する大恐慌、失業率の増加が来ることは間違いないという。
 この解決には、サンダース以上の社会主義的政策が必要となる。
★ グリーン・ニューディールは来ないのではないか。
避けられない経済構造の変化と言うが、資本主義の下での対策では追い付かず、社会主
義的政策が必要となるであろう。
 企業による脱炭素化は難しい。この事態に及んでも、日本の政権は脱炭素化を原発で賄おうとしている。「人類が生き延びる」には、もうグリーン・ニューディールでは間に合わなくなっている。
 飯田哲也は、「文明史的なエネルギー大転換に沿って提起されているグリーン・ニューディールは、軸となる分散型技術の活用とともに、オープンで水平・参加型の統治を可能とする民主主義の深化がもとめられるからだ」という。
 (それを明快に斉藤幸平は、解明した。脱成長のコミュニズムだと。)
★ 中東でコロナによって起きているのは、
油価低迷が中東特に石油産出国の経済に与える影響は深刻である。イランの大流行はト
ルコに抜かれた。湾岸アラブ諸国は外交政策を転換させた。
ポスト石油時代の経済のあり方をどうとるかかが問われている。カタールとドバイは、
ハブ空港としての役割にも大打撃を受けた。その上、移民労働者に経済開発の大部分を依存してきたことも足かせになっている。
 難民キャンプではどうか。感染者数は実に少ないという。シリア、パレスチナ
 医療資源を制するものが、国家を制するというが。ガザなどは自助能力の高さでカバーしている。
★コロナ禍のラテン・アメリカ
 ラテン・アメリカ諸国は、アメリカ、ブリックス諸国についで多くなっている。
 ブラジルはもとより、アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、ペルー、チリと広がっている。しかもこれらの国々では実態把握が困難であり、実際にはもっと深刻であることが見込まれている。
 影響は健康被害だけにとどまらない。なん百万人もの人びとが、一週間生き延びるたくわえを持っていない。その為、昨年3月以降は、殺人、恐喝、略奪などの暴力犯罪が増加し、暴動がおきている。しかも一昨年から政治的、社会的混乱の中にあり、重層的な困難に直面している。
 この地域の保健医療システムは脆弱そのものである。その一つの理由は、規制緩和、民営化、緊縮財政といった新自由主義の政策パッケージが財政援助の見返りに推進されている。
 それで集中治療用の病床数や医療従事者、公立病院数なども削減されている。アルゼンチンやエクアドルなどが典型であり、カリブ諸国を含めてこの地域の八か国が公的医療支出よりも債務返済に多くの額を費やした。ベネズエラでは前のチャベス政権は、社会開発と貧困削減に取り組み、貧困地区での無料診察サービスや診療所の建設を推進してきた。チリやエクアドルでの公共料金値上げ反対運動やブラジルでのサッカーW杯開催反対デモなどが起き、ラテンアメリカ・カリブ地域での経済成長は2019年には0.1%であった。
 そこにコロナが起きた。
★ 違う世界に通じる入り口へ  ―誰一人取り残さない―   世界2020.9
ナオミ・クライン対アルンダティ・ロイ対談、アサド・レーマン司会
〇 誰一人取り残さずに済む新しい世界を築こう。私は、勇気が出た。やっと期待の新人が現れたからだ。なんと日本から。マルクスに匹敵する、マルクスの後継者である新人が出てきたからだ。


★「未来への大分岐」斉藤幸平編

〇 マイケル・ハート
 リーダーなき社会運動は持続しない。サンダース現象は、ウォール街占拠運動の連続です。
 ウォール街を占拠した人たちが、運動の継続を求めて、それをサンダースに求めたのです。
 彼らの要求を表現する「手段」が、サンダースだったのです。サンダースはいろいろな運動をして来た人々の主張を取り込んで、政策にしたのです。
 サンダースの発する声の背後に、ウォール街占拠運動や、ブラック・ライブズ・マター運動、パイプライン建設に反対する環境運動(ダコタ州のスー族居留地を通すことへの反対)、学生ローンのボイコット運動(オキュパイ・スチューデント・ローン)などのさまざまな運動体の主張が流れこんでいる。
 
(サンダースは民主党下院議員の中で、進歩的グループを4人で結成しましたが、今は4割を占めるほどになり、大統領候補を争うまでになっています。その進歩派議員は、様々な人種や女性、若い議員で占めています)

△イギリス労働党党首のコービンはどうか。
 コービンを支えているのは、労働党の中での核の存在ですが、活動の中心は35歳以下の若者たちと70歳以上の高齢者で、中間の年齢層が余りいないのです。
 若い支持者は、サンダース支持層に似ています。違うのは社会主義的な政策を訴えてきた長い歴史を持つ労働党に調和しながら、うまくやっていることです。
 70歳以上の支持者たちは、労働党がラディカルだった1960年代以前から党員だった人たちです。

△選挙がすべてではない。
 社会運動が社会を変えるのです。
 政治を民主化するだけでは不十分で、社会全体を民主化することが重要なのです。
△コモンから始まる、新たな民主主義
 コモンとは何か
  民主的に共有されて、管理される社会的富のことです。
  コモンは水、空気、電気などです。土地も入るようです。
 コモンの自主管理を基盤とした民主的な社会が、コミュニズムです。

マイケル・ハートの最後の言葉は、
 この時代に左派の意味が失われてしまうわけではないのです。
 自由、平等、連帯、そして民主主義―私にとって左派が意味するのは、やはりこういった一連の言葉であり、こうした言葉の持つ可能性を問い続けなくてはなりません。

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新型コロナ感染症情報 第10報

2021-03-06 10:17:45 | 感染症
             新型コロナウイルス感染症の日本の奇跡

   なぜ日本は欧米諸国に比べて、新型コロナ感染症の感染者や死者がけた違いに少ないのか


  新型コロナウイルス感染症の日本の奇跡
 世界では、中国で始まった新型コロナが、すぐヨーロッパに飛び火し、急速に広がったのに、なぜか隣国の日本や韓国、台湾、マレーシアでは広がらないことが奇跡と言われた。
 特に日本は特別なことをせず、ロックダウン(都市封鎖)も中途半端であり、国民に自粛を要請する形に近いものであった。また今回の非常事態宣言も飲食店への規制だけで、これも中途半端でしかない。それでも、他に国に比べたら感染者は少ない。
 日本で感染者数が少ない理由はなぜか。
 ピーター・テミンはその「中間層はなぜ没落したか」で、マンチェスター大ルイス教授によると、発展途上国はいわゆる二重経済をもち、それを「資本主義」部門と、「生存」部門と名付けた。資本主義部門は、資本と労働の両方を利用した近代的生産の拠点で、その発展は資本の量によった。生存部門は貧しい農民からなり、その人口は土地や自然資源の量に比べてあまりにも大きい為、最貧の農民一人当たりの生産性はゼロに近かった。ルイスが考えたのはアジア、アフリカ、中南米の国々で最大の国は中国であった。多数の農民が小規模農業に従事し、生存部門を構成していた。ほとんどの発展途上国はそうした二重経済であったが、日本、韓国、マレーシアは1960・70年代に急成長を遂げ、人口のほぼ全体が資本主義部門へ組み込まれた「成長の奇跡」として知られているという。この国々がコロナの少ない国である。
「人新世の資本論」の著者斉藤幸平は、日本人の大多数は世界の裕福な上位10%に入るという。世界銀行は一日一人1.9ドル(約200円)以下で生活している人を貧困と定義していて、世界の人口77億人の約一割の7億3千万人が絶対的貧困層である。
日本では年収200万円以下の貧困層は、2018年では約1100万人で、人口の約8.5%である。失業率は2019年2.3%。これがコロナ直前の状況であった。貧富の格差指数も、失業率も、世界の中で北欧並みの数字である。また日本では内戦や政治的紛争が起きていないし、難民も受け入れていない。それがコロナウイルスに感染しても発病しない状況を作っている。
国際医療福祉大の高橋泰教授に言わせれば、日本人はまだ自然免疫の段階でコロナウイルスを防御している。だから抗体検査をしても、欧米に比べて二桁低い数字しか出ていないという。抗体は、ウイルスが血液中に侵入し、獲得免疫まで発揮されないとできない。自然免疫の段階つまり、侵入する気道の粘膜細胞での細胞性免疫で闘って勝利していれば、抗体はできない。アメリカのウィルキンソンとピケットがその著「格差は心を壊す。比較という呪縛」で「格差の小さな国はうまくいっている」。アメリカは「世界で最も経済格差の大きな国」。「所得の不平等がもっとも小さな日本」とし、日本が健康や社会問題の指標(平均寿命、乳幼児死亡率、薬物・アルコール依存症、殺人犯罪率、未成年出産など)において世界でいちばんいいという。それが日本人の多くの人が自然免疫を発揮できている要因ではないか。
そのためこれだけコロナが騒がれていても、抗体検査では昨年12月の調査で東京は0.9%(6月は0.1%)しかなかった。昨年5月スウェーデンのストックホルムで25%、ロンドンで17%、ニューヨークで12%、モスクワで10%、オランダで3%、ドイツのガンゲルトで15%という抗体保有率であることと比べて極端に低い。ここから考えても、自然免疫段階で対処している人が多いと考えられる。これが日本の奇跡であった。
だから有効性と安全性に問題のあるワクチンは、日本では接種を急ぐ必要性はないと思う。コロナワクチンは、インフルエンザワクチンと同じ程度のものと考えて良い。
 

 これは「チェルノブイリ子ども基金」のニュースレターに載せたものです。
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コロナウイルス感染症の重症化はなぜ起きたか  第九報

2021-02-08 02:55:56 | 感染症
新型コロナウイルスの重症化はなぜ起きたか

新型コロナウイルス感染症情報 第九報


1.遺伝子型の変化はウイルスの病原性を強めるか。
つまり、遺伝子型が変化して強毒性になるのでしょうか。答えは、No(否)です。
 人間の体内でも、ウイルスでも常に遺伝子の突然変異は起きています。しかし、それは大きな変化ではないです。
またインフルエンザウイルスは毎年流行株が変化しているし、10年に一度くらいに大きな変化があり、さらに30年程度で大変化がありますが、臨床上の症状の変化はほとんどないです。だから宿主となる人間の側の違いの方がもっと重要です。
 新型コロナウイルス感染症も同じです。普通のコロナウイルスによって生じるのは、風邪の症状で自然治癒することがほとんどです。それから大きく変化したサーズやマーズが、重症化しましたが、それよりはるかに弱毒の今の新型コロナウイルスが、小さな変異をしても毒性に変化はほとんどないのです。
 現在、重症化している人が増えていることを、遺伝子の変化が原因として片づけています。しかしそうではありません。人間の側が変化しているのです。
2.人間の側の免疫を低下させる要因は何か。
 ウイルスの側の変異が重症化要因ではないとすると、昨年11月過ぎて急速に重症者が増え、年始の2021年1月1日午前0時までの死者が3554人となったのはなぜか。(12月22日が2944人で、1月16日では4488人、1月24日には5077人です。2月になり6000人を突破しました。)
 問題は、人間の側にあります。重症化するといいますが、かかられた人の免疫が低下していたのではないでしょうか。特に第一次の緊急事態宣言が出た時に比べて、現在特に昨年11月以降から、重症化が進み、死亡者も急速に増加し、医療崩壊が叫ばれています。
 その原因は、コロナに打撃を受けた約1100万人の年収200万円以下(2018年)の人たちで、主にパートやアルバイトなど非正規で働く人たちが、コロナで仕事を失い、さらに追い詰められているからです。一部は住む家を失い始めています。
△その原因としては、
1)貧困と更なる追い打ちのコロナ失業
 貧困は、先ず快適な居住場所を得られず、食糧にもこと欠きます。現実に、女性の一人親家庭では、子どもには一日二食食べさせているが、親は一日一食しか食べていない家庭も出ています。給食が子どもの栄養源になっていたのですが、それが粗末な給食になっています。
 2018年の統計で、年収が200万円以下の世帯が1098万人でした。2019年には全雇用者数のうち非正規は38%の2165万人でした。その後コロナで、主に非正規、特に女性が解雇されています。「世界」の雨宮処凛の報告では、7月には前年対比で非正規が131万人減(失業)でその内女性が81万人。8月に減った(失業した)パート・アルバイトの74万人の内女性は63万人。
 そんな非正規女性の2018年の平均年収は154万円。2019年には貯蓄ゼロは単身世帯で38%。その人たちがコロナで失業し、家賃が払えず、生活費もなくなっています。
 さらに自殺者が増えていますし、住宅ローンが払えない人も出ています。しかも低年齢化で、20代から30代の人がメールでSOSを出し、40代の世代も多いといいます。コロナ失業とコロナによるホームレス化が増加しているのです。失業しても失業保険ももらえない人も少なくなく、もらえても生活できるだけの金額ではなく、食を切りつめるしかないのです。
コロナに感染して、自宅待機させられている人では、外出もできず、一食すら満足に食べていない人が出ています。食料の買い置きがつきてしまうからです。
 「年越し大人食堂2021(四谷)」でも、200人を予想したのが340人も来て、用意した食事では足りず、緊急買い出しをして間に合わせたとのことでした。特徴は、年齢層が30代から70代で、女性が2割を占めたことです。過去にはほとんどが男性でした。
 貧困は、居住環境を奪い、食にもこと欠くために、免疫を低下させる最大の原因です。
 2)過重労働
 貧困者は、仕事をかけもちしたりしていますし、超過勤務で収入を増やしていたりしています。失業して職が見つからず、貯金も使い果たして、「新型コロナ災害緊急アクション」へ電話相談してくる人も増えています。そこで緊急の宿泊や生活保護申請を援助しています。
医療従事者の感染も原因は過労です。大病院の勤務医や看護師は、日常的にも過重労働でブラック企業並みです。看護師の夜勤は、16時間連続勤務ですし、医師の宿直勤務は36時間連続勤務です。そこへコロナ感染者を収容すると日常業務以外の仕事が過大に増え、労働時間が長くなります。それでコロナの感染者が出ています。
また女性は非常勤が多く、コロナで失業し、男性の仕事に入ったり、風俗産業で働く人も増えていますが、風俗業も仕事が減っています。ホスト業も男性の風俗業で、労働条件も住環境も良くありません。そこにコロナ感染者が増えるのは当然のことです。
仕事がある人は、失業しないために懸命に働きます。特に歩合制の職場は仕事の取り合いにすらなります。
 3)居住環境
 貧困者は日常的に、貧しい食生活で、過重労働をしています。しかも、劣悪な環境に住んでいます。ホームレスの増加が表面化していませんが、その代りにカプセルホテルやドヤ街、ネットカフェが宿泊場所となり、今年は政府も昨年4月の緊急事態宣言の時のようにネットカフェを営業停止させられなかったのです。ネットカフェを宿泊場所にしている人が全国で4000人とも言われています。また家賃が払えずにホームレス化も始まっています。
 日本ではなかなか移民や亡命者を認めず、学生、研究生、研修生として入国するために難民が隠されています。外国籍の多くの人たちは、狭い部屋に大勢で住んでいます。
 4)解熱剤の使用
 感染した人や、感染を疑われる人が、解熱剤を使用していることが疑われます。かぜ薬つまり総合感冒薬にも解熱剤は入っています。
 解熱剤とステロイド剤は、早期から使うと重症化しやすいことは中国での経験で判っています。しかし、日本の多くの医師はまだ解熱剤を対症療法と称して処方します。また感染した時に、熱があると早く治そうとして解熱剤やかぜ薬を飲む人が多いし、またコロナと診断されて出勤停止になると困る人たちは飲んでいます。
 そういう人たちが重症化しているのではないでしょうか。なかなか部外者には、個人情報だからと知ることができません。1月になり、練馬保健所長から医師会へ、解熱剤の一週間分以上の処方が要請されました。しかし、解熱剤は保険上では屯用(頓服)で使用するように指導されています。長期連続の解熱剤の使用は、重症化の最大の要因です。
 熱が出た時に、コロナ感染も否定できませんから、決して解熱剤や市販のかぜ薬を飲まないで下さい。在宅で待機している人に解熱剤を処方して、症状を隠してしまうと、短期に重症化するのではないかと思います。
 5)コロナ恐怖症
 精神的な要因も悪化する原因です。重症者や死者の話ばかり報道されているので、感染したら自分もそうなると思い込む人が少なくありません。
 私の実感として、コロナを怖がる人が三分の一、平気な人が三分の一、その間で揺れる人が三分の一程度だと思います。特に、怖がっている人は、外出すらしなかったりします。半年の間外出していない人を知っています。
 ストレスが免疫を低下させることも判っています。だから神経質な人ほど病気にかかりやすいし、かかると不安で病気が悪化します。「死ぬ、死ぬ」と自分で自己暗示をかけると死にやすくなります。現実にパニックになって自殺者も増えています。
 適切な治療を受ければ、コロナで重症化するかどうかは、その人の健康状態によります。
3. 医師や芸能人や議員が感染する訳は、
過労と解熱剤使用ではないかと推定しています。
だからかかったと思ったり、熱が出ても決して解熱剤は使ってはいけません。体の症状は、体の出している防衛反応です。熱を出して、ウイルスと戦っているのですから、それ(免疫システムの働き)を抑えると、病気が悪化します。軽い病気なら、それでも済みますが、インフルエンザや麻疹、水痘などでは重症化します。しかし、小児科医以外では、それを知らない医師が多く、解熱剤を処方します。小児科医でも解熱剤を使う医師はいます。 
4.なぜ感染者数で判断するのでしょうか。
そもそもPCR法で陽性はどういう意味でしょうか。
 PCR法は遺伝子の一部を拾っているので、死んでいても陽性になりますし、同じ遺伝子配列を持っていると、他のものでも陽性に出ることがあります。だから、感染症の診断に使ってはいけないと、この検査法の開発者は言っていたのです。
 PCR法陽性者数だけを発表するのはおかしいです。症状が出た人だけ発表すべきです。
 また若い人たちはほとんど軽症で済みますが、過重労働者たちは免疫が低下し、重症化しやすいです。
 アメリカ企業のPCR検査キットには、インフルエンザ、マイコプラズマ、アデノウイルス、RSウイルス、クラミジア等に反応する可能性があると記載されています。
 また、タンザニアの大統領が国立研究所のPCR検査の検体に密かに様々なものを混ぜ、パパイヤ、ヤギ、ウズラの卵でも陽性判定が出たことも報じられています。
 そういう限界のある検査法で、陽性者を感染者として判断し、感染者と判断されると保健所の管轄になり、医療機関つまり医師の管理からはずされてしまうことも問題です。
 感染者とか濃厚接触者ではなく、症状のある発病者を管理すればよいのではないかと思います。
5.日本の医療崩壊は、なぜ起きたか。
感染症は無くなったとして、伝染病棟をなくし、僅かに結核病棟が残され、感染症ベッド
をなくしてしまったのです。もちろんエボラ出血熱対策の病床は作られてはいましたが、僅かなものです。厚生労働省の調査でも、感染症病床は1995年の9974床から、2018年は1882床までに減少しています。2018年の総病床数約 164万病床のうち、一般病床57.6%、精神病床21.3%に対し、感染症病床は 0.1%です。不採算とされる感染症病床の9割近くを公立や公的病院が担っています。その国立、公立、公的病院の統廃合を求め続けてきたのです。
 コロナ感染症の流行に対し、政府や都道府県は、自らの責任で中国政府のしたような、緊急に感染症病棟を作らずに、ベッド数制限をして縮小させ、満床にするよう指導していた一般病院に頼っています。これでは急激に増加する患者数を収容するのには足りませんし、一般患者に移されては困ると一般病院側が受け入れを拒むことも当然です。
 元々都立病院の前身は、伝染病院でした。戦前から戦後にかけて伝染病の流行で都民がパニックになったために、それを抑えるために、隔離するためだけの伝染病院を作り、患者を 隔離したのです。当時は抗生物質もなく、隔離するしか方法が無かったのです。コロナ対策も同じではないでしょうか。
すぐ収容力の大きな感染症専門病棟を作るべきであったのです。ホテルはまだしも、自宅待機は症状のある人に対しては、もってのほかです。
軽症でも、症状があれば定期的な診察は必要です。今、死亡者が急増しているのは、新型コロナ感染症と診断されると、病院から保健所に管轄が変わってしまうからです。保健所は医療をしません。だから在宅で放置されて重症化し、死亡者が増えているのです。
 まだ日本では医療が崩壊しているからと、年齢や持病でトリアージ(患者の選別)をされてはいませんが、今後は判りません。症状が出たら入院させて観察すべきですし、少なくとも医師の管理下に置くべきです。それを自宅に放置していることが問題なのです。保健所は数も職員数も減らされて、対応できないのです。
 感染者を一般病院に入院させることも問題です。一般病院にしわ寄せが行っています。
 そして最後には、社会的弱者と貧困者がしわ寄せを受けるのです。
6.ロックダウンや営業停止すると、
営業時間短縮や県境移動禁止などによって、職を失ったり、収入を減らされたりして、ホームレスが増えていますし、母子家庭を直撃しています。コロナによって女性の失業率は9%にものぼります。その多くは、その仕事で生計を立てている人たちで、失業しなくても非常勤のために労働時間が減らされると、収入減で生活が成り立たなくなります。
昔は、非常勤の仕事は夫のいる女性が副業でしていましたが、今は生業でしていても、生活の都合で非常勤としてしか働けないのです。その人たちがコロナで打撃を受けています。
7.ワクチンに期待はできません。
 入手できた情報によると、ほぼインフルエンザワクチンと同じようです。良くて30~50%の予防効果で、接種しても感染します。また初期のインフルエンザワクチンと同じように副作用も強く、死者も出ています。ワクチンと後遺症については別に詳細を出す予定です。
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大絶滅の時代

