黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

母乳育児の良い点とその限界

2018-04-29 16:00:04 | 母乳育児
 最近、母乳育児が推進されていることはうれしいことですが、残念なことに母乳が万能だとの思い違いが、母乳推進派の医師や助産師、保健婦にいるようで、その人たちを信じていて、子どもが虐待ではないかと思う程に食事を与えられていないことが出てきました。
 まだ少数ですが、広がらないように、警鐘を鳴らします。もちろん、私は母乳を勧めます。しかし、三、四か月までで充分です。

 以下の論文をお読み下さい。できれば、内藤寿七郎先生の本を読んでください。ただし、20年前の本ですし、科学史のことをご存知ないことをふまえて下さい。
 世界に目を向けて下さい。食料のない南スーダン、アフガニスタン、クルド人、シリアやイラクの戦場、ガザの封鎖された地区などでは、母乳は乳児の命綱です。食料が得られるまでは必要です。
 どうか大切な赤ちゃんを、のびのびとすくすくと育てましょう。

 そのためのアドバイスと受け取ってもらえれば幸いです。



     母乳育児の良い点と限界点
      ―思い違いの母乳育児に警鐘を鳴らす―
 皆さんご存知ですか。母乳育児の良い点を。そして限界を。
 私の尊敬する日本の小児科医の先達・内藤寿七郎先生も「乳児にとってかけがえのない栄養品であっても、それは期限つきだということを忘れてはいけません。」「いちばん大事なのは初め。初めほど大事で、せいぜい六か月までが最上です。そして五か月すぎから離乳食を始める。」(内藤寿七郎「育児の原理」アップリカ育児研究会)
 私が尊敬する日本の小児科医は、内藤先生と詫摩先生(元東大教授)です。詫摩先生は離乳食の時に与える魚について「白身の魚と赤身の魚に違いはない」との論文を書かれています。お二人とも亡くなられましたが、私を応援してくれていました。
 内藤先生たちは一時代前の小児科医ですが、それでも母乳の限界は六か月としています。
 私は、アメリカ小児科学会の勧告に賛成で、三か月まで母乳で哺育できれば充分ですと言います。もちろん六か月まで飲ませていてよいですが、早めの離乳食の導入をお勧めしています。内藤先生たちは、その後の海外での離乳食の進め方についてはご存知ないのです。

 母乳についても、離乳食の進め方についても、いろいろなことが言われています。私が言いたいのは、どんなに胎児期から乳児期、幼児初期のこころが、その人の人生を左右し、さらに「世代間伝達」として子々孫々に伝わっていくことです。
 母乳育児も万能ではありません。母乳には使用期限があります。
 育児も、私は山田眞さんの「育児は自分の好きにすればよい」というのは無責任だと思います。今までは友達なので、批判を避けていましたが、ここにきていろいろな弊害が目立つので言います。好きなやり方をしてお子さんの人生を左右してよいのでしょうか。
 あなたのやり方で、あなたのお子さんが良い人生を送れるのでしょうか。あなたの育て方で、子どもがアレルギーになったり、発達障害になったり、ひきこもりになったり、家族殺人や無差別殺人を起こしたりしてはいないでしょうか。
 もちろん、そのあなたを左右しているのが、現代の日本の社会の問題です。あなたは社会の動向によって、そのような子育てをしてしまうのです。
 もちろん父親も共犯者です。一家皆殺し事件や、家族を殺した事件の犯人の父親は、多くは教育者です。教育関係者の間では、「また」とささやかれていますが、表には出ません。教育者は、自分の教育法で、子どもを強制します。そのために起きることです。もっとのひのび育てて下さい。

 今私はこの年齢になってはっきり言うことができます。もっと上手に育てましょう。アレルギーも発達障害も、胎児期から乳幼児初期に作られたものです。ですから、三歳まででしたら、育て治して治すことができます。このことは別に書きます。母乳を続けます。
 
