大絶滅の時代
新型コロナが明らかにした世界の現実
無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
新型コロナが明らかにした世界の現実(自由と平等のサピエンス史)
今、斉藤幸平が明らかにした世界の現実、つまりもう社会運動をして、今の現実社会を変えなければ、地球の第6番目の大絶滅の時代に突入するのではないかという危機意識が、各方面から提起されている。
これらは1970年代から始まっていた。しかし、今それが明白な妥当性を持って語られるようになり、しかも緊急性をもつようになった。人類の大破滅を招かないために。
★ 無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
(「自由と平等のホモ・サピエンス史」三宅芳夫:世界2021.2.)
約6億年前からの生物の歴史では、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる生物の大絶滅の短時間(地質学的時間として)に突発した時があった。直前の第5番目の絶滅は、恐竜時代であった。およそ7000万年前に大隕石がもたらした気候変動による恐竜の絶滅である。
今資本主義社会がもたらした成長を止められない社会が、地球を破滅に向かわせている。だからクルッツェンはこの時代を、ホモ・サピエンス(人)が起こした地質学的時代「人新世」と呼んだのである。
今日の地球温暖化、アマゾンやボルネオ、そしてアフリカなどの熱帯雨林の劇的減少、生物多様性の縮減、未知の感染症のパンデミックなどの、相互に絡み合った危機は、すべて無限の成長を「可能性の条件」とする資本主義と有限な地球生態系との論理的な矛盾であると捉えることができる。ホモ・サピエンスによって作られた資本主義によって、6番目の生物の「大絶滅」が動き出している。
人類は20万年の間、「バンド」と呼ばれる小集団で移動しながら、狩猟・採集生活を営んでいたと考えられている。この当時の人類の労働時間は、三、四時間を超えることはなく、栄養バランスもよく、虫歯も感染症もなかった。感染症は家畜との「共生」によってもたらされたものである。バンド社会では平等であった。人類史の中でもっとも自由な社会、支配のない社会であった。自由は自然権である。バンド社会は話し合いの社会である。ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由がないから。
この人類の世界史を三宅芳夫は解き明かした。
〇1万2000年ほど前から一部が植物栽培を伴った定住を始めた。小麦次いでオリーブが栽培され、ヤギ、羊、豚、続いて牛、馬が家畜化された。
〇紀元前3200年頃、メソポタミアで支配階層が出現し、徴税が始まり、国家が出現する。
定住コミュニティから国家への移行の7000年の期間に、階級分化や、国家による支配、定住による感染症の発生(危険)などへの、狩猟・採集民の「抵抗」があったとスコットは説く。
この時期には(1)狩猟・採集/バンド社会、(2)経済的格差のない数百人規模の部族社会、(3)農耕を基礎に経済格差のできた人口数千人規模の首長制社会の三つが併存していた。
(この社会は近現代まで世界の一部には続いていた)。
〇その後、定住・農耕の拡大により、紀元一世紀ころには、ローマ、パルティア、漢の三つの帝国が並立した。農耕による土壌の劣化、建築材料や熱エネルギーは木材によって得られ、古代文明と人口を支えるために、森林の消滅と生態系の消失があった。少数の支配層と多数の民衆に階層分化し、長時間労働、栄養状態の低下、周期的な感染症の流行による大量死が19世紀末まで、20世紀の福祉国家の出現まで続く。
〇 首長制社会から始まった階級分化は、国家となって確固となり、政治的不平等と経済的不平等は強固な関連があった。
〇 バンド社会は、少ない労働時間、比較的良好な健康状態、そして平等主義であった。
争いは構成メンバーの話し合いで解決された。暴力は成立しない。それは「眠り」の間に報復に対抗できないし、ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由もない。
〇その後、たびたび支配層の消滅により、不平等は一時的に圧縮されるが、再び再建されて現代にいたる。