2021-01-24 17:42:36 | 社会
       大絶滅の時代

新型コロナが明らかにした世界の現実

  無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
                  
新型コロナが明らかにした世界の現実(自由と平等のサピエンス史)
 今、斉藤幸平が明らかにした世界の現実、つまりもう社会運動をして、今の現実社会を変えなければ、地球の第6番目の大絶滅の時代に突入するのではないかという危機意識が、各方面から提起されている。
 これらは1970年代から始まっていた。しかし、今それが明白な妥当性を持って語られるようになり、しかも緊急性をもつようになった。人類の大破滅を招かないために。
★ 無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
(「自由と平等のホモ・サピエンス史」三宅芳夫:世界2021.2.)
 約6億年前からの生物の歴史では、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる生物の大絶滅の短時間(地質学的時間として)に突発した時があった。直前の第5番目の絶滅は、恐竜時代であった。およそ7000万年前に大隕石がもたらした気候変動による恐竜の絶滅である。
 今資本主義社会がもたらした成長を止められない社会が、地球を破滅に向かわせている。だからクルッツェンはこの時代を、ホモ・サピエンス(人)が起こした地質学的時代「人新世」と呼んだのである。
今日の地球温暖化、アマゾンやボルネオ、そしてアフリカなどの熱帯雨林の劇的減少、生物多様性の縮減、未知の感染症のパンデミックなどの、相互に絡み合った危機は、すべて無限の成長を「可能性の条件」とする資本主義と有限な地球生態系との論理的な矛盾であると捉えることができる。ホモ・サピエンスによって作られた資本主義によって、6番目の生物の「大絶滅」が動き出している。
 人類は20万年の間、「バンド」と呼ばれる小集団で移動しながら、狩猟・採集生活を営んでいたと考えられている。この当時の人類の労働時間は、三、四時間を超えることはなく、栄養バランスもよく、虫歯も感染症もなかった。感染症は家畜との「共生」によってもたらされたものである。バンド社会では平等であった。人類史の中でもっとも自由な社会、支配のない社会であった。自由は自然権である。バンド社会は話し合いの社会である。ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由がないから。
 この人類の世界史を三宅芳夫は解き明かした。
〇1万2000年ほど前から一部が植物栽培を伴った定住を始めた。小麦次いでオリーブが栽培され、ヤギ、羊、豚、続いて牛、馬が家畜化された。
〇紀元前3200年頃、メソポタミアで支配階層が出現し、徴税が始まり、国家が出現する。
 定住コミュニティから国家への移行の7000年の期間に、階級分化や、国家による支配、定住による感染症の発生(危険)などへの、狩猟・採集民の「抵抗」があったとスコットは説く。
 この時期には(1)狩猟・採集/バンド社会、(2)経済的格差のない数百人規模の部族社会、(3)農耕を基礎に経済格差のできた人口数千人規模の首長制社会の三つが併存していた。
 (この社会は近現代まで世界の一部には続いていた)。
〇その後、定住・農耕の拡大により、紀元一世紀ころには、ローマ、パルティア、漢の三つの帝国が並立した。農耕による土壌の劣化、建築材料や熱エネルギーは木材によって得られ、古代文明と人口を支えるために、森林の消滅と生態系の消失があった。少数の支配層と多数の民衆に階層分化し、長時間労働、栄養状態の低下、周期的な感染症の流行による大量死が19世紀末まで、20世紀の福祉国家の出現まで続く。
〇 首長制社会から始まった階級分化は、国家となって確固となり、政治的不平等と経済的不平等は強固な関連があった。
〇 バンド社会は、少ない労働時間、比較的良好な健康状態、そして平等主義であった。
争いは構成メンバーの話し合いで解決された。暴力は成立しない。それは「眠り」の間に報復に対抗できないし、ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由もない。
〇その後、たびたび支配層の消滅により、不平等は一時的に圧縮されるが、再び再建されて現代にいたる。
〇 ペストのパンデミックの後は、労働人口の減少のために、一時的には民衆への労働分配率が上昇し、良い時代であったという。資本主義の登場で「近代社会システム」が形成され、16世紀半ばには「古き良き時代」は終わり、不平等が拡大し続ける。
〇 その後、科学革命、産業革命、動力革命(石炭)、第二次動力革命(電気と石油)と進んだが、16世紀から20世紀までの近代世界の受益者は一部の上層部に限られていた。
〇 世界システムの中心国家群は、20世紀初頭1914年から1945年までの30年戦争に突入した。その初めの時期にスペイン風邪のパンデミックが起きた。この結果、人類史でも稀な、富と所得の大圧縮が起こった。それが最も著しかったのが日本だという。アメリカ並みの不平等な社会から、デンマーク並みの平等な社会に移行した。
欧米でも階級妥協と福祉国家の形成、社会主義国家の成立で、中間層、労働者層をつなぎとめるために、格差の縮小の傾向が一定期間維持された。
〇 その結果、人口の一定部分が、バンド社会以来一万年ぶりに、自由と平等を享受できた時代となった。黄金の30年とも言われた。
〇 しかし、これは1970年代の新自由主義のグローバル化で、かつ資本主義国となった旧ソ連圏と中国をも巻き込んで、世界中で格差は再び急激に拡大し始める。
 それはナオミ・クラインに「新自由主義は、第二次世界大戦後(30年戦争後)に労働者が獲得したものを解体するための階級闘争だ」と言わしめた。こうした急激な不平等の拡大が、(資本の)自由主義と民主主義の妥協として成立した大戦後の政治システムを不安定化させ、格差の拡大による大量の貧困層の出現が、コロナウイルスのパンデミックの温床となった。
◎資本の複利的再投資の無限の反復が、富となる。年1.5%前後の経済成長が無いと資本主義は崩壊すると考えられている。
 成長のない「定常化社会」へ移行しない限り、地球生態系の危機に対処できない。定常化社会への移行は、資本主義を廃止して初めて可能になる。持続可能な可能な発展などというSDGs(持続可能な開発目標)は本質を隠ぺいする煙幕に過ぎず、斉藤幸平は「現代版の大衆のアヘンだ」という。
 もうローザ・ルクセンブルクの「社会主義か野蛮か」というテーマしか語られなくなっている。だから「脱成長のコミュニズム」を提唱する斉藤幸平に賛同したい。

                


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人はなぜ病気になるのか――病原環境論または適応説 2

2021-01-10 11:17:12 | 病原環境論
大混乱の時代―2

信頼できる考えは何か――私の考え

「人はなぜ病気になるのか」(病原環境論または適応説)
                            2021.1.               
はじめに 
私は小児科医になって以来、理論より実践を重視し、「とにかく治れば良い」という実践的医療をつらぬき、実証的なアメリカ医学(最近は変貌したが)を水先案内人にしてきた。     
現代医学には理論に合わないことも多いし、未熟児・新生児の黄疸への光線療法のように実践が先行し、理論が後から作られたものも少なくない。私は医学教育や医療制度も含めて日本の現代医学を批判し、新しい医療の考え方を求めて模索して、「現代日本の医療批判」(「現代科学技術と社会変革」れんが書房新社、絶版)を書いた。
現代日本の医療の問題点は、その構造にある。それは公的な医療費の徴収支払い体制と私的な医療供給体制にある。私的な医療のために、医療内容が標準化されていず、出来高払いと医師の自由裁量制になっていることにある。だが、批判だけで今後の医学の目指す方向が見えなかった。
 ところが1984年に科学史研究の故中山茂先生(元神奈川大教授)と出会い、医学を中心に科学史の勉強を始め、「医学は社会科学であり、病気は社会によっておきる。医学は社会が病気と闘うための道具の1つに過ぎない」と言う医学史家シゲリストや、人間の環境への適応と病気との関係を示し、「生体論的で環境的な医学」を提唱するロックフェラー大環境医学教授ルネ・デュボスを知り、私の目が開かれ、新しい医療の方向性が見つかった。私はそれを臨床的に判り易くする為いくつかに分けて述べるが、これらすべてを統合したものが私の病因論(病原環境論または適応説)であり、私の医療の実践である。
 それを以前の職場の吹上共立診療所で実践し、病気を治し、確信を得た。

[1] 人はなぜ病気になるのか。
 私は、人間を「こころと身体を持つ、社会的な存在である」ととらえ、その人間のかかった病気を治すために、生体論的で環境的で、人道的なそして全体的に人間をとらえる医学を目指す。そこから、いろいろな生物学上の事実や医学上の事実を説明できるようになった。現在進行している遺伝子、ゲノムの研究は、私の考えを支持する結果を出している。
 
①複数の原因が重なって病気が起きる。--複数病因論、多因子説
 現代医学は、特定病因説または一疾病一病因説と呼ばれ、例えば、コレラは、コレラ菌によって起きる病気であり、結核は結核菌による病気であるという考え方である。
これに対し、複数病因説は、2つ以上の原因がそろった時に病気になる、という説である。コッホがコレラ菌を発見した当時から、これに反対していた医師たちがいた。ドイツのミュンヘン大衛生学教授ペッテンコファーは、「急性感染症は、何か特別な健康上の問題が先行していない場合には成立しない」と述べ、食細胞説を唱えたロシアのメチニコフらと、別々の場所で、公衆の面前で培養コレラ菌を飲んで見せて発病しないことを実証した。またパスツールも「細菌が問題なのではなく、その環境がすべてである。」と述べている。ドイツの病理学者、衛生学教授、政治家(進歩党)のウィルヒョウも、病気を自然病と人工病にわけ、人工病は誤った文化や社会的構造が生み出した貧困によるとした。ドイツ・シュレジア地方の発疹チフスの流行を調査し、その対策として貧民に対するデモクラシー、教育、自由、繁栄を与えよとの勧告を出した。
しかし、細菌学の高揚の中で、特定病因説が近代医学として残っていき、他の説はかき消されていった。
 私は複数病因説をとる。1996年堺市の小学校で発生した病原大腸菌O-157の事件では、同じ給食を食べているにもかかわらず、発症者0人の学校があったし、教職員の発病者は2.2%で、小学生の発病率も学校により大きく異なり、多くても50%を超えず、地区別では最高が南地区で27%であった。市全体で対象者4万5千人のうち、発病者は6500人で発病率は約15%、重症者は102名0.2%、発病者の0.5%が死亡した。この時堺市の健康な市民の検便で、9152人中206人(2.3%)からO-157が検出された(健康保菌者)。同じ細菌であるにもかかわらず、体内に入っても、発病する場合もしない場合もある。発病しても下痢だけで済む人も、血便が出た人も、重症化し溶血性尿毒症症候群になり、死亡者も出ている。その違いは何か。
現代医学では、インフルエンザ・ウィルスが入るとインフルエンザにかかると説明しているが、家庭でも学校でも病院でも、インフルエンザが流行しているのにかからない人がいる。
インフルエンザウィルス研究者は、感染した人が発病するのは50%以下という。しかも実際には、インフルエンザの大流行の年でも国民の10~20%しかかからないのが過去のデータである。厚生労働省も通常の流行で15%、大流行で25%と予測している。
昔、ある中学の女性教師の担任クラスで、半分近くが風疹にかかった。本人は今までに風疹にかからず、その時かかると思っていたがかからず、私の病院へ検査を希望してやってきたが、風疹抗体は陰性だった。ウイルスが充満した教室という密室の中で、感染していず、抗体も形成されなかった。
 故ルネ・デュボスはロックフェラー研究所の結核研究室長であったが、結核菌の研究で、同じ疑問を持ち、重症者と軽症者の結核菌をいろいろな方法で調べたが、結局違いが見つからなかった。それで、発病や重症化するのは、病原体に違いがあるのではなく、かかった人間の側に違いがあると考えた。そこから病原環境説または適応説が発想された。
複数病因説では、感染症は宿主である人間の身体の抵抗力が落ちた時、ウィルスや細菌に感染すると発病する。同じ細菌やウィルスにかかっても、抵抗力が大きく低下していると重症になり、それほど低下していなければ軽症か不顕性感染(かかるが発病しないで治るので抗体はできる)になり、全くの健康であれば、かからないし、抗体もできない。抵抗力を低下させるのは、人間が環境に適応できない時であると考える。
かからないのは人体の最先端である粘膜細胞とウイルスや細菌との闘いで勝ったのであり、その免疫が細胞免疫なのであるが、細胞免疫は測定できず、数値化できないのである。
細胞免疫は、唯一ツベルクリン反応で測定できるが、これは結核菌に対してだけである。

②人が環境に適応できない時に病気になる。--病原環境説または適応説
 人間は、地球という環境に生まれ、人間によって地球上の自然環境を変え、変化した自然環境によって人間自身も社会も変化し、環境と相互に影響しあって発達してきた。しかし人間は、自分の住む自然環境や社会環境にうまく適応できないと病気になった。人間は種としては、地球上のすべての場所で生存でき、かつごく一部(南極、北極、砂漠などで、研究者や探検隊を除く)を除いて、住み着いて住民として暮らしている。世界で一番数が多い生物すなわち昆虫を除いては、これだけ地球に適応している生物はいない。しかも、昆虫は、同じ生物(種)が、住み着いているわけではないが、人間はほとんど違いの少ない種である。しかも、同じ人間が、地球上の大抵の場所に住むことができるのである。つまり、適応力が強い生物だから、繁栄しているのである。環境に適応できない生物が絶滅してしまうのは、自然の法則であり、それを止めることはできない。人間もこのまま、地球環境を変え続けると、人間もそれに適応して変わっていくであろう。それには膨大な時間がかかる。記録に残された時代以後の人間は、生物学的に殆ど変化していないから、3千年くらいは変わっていない。我々の祖先と推定されるモンゴロイドがベーリング海峡を渡り、チリの先端の島に辿りつくまでにほぼ1万5千年かかったと推定されている。1万年くらい前に渡ったボリビアの高地に住む人は、紫外線によって老化が早く、シワも年齢に反して多いし、まだ褐色である。人間の発生の地のアフリカ原住民は真っ黒でシワもよらず、紫外線を防御している。
アフリカでの原人の出現は、300万年前とも600万年前とも言われている。アメリカ大陸の先住民は、その間少し環境に適応して変わっているが、アフリカ大陸の原住民ほどには紫外線への適応は進んでいないから、環境の変化に適応して変化するのはどのくらいの時間がかかるのであろうか。今地球環境の変化が問題となっている。しかし、元に戻すことは不可能に近いから、人間も地球と共に変化していくであろう。今後数万年後の頃の人間は、どうなっているのであろうか。
猿から人間への変化は、樹上では必要な餌が手に入らない環境の変化があって、平地へ降りたのではないかとの説もある。一説にはアフリカの地形の変動からとも言う。

