子どもでも大人でも熱が出るのは嫌なものです。特に大人や高齢者は熱を嫌う方が少なくありません。それは熱に対する考え方が思い違いをしており、悪いものと思うためから来ています。
それまで(今も知らない医師がいますが)病気の症状は外から入って来たウイルスや細菌、異物などが体内で引き起こす異常なもの、悪いものと思われていたのですが、1990年頃から、熱を始めにその仕組みが判ったら、症状は逆にウイルスや細菌、異物に対する人間の身体の防御反応でした。だから、できるだけその症状を抑えない方が良いことが判ったのです。
まず熱から判ったのです。
熱 の 話
1.熱は
よく熱を出すことがあります。特に子どもに多く、アメリカの家庭医学書に38~39℃
は、子どもの普通の熱と呼び、高い熱とは言いません。日本では39℃だと「熱が高い」
と言う医者が多いので、皆さまがあわてるのも、無理はありません。
大人に比べて、子どもは熱に強く、熱があってもその割に元気で食欲もあることが多く、さわったら熱かったので体温を測ったら熱があったなどということもよくあります。大人に比べて、熱に対する感じ方が1℃くらい違います。だから39.5~40℃くらいにならないと、冷やすのを嫌がります。頭やおでこを冷やすのは気持ちよくするためですから、無理に冷やすことはありません。氷などで冷やすより、むしろ人肌程度の温度を気持ちよく感じるようで、熱が高くなると母親にぴったりくっつく方が気持ちがよいようです。
大人では、気持ちよくなるなら冷やして構いません。体に良いことは、気持ちよくなるように、人間の身体はできているのです。ただし、薬を使わないですることだけです。
大人では、熱が出ると自分で熱感を感じますから、体温を測りましょう。
病気の重い軽いは、熱のあるか無いかや、熱の高さで見るのではなく、熱が高くても元気があり、遊んだり笑ったりできれば心配ありません。また普通の熱なら、一晩様子を見ても構いません。翌日も続くなら医者に見てもらって下さい。熱が問題ではなく、熱の原因(病気)が何であるかが問題です。
◎2.なぜ熱が出るのか(熱の出るしくみ)
1990年頃から判ってきたことですが、熱が出るのは外部から体内に入ってきたウィルスや細菌と戦うしくみです。難しく言うと、発熱(体内温の上昇)は生体防御反応の一つであり、「発熱をともなう生体の応答(発熱症候群)」で、人体に有利な反応です。(1989~90年小児科学会雑誌より)
◇ 外部からウィルスや細菌や異物などが体内に入ってくると、体内をパトロールをしている白血球の一部(単球やマクロファージなど)がこれを見つけて活動を開始し、ある種の信号(インターロイキン1などで、内因性発熱物質とかサイトカインという)を出し、血液中に放出します。
この信号による情報が血流にのって全身をまわり、脳の中の間脳にある、視床下部にある体温調節中枢の自動調節機構に作用し、そこに設定してある温度(セットポイント)を上昇させます。エア・コンの温度を操作する様な仕組みです。
セットポイントが上昇すると、血管運動中枢が働き、皮膚の血管が収縮し、皮膚色は蒼白になり、汗腺を閉じ、体内の温度が外へ逃げないようにし、小さい起毛筋が収縮して鳥肌が立ち、大きい筋肉が収縮して体が震え、筋肉の運動で熱を産生するのです。この時、寒気がし、寒ければ暖かくしてあげて下さい。
◇熱が上がって必要な体温を確保できると、皮膚の血管が拡張し、顔色は真っ赤になり、からだをさわると熱くなっています。心臓はドキドキして血流が早くなり、骨髄で作った白血球をどんどん戦いの場へ送りこんでいきます。
細菌やウィルスとの戦いに勝つと、信号(インターロイキン1など)が出なくなり、設定温度(セットポイント)が下がって、汗腺を開いて汗を出し、皮膚から熱を放散し、熱が下がっていきます。この時は冷やして構いません。