 母乳は初めが大切なのは、一つは精神的な役割です。母親と赤ちゃんのこころをつなぎ、楽しい時間になります。この時期を母子が心地よく過ごすことが大切で、それを自然に作るのです。母乳が出ずにミルクでも、その時間を作ればよいのです。母乳は努力しなくても作られるのです。この時期は乳幼児精神医学にとって、非常に大切な時間です。その子の人生を左右する程です。母乳が出ないのは、母親のこころが何らかの不安でゆれているからです。出なくても大丈夫です。ひけめに思わないで下さい。
 
 二つ目は、初乳の働きです。これは免疫物質を含んでいます。でも消化吸収されないのですが、通過する場所にペンキをぬるように、その粘膜を保護してくれます。ですから口の中、咽喉頭、気管の入り口まで、それからは食道から消化管全体を保護してくれます。
 初乳は出産後一週間、まれには二週間の母乳を言います。
その後の母乳も、初乳と同じように3か月までの乳児の胃腸の感染の防御に有効であることが判っています。吸収されて赤ちゃんの血液内への効果は認められていません。赤ちゃんの血液内には、胎盤を通して供給された免疫の効果だけです。
だから母乳による腸管内の免疫効果の切れた3か月からロタウイルスワクチンを接種するのです(私は上手に育てれば不要と思いますが)。胎盤からの免液は6ヶ月まで続きますから、それまでは麻疹・水痘などにかかりませんし、突発性発疹になるのも6ヶ月過ぎてからです。

三つめは、母乳の成分です。良い点は、銅、亜鉛を含んでいます。
亜鉛や銅という微量成分は、僅かしか必要ないのですが、全くないと障害が出ます。亜鉛は皮膚症状、銅は貧血に関係するようですが、私は経験していません。長期に人工栄養を続けている未熟児に見られるようです。

母乳の悪い点は、母乳が汚染されていると、母乳に出てしまいます。
古くは水俣病の水銀、カネミ油症や公害のPCB、イタイイタイ病のカドミウム、その他BHC、DDTなどです。水俣病やカネミ油症の母親の嘆きをご存知ですか。子どもを産むと胎盤からと母乳から子どもに出てしまい、母親は軽くなり、子どもが重度になるからです。今これらは無くなりましたが、今後何が出てくるか判りません。
放射能(セシウム)は母乳に出ます。2011.3.11以後すぐに私たちは調べて告発しました。それで慌てて国も検査しましたが、すぐ止めてしまいました。今も調べる必要はあると思います。

母乳のもう一つの問題点は、カロリーが低いことです。その為に、母乳栄養では、五か月以降の赤ちゃんの栄養を満たせません。母乳は牛乳を55%程度に薄めた程度の濃度ものです(今のミルクは母乳化が進みそう作られています)。
今の赤ちゃんは生下時体重の二倍になるのは二か月から三か月です。昔はそれが五、六か月かかったので、内藤先生は六か月を限度としていますが、今は三、四か月です。カロリーが不足し、お腹がすくので指をしゃぶります。早期の離乳で、三分の二の赤ちゃんが指しゃぶりをしなくなります。

三番目は、母乳にはビタミンや鉄分が含まれていません。それでまずビタミンK、次にビタミンC、ビタミンA、Dなどです。それで生後すぐビタミンKを飲ませます。ビタミンKが不足すると頭蓋内出血を起こす危険があります。ビタミンKを飲ませ始めてから新生児の頭蓋内出血は激減し、ビタミンKを飲ませなかった母乳育児の一人だけでした。それまで私も一人経験する程多かったのです。
それから鉄分です。胎児期に母親からもらった鉄分を使い果たします。それで6か月から鉄分の補給をしないと9か月から1歳で貧血になる子が15%くらいでてきます。またビタミンCやDやAも母乳にはなく、不足します。昔は母乳栄養児に壊血病やクル病が少なくありませんでした。2015年の報告では、母乳栄養児の75%がビタミンD不足で、クル病が出てきているようです。早期の離乳食で補給しましょう。