 ヒポクラテスの説を現代風に換えて言えば、「自然環境の変化、不適正な食事、不適当な社会環境によって病気が引き起こされる。だからまずその原因を除くことが治療の第一である。原因さえ除かれれば、病気は自然に回復する。」となり、これを支持したロックフェラー大学環境医学教授で、国連環境委員会のアドバイザー委員長であった故ルネ・デュボスの説はヒポクラテスの再評価であると言えよう。しかし、これだけ高名な医学者であるにもかかわらず、基礎医学者であったためか、この説を支持する医師は基礎医学と精神科に多く、一般の臨床医師にはほとんどいない。私の説も、同期の医師では精神科と衛生学者しか支持してくれていない。
 環境への人間の適応には、個人および社会(集団)の適応があり、また自然環境と言っても土地や気候だけではなく、そこに住む動物や、寄生虫、細菌、ウィルスや他の微生物などの人間に寄生したり、共生したりする生物との適応も必要である。衣食住と言われるものは、自然環境に分類されるだろう。
 例えばパプア・ニューギニア高地人は、いも類を主食とする極端な低蛋白食でも、腸内細菌がアミノ酸を合成しているため健康である。しかし、年一度のお祭りに豚肉を食べるという。ところが、そのために腸内細菌が変化して、その後腸内でアミノ酸を合成できなくなり死亡する人が出てくる。これは20世紀初めまでの話で、現代では多分食生活が変わって蛋白質をとるようになったと思うが、私は検証していない。
また成長を促進するために、牛に蛋白質を食べさせたということによって、狂牛病が発生したのである。早く大きく育てて、市場価値を高めることが、新しい病気を生んだのである。社会が変化すると、病気も変化する一つの例である。
 個々人の社会(または集団)への、適応関係(免疫、感受性)によっても病気にかかるかどうかが決まる。

◇ 伝染病の歴史を調べると、まさに人間がどのように病気に出会い、そしてその病気に適応してきたかの歴史で、ペスト、コレラ、発疹チフス、梅毒、結核など皆そうである。
 例えば、北米先住民(インディアン)を滅ぼしたのは、白人移住者が持ち込んだ疫病のためであり、特に結核の影響が大きい。カナダのクァペル峡谷先住民保護地では、家族の半分以上が三世代の間に失われ、残存している家族も死亡の20%は結核によるものであったという。ここでは結核の流行に悩まされた最初の世代と第二世代は結核性髄膜炎、粟粒結核と骨関節結核が多く、全身結核が主であったが、第三世代は、病気は肺に限局する傾向が強くなり、慢性の経過を示した。第四世代にリンパ腺組織に現れたのは1%以下であったという。これは北米先住民が結核菌と初めて出会い、そして第四世代にようやく結核菌と適応関係ができあがったためである。モヒカン族も結核によって滅ぼされたのである。
中南米で少数の白人の軍隊に多数のメキシコ軍や先住民(インディオ)たちが負けたのは、天然痘と発疹チフスだったという。アラスカやカナダのイヌイット(エスキモー)たちが、白人に負けたのも結核であった。それで中南米の先住民たちは、自分たちを護ってくれなかった祖先伝来の信仰を捨てて、病気に強かった白人の神、キリスト教に改宗するようになった。
 環境には、自然環境と社会環境とがあり、どちらに適応できなくても、ストレス状態となり、病気となる。1936年に発表されたセリエの全身適応症侯群は、特定の病気だけではなく、すべての病気にあてはまると考えられるようになった。ストレスによって人間のこころや身体のコントロール・センターである大脳皮質の働きが乱され、その結果その支配下にある身体の機能のどこかに異常を生じ、病気となる。ストレス状態に置かれると、免疫系の働きが落ちるから、細菌やウィルスによる病気や、癌にかかりやすくなる。免疫系だけではなく、中枢神経系も、自律神経系も、内分泌系も変化して病気になる。(精神神経内分泌免疫学)どこに生じるかは一人一人異なり、その人の身体の言わば弱い所に病気が現われる。
 だからすべての人間が同じ環境に置かれても、全く同じ病気になることもない。それは、その人の弱点に病気がでてくるからである。

その人の弱点は、
1) 両親のどちらかから受け継いだ家族的傾向(染色体、遺伝子、ゲノム、HLA抗原など)と、
2) 母親の胎内から現在までの、生まれた順番、育ち方や友人、幼稚園や学校の先生、生活習慣(酒、タバコ、食事を含む)、かかった病気などに左右される先天的および後天的なもの、の両方から構成される。
1)の例としては、劣性遺伝子は普通の人で20以上存在すると推定されているし、ある外科医は、親子で胃潰瘍になると70%は同じ場所にできると言う。成人型の糖尿病は、糖尿病になる遺伝的素質のある人が、体重を必要以上に増加させた時に発病する。
最近のヒトゲノムの研究では、遺伝子によるという。しかし、遺伝子は遺伝するが、病気は遺伝しない。病気は、遺伝子をもっていて、それを発現させる環境に入ると、病気になるのであり、遺伝子はスイッチがあってオンになると発病し、オフであると発病しない。オンにするのが、環境であると考える。環境が2)である。

 2)の例としては、幼児から学童の時期に、具合が悪くなると吐くことを繰り返していたこどもが、成長すると、胃炎や胃潰瘍になることが多い。子どもの先天性の病気は、母親の精神身体状況によって左右されている疑いがある。身体的な病気はまだ確かでないが、精神的な面は明らかで、胎児期や乳児期に母親が精神的なパニックに陥ると、その子どもは臆病になるという。
 ノーベル賞受賞の利根川進博士の理論は、「個体発生の過程で遺伝子も変化する」というもので、抗体を作る免疫グロブリンの遺伝子が、遺伝子を構成する部品セットから次々と選択され、組み立てられることを高等動物で証明した。その抗体の数は億単位になると推定されている。だから初めてかかった病気の病原体に対して、免疫グロブリンを組み立て、それによって抗体が作られる。それが出来なかった人が死に、できた人が生き残った。そして生き残った人の子に、その遺伝子が遺伝していき、世代が進むに従って、抗体形成が迅速になり、発病率が減っていく。それがこのことは免疫グロブリンだけではなく、他の遺伝子にもあてはまると考えられる。こうして遺伝子が変化して、環境にうまく適応した人が生き残ると考えるのが私のとる環境説である。免疫の働きは、液性免疫である血液中の抗体と、細胞性免疫がある。残念ながら、現代医学では、細胞性免疫はツベルクリン反応でしか測定できない。
例えば、黒人に鎌状赤血球症貧血という遺伝性の貧血があるが、その遺伝子を有していると、マラリアへの抵抗性を増大させる。マラリアの多発しているアフリカでは、生存に有利なので今でも続いている病気である。遺伝子を2つもつと発病するが、1つもっていると発病しないが、マラリアに抵抗性をもつ。地中海性貧血もなんらかの病気に対応して生じたものと思われる。
しかし、免疫のシステムを抑制もしくは働かせない要因があり、その一つとして現代ではストレスがある。

③ こころと身体は、常に相互に関連している。―― 心身一体論
 最近になって心療内科が一般に認知され、身体の病気にこころが関与していることが認められるようになった。でもまだ一部の病気だけしか認められていない。ところが、心療内科で診療を長く続けていると、すべての病気がこころで起きることが分かってくる。病気は、人間がなるもので、人間はこころと身体が切り離せない(メタルの裏表である)から、どんな病気でも必ずこころが関与していることになる。心と身体は一体なのである。残念ながら、今日本で心療内科を名乗るのは多くは精神科医であり、内科の診療ができない。心の面からの内科診療をするのが心療内科であるが、精神科にかかりたくない人のために、心療内科を名乗っているに過ぎない。
 心療内科医は、アレルギー疾患を治せるし、膠原病すら治すことが不可能ではないが、膠原病専門医との併診が必要で、しかも大変な仕事なのに報酬が少ないのでしなくなってしまった。
 その点では、アナフィラキシーショックやサイトカイン・ストームなどは、精神的要因が大きく、心療内科医にとっては予防できるのだが、臨床医からはずされていて、それができていないのが現実である。ちっとも恐ろしくは無いのに、恐怖をあおっているとしか私には思えない。
 
 ドイツの精神科医ミッチャーリッヒによれば、「臨床でみられる古典的な病像の多く(胃潰瘍、甲状腺機能亢進、心臓循環器系障害 、喘息等)は、ある精神状態-体験状態-が原因となっており、その際それがしばしば決定的役割を果していることがますますはっきりと証明されるのである。・・患者をとりまく直接の社会環境が、患者をして神経症におちいらしめる上に非常な意味をもっているということは、すでに明らかとなっている。・・近年、医療を求める患者の30%から50%が、いわゆる機能的障害を示すものであるということは、殆ど一致した意見となっている。こういった形の病気の出現に力を貸しているのは、一次的には物質的条件ではなく精神的破綻なのである。」という。慢性疾患には、その人の人生が反映されている。
だから元東大精神科講師の森山公男医師が、精神病は治るには和解が必要と説いているのと同様に、身体疾患にも和解が必要である。
 心筋梗塞や狭心症の発作が明け方に起きることがよくあるが、その一部は明らかに夢を見ることで起きていると心療内科医は言う。私が成人の気管支喘息の患者さんから聞いた話では、会社や仕事の夢を見ている時に喘息発作が起きたと言う。膠原病は、自己免疫疾患と言われているが、自分の身体の成分に対して抗体ができて生じる病気であるが、心療内科的には、自分の歩んだ過去のことを、自分が悪かったためだと解釈して、自分を責めることによって生じてくる。代表的なものはリウマチ様関節炎である。過去との和解によって進行は止まり、軽減されるが、器質的障害が起きてしまっている場合には、それは回復することはない。
 ストレスによって病気が誘起されると考えてきた私にとって1つの難問があった。赤ちゃんのストレスは何なのだろうか。苦労の結果やっと到達したのは、赤ちゃんを用もないのにさわることだった。まちがったスキンシップ論が横行し、母親たちは一生懸命赤ちゃんをさわり、逆に病気を生んでいる。アトピー性皮膚炎の赤ちゃんが第一子の場合は、赤ちゃんが要求しない限りさわらないように母親に話すと、ほぼ2~3週間で皮膚がきれいになる。しかし、第二子、第三子の場合は、上の子が退屈すると赤ちゃんをおもちゃにして、さわっているので、これを止めさせることは難しいからなかなか治らない。乳幼児の喘息様気管支炎も、ストレスで起きる。ある子は、保育所へ行き始めてから急に始まったので、調べたら「はいはいをしなければ立ってはいけない」という保育所の方針で、立とうとするのを足を押さえて立たせないようにされていた。それを止めてもらったら、ゼーゼーしなくなった。別の子は、母親が祖母の病気入院の付添に行き、叔母に預けられた所、ゼーゼー始まった。じっとがまんしている様子で、母親が帰ってくるとゼーゼーしなくなるが、また叔母に預けられるとゼーゼーする。一般的に子どもの病気は、保育所、幼稚園、学校に入ってしばらくの間や、行事の前後に多い。これが私の考える心身医療である。

④ こころは社会的に作られ、影響をうける。--病気は社会によって生ずる。
 ドイツの病理学者のウィルヒョウは、病原菌よりも社会的条件を重視していた。病気を自然病と人工病にわけ、人工病(チフス、結核、壊血病、精神病など)は誤った文化や社会的構造が生み出した貧困によるとしていた。例えばシレジア地方の、チフスの流行の際に調査にあたり、「貧困地区にチフス患者が続発し、より強力となり、さらに上流階級をも侵すことになった。飢餓はまた感染の素地を高めたが、・・それに対処するには社会改革、・・民主主義教育それに・・自由と繁栄が必要だ」と言った。社会的な原因を限られた病気にしか見ないという欠点はあったが、病気の原因の1つに社会や文化を含めている点では先駆的であった。しかし、彼の業績は病理学の面だけが残り、社会的な面はかき消されていった。

 14世紀から19世紀にかけて、インドやヨーロッパで見つかった野生児の記録から明らかになったことは、人間は生まれながらに人間のこころや知能をもっているのではなく、家庭を最小単位とする人間社会によって形成されて行くことであった。乳児早期に狼の世界に入った子どもは、連れ戻されても狼のままで人間に戻れないで死んでしまう。つまり人間は人間の社会の中で育てられて、人間になり、こころは社会的に形成されている。家庭によって、教育によって、仕事によって、人間のこころは左右される。
 だから私は、発達障害は遺伝的素質と親の育て方によって生じると考えている。統合失調症やうつ病も同じである。精神科医の多くは、妊娠してからの33か月を見ていないから、原因がわからないと言うが、私は発達障害と同じと考えている。

 だから、人間は、こころと身体を持つ社会的な存在であり、その人間がなる病気の治療は、身体の治療だけではなく、こころと社会的関係への治療が必要である。病める人間のこころを理解すべきと言われて久しいが、病める人間の社会的関係にまで立ち入らないと、真の意味での病気の治療にたどり着けない。WHOの健康の定義は1948年から、「健康とは単に病気でないとか、虚弱でないというだけではなくて、身体的にも精神的にも社会的にも完全に良好な状態をいう。」となっているが、人が社会的にも健康である必要性が理解
されていかなかった。
 社会が環境を変え、環境が変わることによって病気も変わって行く例をあげよう。今マラリアが、東南アジアやアフリカで蔓延している。中世には、ヨーロッパでもマラリアが蔓延していたが、湿地の排水をして農地に変えることが進んで、マラリアがなくなった。戦後、石垣島でも、環境対策でマラリアの撲滅に成功したが、同時に日本脳炎もなくなった。今マラリアが蔓延しているのは、焼畑農業とか、木材の輸出のためなどで、根こそぎ木を切ってしまったためである。森林に住む蚊は、猿につくが、草原をすみかとする蚊は人間につく。森林を切り開くことによって人間につく草原の蚊が繁殖し、マラリアを媒介している。南部アフリカの眠り病も同じで、森林を切り開くことで、媒介するツエツエ蝿が増えてしまったためである。
 ロシア、ウクライナなど旧ソ連諸国で、麻疹、百日咳、ジフテリア、結核など子どもの病気が体制が変わった直後に急増した。チェルノヴイリ原発事故による被曝の影響もあるが、主に社会的経済的混乱が生活環境の悪化を招き、子どもの感染症を増加させ、医療サービスの低下がそれに拍車をかけている。
 日本でも、現代社会の病理がストレスを生じ病気を生んでいる。だから死亡率は減少して、平均余命は延びているが、花粉症をはじめ病気は増えているし、過労死を中心に中年男性の死亡が増加し、男性の平均余命は低下した。この40代、50代の男性の死亡率の増加現象は、イリッチが「アメリカで始まり、1970年代に西ヨーロッパに上陸した」と指摘したが、日本に上陸したのは1980年で、その後男性の平均余命が低下した年が数回ある。
この40代、50代の男性の死亡率の増加現象は、労働や生活の環境が改善されない限り、今後も続くであろう。
 最近は、中高年男性の自殺が増加している事も、現代社会の病理から来ている。自殺は通常の精神状態ではできない。精神的に抑うつ状態にあるか、または一時的にせよ、心因反応としてのうつ反応を生じて、その結果自殺したのである。もちろん、倒産、失業、リストラ、離婚、家庭の崩壊などが原因またはきっかけであろう。

[2] 病気はなぜ治るのか。
 なぜ病気になるのかを補強するため、なぜ病気が治るかを考えてみたい。
①  病気が治るのは、こころである。
 西洋医学でも、漢方医学でも、回教医学でも、カイロプラクティックでも、チベット医学でも、インド医学でも、民間療法でも、信仰でも、それぞれの治療法で病気が治る人がいるのは、人間のもっている自然治癒力を引き出すのにこころが大きく関係しているからである。しかしどの医学も宗教も、病気の人を100%治すことはできない。治らない種類の病気もあれば、同じ病気でも治る人と治らない人がいる。このことは、こころだけでも、医療技術だけでもなく、こころと医療技術を組み合わせることが大切であることを示している。アメリカでは、先住民のもつ医学の研究が大学でなされているし、ホメオパシー(同類療法とでも言えるか?)や心理療法による癌や難病の治療が行われている。これらも、100%ではないが、治る人が出ている。特にホメオパシーはドイツでは、医療費の5%を占めるに到っているという。キリストが奇跡を起こし、病気を治したと言われているが、あながち嘘とは言い切れない。こころが、病気に対する自然治癒力を回復させたものと考えられる。