◇体温調節中枢の自動調節機構に設定してある体内温度は、平常時は36.0~37.8℃の範囲にあります。ただしこれは深部温で、口の中(舌下、婦人体温計がそれを測る)や肛門内の温度であり、脇の下で測る皮膚温はこれより 0.5℃以上低いようです。
◇解熱剤はこのセットポイントを下げるので、一時的に熱が下がりますが、病気との戦いに勝っていなければ、薬の作用がきれるとまた熱が上がります。
昔から麻疹(はしか)に解熱剤を使うと「内攻する」(悪くなる)と言われていましたが、それが正しかったのです。インフルエンザでも、デング熱でも悪くなります。
3.発熱は身体に有利な反応なのです。
①体温が上昇すると、細菌やウィルスの増殖が抑制されます。36℃でのウィルスの繁殖を 100とすると、39℃では3%程度に減りますし、細菌も13~15%に繁殖が減ります。
②細菌やウィルスと戦う力(細胞免疫)が活発になります。白血球の働きが活発になり、移動性が増し、食作用が亢進します。
③免疫の働きを促進させ、37℃よりも39℃の方が、リンパ球のT細胞(細菌やウィルスと戦う)が増殖し、活性化します。B細胞(抗体を作る)も活性化します。
◇こうして熱は、人間の身体が病気に対抗する働きから出ているのであり、熱自体にウィルスや細菌の感染から回復を促進する作用があります。だから抵抗力のない新生児、未熟児や高齢者では、肺炎でも熱が出ないことがあります。
4.熱による不利な作用はどうか。
①体内温(深部温)の上限は41.5℃であり(皮膚温は41.1℃)、42℃をこえると死に至
る危険があります。しかし体温調節機構がこわれない限りそこまで上昇しません。そこ
まで上昇するのは、熱射病(熱中症)と脊髄損傷などです。脳炎では行きません。
②熱によってひきつけるのは、子どもの内の1割程度で、その3分の2は1回で終わり
ます。繰り返しひきつける場合には、ひきつけ止めの薬を使います。
③よく高熱で脳がやられると言いますが、それは間違いで、子どもは脳炎、脳症、髄膜炎などの病気が起きやすく、起きていたのを見落とされていたために、「熱が下がったら脳がやられていた」などということになるのです。小児科専門医では見落とすことはまれですから、子どもは必ず小児科専門医にかかりましょう。
大人では、そういうことはありませんから、熱が出てもあわてず、一晩くらいは様子をみても構いません。熱よりも全身状態で、それが悪ければ医者にかかりましょう。
熱があっても、元気が残っていれば急ぐ必要はありません。
5.インターロイキン1など
(内因性発熱物質とかサイトカインという)の作用
① 神経内分泌系の反応
インターロイキン1などの作用で、副腎皮質ホルモン、β
エンドルフィンのほか4種類のホルモンが分泌されます。β
-エンドルフィンはハイな気分になるホルモンで気持ちがよくなります。他のホルモンは発熱を抑制する働きをしています。
② 細菌感染に対する多様な液性反応が起きます。
血中の鉄濃度の減少(細菌の発育抑制)、CRPやフィブリノーゲンなどの蛋白が合成されます。
③ T細胞(細菌やウィルスと戦う)から、B細胞(抗体産生)、NK(ナチュラルキ
ラー)細胞(異常細胞を破壊する)などの免疫反応がひき起こされ、免疫グロブリン産生も促進されます。
④行動上の反応
睡眠、食欲不振、活動低下、抑うつ状態などが起きます。
④ プロスタグランジンの合成
骨格筋でのプロスタグランジンの産生が増加し、蛋白分解が促進されます。これが筋肉痛の原因の一つと見られます。プロスタグランジンは白血球を増加させたり、設定温度を上昇させる時に関与しています。
6.解熱剤は病気の回復を遅らせる。
解熱剤で熱を下げることは、まだ病気に勝っていないのに、病気と戦う人間のからだの働き(上記3.と5.)を抑えてしまい、体内でのウィルスや細菌などがどんどん増殖し、活動を活発にしますから、身体にとってマイナスになり、かえって病気が長引きます。下熱剤を使うと一時的に熱が下がりますが、薬がきれるとまた熱を上げて一生懸命病気と戦い、熱を下げている時間以上の時間、病気が長引くことになります。