〇 ペストのパンデミックの後は、労働人口の減少のために、一時的には民衆への労働分配率が上昇し、良い時代であったという。資本主義の登場で「近代社会システム」が形成され、16世紀半ばには「古き良き時代」は終わり、不平等が拡大し続ける。
〇 その後、科学革命、産業革命、動力革命(石炭)、第二次動力革命(電気と石油)と進んだが、16世紀から20世紀までの近代世界の受益者は一部の上層部に限られていた。
〇 世界システムの中心国家群は、20世紀初頭1914年から1945年までの30年戦争に突入した。その初めの時期にスペイン風邪のパンデミックが起きた。この結果、人類史でも稀な、富と所得の大圧縮が起こった。それが最も著しかったのが日本だという。アメリカ並みの不平等な社会から、デンマーク並みの平等な社会に移行した。
欧米でも階級妥協と福祉国家の形成、社会主義国家の成立で、中間層、労働者層をつなぎとめるために、格差の縮小の傾向が一定期間維持された。
〇 その結果、人口の一定部分が、バンド社会以来一万年ぶりに、自由と平等を享受できた時代となった。黄金の30年とも言われた。
〇 しかし、これは1970年代の新自由主義のグローバル化で、かつ資本主義国となった旧ソ連圏と中国をも巻き込んで、世界中で格差は再び急激に拡大し始める。
それはナオミ・クラインに「新自由主義は、第二次世界大戦後(30年戦争後)に労働者が獲得したものを解体するための階級闘争だ」と言わしめた。こうした急激な不平等の拡大が、(資本の)自由主義と民主主義の妥協として成立した大戦後の政治システムを不安定化させ、格差の拡大による大量の貧困層の出現が、コロナウイルスのパンデミックの温床となった。
◎資本の複利的再投資の無限の反復が、富となる。年1.5%前後の経済成長が無いと資本主義は崩壊すると考えられている。
成長のない「定常化社会」へ移行しない限り、地球生態系の危機に対処できない。定常化社会への移行は、資本主義を廃止して初めて可能になる。持続可能な可能な発展などというSDGs(持続可能な開発目標)は本質を隠ぺいする煙幕に過ぎず、斉藤幸平は「現代版の大衆のアヘンだ」という。
もうローザ・ルクセンブルクの「社会主義か野蛮か」というテーマしか語られなくなっている。だから「脱成長のコミュニズム」を提唱する斉藤幸平に賛同したい。
新型コロナが明らかにした世界の現実
無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
新型コロナが明らかにした世界の現実(自由と平等のサピエンス史)
今、斉藤幸平が明らかにした世界の現実、つまりもう社会運動をして、今の現実社会を変えなければ、地球の第6番目の大絶滅の時代に突入するのではないかという危機意識が、各方面から提起されている。
これらは1970年代から始まっていた。しかし、今それが明白な妥当性を持って語られるようになり、しかも緊急性をもつようになった。人類の大破滅を招かないために。
★ 無限を前提とする資本主義と有限な地球生態系
(「自由と平等のホモ・サピエンス史」三宅芳夫:世界2021.2.)
約6億年前からの生物の歴史では、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる生物の大絶滅の短時間(地質学的時間として)に突発した時があった。直前の第5番目の絶滅は、恐竜時代であった。およそ7000万年前に大隕石がもたらした気候変動による恐竜の絶滅である。
今資本主義社会がもたらした成長を止められない社会が、地球を破滅に向かわせている。だからクルッツェンはこの時代を、ホモ・サピエンス(人)が起こした地質学的時代「人新世」と呼んだのである。
今日の地球温暖化、アマゾンやボルネオ、そしてアフリカなどの熱帯雨林の劇的減少、生物多様性の縮減、未知の感染症のパンデミックなどの、相互に絡み合った危機は、すべて無限の成長を「可能性の条件」とする資本主義と有限な地球生態系との論理的な矛盾であると捉えることができる。ホモ・サピエンスによって作られた資本主義によって、6番目の生物の「大絶滅」が動き出している。
人類は20万年の間、「バンド」と呼ばれる小集団で移動しながら、狩猟・採集生活を営んでいたと考えられている。この当時の人類の労働時間は、三、四時間を超えることはなく、栄養バランスもよく、虫歯も感染症もなかった。感染症は家畜との「共生」によってもたらされたものである。バンド社会では平等であった。人類史の中でもっとも自由な社会、支配のない社会であった。自由は自然権である。バンド社会は話し合いの社会である。ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由がないから。