以上が母乳の良い点と限界です。それで世界では、母乳育児を推進しつつ、母乳育児の限界を補うためにいろいろなことが行なわれてきました。

○ 乳幼児期の低栄養は、体(肉体)や脳の発達を妨げます。だからその人の遺伝的な身長より低くなります。
 昔はイギリスで貴族は身長が高く知能も高かったが、労働者は身長も知能も低いからと階級社会が正当化されたのです。日本人の身長が低いのもそうです。今は栄養状態が良くなり日本人もイギリスの労働者も身長が高くなりました。
これは成長後に栄養を補給しても改善しません。乳幼児期の栄養が大切な理由です。しかし、母乳ではそれを満たさないのです。特に知的能力の発達が遅れることが心配です。

○ 今の赤ちゃんは、早くからカロリーが不足します。それで母乳やミルクでは満足感が得られず、指しゃぶりや物を口に持っていく行動が始まります。フロイドの時代には、赤ちゃんが物を口に入れるのを見て「口唇期」と名付けました。口でなめて見て、物を判断するのだと思ったのです。
 それに対し欧米の小児科医が離乳食を早期に与えたら、指しゃぶりが三分の二に減りました。つまり母乳やミルクではカロリーが不足し、お腹は一杯だが満足感が得られなかったからのようです。大人が牛乳を飲んでもお腹が一杯にならないことと同じです。
 さらに三、四か月におしゃぶりを与えてしゃぶる欲望を満足させたら、さらに残りの三分の二が指をしゃぶらず、口に物を入れなくなりました。残りの一割はどうしても指をしゃぶります。他の欲求不満だと思われますが、判りません。
 最近日本で「おしゃぶり誘発顎顔面変形症」という歯科医の報告が出ています。

○早期の離乳食が、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の原因と言うことで、日本の離乳食を遅くすることを勧めるようです。私は乳幼児のアトピー性皮膚炎を二週間で治します。
 食物アレルギーも離乳食の与え方にあると思います。ですから予防できますし、治すことができます。早期の離乳食がアレルギーの原因であるというのは思い違いです。何も根拠はありません。証明のないことでも、有名な人が言うと信じられてしまうから恐ろしいものです。根拠となる論文を探してみて下さい。無いのです。 
 少なくとも子どものアレルギーを私は治すことができます。

○日本の子どもの発育曲線は、六か月から一年の間、身長は伸びても体重は低迷し、一年過ぎてからまた急速に伸びます。それはその間カロリーが不足するためです。
 日本は先進国では最も離乳が遅いので、発育曲線の体重がそうなります。他の国ではきれいな上昇曲線を取るのですが日本だけ違います。もちろん発展途上国では別です。
 赤ちゃんも子どもも、グルコースが脳の代謝に必要なので、成長が止まる(つまり大人になる)までは糖分を欲しがります。もちろん炭水化物でカロリーを十分与えていればよいです。しかし、甘い物を欲しがるのは止められません。体が欲しているからです。糖分を制限してはいけません。
○ クララ・デービスのカフェテリア実験
 イギリスの女性小児科医のクララ・デービスが昔一歳半前後の乳児二人を使って実験をしました。今でいうバイキング料理のように、いろいろな料理を並べて好きなものを好きなだけ食べさせたのです。二人は片寄った食べ方をしているように見えました。でもその結果は、一か月という長い期間続けたら、必要な食品を必要なだけ食べていたことが判ったのです。
それを発表したら、ヨーロッパやアメリカの小児科医が驚きました。それで各国で追試験をしましたが、すべて同じ結果でした。当時徴兵制のあった国の内科医が、若い徴兵された兵士に同じ実験をして、やはり同じ結果が出たと言います。
○ フィリピンの山中で三十年、一人で戦っていた残留兵の小野田さんの話では、自分の健康は自分の身体が一番よく知っていると思い、自分の身体に聞いてみて行動し、食べ物のバランスは体に聞いて食べたいものを食べていたといいます。それで健康に過ごし、帰国後も長生きしました。
○子どもを産まなくとも母乳は出ます。
 アメリカでは、養子をもらっての母乳育児を推奨しています。現実に赤ちゃんで養子にもらい母乳で育てる女性は三分の二に達すると言われています。ただし、それは自分の子を産み終わり、母乳育児を経験した人でないと難しいようです。三か月までで十分だと言います。
○男でも母乳は出ます。乳腺があるから、母乳も出るし乳がんにもなります。
 赤ちゃんには乳房がふくれている子がいます。それを搾ると母乳が出ます。男の子でも出ます。母親の女性ホルモンを胎内でもらっていたためです。
 男性で抗うつ剤のスルピリドで乳腺が腫脹した人がいました。
 禿の男性の中に、乳房をもんでいると女性ホルモンが出て、毛が生えてきたという人がいます(これは詳細は略します)。その代り胸もふくらんでしまいます。