7.熱が出たら、どうするか。
熱は、病気の徴候の一つで、何らかの病気にかかったことを表現しているのですから、放置してはいけません。しかし、あわてることもありません。
①まず、熱の原因を確かめることです。熱の原因の9割は、上気道炎またはかぜ症候群、(いわゆる「かぜ」)から来ています。
それを確かめるには、まず咳、鼻水が出ているか、のどの痛みがあるかを聞くか注意して見ましょう。それからできれば、口を開けて「アーン」と言わせてのど(咽頭)と扁桃を見ましょう。そこで、咳や鼻水があったり、のどの痛みがあるかまたは、のどや扁桃が赤くなっていれば、広い意味での「かぜ」にかかったから熱が出たのだと考えて良く、一日くらいは様子を見てもよいです。
②熱が出たが、「かぜ」の症状がない時には、他の症状が出ているか探しましょう。
口の中が痛くないか、どこかに湿疹や水疱が出ていないか、耳の中や、耳の下を痛くないか、おしっこが近いかおしっこの時に痛くないか、吐いたり下痢をしたりしていないか、傷や化膿している所はないか、リンパ節がはれていないか、いろいろ見て下さい。
症状があれば、その病気のための熱ですから心配はありませんが、薬を飲むと早く治る病気と、特効薬がなくじっと治るのを待つしかない病気とありますから、医者にかかって診断を受けて下さい。元気があれば、あわてることはなく、夜熱が出ても、翌朝医者にかかればよいでしょう。
③熱が出たが、どうしても他に症状が見つからない場合、6ヶ月過ぎの乳児では突発性発疹症があります。元気がそれ程落ちないのが特徴です。夜になってしまっていたら、元気があれば、翌朝かかればよいです。例外は新生児と乳児早期(6か月未満)の熱ですが、診てもらう医者も小児科専門医でなければいけません。
④ 乳児早期(生後6か月未満)でなければ、子どもが熱を出しても元気があれば、様
子を見てよいですが、熱が下がらなければ3日目には必ず医者にかかりましょう。熱が5日も続いたら、検査や、場合によったら入院が必要になることもあります。これは大人でも同じです。三日異常続く発熱は、その原因を確かめなくてはいけません。
生後3~4ヶ月の38℃を超えるときは、必ず小児科専門医にかかり、検査が必要なことがあります。白血球数とCRPで、その検査で軽い病気か、重い病気が判ります。
高齢者でも同じです。やはり、白血球数とCRPで、重症度を判断します。
白血球の方が、先に反応します。というより、四六時中変動しています。傷があったり、軽いかぜでも反応します。微生物と闘う最前線で働いているのです。
⑤人間には、免疫以前に、体の外界との接点で、多くの微生物が共棲していて、外来の微生物と闘ってくれています。だから無菌にしなければいけないと思わないで下さい。
ここで、まず外来の細菌やウイルスを排除します。そこを突破されると次の防御機構が働きます。だから、最近は傷をしても消毒ではなく、まず洗浄です。洗い流すことが第一です。
それをしても、最近やウイルスが体内に入ると、まず自然免疫が働き、それを突破されると適応免疫が働きます。
この段階で白血球が増え、ついでCRPが上昇します。血沈も遅れて上昇します。血沈で判ることもいろいろありますが、今はしなくなりました。
これらの働きで、病気に勝つと自然に熱は下がります。病気の程度によって、熱を出さずに戦いに勝てば、熱はでません。
また、体内に常在している細菌でも、時々免疫力が落ちたり、常在している場所からしていない場所に入ると、病気を起こすことがあります。
⑥熱は、解熱剤で下げるのではなく、なぜ熱が出たのか、熱の出た原因となる病気の診断をすることが大切です。解熱剤で一時的に熱を下げると、病気の診断を誤ることがあ