② 自然治癒力
 元東大薬学部の名取俊二教授(微生物学)によれば、昆虫は体内で抗細菌、抗真菌の蛋白質を作っていて、抗ウィルス性や抗ガン性の蛋白質も作っていると見られるという。人間は昆虫より進化しているので、本来、人間にも同じか、またはそれ以上の生体防御機構があると考えられるという。そこから「人間には元々病気を治す力(自然治癒力)が備っていて、その力が発揮されない時に病気になる。」と考えると自然であり、癌の自然治癒の存在といった現代医学における不思議なことがうまく説明がつくが、まだ実証されてはいない。
 だから人が病気になった時、自らに備っている、その自然治癒力をうまく働かせることで病気が治っている。医師の役割はその自然治癒力を引き出すことにある。だから医者にかからなくたって、治ることも少なくない。しかし腕の良い医者にかからなかったために、重症化したり、落命することもある。現実に、遺伝子や免疫の仕組みが次々と明らかになり、ストレスによって免疫の働きが低下することも明らかになった。人間のもつ精巧な免疫の仕組みが、人間のこころや神経、内分泌と密接に関連していて、自然治癒力の一部を形成していることも明らかになってきているが、まだ身体全体とこころの関係は不明なことが多い。デュボスは、パブロフの条件反射の発見後、高次神経系の研究に進まずに、人間がある環境に置かれたらどんな反応をするかという研究を進めるべきであったと述べている。現代医学は人間を細かく臓器ごとに分解して研究を進めてきたが、今後は人間総体としてどういう反応をしているかを大いに研究すべきで、それがこころと身体の関係を新たな視点から明らかにしていくだろう。その研究は、精神神経免疫学や精神神経内分泌免疫学などと言われ、1980年代のアメリカで、実証的な研究が始まっているが、臨床免疫学者からは、無視されてきたが、近年日本でも動物実験では実証されている。しかし、その臨床への応用は進んでいない。

③ プラセーボ効果
 プラセーボ(偽くすり)効果は、こころが関係しているから現代医学の薬理理論で説明できない。どんな薬でも3割前後はプラセーボ効果があるという。中には1回飲んだら良くなってしまったという人もいる。私の師匠で自分も気管支喘息だった先生が、生前に言うには「不思議だね。飲んでも薬理効果が出てくるのには30分はかかるはずなのに、喘息が始まって薬を飲むとすぐに喘息がおさまってくるんだよ」という。医者でも同じで、この薬を飲めば治ると思っていると病気がよくなる心理的効果である。
 ロンドン大学精神科講師だったM.バリントは「医者くすりは、最もよく用いられる薬である。」と言っている。医者は患者のそばにいるだけでその役割を果たすことがあるし、また医者に診てもらうだけでよくなる患者がいる。医者が薬の役をする。これも一種のプラセーボ効果で、心理的なものである。しかし、医者も患者も一人一人違うから、その患者にあった医者を薬として処方するとよいという。腕の良い医者は自分を患者に合わせるが、すべての人に合わせられる医者はいない。だから、ある人にとって良い医師でも、他の人にとってはそうではないことがある。このことは、病気が治る仕組みに、こころが大きく関与していることを示している。
 私の患者さんで不整脈のおばあちゃんは、診察している時に不整脈があったのに、心電図を取る時には消えてしまった。気管支喘息の子どもたちは、診療所に入ると発作が静まってきて、苦しくなくなってくる。あんなにお腹を痛がっていた子どもが、診療所に来たら元気になってしまう。先生の顔を見たらよくなったから、薬だけでいいですと、帰ってしまう心身症の人もいる。
[3] 病気を嫌わないで
◇病気は、なにも外から入り込んできたものではなく、自分自身の身体の変調である。
 熱が出るのも、頭が痛いのも、喘息で息が苦しいのも、湿疹でかゆいのも、身体が変調してうまく機能しなくなったためである。だから「どうしてこんな嫌な病気になったんだろう」と病気を嫌うことは、自分のこころが、病気になっている身体を、即ち自分自身を嫌うことになり、潜在意識の中で葛藤を起こして、病気が良くならない。それどころか、悪くなることもある。病気すなわち病気になっている自分の身体を受け入れて、仲良くつきあい、良くなるようになだめよう。
 気管支喘息や花粉症、リウマチ様関節炎などの慢性疾患の人たちは、病気を受け入れることで、治らないにせよ、しのぎやすくなる。急性の病気が長引く場合、大抵病気を嫌っているか、ストレスの多い仕事をしていることが多い。気管支喘息で、夜間の発作がひどく、救急病院で治療を受けるような人には、予め、喘息という病気の話と、人はなぜ病気になるか、病気を嫌わないでという話をすると、発作が起きても夜中に病院にかかなくて済むようになる。
◇痛みは身体の注意信号である。痛がっているのは、あなたの頭や歯や身体である。痛みを嫌わないで、受け入れよう。嫌えば嫌う程、痛みは強くなり、苦しく我慢できなくなる。
 痛みは身体の病気のこともあれば、こころの病気の表現であることもある。楽しいことで痛いのは我慢できるが、いやなことでは我慢できない。
例えば、出産の時の痛みは、お産を誰もがする当然のことと受け入れ、待ち望んだこどもが生まれる時と思っている人は、痛みは感じても苦痛ではない。しかし、お産を怖がったり、お産を嫌ったり、こどもが欲しくなかったりすると、我慢できない苦痛となる。神経痛はしばしば、我慢の出来ないことをかかえている人に見られる。例えば、あるおばあちゃんは毎日四肢の神経痛のため、整形外科で神経ブロック注射してもらったり、大学病院麻酔科ペイン・クリニックでも神経痛はよくならなかった。そこで私が、ぐちを聞き、抗うつ剤と精神安定剤を出し、時々末の娘さんにぐちをきいてもらうようにしたら、注射しなくても、鎮痛剤だけでおさまるようになった。その後、糖尿病になったり、膝関節症になって入院している間は、痛みは全くない。しかし、家に戻るとまた痛んだ。原因は家族関係にあったのである。
[4] 不安になると、病気が悪くなる
 病気は不安になると悪くなる。病気に対する不安が強く、もっと悪くなるのではないか、死んでしまうのではないかと不安になり、不安を自分で打ち消せないと病気は悪化する。 悪くなるという自己暗示によってあなたの身体はあなたの暗示の通りになる。不安が起きたら、「だいじょうぶ、よくなる」と自分で不安を打ち消すか、身近な人に不安を打ち消してもらうか、抗不安剤を飲んで不安を抑えるしかない。子どもは、母親がなだめると、不安が消えて良くなる。だから小児科で母親に充分お子さんの病気の話をしておくと、夜の救急患者が半減する。今晩熱が出るかもしれませんよと言っておくと、熱が出ても母親は先生の言った通りだと思って不安にならない。言わない場合は、熱が出ると母親が不安になり、すると子どもも不安になってよくならない。
 心臓がドキドキした時に、心臓が止まってしまうのではないか、死ぬのではないかという不安が湧いてきて、心臓の鼓動がますます早くなり、さらに不安になり、パニックになる。ところが、医者の「大丈夫だよ」の一言で安心し、心臓の動悸もおさまっていく。気管支喘息の発作の時も同じで、喘息患者の死亡の多くは、パニックになったために、自分で「呼吸が苦しい、息ができない、死んでしまう。」自己暗示をし、呼吸が止まり死んでしまうという専門家もいる。それを裏付けるように乳児を除き、小児の気管支喘息の突然死は、年齢が高くなるに従って増えていき、大人が最高である。子どもの場合は、親がパニックになると、子どももパニックになる。だから親が「大丈夫。薬を飲んだから(吸入したから)だんだんよくなるよ。」というと、おさまっていくことが多いし、おさまらなくともパニックにならないから死ぬことはない。もちろん思春期以後は自分でもパニックになるから、親がなだめても効果は無い。お年寄りが「もう死にたい、死にたい」と言い出すと、もう先は長くない。生きる意欲を失った人は、遠からず死んでいく。
おわりに
 環境に適応できないと病気になり、うまく適応して生きていくと病気にならない。しかし、最大の病気の原因は戦争であるが、平和になればなったで別の病気がでてくる。結局人はそれぞれ、自然治癒力をもってはいるが、それにも限界があり、ある時期になれば病気になって死ぬのである。ただ、その種類が違うだけに過ぎない。
しかしながら、現在の日本では、医学教育や医療を含めた社会全体で、この自然治癒力が軽視されていることが大きな問題である。


コメント

人はなぜ病気になるのか―――病原環境論または適応説

2021-01-10 10:18:15 | 病原環境論
        大混乱の時代

     何を信頼したらよいか

     人はなぜ病気になるのか――病原環境論または適応説



  