☆自然界ではどうか。
 人間とそれと2~5万年も一緒に生活している犬と猫を除く哺乳類は、すべて乳児期から幼児期になる時に、母乳が飲めなくなります。それは遺伝子ゲノムに書かれた信号が止まります。何の信号かと言うと、乳糖分解酵素を産生する信号で、それが止まってしまうので哺乳類は母乳が飲めなくなり、離乳します。飲んでも下痢するだけです。人間でもそれが残っている人たちがいます。生の(煮沸していない)牛乳を飲むと下痢をする人です。日本人や農耕民族に多く肉食民族には少ないという調査もあります。アレルギーと誤解されていますが、正確には牛乳不耐症です。
 だから自然に離乳します。飲んでも下痢してしまうからです。
 子どもが母乳をやめるまで飲ませる理由はありません。自然界では飲めなくさせています。

○母乳はいつまで出るでしょうか。
 牛乳と一緒です。出し続ければ質は落ちますが出続けます。昔あった乳母という職業も、子どもを産んで母乳で育てた後、止めずに次の子どもに飲ませるのです。しばらくは出続けますから。牛は、子牛を産んだあと、乳を搾るのです。そして出なくなるまで搾り続けるのです。それで乳が出ない牛は、廃牛にされてしまいます。数年は出ると思います。
 ねじめ正一さんは、小学生頃まで母乳を飲んでいたと言います。本人の話です。
○ではいつまで出るかと言うと、私の記憶では、インドでのケースで15歳まで母乳だけで育てていた子どもが見つかりました。その結果、体重は6歳相当で、知能はもっと(6歳以下)遅れていました。
 
○昔は乳母がいました。
 母乳は人間の赤ちゃんに対応した大切な乳児初期の栄養です。粉ミルクができるまでは、お金のある人は母乳が出ないと「乳母(うば)」と言って母乳が出る人を雇って飲ませてもらっていました。
 特に江戸時代は、おかゆを薄めたりしましたが、乳児の胃でおかゆを消化できるのは、平均して生後4か月からと言われています。それで母乳が出ないと赤ちゃんは育たなかったのです。つまり乳児の死亡です。
 粉ミルクができたのは、明治時代と思います。牛乳は昔飲まれたこともあったようですが、江戸時代は飲まれていなかったようです。今は粉ミルクがあり、しかも母乳化が進んでいるので、赤ちゃんが育たないことはありません。幸せな時代です。
戦後まもなくは粉ミルクの入手も困難でした。私の父は小児科医でしたが、私の妹は母の母乳が少しか出ず、近所の山羊を飼っている人から山羊乳をもらっていました。

○私の子どもの頃には、乳もみマッサージがいました。
母乳が出るように乳もみマッサージをしていました。乳もみの効果は、経験を積んだ乳もみの女性が、いろいろと話をしながらもむのですが、もむ効果ではなく、その時に「私がもんだ人はみんなよく母乳が出るようになっています。あの人も。この人も。だからあなたも必ず出るようになりますよ」と話をするからです。それで母乳が出るようになるのです。精神的な効果です。母乳が出ないのも精神的なものです。何かストレスがあればすぐ出なくなります。戦後しばらくは、「乳もみマッサージ」の看板が見られました。

○中世のフランスでは、アナール派の歴史学者によると、パリの貴族たちは赤ちゃんを近郊の農家に預けたそうです。その為、乳児死亡率は高かったようです。以下略。