りますから、解熱剤を使わないで下さい。その上、解熱剤には重大な副作用もあり、できるだけ使わないで下さい。
それまで(今も知らない医師がいますが)病気の症状は外から入って来たウイルスや細菌、異物などが体内で引き起こす異常なもの、悪いものと思われていたのですが、1990年頃から、熱を始めにその仕組みが判ったら、症状は逆にウイルスや細菌、異物に対する人間の身体の防御反応でした。だから、できるだけその症状を抑えない方が良いことが判ったのです。
まず熱から判ったのです。
熱 の 話
1.熱は
よく熱を出すことがあります。特に子どもに多く、アメリカの家庭医学書に38~39℃
は、子どもの普通の熱と呼び、高い熱とは言いません。日本では39℃だと「熱が高い」
と言う医者が多いので、皆さまがあわてるのも、無理はありません。
大人に比べて、子どもは熱に強く、熱があってもその割に元気で食欲もあることが多く、さわったら熱かったので体温を測ったら熱があったなどということもよくあります。大人に比べて、熱に対する感じ方が1℃くらい違います。だから39.5~40℃くらいにならないと、冷やすのを嫌がります。頭やおでこを冷やすのは気持ちよくするためですから、無理に冷やすことはありません。氷などで冷やすより、むしろ人肌程度の温度を気持ちよく感じるようで、熱が高くなると母親にぴったりくっつく方が気持ちがよいようです。
大人では、気持ちよくなるなら冷やして構いません。体に良いことは、気持ちよくなるように、人間の身体はできているのです。ただし、薬を使わないですることだけです。
大人では、熱が出ると自分で熱感を感じますから、体温を測りましょう。
病気の重い軽いは、熱のあるか無いかや、熱の高さで見るのではなく、熱が高くても元気があり、遊んだり笑ったりできれば心配ありません。また普通の熱なら、一晩様子を見ても構いません。翌日も続くなら医者に見てもらって下さい。熱が問題ではなく、熱の原因(病気)が何であるかが問題です。
◎2.なぜ熱が出るのか(熱の出るしくみ)
1990年頃から判ってきたことですが、熱が出るのは外部から体内に入ってきたウィルスや細菌と戦うしくみです。難しく言うと、発熱(体内温の上昇)は生体防御反応の一つであり、「発熱をともなう生体の応答(発熱症候群)」で、人体に有利な反応です。(1989~90年小児科学会雑誌より)
◇ 外部からウィルスや細菌や異物などが体内に入ってくると、体内をパトロールをしている白血球の一部(単球やマクロファージなど)がこれを見つけて活動を開始し、ある種の信号(インターロイキン1などで、内因性発熱物質とかサイトカインという)を出し、血液中に放出します。
この信号による情報が血流にのって全身をまわり、脳の中の間脳にある、視床下部にある体温調節中枢の自動調節機構に作用し、そこに設定してある温度(セットポイント)を上昇させます。エア・コンの温度を操作する様な仕組みです。
セットポイントが上昇すると、血管運動中枢が働き、皮膚の血管が収縮し、皮膚色は蒼白になり、汗腺を閉じ、体内の温度が外へ逃げないようにし、小さい起毛筋が収縮して鳥肌が立ち、大きい筋肉が収縮して体が震え、筋肉の運動で熱を産生するのです。この時、寒気がし、寒ければ暖かくしてあげて下さい。
◇熱が上がって必要な体温を確保できると、皮膚の血管が拡張し、顔色は真っ赤になり、からだをさわると熱くなっています。心臓はドキドキして血流が早くなり、骨髄で作った白血球をどんどん戦いの場へ送りこんでいきます。
細菌やウィルスとの戦いに勝つと、信号(インターロイキン1など)が出なくなり、設定温度(セットポイント)が下がって、汗腺を開いて汗を出し、皮膚から熱を放散し、熱が下がっていきます。この時は冷やして構いません。
◇体温調節中枢の自動調節機構に設定してある体内温度は、平常時は36.0~37.8℃の範囲にあります。ただしこれは深部温で、口の中(舌下、婦人体温計がそれを測る)や肛門内の温度であり、脇の下で測る皮膚温はこれより 0.5℃以上低いようです。