   「人はなぜ病気になるのか」
          -実践的医療をこころがけてきて思うこと-           
はじめに 
私は小児科医になって以来、理論より実践を重視し、「とにかく治れば良い」という実践的医療をつらぬき、実証的なアメリカ医学を水先案内人にしてきた。現代医学には理論に合わないことも多いし、未熟児黄疸への光線療法のように実践が先行し、理論が後から作られたものもある。私は医学教育や医療制度も含めて日本の現代医学を批判し、新しい医療の考え方を求めて模索してきた。
 9年前ある科学史研究者と出会って、医学を中心に科学史の勉強を始めたところ、幸運にも「医学は社会科学であり、病気は社会によっておきる。医学は社会が病気と闘うための道具の1つに過ぎない」と言うシゲリストや、人間の環境への適応と病気との関係を示し、「生体論的で環境的な医学」を提唱するルネ・デュボスを知り、私の目が開かれ、新しい医療の考え方が見つかった。それを判りやすくする為いくつかに分けて述べるが、これらすべてを統合したものが私の病因論である。
[1] 人はなぜ病気になるのか。
 私は、人間を「こころと身体を持つ、社会的な存在である」ととらえ、その人間のかかった病気を治すために、生体論的で環境的で、人道的なそして全体的に人間をとらえる医学を目指している。このような考えをもつことにより、いろいろな生物学上の事実や医学上の事実をうまく説明できるようになった。
①複数の原因が重なって病気が起きる。--複数病因論
 現代医学は、特定病因説または一疾病一病因説と呼ばれ、例えば、コレラは、コレラ菌によって起きる病気であり、結核は結核菌による病気であるという考え方である。ところが、コッホがコレラ菌を発見した当時から、これに反対していた医師たちがいた。ドイツのペッテンコファーは、「急性感染症は、何か特別な健康上の問題が先行していない場合には成立しない」と述べ、ロシアのメチニコフらと、別々の場所で、公衆の面前で培養コレラ菌を飲んで見せて発病しないことを実証した。またパスツールも「細菌が問題なのではなく、その環境がすべてである。」と述べている。ドイツのウィルヒョウも、病気を自然病と人工病にわけ、人工病は誤った文化や社会的構造が生み出した貧困によるとした。しかし、細菌学の高揚の中で、特定病因説が近代医学として残っていき、他の説はかき消されていった。
 これに対し私のとる複数病因説は、2つ以上の原因がそろった時に、初めて病気となるというものである。例えば、現代医学ではインフルエンザ・ウィルスが入るとインフルエンザにかかると説明しているが、家庭でも学校でも病院でも、インフルエンザが流行しているのにかからない人がいることを説明できない。昔、ある中学の女性教師の担任クラスで、半分近くが風疹にかかった。本人は今までに風疹にかからず、その時かかると思っていたが、かからず、私の病院へ検査を希望してやってきた。その結果は風疹抗体は陰性だった。複数病因説では、感染症は宿主である人間の身体の抵抗力が落ちた時、ウィルスや細菌に感染すると発病する。同じ細菌やウィルスにかかっても、抵抗力が大きく低下していると重症になり、それほど低下していなければ軽症、全くの健康であれば、かからないし、抗体もできない。抵抗力を低下させるのは環境に適応できない時である。
②人が環境に適応できない時に病気になる。--(病原)環境説または適応説
 人間は、地球という環境に生まれ、人間によって地球上の自然環境を変え、変化した自然環境によって人間自身も社会も変化し、環境と相互に影響しあって発達してきた。しかし人間は、自分の住む自然環境や社会環境にうまく適応できないと病気になった。
 ヒポクラテスの説を現代風に換えて言えば、「自然環境の変化、不適正な食事、不適当な社会環境によって病気が引き起こされる。だからまずその原因を除くことが治療の第一である。原因さえ除かれれば、病気は自然に回復する。」となり、これを支持したルネ・デュボスの説はヒポクラテスの再評価であると言えよう。
 環境への人間の適応には、個人および社会(集団)の適応があり、また自然環境と言っても土地や気候だけではなく、そこに住む動物や、寄生虫、細菌、ウィルスや他の微生物などの人間に寄生したり、共生したりする生物との適応も必要である。
 例えばパプア・ニューギニア高地人は、いも類を主食とする極端な低蛋白食でも、腸内細菌がアミノ酸を合成しているため健康である。
 個々人の社会(または集団)への、適応関係(免疫、感受性)によっても病気にかかるかどうかが決まる。
◇ 伝染病の歴史を調べると、まさに人間がどのように病気に出会い、そしてその病気に適応してきたかの歴史で、ペスト、コレラ、発疹チフス、梅毒、結核など皆そうである。
 例えば、北米先住民(インディアン)を滅ぼしたのは、白人移住者が持ち込んだ疫病のためであり、特に結核の影響が大きい。カナダのクァペル峡谷インディアン保護地では、家族の半分以上が三世代の間に失われ、残存している家族も死亡の20%は結核によるものであったという。ここでは結核の流行に悩まされた最初の世代と第二世代は結核性髄膜炎、粟粒結核と骨関節結核が多く、全身結核が主であったが、第三世代は病気は肺に限局する傾向が強くなり、慢性の経過を示した。第四世代にリンパ腺組織に現れたのは1%以下であったという。これは北米先住民が結核菌と初めて出会い、そして第四世代にようやく結核菌と適応関係ができあがったためである。中南米で少数の白人の軍隊に多数のメキシコ軍やインディオたちが負けたのは、天然痘と発疹チフスだったという。
 環境には、自然環境と社会環境とあり、どちらに適応できなくても、ストレス状態となり、病気となる。1936年に発表されたセリエの全身適応症侯群は、特定の病気だけではなく、すべての病気にあてはまると考えられるようになった。ストレスによって人間のこころや身体のコントロール・センターである大脳皮質の働きが乱され、その結果その支配下にある身体の機能のどこかに異常を生じ、病気となる。ストレス状態に置かれると、免疫系の働きが落ちるから、細菌やウィルスによる病気や、癌にかかりやすくなる。免疫系だけではなく、中枢神経系も、自律神経系も、内分泌系も変化して病気になる。どこに生じるかは一人一人異なり、その人の身体の言わば弱い所に病気が現われる。
 だからすべての人間が同じ環境に置かれても、全く同じ病気になることもない。それは、その人の弱点に病気がでてくるからである。
その人の弱点は、
1) 両親のどちらかから受け継いだ家族的傾向(染色体、遺伝子、HLA抗原など)と、
2) 母親の胎内から現在までの、生まれた順番、育ち方や友人、幼稚園や学校の先生、生活習慣(酒、タバコ、食事を含む)、かかった病気などに左右される先天的および後天的なもの、の両方から構成される。
1)の例としては、劣性遺伝子は普通の人で20前後存在すると推定されているし、ある外科医は、親子で胃潰瘍になると70%は同じ場所にできるとも言う。成人型の糖尿病は、糖尿病になる遺伝的素質のある人が、体重を必要以上に増加させた時に発病する。
 2)の例としては、幼児から学童の時期に、具合が悪くなると吐くことを繰り返していたこどもが、成長すると、胃炎や胃潰瘍になることが多い。子どもの先天性の病気は、母親の精神身体状況によって左右されている疑いがある。身体的な病気はまだ確かでないが、精神的な面は明らかで、胎児期や乳児期に母親が精神的なパニックに陥ると、その子どもは臆病になるという。
 ノーベル賞受賞の利根川進博士の理論は、「個体発生の過程で遺伝子も変化する」というもので、抗体を作る免疫グロブリンの遺伝子が、遺伝子を構成する部品セットから次々と選択され、組み立てられることを高等動物で証明した。このことは免疫グロブリンだけではなく、他の遺伝子にもあてはまると考えられる。こうして遺伝子が変化して、環境にうまく適応した人が生き残ると考えるのが私のとる環境説である。例えば、黒人に鎌状赤血球症貧血という遺伝性の貧血があるが、その遺伝子を有していると、マラリアへの抵抗性を増大させる。マラリアの多発しているアフリカでは、生存に有利なので今でも続いている病気である。
③ こころと身体は、常に相互に関連している。--心身一体論
 最近になって心療内科が一般に認知され、身体の病気にこころが関与していることが認められるようになった。でもまだ一部の病気だけしか認められていない。ところが、心療内科で診療を長く続けていると、すべての病気がこころで起きることが分かってくる。病気は、人間がなるもので、人間はこころと身体が切り離せないから、どんな病気でも必ずこころが関与していることになる。心と身体は一体なのである。
 ドイツの精神科医ミッチャーリッヒによれば、「臨床でみられる古典的な病像の多く(胃潰瘍、甲状腺機能亢進、心臓循環器系障害 、喘息等)は、ある精神状態-体験状態-が原因となっており、その際それがしばしば決定的役割を果していることがますますはっきりと証明されるのである。
・・患者をとりまく直接の社会環境が、患者をして神経症におちいらしめる上に非常な意味をもっているということは、すでに明らかとなっている。・・近年、医療を求める患者の30%から50%が、いわゆる機能的障害を示すものであるということは、殆ど一致した意見となっている。こういった形の病気の出現に力を貸しているのは、一次的には物質的条件ではなく精神的破綻なのである。」という。慢性疾患には、その人の人生が反映されている。だから元東大精神科講師の森山公男医師が、精神病は治るには和解が必要と説いているのと同様に、身体疾患にも和解が必要である。 心筋梗塞や狭心症の発作が明け方に起きることがよくあるが、その一部は明らかに夢を見ることで起きていると言う。私が成人の気管支喘息の患者さんから聞いた話では、会社や仕事の夢を見てる時に喘息発作が起きたと言う。
 ストレスによって病気が誘起されると考えてきた私にとって1つの難問があった。赤ちゃんのストレスは何なのだろうか。苦労の結果やっと到達したのは、赤ちゃんを用もないのにさわることだった。まちがったスキンシップ論が横行し、母親たちは一生懸命赤ちゃんをさわり、逆に病気を生んでいる。アトピー性皮膚炎の赤ちゃんが第一子の場合は、赤ちゃんが要求しない限りさわらないように母親に話すと、ほぼ2~3週間で皮膚がきれいになる。しかし、第二子、第三子の場合は、上の子が退屈すると赤ちゃんをおもちゃにして、さわっているので、これを止めさせることは難しいからなかなか治らない。乳幼児の喘息様気管支炎も、ストレスで起きる。ある子は、保育所へ行き始めてから急に始まったので、調べたら「はいはいをしなければ立ってはいけない」という保育所の方針で、立とうとするのを足を押さえて立たせないようにされていた。それを止めてもらったら、ゼーゼーしなくなった。別の子は、母親が祖母の病気入院の付添に行き、叔母に預けられた所、ゼーゼー始まった。じっとがまんしている様子で、母親が帰ってくるとゼーゼーしなくなるが、また叔母に預けられるとゼーゼーする。一般的に子どもの病気は、保育所、幼稚園、学校に入ってしばらくの間や、行事の前後に多い。これが私の考える心身医療である。
④ こころは社会的に作られ、影響をうける。--病気は社会によって生ずる。
 病理学者でドイツ進歩党員のウィルヒョウは、病原菌よりも社会的条件を重視していた。病気を自然病と人工病にわけ、人工病(チフス、結核、壊血病、精神病など)は誤った文化や社会的構造が生み出した貧困によるとしていた。例えばシレジア地方のチフスの流行の際に調査にあたり、「貧困地区にチフス患者が続発し、より強力となり、さらに上流階級をも侵すことになった。飢餓はまた感染の素地を高めたが、・・それに対処するには社会改革、・・民主主義教育それに・・自由と繁栄が必要だ」と言った。社会的な原因を限られた病気にしか見ないという欠点はあったが、病気の原因の1つに社会や文化を含めている点では先駆的であった。しかし、彼の業績は病理学の面だけが残り、社会的な面はかき消されていった。 14世紀から19世紀にかけて、インドやヨーロッパで見つかった野生児の記録から明らかになったことは、人間は生まれながらに人間のこころや知能をもっているのではなく、家庭を最小単位とする人間社会によって形成されて行くことであった。
乳児早期に狼の世界に入った子どもは、連れ戻されても狼のままで人間に戻れないで死んでしまう。つまり人間は人間の社会の中で育てられて、人間になり、こころは社会的に形成されている。家庭によって、教育によって、仕事によって、人間のこころは左右される。
 だから、人間は、こころと身体を持つ社会的な存在であり、その人間がなる病気の治療は、身体の治療だけではなく、こころと社会的関係への治療が必要である。病める人間のこころを理解すべきと言われて久しいが、病める人間の社会的関係にまで立ち入らないと、真の意味での病気の治療にたどり着けない。WHOの健康の定義は1948年から、「健康とは単に病気でないとか、虚弱でないというだけではなくて、身体的にも精神的にも社会的にも完全に良好な状態をいう。」となっているが、人が社会的にも健康である必要性が理解
されていなかった。
 社会が環境を変え、環境が変わることによって病気も変わって行く例をあげよう。今マラリアが、東南アジアやアフリカで蔓延している。中世には、ヨーロッパでもマラリアが蔓延していたが、湿地の排水をして農地に変えることが進んで、マラリアがなくなった。戦後、石垣島でも、環境対策でマラリアの撲滅に成功したが、同時に日本脳炎もなくなった。今マラリアが蔓延しているのは、焼畑農業とか、木材の輸出のためなどで、根こそぎ木を切ってしまったためである。森林に住む蚊は、猿につくが、草原をすみかとする蚊は人間につく。森林を切り開くことによって人間につく草原の蚊が繁殖し、マラリアを媒介している。南部アフリカの眠り病も同じで、森林を切り開くことで、媒介するツエツエ蝿が増えてしまったためである。
 最近ロシア、ウクライナなど旧ソ連諸国で、麻疹、百日咳、結核など子どもの病気が急増している。チェルノヴイリ原発事故による被曝の影響もあるが、主に社会的経済的混乱が生活環境の悪化を招き、子どもの感染症を増加させ、医療サービスの低下がそれに拍車をかけている。
 日本でも、現代社会の病理がストレスを生じ病気を生んでいる。だから死亡率は減少して、平均余命は延びているが、花粉症をはじめ病気は増えているし、過労死を中心に中年男性の死亡が増加し、男性の平均余命は低下した。この40代、50代の男性の死亡率の増加現象は、イリッチが「アメリカで始まり、1970年代に西ヨーロッパに上陸した」と指摘したが、日本に上陸したのは1980年で、その後男性の平均余命が低下した年が数回ある。
この40代、50代の男性の死亡率の増加現象は、労働や生活の環境が改善されない限り、今後も続くであろう。
[2] 病気はなぜ治るのか。
 なぜ病気になるのかを補強するため、なぜ病気が治るかを考えてみたい。
① 病気が治るのは、こころである。
 西洋医学でも、漢方医学でも、回教医学でも、カイロプラクティックでも、チベット医学でも、インド医学でも、民間療法でも、信仰でも、それぞれの治療法で病気が治る人がいるのは、人間のもっている自然治癒力を引き出すのにこころが大きく関係しているからである。しかしどの医学も宗教も、病気の人を 100%治すことはできない。治らない種類の病気もあれば、同じ病気でも治る人と治らない人がいる。このことは、こころだけでも、医療技術だけでもなく、こころと医療技術を組み合わせることが大切であることを示している。
② 自然治癒力
 東大薬学部の名取俊二教授(微生物学)によれば、昆虫は体内で抗細菌、抗真菌の蛋白質を作っていて、抗ウィルス性や抗ガン性の蛋白質も作っていると見られる。人間は昆虫より進化しているので、本来、人間にも同じかまたはそれ以上の生体防御機構があると考えられるという。そこから「人間には元々病気を治す力(自然治癒力)が備っていて、その力が発揮されない時に病気になる。」と考えると自然であり、癌の自然治癒の存在といった現代医学における不思議なことがうまく説明がつくが、まだ実証されてはいない。
 だから人が病気になった時、自らに備っている、その自然治癒力をうまく働かせることで病気が治っている。医師の役割はその自然治癒力を引き出すことにある。だから医者にかからなくたって、治ることも少なくない。しかし腕の良い医者にかからなかったために、重症化したり、落命することもある。現実に、遺伝子や免疫の仕組みが次々と明らかになり、ストレスによって免疫の働きが低下することも明らかになった。人間のもつ精巧な免疫の仕組みが、人間のこころや神経、内分泌と密接に関連していて、自然治癒力の一部を形成していることも明らかになってきているが、まだ身体全体とこころの関係は不明なことが多い。デュボスは、パブロフの条件反射の発見後、高次神経系の研究に進まずに、人間がある環境に置かれたらどんな反応をするかという研究を進めるべきであったと述べている。現代医学は人間を細かく臓器ごとに分解して研究を進めてきたが、今後は人間総体としてどういう反応をしているかを大いに研究すべきで、それがこころと身体の関係を新たな視点から明らかにしていくだろう。
③ プラセーボ効果
 プラセーボ(偽くすり)効果は、こころが関係しているから現代医学の薬理理論で説明できない。どんな薬でも3割前後はプラセーボ効果があるという。中には1回飲んだら良くなってしまったという人もいる。私の師匠で自分も気管支喘息の老先生がいうには「不思議だね。飲んでも薬理効果が出てくるのには30分はかかるはずなのに、喘息が始まって薬を飲むとすぐに喘息がおさまってくるんだよ」という。医者でも同じで、この薬を飲めば治ると思っていると病気がよくなる心理的効果である。
 ロンドン大学精神科講師だったM.バリントは「医者くすりは最もよく用いられる薬である。」と言っている。医者は患者のそばにいるだけでその役割を果たすことがあるし、また医者に診てもらうだけでよくなる患者がいる。医者が薬の役をする。これも一種のプラセーボ効果で、心理的なものである。しかし、医者も患者も一人一人違うから、その患者にあった医者を薬として処方するとよいという。腕の良い医者は自分を患者に合わせるが、すべての人に合わせられる医者はいない。だから、ある人にとって良い医師でも、他の人にとってはそうではないことがある。このことは、病気が治る仕組みに、こころが大きく関与していることを示している。
 私の患者さんで不整脈のおばあちゃんは、診察している時に不整脈があったのに、心電図を取る時には消えてしまった。気管支喘息の子どもたちは、診療所に入ると発作が静まってきて、苦しくなくなってくる。あんなにお腹を痛がっていた子どもが、診療所に来たら元気になってしまう。先生の顔を見たらよくなったから、薬だけでいいですと、帰ってしまう心身症の人もいる。
[3] 病気を嫌わないで
◇病気は、なにも外から入り込んできたものではなく、自分自身の身体の変調である。
 熱が出るのも、頭が痛いのも、喘息で息が苦しいのも、湿疹でかゆいのも、身体が変調してうまく機能しなくなったためである。だから「どうしてこんな嫌な病気になったんだろう」と病気を嫌うことは、自分のこころが、病気になっている身体を、即ち自分自身を嫌うことになり、潜在意識の中で葛藤を起こして、病気が良くならない。それどころか、悪くなることもある。病気すなわち病気になっている自分の身体を受け入れて、仲良くつきあい、良くなるようになだめよう。
 気管支喘息や花粉症、リウマチ様関節炎などの慢性疾患の人たちは、病気を受け入れることで、治らないにせよ、しのぎやすくなる。急性の病気が長引く場合、大抵病気を嫌っているか、ストレスの多い仕事をしていることが多い。気管支喘息で、夜間の発作がひどく、救急病院で治療を受けるような人には、予め、喘息という病気の話と、人はなぜ病気になるか、病気を嫌わないでという話をすると、発作が起きても夜中に病院にかかなくて済むようになる。
◇痛みは身体の注意信号である。痛がっているのは、あなたの頭や歯や身体である。痛みを嫌わないで、受け入れよう。嫌えば嫌う程、痛みは強くなり、苦しく我慢できなくなる。
 痛みは身体の病気のこともあれば、こころの病気の表現であることもある。楽しいことで痛いのは我慢できるが、いやなことでは我慢できない。
例えば、出産の時の痛みは、お産を誰もがする当然のことと受け入れ、待ち望んだこどもが生まれる時と思っている人は、痛みは感じても苦痛ではない。しかし、お産を怖がったり、お産を嫌ったり、こどもが欲しくなかったりすると、我慢できない苦痛となる。神経痛はしばしば、我慢の出来ないことをかかえている人に見られる。例えば、あるおばあちゃんは毎日四肢の神経痛のため、整形外科で神経ブロック注射してもらったり、大学病院麻酔科ペイン・クリニックでも神経痛はよくならなかった。そこで私が、ぐちを聞き、抗うつ剤と精神安定剤を出し、時々末の娘さんにぐちをきいてもらうようにしたら、注射しなくても、鎮痛剤だけでおさまるようになった。その後、糖尿病になったり、膝関節症になって入院している間は、痛みは全くない。しかし、家に戻るとまた痛んだ。原因は家族関係にあったのである。
[4] 不安になると、病気が悪くなる
 病気は不安になると悪くなる。病気に対する不安が強く、もっと悪くなるのではないか、死んでしまうのではないかと不安になり、不安を自分で打ち消せないと病気は悪化する。 悪くなるという自己暗示によってあなたの身体はあなたの暗示の通りになる。不安が起きたら、「だいじょうぶ、よくなる」と自分で不安を打ち消すか、身近な人に不安を打ち消してもらうか、抗不安剤を飲んで不安を抑えるしかない。子どもは、母親がなだめると、不安が消えて良くなる。だから小児科で母親に充分お子さんの病気の話をしておくと、夜の救急患者が半減する。今晩熱が出るかもしれませんよと言っておくと、熱が出ても母親は先生の言った通りだと思って不安にならない。言わない場合は、熱が出ると母親が不安になり、すると子どもも不安になってよくならない。
 心臓がドキドキした時に、心臓が止まってしまうのではないか、死ぬのではないかという不安が湧いてきて、心臓の鼓動がますます早くなり、さらに不安になり、パニックになる。ところが、医者の「大丈夫だよ」の一言で安心し、心臓の動悸もおさまっていく。気管支喘息の発作の時も同じで、喘息患者の死亡の多くは、パニックになったためという専門家もいる。お年寄りがもう死にたい死にたいと言い出すと、もう先は長くない。生きる意欲を失った人は、遠からず死んでいく。
おわりに
 環境に適応できないと病気になり、うまく適応して生きていくと病気にならない。しかし、最大の病気の原因は戦争であるが、平和になればなったで別の病気がでてくる。結局人はそれぞれ、自然治癒力をもってはいるが、それにも限界があり、ある時期になれば病気になって死ぬのである。ただ、その種類が違うだけに過ぎない。
しかしながら、現在の日本では、医学教育や医療を含めた社会全体で、この自然治癒力が軽視されていることが大きな問題である。


参考文献;
① B.ディクソン「近代医学の壁」岩波現代選書、1981.
② マクニール「疫病と世界史」新潮社、1985.
③ ハンス・ジンサー「シラミ、ノミ、文明」みすず書房、1966.
④ ルネ・デュボス「人間と適応」みすず書房、1970.
⑤ 池見酉次郎「心療内科」中公新書、1963.
⑥ ミッチャーリッヒ「葛藤としての病」法政大学出版局、1973.
⑦ 森山公夫「和解と精神医学」筑摩書房、1989.
⑧ シゲリスト「病気と文明」岩波新書、1973.
⑨ バリント「プライマリケアにおける心身医学」診断と治療社、1967.
その他多数

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ワクチンの選び方

2020-12-31 10:34:51 | 予防接種
                              予防接種の選び方

 今の時代に、どのワクチンを子ども接種するかを考えましょう。

1. 今世界では反ワクチン運動が巻き起こっています。その理由は、
現代医学・医療への幻滅と子宮頸がんワクチンによる被害の大きさだと思います。
 ワクチンによって感染症が、ひいては病気が制圧できるというおごりと幻想を医学会が持っていることが問題です。新型コロナウイルス感染症に対する対応で明らかです。
 ワクチン万能幻想です。新型コロナのワクチンでも、完全つまり100%感染を防ぐことはできません。インフルエンザワクチン程度です。つまり高齢者の重症化を防ぐ程度でしょう。しかも副作用は未だ判っていません。今接種している人たちが実験台です。
 今報道されていませんが、2017年にはヨーロッパで2万4千人、2018年上半期で4万千人の麻疹感染者が出たのです。アメリカでも強制的なワクチン接種に反対して「反ワクチン運動」が4年前の大統領選前から起きていて、話題に出たほどですが、今は新型コロナウイルス感染症の流行によってかき消されています。
2. 私はヒポクラテスから続いている人間と環境との適応関係を重視して医療をする「病原
環境論」または「適応説」による選択的ワクチン接種を薦めています。
例えば、突発性発疹に関しては既にウイルスのゲノムの一部がヒトゲノムに見つかって
いるのに、ワクチンを作ろうとする動きもあります。日本脳炎のゲノムの一部も、もう今の子どもたちのゲノムには組み込まれているとか推定しています。
 それが感染症が歴史的に変遷してきた理由なのです。
その視点からの提案です。
3. 最低必要なワクチンは、何か。
1) 麻疹・風疹混合(MR)ワクチン
 感染したらもう昔のように、解熱剤を使わない限り重症化しませんが、社会的適応です。発病したら接触した人をすべて調べられます。
 時期は、公費負担してくれる2歳直前が良いです。以前は早期に接種を勧めていましたが、それは乳児期や1歳では感染すると重症化し、死に到ることがあったからです。
しかし、現在は日本にいる限り、日本では年間400人前後ですから、感染する機会は少なくなりました。2008年には麻疹が日本で1万人以上もいたのです。海外へ乳幼児を連れて旅行するなどの冒険をしないで下さい。
 副作用は年齢が高いほど少なくなりますから。2歳直前を勧めます。公費でした方が良いです。接種したことが行政にも伝わりますから。
2) 破傷風トキソイド
  発病したら救命救急センターへ行ければ、接種していなくても助かります。沖縄の離島や海外では判りません。今、年間100人前後が発病し、10人前後が死亡しています。
  多くは、震災や津波などの時にかかりやすいです。洪水やがけ崩れでもあります。酸素があると繁殖できない菌ですから、水辺や土中の深い所にいます。
  上下水道工事やトンネルや地下鉄の工事、ガス管などの工事をする人はみな接種しています。重症の副作用は極めてまれです。
  また女性は、病院産婦人科以外での出産では破傷風の危険を防げません。救命できない新生児破傷風を防ぐには破傷風トキソイドを接種することを勧めます。
4.女性の場合には、妊娠初期に感染して胎児に影響することを防ぐために、
  MRワクチン、破傷風トキソイド、水痘ワクチンです。新生児水痘も救命救急センターか小児医療センターでないと助かりません。新生児おたふくかぜは見つかっていないので判りません。おたふくかぜによる女性の不妊症は不明です。
5.男性の場合には、
 水痘、おたふくかぜの二つは、年齢が低いほど軽く済みます。4歳以下では軽いのです。
おたふくかぜは4歳以下では不顕性感染があります。
 成人になって感染すると、たまたまその時にストレス下にあると、重症化し、1割程度が睾丸炎になり、ひどいと痛みをとるために入院することが有ります。ほとんど片側なので不妊になることはまれです。
6. 百日咳は、成人から子どもにかかりますから、咳が出る人は新生児・乳児に接触してはいけません。百日咳で死亡するのは1歳半迄です。今は、成人の感染が問題になっています。
 新生児・乳児と接触する機会のある学童以上、特に30代と高齢者での長引く咳、2週間以上続く咳は、必ず検査を受けて結核、百日咳ではないことを確認してください。
7.ワクチンをしない場合には、子どもをのびのび育てて下さい。
 かって気ままに育てるのではなく、上手に操縦して下さい。お釈迦様が孫悟空を手の中で自由に飛び回らせていたように。旅人のマントを脱がせる太陽のようになり、北風にならないで下さい。
 子どもを自分の思い通りにしようと思わないで下さい。子どもに人権があります。あなたのお人形でも、ロボットでもありません。上手に導いて下さい。子どもは親の背中を見て育ちます。親がお手本を示してください。
8.破傷風トキソイド単独接種か、四種混合ワクチン(公費負担)でするのか。
 2歳すぎたら、副作用を気にすることはなくなります。2歳過ぎたらどちらでもよいです。
 予防接種は、国が決めて、自治体が実施しますから、本来は勧奨接種と言って自由に選択できるはずですが、自治体によって予算や医師会との関係から、四種混合しか認めない所や、四種混合ワクチン接種の予診票で破傷風トキソイド単独を接種できるところもありますから、自治体に問い合わせてください。
 また遠隔地の場合には、償還払いと言って取り敢えず自己負担で支払い、後に自治体窓口に行くと一部または全部を公費で払い戻してくれるところもあります。自治体(市区町村)ごとに違います。
9. お引き止めするワクチン
 BCG、日本脳炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、A型肝炎ワクチン、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、ロタワクチン、インフルエンザワクチンです。
 いずれも有効性が不明なワクチンや、上手に育てれば必要のないワクチンです。
 してはいけないワクチンは、子宮頸がんワクチンです。有効性の証明がなく副作用の大きいワクチンです。 