この人類の世界史を三宅芳夫は解き明かした。
〇1万2000年ほど前から一部が植物栽培を伴った定住を始めた。小麦次いでオリーブが栽培され、ヤギ、羊、豚、続いて牛、馬が家畜化された。
〇紀元前3200年頃、メソポタミアで支配階層が出現し、徴税が始まり、国家が出現する。
定住コミュニティから国家への移行の7000年の期間に、階級分化や、国家による支配、定住による感染症の発生(危険)などへの、狩猟・採集民の「抵抗」があったとスコットは説く。
この時期には(1)狩猟・採集/バンド社会、(2)経済的格差のない数百人規模の部族社会、(3)農耕を基礎に経済格差のできた人口数千人規模の首長制社会の三つが併存していた。
(この社会は近現代まで世界の一部には続いていた)。
〇その後、定住・農耕の拡大により、紀元一世紀ころには、ローマ、パルティア、漢の三つの帝国が並立した。農耕による土壌の劣化、建築材料や熱エネルギーは木材によって得られ、古代文明と人口を支えるために、森林の消滅と生態系の消失があった。少数の支配層と多数の民衆に階層分化し、長時間労働、栄養状態の低下、周期的な感染症の流行による大量死が19世紀末まで、20世紀の福祉国家の出現まで続く。
〇 首長制社会から始まった階級分化は、国家となって確固となり、政治的不平等と経済的不平等は強固な関連があった。
〇 バンド社会は、少ない労働時間、比較的良好な健康状態、そして平等主義であった。
争いは構成メンバーの話し合いで解決された。暴力は成立しない。それは「眠り」の間に報復に対抗できないし、ほとんど所有するものがないから、暴力を行使する理由もない。
〇その後、たびたび支配層の消滅により、不平等は一時的に圧縮されるが、再び再建されて現代にいたる。
〇 ペストのパンデミックの後は、労働人口の減少のために、一時的には民衆への労働分配率が上昇し、良い時代であったという。資本主義の登場で「近代社会システム」が形成され、16世紀半ばには「古き良き時代」は終わり、不平等が拡大し続ける。
〇 その後、科学革命、産業革命、動力革命(石炭)、第二次動力革命(電気と石油)と進んだが、16世紀から20世紀までの近代世界の受益者は一部の上層部に限られていた。
〇 世界システムの中心国家群は、20世紀初頭1914年から1945年までの30年戦争に突入した。その初めの時期にスペイン風邪のパンデミックが起きた。この結果、人類史でも稀な、富と所得の大圧縮が起こった。それが最も著しかったのが日本だという。アメリカ並みの不平等な社会から、デンマーク並みの平等な社会に移行した。
欧米でも階級妥協と福祉国家の形成、社会主義国家の成立で、中間層、労働者層をつなぎとめるために、格差の縮小の傾向が一定期間維持された。
〇 その結果、人口の一定部分が、バンド社会以来一万年ぶりに、自由と平等を享受できた時代となった。黄金の30年とも言われた。
〇 しかし、これは1970年代の新自由主義のグローバル化で、かつ資本主義国となった旧ソ連圏と中国をも巻き込んで、世界中で格差は再び急激に拡大し始める。
それはナオミ・クラインに「新自由主義は、第二次世界大戦後(30年戦争後)に労働者が獲得したものを解体するための階級闘争だ」と言わしめた。こうした急激な不平等の拡大が、(資本の)自由主義と民主主義の妥協として成立した大戦後の政治システムを不安定化させ、格差の拡大による大量の貧困層の出現が、コロナウイルスのパンデミックの温床となった。
◎資本の複利的再投資の無限の反復が、富となる。年1.5%前後の経済成長が無いと資本主義は崩壊すると考えられている。
成長のない「定常化社会」へ移行しない限り、地球生態系の危機に対処できない。定常化社会への移行は、資本主義を廃止して初めて可能になる。持続可能な可能な発展などというSDGs(持続可能な開発目標)は本質を隠ぺいする煙幕に過ぎず、斉藤幸平は「現代版の大衆のアヘンだ」という。
もうローザ・ルクセンブルクの「社会主義か野蛮か」というテーマしか語られなくなっている。だから「脱成長のコミュニズム」を提唱する斉藤幸平に賛同したい。