◇解熱剤はこのセットポイントを下げるので、一時的に熱が下がりますが、病気との戦いに勝っていなければ、薬の作用がきれるとまた熱が上がります。
昔から麻疹(はしか)に解熱剤を使うと「内攻する」(悪くなる)と言われていましたが、それが正しかったのです。インフルエンザでも、デング熱でも悪くなります。
3.発熱は身体に有利な反応なのです。
①体温が上昇すると、細菌やウィルスの増殖が抑制されます。36℃でのウィルスの繁殖を 100とすると、39℃では3%程度に減りますし、細菌も13~15%に繁殖が減ります。
②細菌やウィルスと戦う力(細胞免疫)が活発になります。白血球の働きが活発になり、移動性が増し、食作用が亢進します。
③免疫の働きを促進させ、37℃よりも39℃の方が、リンパ球のT細胞(細菌やウィルスと戦う)が増殖し、活性化します。B細胞(抗体を作る)も活性化します。
◇こうして熱は、人間の身体が病気に対抗する働きから出ているのであり、熱自体にウィルスや細菌の感染から回復を促進する作用があります。だから抵抗力のない新生児、未熟児や高齢者では、肺炎でも熱が出ないことがあります。
4.熱による不利な作用はどうか。
①体内温(深部温)の上限は41.5℃であり(皮膚温は41.1℃)、42℃をこえると死に至
る危険があります。しかし体温調節機構がこわれない限りそこまで上昇しません。そこ
まで上昇するのは、熱射病(熱中症)と脊髄損傷などです。脳炎では行きません。
②熱によってひきつけるのは、子どもの内の1割程度で、その3分の2は1回で終わり
ます。繰り返しひきつける場合には、ひきつけ止めの薬を使います。
③よく高熱で脳がやられると言いますが、それは間違いで、子どもは脳炎、脳症、髄膜炎などの病気が起きやすく、起きていたのを見落とされていたために、「熱が下がったら脳がやられていた」などということになるのです。小児科専門医では見落とすことはまれですから、子どもは必ず小児科専門医にかかりましょう。
大人では、そういうことはありませんから、熱が出てもあわてず、一晩くらいは様子をみても構いません。熱よりも全身状態で、それが悪ければ医者にかかりましょう。
熱があっても、元気が残っていれば急ぐ必要はありません。
5.インターロイキン1など
(内因性発熱物質とかサイトカインという)の作用
① 神経内分泌系の反応
インターロイキン1などの作用で、副腎皮質ホルモン、β
エンドルフィンのほか4種類のホルモンが分泌されます。β
-エンドルフィンはハイな気分になるホルモンで気持ちがよくなります。他のホルモンは発熱を抑制する働きをしています。
② 細菌感染に対する多様な液性反応が起きます。
血中の鉄濃度の減少(細菌の発育抑制)、CRPやフィブリノーゲンなどの蛋白が合成されます。
③ T細胞(細菌やウィルスと戦う)から、B細胞(抗体産生)、NK(ナチュラルキ
ラー)細胞(異常細胞を破壊する)などの免疫反応がひき起こされ、免疫グロブリン産生も促進されます。
④行動上の反応
睡眠、食欲不振、活動低下、抑うつ状態などが起きます。
④ プロスタグランジンの合成
骨格筋でのプロスタグランジンの産生が増加し、蛋白分解が促進されます。これが筋肉痛の原因の一つと見られます。プロスタグランジンは白血球を増加させたり、設定温度を上昇させる時に関与しています。
6.解熱剤は病気の回復を遅らせる。
解熱剤で熱を下げることは、まだ病気に勝っていないのに、病気と戦う人間のからだの働き(上記3.と5.)を抑えてしまい、体内でのウィルスや細菌などがどんどん増殖し、活動を活発にしますから、身体にとってマイナスになり、かえって病気が長引きます。下熱剤を使うと一時的に熱が下がりますが、薬がきれるとまた熱を上げて一生懸命病気と戦い、熱を下げている時間以上の時間、病気が長引くことになります。