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新型コロナウイルスのパンデミックはなぜ起きたか-2

2020-11-26 12:28:32 | 感染症
新型コロナウイルスのパンデミックはなぜ起きたか


1. 新型コロナウイルスはスペイン風邪の再来だ

☆ 主役は新型コロナウイルスだ。インフルエンザウイルスに代わって登場した。
 その舞台は、人種差別と貧困と格差社会の世界情勢にある。その為に人々の免疫は低下している。
 そしてウイルスの繁殖する気候も整った。
 それでパンデミックになった。
2.  伝染病学者バーネットは、インフルエンザの流行を分析し、
「パンデミック(世界的大流行)の起きる条件は、まず第1に適当な気候条件、第2には住民の大多数の免疫水準が低いこと、そして第3にそこに適当な型のウイルスが存在することである」という。
3. まさにスペイン風邪はそれに該当した。世界中の人々の免疫水準が低下していた。そこに変異したA型インフルエンザウイルスが出現し、冬から始まった。
スペイン風邪のパンデミックは1918年に起きた。その時に世界中の人々は免疫が低下した状況に置かれていた。1914~1918年は世界第一次大戦だったし、前年の1917年10月にロシア革命は起き、ソヴィエト政権が成立した。中国では辛亥革命1911年、オスマン帝国の青年トルコ革命1908年、メキシコ革命1910年、アジアでの民族運動が起こり、南アフリカ連邦が成立した。日本でも米騒動が起きた。世界中が戦乱、騒乱と飢えにさらされていた。戦争に動員されたり、革命に参加した若者たちがスペイン風邪で命を落とした。それで若者の死亡率が高かった。
4. 第二次世界大戦の時は、感染症が流行したが、パンデミックを起こすような適当なウイルスは登場しなかった。
その後もアジア風邪、ベトナム戦後の香港風邪、ロシア風邪、2009年の新型インフルエンザなどが流行したが、舞台が整っていなかったので、パンデミックにはならなかった。
エボラ出血熱やサーズは致死率が高い為に、パンデミックにならなかった。

5. スペイン風邪が流行した時の世界の人々の苦難の状況が、今起きている

☆ 今スペイン風邪の時の世界情勢が成立した。
 第1に、異常な気候。北半球の温暖化でシベリアの凍土や北極の氷、アルプスの氷河などが溶けだしている。同時にアメリカ大陸(アメリカ西海岸―カリフォルニア、オレゴン―とアマゾン―主にブラジル―)とオーストラリアの森林火災。中国の1/4とアメリカ北西部の砂漠化。中国と極東アジア、バングラデシュの集中豪雨と洪水。サバクトビバッタのケニア、エチオピア、ソマリア、イエメン、パキスタン、インドで大発生。それらがもたらす飢饉。
 海流も変化し、海の生態系も変化している。
 そして冬12月の武漢から始まった。
 第2に、世界中に「ブラックライブズマター(黒人の命は大切)」が広がり、共感を呼んだのは、人種差別と貧困と格差社会が世界に広がり、都市の貧困層の圧倒的な拡大が進んでいること。そして内戦、干渉戦争、内乱、政治的経済的混乱が広がっていた。それによって大量の移民、難民、農村からの出稼ぎ労働者が都市労働者の貧困層を形成していた。それが世界的に形成されてグローバル化していた。そのために自然免疫の低下した人々が大量に発生していた。
 第3に、そこに新型コロナウイルスが登場した。適度に強くて、致死率が高くなくその為に感染力が強い、未だ遭遇しなかったウイルスが。



6.なぜその条件が整ったか
(1)なぜ気候変動が起き、異常気象が発生したか。
 1)資本は、世界の気候を無視して生産を続け、利益を追求する。それを誰も止めることはできない。利益がなくなれば資本(企業)は存続できなくなるから。つまり資本主義そのものに原因があるのだ。経済が停滞したら資本主義は終焉に向かっていく。資本は常に利潤を求め、拡大再生産をすることによってのみ生き延びる。先進国は自分たちの経済活動、生産活動が自然を破壊することに気が付いた。
 2)異常な気候は続いている。これは産業革命が起こって以来の現象であり、先進国は必ず通過する現象である。イギリスではロンドンの煤煙、ロンドン型のスモッグによる大気汚染、酸性雨によるドイツの森の崩壊、アメリカでは沈黙の春を、日本でも大気汚染の公害をもたらした。それを技術の開発と発展途上国への押し付けで解消した。しかし、今は発展途上国で公害にまみれている。それを押し付けているのは先進国である。
 3)今地球温暖化に関して、発展途上国のCO2ガス規制を強制することは不可能に近い。それは先進諸国が通った道を、発展途上国には禁止しようとするものであるから。
 既に1972年の国連人間環境会議のアドバイザー委員会共同議長を務めたルネ・デュボスは、先進国並みの文化水準や都市交通システム、工業化を、発展途上国が求めることは自然な流れであり、止めることはできないと言っていた。50年後にそれは現実となっている。
 当時はまだ総体として捉えていたが、今はいろいろなテーマ別のNGOに分断されて、全体が見えなくなっている。気候変動をどう捉えるかも重要である。
 CO2 ガス規制しても無理である。自然を破壊して利益を得ようとするのを止められません。止めるためには、富の分配が必要である。1945年ですら、地球上に住む人間に必要な食料は十分あった。それが偏在していたにすぎないとシゲリストは言っている。今でもそうです。  その構造を止めるのは、・・・。そしてアマゾンの自然は破壊されている。アマゾンの先住民は、感染症の危機にさらされている。
 4)。地球の温暖化対策として国連が提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」では気候変動は止められない。
 33歳の若者斉藤幸平は「かって、マルクスは資本主義のつらい現実が引き起こす苦悩をやわらげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判した。SDGsはまさに現代版「大衆のアヘン」である。」(「人新世の資本論」)と明快に批判した。
 気候変動を止めるのは資本主義にはできないという。できるのが、ナオミ・クラインの言うコロナパンデミックの出口(新しい入口)であり、その先にあるのは、グリーンニューディールか、ポストキャピタリズムか、エコロジカル社会主義か、脱成長コミュニズムか。

(2)今まさにパンデミックを起こすのに適当なウイルス、つまり新型コロナウイルスCOVID-19が登場した。
 1)開発によって自然界と人間の世界が近づいたから、いろいろな動植物が人間の生活圏に入り込んできた。もちろん感染症の多くは、そうして人間界に入り、そして人間との適応関係を結んで消えて行く。
 ペスト、天然痘、ポリオは消え、インフルエンザやコロナは生存戦略を取り、生き延びている。新型コロナは、サーズの亜型、つまり変異種であり、生き延びる戦略を自然にとって、パンデミックを起こした。何年もかかるだろうが、いずれ新型コロナも人間と適応関係を結んで、平和共存していく。
 感染症の歴史は、我々にそう教えている。(ルネ・デュボス)
 ヒトゲノムが解明されたら、人類の感染症の歴史が刻まれていた。ということは、感染症の原因のウイルスや細菌のゲノムを、自分のゲノムに組み込むことによって、人は感染症と適応関係を結んでいったのではないかと考える。
 2)コロナウイルスはまずサーズ(SARS-Cov、 重症急性呼吸器症候群、死亡率9.6%)、マーズ(中東呼吸器症候群、死亡率34%)、そして今回の新型コロナウイルス(死亡率1~3%)へと変異して登場した。今度の新型コロナの正式名称は、SARS-Cov-2です。エボラウイルスも死亡率が高過ぎたから大流行には不向きだった。
 3)重症度は人間の側の免疫の低下によって決まる
ルネ・デュボスは結核菌の研究で、軽症者と重症者の結核菌どう調べても違いを見いだせず、そこで出した結論が、病気の発病や発病後の重症度は菌の側にあるのではなく、人間の側の免疫力の低下の度合いにあるとした。
 人間の側の免疫は、心と体は一体で、過重労働で疲れていても、ストレスや心労で疲れていても、免疫は低下する。ハンス・セリエは1936年の「ストレス説」発表後、その後発表された11万件のストレスに関する論文を読み、多くの職業や人間関係が免疫を低下させ、それだけで高血圧や高脂血症、心血管疾患を生じていると、1976年に「現代社会とストレス改訂版」に書いている。
 4)ヒポクラテス医学の復権を
 ヒポクラテスは、「健康とは、人間の本性のいろいろな成分、環境、および生活様式との間の調和のとれた平衡のあらわれである」。「心に起こったことはどんなことでも身体に影響が及び、またその逆も起こる。事実、心と身体との一方を他から分けて別々に考察することはできない」という。
 1970年、フランクは「病気の成因としての大衆の貧困」の講演の中で、「人民の健康の保全が国の責任である」との見解をとった。
19世紀にはコッホがコレラ菌を発見してから一疾病一病因説が主流になったが、ミュンヘン大のペッテンコファーは「急性感染症は、何か特別な健康上の問題が先行していない場合には成立しない」としてコレラ菌を飲んで発病しないことを見せた。パスツールも「細菌が問題なのではなく、その環境がすべてである」と述べている。
病理学者ウィルヒョウもドイツのシュレジア地方の発疹チフスの流行を調査し、その対策として「貧民に対するデモクラシー、教育、自由、繁栄を与えよ」との勧告を出した。
現代社会の貧困層と難民社会は、感染症の温床になるのは当然である。

7.新型コロナウイルスは現実の世界を明らかにした
 免疫を低下させた多数の人々が地球上に存在していることを明らかにした

 今の世界には、構造的な不平等があること。飢餓、貧困、暴力、人種差別、家父長制の危機です。また女性差別、宗教差別(ムスリムほか)、カースト制度など(アサド・レーマン)
 問題にしているのは、資本主義の暴力性であり、・・・採取/搾取主義の論理です。今、最前線にいる労働者が、自分たちは不可欠であると同時に使い捨てにされ、犠牲にされていると訴えています。新自由主義は、第二次世界大戦後に労働者が獲得したものを解体するための階級闘争だ。(ナオミ・クライン)
世界のNGOは、テーマ別にわかれた為に、現実世界を見えにくくしてしまった。
 新型コロナのパンデミックは、この世界の現実を明らかにした。
明らかにされたのは、
 第一は、格差社会を生んだのは、資本主義にあること(特に新自由主義)。
  それは対等な取引をしていても、格差社会が生じる市場経済に内在する不平等。
 第二は、内戦と戦争。
  第二次大戦後、「戦争をしないために」と先進諸国では、領土を確定しEUを作った。
しかし、それを壊したのは、社会主義諸国の経済の破綻と腐敗と、植民地から独立した諸国の権力を握った人々による腐敗。社会(文化、経済、宗教など)の発展の違いによる社会的権力構造の問題と国内の紛争と内戦や、国と国の紛争と戦争。
 第三は、工業の発展と農業の衰退。
大量の農民が都市労働者化し、出稼ぎ労働者の大量の発生と発展途上国の大都市周辺のスラム形成。そして公害。(これは先進諸国の歩んだ道の踏襲)
 第四に、医療が人間性を失っていること
  先進国での死亡率が高いのは、一つはアメリカや中国では、病気になってもすぐには医療機関にかかれない人たちがいて、その人たちは重症化して病院に担ぎ込まれる。
  一部の先進国では、トリアージ(患者の重症度の判定)が年齢でおこなわれているし、介護老人保健施設では、なかなか高齢者を病院へ送ってくれないという。(まだ日本ではそこまで行っていないと思う)
  病気の重症と軽症の違いは人間の側にあること。ストレスによる免疫力の低下。それらの為の症状の変化など。サイトカインストームも、人間の側の問題であり、精神的要因が関与している。本来、病気の症状は人間が病気と闘うための防衛反応である。それを抑えてはいけない。熱が出ても解熱剤を使って下げるのは、病気を隠すだけ。体の抵抗力を抑えるから熱は下がるが病気は進行する。軽い病気にはいいかもしれないが、コロナやインフルエンザ、麻疹にはしてはいけない。だが人々は、熱を下げて(隠して)働かなくては生きられないことが多い。スウェーデンはかぜでも一週間休める社会。
 第五に、だから対策は社会経済的に援助し、人間的な豊かな生活を保証すること。
それに必要なことは、先ずすべての低所得者に仕事か生活保護の保証を。学生のローンの支払い免除。一人親世帯への生活保障。GoTo 保証ではなく、打撃を受けたすべてのサービス産業への補償。


8.COVID-19が明らかにした世界の現実は、

1) アメリカは最大の感染症の温床国
☆アメリカでは近年感染症のアウトブレイク(地域的流行)が起きている
〇 アメリカでは、年間所得が1万5千ドル(170万円)未満の世帯数が増加し、都市に住む100万人以上になっていて年々増加している(主にヒスパニックと黒人)。アメリカ人(現在は3億3千万人)の半数は年収300万円以下という。アメリカでは2016年頃から、感染症のアウトブレイク(地域的流行)が起きている。A型肝炎はデトロイト他4州、二ヨークのレジオネラ症、ほかにクラミジア、サイクロスポーラ症、C型肝炎、梅毒、淋病、それに小児の感染症であるはずの百日咳やおたふくかぜが成人にも流行している。
〇 アメリカでのCOVID-19によるニューヨーク市の死者数は、ヒスパニック系34%、黒人28%、白人27%、アジア系7%でした。
 アメリカの貧困層は、黒人とヒスパニック系が半数弱で、過半数は白人です。
〇 アメリカは最大の移民受け入れ国で過去5年間に477万人になるという。
〇 また中南米からの移民が従来の黒人と共に都市の貧困層を形成していて、英語が話せない国民が1割に達するとも言う。1918年のスペイン風邪の時に、アメリカでは識字率の低い地域に死者が多かったと言う。
       以上、「温床と化す米国の大都市」(日経サイエンス別冊2018.10.)より
☆アメリカでは貧困と拡大する所得格差が進行している。
       「なぜ中間層は没落したのか――アメリカ二重経済のジレンマ」より
〇格差拡大の歴史
 奴隷制とその後遺症である。今までアメリカでは貧困者を黒人と同一視したが、貧困層の半数は白人であり、残りの半数が黒人と褐色人種(ラテン系アメリカ人)である。
 トランプの「偉大な」とは「白人の」の婉曲表現で、人種差別は富裕層の道具で、貧しい白人に、経済的窮状から目をそらさせている。
〇アメリカは二重経済である。裕福な部門と貧しい部門の別々の部門があり、別々の経済発展をしている。マンチェスター大学教授ルイスは経済発展の理論を提示した。それによると、発展途上国はいわゆる二重経済をもち、それを「資本主義」部門と、「生存」部門と名付けた。資本主義部門は、資本と労働の両方を利用した近代的生産の拠点で、その発展は資本の量によった。生存部門は貧しい農民からなり、その人口は土地や自然資源の量に比べてあまりにも大きい為、最貧の農民一人当たりの生産性はゼロに近かった。ルイスが考えたのは、アジア、アフリカ、中南米の国々で最大の国は中国であった。多数の農民が小規模農業に従事し、生存部門を構成していた。ほとんどの発展途上国はそうした二重経済であったが、日本、韓国、マレーシア(私はその頃発展した台湾、香港、シンガポールを加える)は1960・70年代に急成長を遂げ、人口のほぼ全体が資本主義部門へ組み込まれた「成長の奇跡」として知られているという。(この国々がコロナの少ない国。日本がコロナの少ない理由である)
〇アメリカの富裕層、社会の上層は人口(3億2千万人)の20%で約6400万人、トップ1%のさらに1割の資産は増え続け、1978年以来、3倍に増加し、1916年の水準に近い。トップ1%の年収の下限は33万ドルで資産の下限は400万ドルである。収入がトップ10%に入るアメリカ人の所得は10万ドル以上である。人口のトップ1%の中のさらに1%、3万人が金融・実業分野の経営者と考えられる。さらにその1%がアメリカで最も富裕な人々として毎年公表される「フォーブス四〇〇」のリストに入る。その中の1%四人 の一人がトランプ大統領である。アメリカの人口の30%(約1億人)は年収3万ドル以下である。
〇最大の見えざる政策は「大量投獄」の拡大である。その多くは黒人であるが囚人の多数ではない。それがシングルマザーを生み、貧困層の最底辺を形成している。多くの州で「三振即アウト」法を制定した。これは重罪の前科が二度ある者による再犯は軽犯罪でも終身刑とする法律である。これが1990年代に広まり、アメリカの囚人人口は、50万人以下から現在の200万人以上へと急上昇し、薬物の罪が過半数を占めた。黒人男性の三人に一人は、一生の間に刑務所を経験することになる。ラテン系男性は六人に一人、貧しい白人男性17人に一人である。白人と黒人の薬物使用率は同じであるのだが。
ブラッククライブズマター運動は今年5月の警官による黒人圧殺事件が契機であったが、2008年から2015年までの間にシカゴ警察に撃たれた400名の4分の3が黒人であった。
たった一人の黒人圧殺事件が広がったのは、その背景があるのだ。
〇アメリカは、ジョンソン大統領の時の「貧困との闘い」を、ニクソンが「薬物との闘い」へとすり替えた。これで黒人やラテン系アメリカ人は、大量投獄に会うことになる。
アメリカでは獄中投票はない。アメリカの「個人の自由」は「反労働組合」の婉曲表現である。「すべての人間」と言ったら「すべての白人男性」のことである。
 「黒」は「他者」の隠語であり、黒人だけでなく、ラテン系アメリカ人や貧困層の過半数を占める貧しい白人を示すこともあるという。
 だから今度の大統領選挙は、隠された南北戦争でもあった。アメリカでは「南北戦争」はタブーだ。しかしトランプの勝った州は、南北戦争の時の「南部連合」の州とミシシッピー川の上流地域だった。まだ奴隷制の後遺症は続いている。(これは日本でいまだに続く朝鮮人差別と同じ構造である)