7.熱が出たら、どうするか。
熱は、病気の徴候の一つで、何らかの病気にかかったことを表現しているのですから、放置してはいけません。しかし、あわてることもありません。
①まず、熱の原因を確かめることです。熱の原因の9割は、上気道炎またはかぜ症候群、(いわゆる「かぜ」)から来ています。
それを確かめるには、まず咳、鼻水が出ているか、のどの痛みがあるかを聞くか注意して見ましょう。それからできれば、口を開けて「アーン」と言わせてのど(咽頭)と扁桃を見ましょう。そこで、咳や鼻水があったり、のどの痛みがあるかまたは、のどや扁桃が赤くなっていれば、広い意味での「かぜ」にかかったから熱が出たのだと考えて良く、一日くらいは様子を見てもよいです。
②熱が出たが、「かぜ」の症状がない時には、他の症状が出ているか探しましょう。
口の中が痛くないか、どこかに湿疹や水疱が出ていないか、耳の中や、耳の下を痛くないか、おしっこが近いかおしっこの時に痛くないか、吐いたり下痢をしたりしていないか、傷や化膿している所はないか、リンパ節がはれていないか、いろいろ見て下さい。
症状があれば、その病気のための熱ですから心配はありませんが、薬を飲むと早く治る病気と、特効薬がなくじっと治るのを待つしかない病気とありますから、医者にかかって診断を受けて下さい。元気があれば、あわてることはなく、夜熱が出ても、翌朝医者にかかればよいでしょう。
③熱が出たが、どうしても他に症状が見つからない場合、6ヶ月過ぎの乳児では突発性発疹症があります。元気がそれ程落ちないのが特徴です。夜になってしまっていたら、元気があれば、翌朝かかればよいです。例外は新生児と乳児早期(6か月未満)の熱ですが、診てもらう医者も小児科専門医でなければいけません。
④ 乳児早期(生後6か月未満)でなければ、子どもが熱を出しても元気があれば、様
子を見てよいですが、熱が下がらなければ3日目には必ず医者にかかりましょう。熱が5日も続いたら、検査や、場合によったら入院が必要になることもあります。これは大人でも同じです。三日異常続く発熱は、その原因を確かめなくてはいけません。
生後3~4ヶ月の38℃を超えるときは、必ず小児科専門医にかかり、検査が必要なことがあります。白血球数とCRPで、その検査で軽い病気か、重い病気が判ります。
高齢者でも同じです。やはり、白血球数とCRPで、重症度を判断します。
白血球の方が、先に反応します。というより、四六時中変動しています。傷があったり、軽いかぜでも反応します。微生物と闘う最前線で働いているのです。
⑤人間には、免疫以前に、体の外界との接点で、多くの微生物が共棲していて、外来の微生物と闘ってくれています。だから無菌にしなければいけないと思わないで下さい。
ここで、まず外来の細菌やウイルスを排除します。そこを突破されると次の防御機構が働きます。だから、最近は傷をしても消毒ではなく、まず洗浄です。洗い流すことが第一です。
それをしても、最近やウイルスが体内に入ると、まず自然免疫が働き、それを突破されると適応免疫が働きます。
この段階で白血球が増え、ついでCRPが上昇します。血沈も遅れて上昇します。血沈で判ることもいろいろありますが、今はしなくなりました。
これらの働きで、病気に勝つと自然に熱は下がります。病気の程度によって、熱を出さずに戦いに勝てば、熱はでません。
また、体内に常在している細菌でも、時々免疫力が落ちたり、常在している場所からしていない場所に入ると、病気を起こすことがあります。
⑥熱は、解熱剤で下げるのではなく、なぜ熱が出たのか、熱の出た原因となる病気の診断をすることが大切です。解熱剤で一時的に熱を下げると、病気の診断を誤ることがあ
りますから、解熱剤を使わないで下さい。その上、解熱剤には重大な副作用もあり、できるだけ使わないで下さい。