2)中国も貧困層の拡大が進む格差社会だった
なぜ武漢から始まったかを調べて判ったこと
〇 なぜなら武漢市には中国一の循環器医療を誇る大学があり、先日も日本で手術を受けた心臓病の女性が飛行機で送られた先は武漢市でした。ウイルス研究も中国のトップでしたから、武漢での謀略説も出ました。なぜ武漢から始まったかが謎でした。武漢市のある湖北省には長江(揚子江)のダムもあり、今コロナ後に最も人の集まる中国最大の観光地だそうです。政府もGoto 武漢のキャンペーンをしたりしています。
〇 武漢は、中国の四大経済圏の一つの中心地で、中国内で一番急速に人口拡大が進んでいます。武漢市は2000年804万人、2017年1090万人(常住人口)で、2019年にはさらに100万人増えたと言う。そのほとんどが農民工つまり農村からの出稼ぎ労働者です。農村の人民公社は崩壊し、1割以下しか残っていないと言う。
 中国の都市には農村から農民工が殺到し、都市の周辺にスラムを形成しています。農村から離れた農民たちが職を求めて出て来て形成したのです。
〇 中国は毛沢東の作った戸籍制で、都市籍の都市労働者と農村籍の農民に分けられています。医療保険も違うし、雇用形態も違うと言います。農民工には保険が任意で、強制加入の都市労働者と格差があります。農民工の半数が医療にかかれない状況にあると言う。 
2003年でも必要なのに入院ができない人は1/5の最下層の40%だったという。都市籍と農村籍の労働者の格差がひどい。農民工は出稼ぎ労働者で、中国の戸籍制度と保険制度の為に出身地の農民の保険で支払われ、償還払いの為に医療にかかりにくい。 
〇 中国の医療機関は殆どが国営または公営ですが、階層化され、病院は都市にあり、病院への公費負担は少なく稼がなければならない。医師の給与も低く成功報酬制という。その為医療費も高騰しているし、医療モラルも低下し、医療費は出来高払い制の為に薬漬け、検査漬けで高騰しているという。
出来高払い制と、国公立の医療機関への補助金が低く抑えられ、医師は低賃金で歩合制給与の為に中国の医療は崩壊しているという。薬漬け、検査漬けは元より、あるジャーナリストが患者を装い10か所の病院を訪問し、尿検査で尿の代わりにお茶を提出した所、6つの病院が「潜血」があるとして薬剤を処方したことを英紙フィナンシャルタイムスが紹介しているという。
〇今年5月の第13回全国人民代表大会は、貧困脱出闘争(政策)の最終年であり、人民日報記者の質問への李克強総理は、「中国国民1人当たりの平均年収は3万元(約45万円)ですが、月収1000元(1.5万円)の人たちが6億人います(中国総人口は14億人)。1000元では中都市でさえも住宅の賃借が困難であるのに、今は感染症の蔓延に直面して苦しんでいますが、感染症の蔓延が終わった後に人々の生活を守ることは重要な課題になります。」という。
〇2019年の北京師範大の研究チームは、月収500元以下の人口は2.2億人という。
為替換算差があるから一概に比較は難しいが、アメリカと共に貧困大国ではないだろうか。
 それがパンデミックの起点となってもおかしくはない。
〇しかし、なぜ武漢(湖北省)だけで感染拡大が止まったかは謎でした。しかし、「世界」10月号の「分水嶺」とい記事によると、中国はやると決めたら迅速に徹底して、積極的に情報開示をして、激しい封鎖をし、感染の押さえ込みをした。また報道では、道路、鉄道、航空など一切の交通を遮断したという。また中国全土では55都市も都市封鎖したという。それで感染の拡大が抑えられたようだ。だが未感染者が多数いる以上は、今後再流行することが懸念される。

3)貧困と格差社会の進む大国、BRICS(ブリックス)諸国
〇 米国に次いで貧困と格差社会が進行する人口大国のブリックス諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)にコロナウイルス感染者と死者が広がっています。
 2020/11/20現在の、コロナ感染者数はアメリカ、インド、ブラジル、フランス、ロシアと続き、なぜか南アフリカは途中から増えなくなり、中国も止まっています。
〇 ブラジルのリオデジャネイロの貧民街に持ち込まれたのは、富裕層がイタリアのリゾート地で感染し、帰国してメイドや使用人を介して貧民街へ広がったと言われています。
〇 米国だけでなく、ロシアや中国、インド、ブラジルなどの様々な国で富の不平等が危機的なスピードで進行しています。2018年には世界人口の最富裕層1%が全世界の家計資産の47.2%を保有しているという。
〇 「多くの国で富の不平等が危機的スピードで拡大している。米国は先進諸国のなかで最も貧富の差が大きいとみられる」。資本主義は、対等な商取引をしていても、市場経済に内在する不平等によって富の分配の不平等は、必然的に拡大すると言う。それを数理モデルで証明した人たちがいます。「その自由市場経済に関するいくつかの数理モデルは、複雑なマクロ物理系に生じる相転移や対称性の破れ、双対性といった特徴を示している」と言う。つまり資本主義社会では必然的に、富の不平等が生じて、加速度的に進行すると言う数理モデルによって証明された。

4)中低所得諸国の経済の低迷
〇 続いてコロナ感染者の多いのが、スペイン、イギリス、アルゼンチン、イタリア、コロンビア、メキシコ、ペルー、ドイツ、イランと続きます。(EU諸国は後述)
〇 世界では1日1人200円(1.9ドル)以下で暮らす人が7.3億人(1割)もいるという。つい最近2020.10.の国連統計でも、7億人という。
世界銀行の定めた貧困の定義は、1日1.9ドル以下で生活している人(絶対的貧困)で、その国の国民一人当たりの平均所得の半分以下の所得の人を相対的貧困と言います。
 世界人口の貧しいほうから半分、35億人を合わせた資産総額と同等の富が26人によって、保有されている。
〇 アサド・レーマンのいうグローバルノース(私は先進国という)では最も貧しく脆弱な有色人種のコミュニティ(移民や難民のコミュニティ)ができている。グローバルサウス(同、発展途上国)では、半数の人がすでに貧困に陥っている。アフリカ、中南米、南アジア。
〇 第二次世界大戦後に労働者が獲得したものを解体するのが、新自由主義です。新自由主義に反対することは階級闘争です。「新自由主義は、第二次世界大戦後に労働者が獲得したものを解体するための《資本の側からの》階級闘争だ」(ナオミ・クライン)
〇 第二次大戦後に、一部の国は社会主義化し、またアジア、アフリカの多くの植民地が独立しました。そのほとんどの国の指導者たちは官僚体制を作り、権力を握って私腹を肥やし、腐敗してきた。
その国々、中南米諸国はメキシコ、コロンビア、チリ、ペルー、アルゼンチン、ベネズエラなどの国々。南アジアはバングラデシュ、インド、パキスタン、アフガニスタン。それに加えてイラン、イラクとトルコとサウジアラビア。アフリカ全域、特に中央アフリカから以南。(マグレブ諸国=北アフリカ諸国を除く)
 発展途上国は、どこも工業化が進み、農業は衰退し、農民たちが都市へ職を求めて集まり、メガポリスを形成し、スラムを形成している。急速な工業化は公害を生じている。

5)なぜヨーロッパ(EU諸国)が感染者や死者が多いのか
 ① 若者の失業率が高いのは、スペイン33%、イタリア20%、フランス22%。
特に経済的にもスペインとイタリアは悪化している。
  イタリア北部工業地帯には多数の中国人労働者がいて、春節から帰って広めたという。
  特にイタリアは病院を合理化し、病床数も職員数も削減したために、医療従事者が疲弊し、ベッドも足りずに医療崩壊しているという。
 ②難民の受け入れはドイツが最大で114万人です。(東京新聞、国連人口統計)
  ドイツは当初の対応は良かったが、ここにきて死者も増えているようだ。
 ③イギリスは政府の緊急時科学助言グループ(SAGE)の助言でロックダウン(都市封鎖)をしない方針でしたが、委員の一人の理論疫学者(ファガーソン)が自説を取り上げられないので、「政府の方針では25万人が死亡する」との自説をマスコミに流して世論が沸騰し、政府が方針転換したのです。イギリスは11/20現在死者は52,745人です。(日本の理論疫学者の北大西浦教授(今は京大教授に栄転)も「都市封鎖しなければ、死者は42万人になる」(文芸春秋2020.7.)と言っていました。日本は11/22現在、死者2000人超です。)
イギリスでは新型コロナウイルスによる重体患者の35%がバングラデシュ人と黒人その他の少数人種だという。しかし、残りは白人。しかもイギリスはアメリカに次ぐ格差社会である。医療従事者の死亡が当初多かったのは、国営の医療企業の運営が合理化され、マスク、グローブ、ガウンなど用品管理が民営化され、緊急時の要求に対応できなかったためと聞いている。それではエボラ出血熱で亡くなったコンゴの医療従事者と同じではないか。
 ④ スペインを始め、欧州の死亡率の高さは、介護老人施設での年齢によるトリアージだという。多くの高齢者は施設の中で死に、医療機関へ行っていないという。
 スペイン、フランス、イギリスの死者の7割は介護施設で亡くなっているという報告もある。

6)スウェーデン政府の政策をどう評価するか
 スウェーデンを始め、北欧諸国は元々感染症の少ない国です。伝統的にマルクスの作った社会民主党が強く、福祉政策を強力に進めていました。そのため、貧富の格差の最も少ない国々になったからです。スウェーデンは第二次大戦後すぐに広い労働者住宅を作り、最近は高齢者の一人暮らしを支援しています。スウェーデンだけが、エビデンスのないロックダウンもマスク着用もとらなかったのです。でも高齢者の外出制限とソーシャルディスタンスは取っています。集会はまだ50人以下です。
 スウェーデン在住の日本人医師宮川絢子さんに言わせれば、政府は当初から死者は6千人出ると予測していたと言います。6/14には死者は4874人(2/3は高齢者施設内か在宅診療を受けていた人たち)で、9/1現在も5821人です。その後はまた増えたために、制限強化をしたようです。
 北欧5か国とドイツ、ベルギー、スイス、オーストリアはジニ係数(収入不平等指数)が20%台のAクラスで、最低がスウェーデン。最も格差の少ない社会という(2013年CIAワールドファクトブック)。
7)戦争と内戦が世界中で続いています
世界では発展途上国やシリア、ウクライナなどの内戦と、干渉戦争、先進国での政治的紛争が広がり、世界の秩序は大きく変動している。
難民を受け入れているのは、トルコ、コロンビア、パキスタン、ウガンダ、ドイツなどで1000万人、他にバングラデシュ、イラン、ヨルダン、スーダン、レバノン、エチオピアなどが受け入れ。難民の出身国は、シリア、ベネズエラ、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、エチオピアなど3000万人。国内難民は、シリア、コンゴ、コロンビア、アフガニスタン、イエメン、ナイジェリア、ソマリア、スーダン、エチオピア、南スーダンなど4570万人。
 2016年現在での武力紛争国は、シリア、イラク、アフガニスタン、メキシコ、ソマリア、ナイジェリア、スーダン、南スーダン、リビア、トルコ、パキスタン、エジプト、コンゴ民主共和国(キンシャサ)、イエメン、エチオピア、ウクライナ、インド、イスラエル、パレスチナ、ミャンマー、ベネズエラ他。
8)日本それも東京で、なぜ夜の街か。
 東京は世界的には、メガポリスと言われ、東京を中心とする川崎、横浜と埼玉および千葉の一部で、人口3400万人とも言われています。そして山谷は無くなったが、横浜の寿町は未だ残っています。スラムは無くなるも、ネットカフェや簡易ホテルが広がり、ホームレスもいます。しかもそのすぐ上に、ぎりぎりで生活している貧困家庭、多くは母子家庭が貧困です。子どもの貧困は、親の貧困です。
 日本でも年間所得が200万円以下の人が、1000万人いると言います。(東京新聞) 
 ホストクラブ、キャバクラ、飲み屋街に働く人たちの実態はどうか。ほとんどが日銭商売で、雇用関係がはっきりしない仕事の人が多く、最底辺の人々だと思います。そこに集中するのは仕方のないことです。ブラック企業や3K職場、ウーバーイーツや出前館しか見つからない仕事。そんな人々の集まる街だから。
 女性の貧困は、キャバクラ、ソープランド、高級デリヘル、パパ活などの「風俗」の仕事しか見つからず、そこに現役女子大生すら働いているのです。女性にはもっと仕事が見つからないのです。奨学金というローンと生活費の為に。
 日本経済も「大恐慌以降では最大の経済危機が来る」という。
9)だから、感染症対策の第一は、仕事を与え、清潔な住環境を確保することです。
 マスクも手洗いも、社会的隔離もエビデンス(科学的根拠)はありません。インフルエンザの流行の時にしましたか?。それなのになぜ世界的に広まったのでしょうか。北欧諸国がなぜ感染症の少ない国なのでしょうか。
 当初飛沫感染だけで、空気感染(エアロゾル感染)はないと言われましたが、実際に中国武漢でのデータではありますし、従来型のコロナウイルスではやインフルエンザウイルスでは空気感染がありますから、おかしいと思っていましたが、やはり最近になり空気感染もあるようです。
10)ワクチンも血漿療法も危険を伴い、重体の人にしか使えません。
 まだ新型コロナウイルス感染症の重症化要因が判っていません。初期の解熱剤やステロイド剤の使用は重症化の危険があります。サイトカインストームも薬や精神的な因子を排除できていません。
 デング熱のように、抗体依存性感染増強(抗体がある方が重症化しやすい)の疑いが消えないのです。まだ不明のことが多い病気です。
11) 世界の不思議とされる日本や韓国、台湾、マレーシアの感染者数、死者数の少なさ。
 それを私は、国内の二重経済のないことと、格差の最も少ない国であることと考えます。
 シンガポールは国外から雇い入れた低賃金労働者が被害に遭い感染者と死者の大部分を占めたため、この中に入りませんが、もう感染しつくして新規には出ないと思います。だから統計上高いですが、現在は日本などと並んで低いです。
 この理由はアメリカの項で述べた、アメリカでは貧困と格差社会の拡大、二重経済の形成があるが、日本ね韓国、マレーシア(それに台湾)は1960・70年代に急成長を遂げ、人口のほぼ全体が資本主義部門へ組み込まれた「成長の奇跡」として知られている。つまり二重経済がなく、かつ格差が比較的に少ないことにあると考えます。
12) 日本特に東京は感染症対策をおろそかにしていました。元々、都立病院は戦前の伝染病院が母体です。それを作ったのは、伝染病に対するパニックを鎮めるためでした。旧都立清瀬小児病院は小児結核療養所でした。国立療養所の多くは結核と精神、それにハンセン病対策で作られました。国民を安心させるためでした。
厚生労働省は伝染病棟を閉鎖し、保健所を減らし、感染症対策をワクチンにすり替えました。ワクチンではなく、隔離病床を残して置くべきだったのです。空床がもっとも費用のかからない状態の隔離病床です。しかし、収入はありません。それを予算削減で無くしました。保健政策の末端を支えていた保健所も予算を削減してきました。日本人の健康と長寿命を支えたのは、末端の保健師たちです。それを減らしたのです。
 その結果が現状です。でも二重経済にならずに済み、まだアメリカほどの格差社会にならず、貧困家庭は1000万人という程で済んでいるから、コロナの広がりも少ないのでしょう。
13) 「世界」12月号「分水嶺」での記事によると、3月の勉強会で岡部信彦川崎市健康安全研究所所長は、「ロックダウンやそれに近い話が出るが、そういうことを強烈にやるとこの病気に対する不安は大きく膨らみ、失業する人だけでなく、絶望感からうつ状態や自殺者が多く出てしまう可能性も考えなくてはいけない。感染症による直接の重症化、最悪の死と、感染症を防ぐためとはいえ強烈な方法によるマイナスの部分とは、天秤にかけて図る必要がある。」と話したという。
14)これからの対策は、母子家庭を始め一人親家庭の経済支援。学生ローンの凍結又は棒引き。貧困者とコロナ対策で職を失った人たちへの経済補償。制限してきた生活保護の拡充。
 コロナ対策の為に打撃を受けたサービス産業への経済補償。
元々緊急事態宣言はすべきではなかったのです。緊急事態宣言による経済的損失のすべての補償を個人と企業にすべきなのです。
15)最後に
 日本はそれだけの免疫水準の高さがありました。それは横浜のクルーズ船の乗船者3711人のデータで見ると、感染率19%、発病率(症状が出たのは)10%、死亡率は感染者の1.8%でした。これは裕福な人の数字ですが、多くが60歳以上で、70歳以上が2000人もいたデータです。この時点で予測がついたはずです。貧困家庭を救済すれば、流行しても重症化を防げることを。病気になっても仕事を休めないか、経済的に医者にかかれない人もいるのです。
 高齢者が危ないのではなく、生活に困った人たちが危ないのです。貧困と過重労働が重症化するキーワードだと思います。


文献
1)F.M.バーネット「伝染病の生態学」1962
2)(感染症の)「温床と化す米国の大都市(American epidemic)」(日経サイエンス別冊2018/10――サイエンティフィック・アメリカン編集部論文)
3)「中国の医療格差と医療制度改革」(環太平洋ビジネス情報2009)
4)「中国の都市化―加速、変容と期待」(富士通総研.経済研究所2016/11)
5)「数理が語る格差拡大のメカニズム」日経サイエンス2020.9月号
6)BBCニュース(www.bbc.com/)所収、英国集中治療全国監査研究センターの統計
7)「コロナと風俗と『貧困女子』」、「困窮する外国人労働者」文芸春秋2020.7.月号
8)「新型コロナと経済危機」特集、週間金曜日2020.5.15.
9)「違う世界に通じる入口へ」アルンダティ・ロイとナオミ・クライン、世界2020.9月号
10)「人間の尊厳と生命権は不可分」、世界2020.9月号
11)ルネ・デュボス「人間と適応」みすず書房
12)ハンス・セリエ「現代社会とストレス」法政大学出版局
13)ヒポクラテス「古い医術について」岩波文庫
14)ブレイディみかこ他「そろそろ左派は<経済>を語ろう」亜紀書房
15)シゲリスト「文明と病気」上・下、岩波新書850
16) ピーター・テミン「なぜ中間層は没落したのか」慶応義塾大学出版会
17) 斉藤幸平編「未来への大分岐」集英社新書
18) 斉藤幸平「人新世の『資本論』」集英社新書
19) リチャード・ウイルキンソン「格差は心を壊す」東洋経済
20) 「世界」9,10,11、12月号収載論文
21) 「文芸春秋」9,10、11月号収載論文
22) 「日経サイエンス」5、8、9、10、11、12月号収載論文
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新型コロナとインフルエンザの同時流行はあり得ません ( 第八報 )

2020-10-15 08:57:36 | 感染症
            新型コロナとインフルエンザの同時流行はあり得ません

   ウイルスの干渉作用で同時に大流行はしません



 第一に、一人の人に関して言うと、二種類のウイルスが同時感染して、同時に体内の同じ場所(呼吸器官や血液中)で繁殖することはありません。
 先行して感染したウイルスが先に繁殖して、後から入って来たウイルスの繁殖を抑制してしまいます。そしてそのウイルスが繁殖を終えると、待機していたウイルスが繁殖を始めます。だから同時に繁殖して同時にそのピークを迎えることはありません。しかし連続して発病をします。その為一部の人は同時に感染して、連続して発病しますが、時間差が出るので新型コロナの流行中には、インフルエンザは大流行には至らないのです。散発することはあるかも知れません。
 
Newtonの11月号には、今年の南半球の冬(7~9月)でのインフルエンザの流行が無かった理由について、一つは新型コロナの感染対策がインフルエンザの予防にも有効だったということ。二つ目は、新型コロナウイルスがインフルエンザウイルスに「干渉」した結果、インフルエンザの流行がおさえられたというもの、と書かれていました。確かに今回コロナウイルスがインフルエンザウイルスに干渉したことを証明する研究は出ていませんが、過去の経験から当然なのです。今でも新型コロナは南半球でも増え続けていますから、新型コロナ対策がインフルエンザに有効で新型コロナには効果が無いということもおかしな話です。
武漢では115例の新型コロナの患者のうち、5例がインフルエンザにも感染したと言う報告がありますが、時間をおいて感染したことは考えられますが、同時にピークを持って感染したとは言えません。その論文を見てはいませんが、回復後に検査して分かったのだと思います。

 昔、まだ麻疹が流行していた時代に、小児病棟内で麻疹が発生した時や、麻疹による肺炎を起こしたために入院させた時に、麻疹の子は隔離病室に入室させました。そして感染しなくなる時、つまり全身に発疹ができて赤みが取れて色素沈着になった時までは、隔離するか家での外出禁止にして退院させていました。だから他の子に接触する機会がないはずなのですが、その子たちの中にしばしば外出禁止が解ける前に風疹や水痘、おたふくかぜを発病する子が出たのです。
中に一人だけ麻疹の後、水痘にかかり、その後おたふくかぜにかかった子を診ました。麻疹も水痘もおたふくかぜも臨床的に診断が確定できる症状がありますので、潜伏期間の間に感染したとしか考えられませんが、隔離していたのでそれはあり得ません。(そこから判った潜伏期間は最大21日間です。)
 その間に接触していないのに感染したとは考えられず、結論は麻疹で入院する前に水痘やおたふくかぜに感染していたが、先に感染した方が先に体内で繁殖して発病し、その間じっと体内のどこかに潜んでいて、繁殖が終わるとそれに交代して繁殖を始めて発病するとしか考えられなかったのです。二種類のウイルスに感染しても同時に発病するなどということは、私には考え付かないことです。
 もし同時に感染したら、少しでも先に感染した方が発病し、それが治ったら次のウイルスが発病するのです。

 ですから同じ呼吸器官(気道)内で、コロナウイルスとインフルエンザウイルスが同時に繁殖することはないのです。同時に二種類のウイルスが、次々と人に感染して流行すること、つまり同時流行することはあり得ないのです。

 それを証明するのは、例年ですと冬が先に来る南半球のインフルエンザの流行を見て、北半球の流行を予測するのですが、今年の冬が終わった南半球のオーストラリア、南アフリカ、チリでは、コロナが流行し、インフルエンザはほとんど出ませんでした。このことはNewton11月号にも書かれていました。それをコロナ対策がインフルエンザの流行を抑えたと言う見解も出されていますが、それであればコロナウイルスの流行も抑えられるはずですが、抑えられずにコロナの流行は続いています。だから違うのです。

 二つのウイルス感染症の同時の世界的大流行つまりツインデミックはあり得ないのです。

 今の感染症学者たちは、同時流行が起きると騒いでいます。私は新型コロナが流行している間は、インフルエンザの流行は無いと思います。
 もちろん、ウイルスと細菌とは同時に体内で繁殖することはあります。スペイン風邪の時の死亡の原因の多くは、インフルエンザの感染と同時にインフルエンザ桿菌が繁殖し、細菌感染によって死亡することが多かったのです。
 また細菌は、繁殖する体内の場所によって、同時の体内感染はあります。
麻疹、水痘、おたふくかぜなどの全身感染症はウイルスが血液中に入ります。その場合には、同じ血液中では繁殖できません。

インフルエンザワクチンも予防できるほどの効果もありません
 インフルエンザウイルスは呼吸器内でしか繁殖しないようです。まず腸内には、「胃液の壁」と言いますが、強酸性の胃液の中を生きて通過することが困難なのです。胃液の中で生きていられるのはピロリ菌の他はごく少数です。だからほとんどの細菌は胃の中で死滅し、小腸まで通過して行けないのです。だから胃液の壁が出来上がるのが6~8歳と言われており、その年齢以後は下痢をすることはありません。大人では腸内にインフルエンザウイルスもコロナウイルスも、例外を除いては繁殖できません。
 またインフルエンザウイルスの血液中での繁殖も確認されていません。インフルエンザ脳症が起きることもありますが、脳内にインフルエンザウイルスを確認されてはいないのです。確認されたのはインフルエンザウイルスのゲノムの一部でした。それでインフルエンザウイルス脳症の原因として解熱剤の使用が疑われています。もちろんコロナウイルスもその危険性が心配されます。かかったと疑われたら決して解熱剤を使ってはいけません。
 
 それでコロナウイルスも血液中で繁殖できるかどうかが疑われています。もしできなければ、インフルエンザワクチンと同様に、コロナウイルスワクチンも、麻疹や風疹ワクチンのような感染を防ぐ効果は期待できないこととなります。
 それはワクチンをしても、全身状態が悪ければ死亡することもあり得るということです。

 インフルエンザワクチンは、それ程有効性の高いものではありません。厚生労働省もそのホームページではそれを認めています。しかし、表ではそうは言いません。
 それは、今世界では製薬企業がワクチンを製造していて、製薬企業が寡占状態ですので、ほとんどの国の薬を支配しています。メディアつまりテレビ、新聞、インターネットなどの広告を見たら、ほとんどが製薬業界のCMだと判るでしょう。つまり世界のメディアは製薬企業に支配されています。
 昔インフルエンザワクチンは効かないと発言して、翌日インフルエンザワクチンを打つ場面を放映させられたニュースキャスターがいました。(電通などの広告会社を通して製薬業界から圧力がかかったからです。テレビやネットを見ればよく分かりますが、製薬業界は大きなお得意様で広告を止められたら経営が成り立たないのです。)
 
 血液中の抗体を作っても、呼吸器内の感染を防ぐことはできません。気道の粘膜細胞の免疫が必要なのですが、インフルエンザワクチンも新型コロナウイルスのワクチンもそれを期待できません。一部の学者は細胞免疫もできると言いますが、証明はできないと思います。
 期待できるのは、死亡率を減らしたり、入院率を減らすことができるだけです。

コロナワクチンができてもインフルエンザワクチンと同じで、感染を防ぐ効果は期待きませんし、副作用が心配です
 マスコミからはワクチンへの過大な期待が寄せられ、政府は大量のワクチンを買いこむそうですが、阪神大震災の時も、2009年の新型インフルエンザ流行の時も、買い付けたワクチンは大量に余り、一部は廃棄され、一部はメーカーに買い取らせました。2009年の時は国内産のインフルエンザワクチンだけで十分間に合い、海外製のワクチンはすべて余ってしまったのです。しかもその見返りに子宮頸がんワクチンやヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンなどを国内の臨床実験なしに買い入れたのです。

今後、コロナワクチンについても、その効果と副作用について警戒すべきだと思います。
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新型コロナのパンデミックは、なぜ起きたか

2020-10-13 11:01:53 | 感染症
     新型コロナウイルスのパンデミックは、なぜ起きたか(第七報)

  新型コロナウイルスのパンデミックは、スペイン風邪の再来だ

 

1. 新型コロナウイルスはスペイン風邪の再来だ
 主役は新型コロナウイルス。インフルエンザウイルスに代わって登場した。その舞台は、人種差別と貧困と格差社会の世界情勢にあり、その為に人々の免疫は低下している。ウイルスの繁殖する気候も整って、パンデミックになった。

2. 伝染病学者バーネットは、インフルエンザの流行を分析し、「パンデミック(世界的大流行)の起きる条件は、まず第1に適当な気候条件、第2には住民の大多数の免疫水準が低いこと、そして第3にそこに適当な型のウイルスが存在することである」という。

3. まさにスペイン風邪はそれに該当した。世界中の人々の免疫水準が低下していた。そこに変異したA型インフルエンザウイルスが出現し、冬から始まった。スペイン風邪のパンデミックは1918年に起き、その時に世界中の人々は免疫が低下した状況に置かれていた。1914~1918年は世界第一次大戦だったし、1917年10月にロシア革命は起き、ソヴィエト政権が成立。中国、トルコ、メキシコでの革命、アジアでの民族運動、南ア連邦が独立。日本でも米騒動など世界中が戦乱、騒乱と飢えにさらされていた。戦争に動員されたり、革命に参加した若者たちがスペイン風邪で命を落とし、若者の死亡率が高かった。

4. 第二次世界大戦の時は、感染症が流行したが、パンデミックを起こすような適当なウイルスは登場せず。その後もアジア風邪、香港風邪、ロシア風邪、2009年新型インフルエンザなどが流行したが、舞台が整わず、パンデミックにはならなかった。

5. 今スペイン風邪が流行した時の世界の人々の苦難の状況が成立した。
 第1に、異常な気候。北半球の温暖化でシベリア凍土や北極の氷の溶けだし。アメリカ、アマゾンとオーストラリア、インドネシアの森林火災。中国とアメリカの砂漠化。中国とアジアの集中豪雨と洪水。サバクトビバッタの大発生。そして冬12月の武漢から始まった。

 第2に、世界中に「ブラックライブズマター(黒人の命は大切)」が広がり、共感を呼んだのは、人種差別と貧困と格差社会が世界に広がり、都市の貧困層の圧倒的な拡大が進んでいたから。そして世界中に内戦、干渉戦争、内乱、政治的経済的混乱が広がっている。それで大量の移民、難民、農村からの出稼ぎ労働者が都市労働者の貧困層を形成した。それが世界的に形成されグローバル化し、そのために自然免疫の低下した人々が大量に発生していた。

 第3に、そこに新型コロナウイルスが登場した。適度に強くて、致死率が高くなくその為に感染力が強い、未だ遭遇しなかったウイルス。コロナウイルスはまずサーズ(SARS-Cov、 重症急性呼吸器症候群、死亡率9.6%)、マーズ(中東呼吸器症候群、死亡率34%)、そして今回の新型コロナウイルス(死亡率1~3%)へと変異して登場した。今度の新型コロナの正式名称は、SARS-Cov-2です。

6.新型コロナウイルスは現実の世界を明らかにした
 今の世界には、構造的な不平等があること。飢餓、貧困、暴力、人種差別、家父長制の危機です。また女性差別、宗教差別(ムスリムほか)、カースト制度など(アサド・レーマン)
問題にしているのは、資本主義の暴力性であり、・・・採取/搾取主義の論理です。今、最前線にいる労働者が、自分たちは不可欠であると同時に使い捨てにされ、犠牲にされていると訴えています。新自由主義は、第二次世界大戦後に労働者が獲得したものを解体するための階級闘争だ。(ナオミ・クライン)世界のNGOは、テーマ別にわかれた為に、現実世界を見えにくくした。
 新型コロナのパンデミックは、この世界の現実を明らかにした。明らかにされたのは、
第一は、格差社会を生んだのは、資本主義にあること(特に新自由主義)。それは対等な取引をしていても、格差社会が生じる市場経済に内在する不平等。
第二は、内戦と戦争。旧社会主義諸国の経済の破綻や腐敗と、植民地から独立した諸国の権力を握った人々による腐敗。社会(文化、経済、宗教など)の発展の違いによる社会的権力構造の違いによる国内や国と国の、紛争と内戦、戦争。
第三は、工業の発展と農業の衰退。大量の農民が都市労働者化し、出稼ぎ労働者の大量の発生と発展途上国の大都市周辺のスラム形成。そして公害。(これは先進諸国の歩んだ道の踏襲)
第四に、医療が人間性を失っていること。先進国の介護施設でのトリアージ(命の選別)と医療費削減のための諸政策が、多くの高齢者や医療従事者の命を奪った。
先進国で増加しているうつ病とアレルギー疾患を治せないし、予防できないこと。それに成功したのは北欧諸国で、うつ病と自殺と感染症を減らしてきた。それを医療ではなく、社会的政策すなわち政治で成し遂げた。(医学は社会科学であるから―白木博次)
第五に、病気の重症と軽症の違いは人間の側にあること(デュボス)。ストレスによる免疫力の低下(セリエ)。病気の重症度は人間の側の問題であり、さらに精神的要因が関与している(心療内科)。このことを臨床の感染症医学が受け入れていない。(生物学や公衆衛生学、精神医学では一部受け入れられている)
第六に、だから対策は社会経済的に援助し、人間的な豊かな生活を保証すること。これが新型コロナの教えてくれたことです。北欧特にスウェーデンがそれを実践していたのです。現実には、学生と貧困家庭と貧困者への、奨学金の棒引きと経済保証が必要であり、富裕層のためのGoto〇〇 などではない。もちろんロックダウン(都市封鎖)を解除し、移動の自由を回復させれば、それだけで中間層以上の人たちは動き出し、経済は回復へ向かいます。
Gotoキャンペーンでは国民の1/5の最貧困層は救われません。その階層にコロナの犠牲者がでるでしょう。



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