昨日、原子力情報室の記者会見を見ましたが、出ていた医師はICRPの基準を援用していましたが、私が過去に小中学校のレントゲン撮影廃止運動をした時の理論的根拠は、造反してアメリカの原子力委員会を追われたゴフマン博士の数値を使いました。もっと低い値で健康被害が生ずるということです。最近の知見を勉強していないのですが、その医師は「1ミリシーベルトあびると、平均してすべての細胞の核に、平均して1本の放射線の飛跡が通る。1本通るとDNAの複雑な傷を作る。傷を治す時に間違えて作るとがんの原因になる。低線量とは100~250ミリシーベルト以下を言い、急性障害は出ない。後になって癌が出る。これを晩発障害と言う。発がんしないしきい値(限界値)は見つからない。ICRPの見解では、1万人当たりの発がんリスクは、1ミリシーベルトで一人という。」と発言。
ヒトには体に60兆個の細胞を持ち、生殖細胞のDNAの突然変異は遺伝し、体細胞の突然変異は遺伝しない。DNAは、体細胞には60億塩基対、生殖細胞は30億対あり、細胞分裂のたびに、10億塩基対に1回くらいの間違い、つまり体細胞では6箇所くらいの間違い(突然変異)が生じる。それを修復する仕組みが人間は持っているので、症状が出ない。修復されない時にがんが発生する。自然では、60兆×6箇所の間違いが生じていて、修復されている。これは健康な人の場合である。
ICRPは、1ミリシーベルトあびると、発がん率は1万人に1人と言うが、ゴフマン博士はその37倍の数値を出している。ただし、一生涯の数値である。
ただし、心身医学から見ると、いろいろな健康障害を持った人やもって生まれたがん性格の人がなりやすいという。健康とはWHOの定義では、肉体的、精神的、社会的に健全であることを言うとされている。だから、被曝を受けた人は、いろいろな意味で健康ではなく、発がん性が高くなる。
緊急の対策としてのヨード服用があるが、ヨウ素は甲状腺ホルモンを作る際の原料であるが、体内に成人で15~25mg存在していると言う。ヨウ素の必要量は、成人で一日100~200マイクログラムという。欧米人比べて、日本人の海藻摂取量は多く、WHOは10ミリシーベルト以上被曝する時には、0~19歳、妊婦、授乳婦はヨード服用を勧め、アメリカ、ドイツ、オーストラリアでは50ミリシーベルト以上で勧めている。少なくとも日本人は、50ミリシーベルトかそれ以上の被曝の危険がなければ、ヨードの服用の必要はないであろう。
放射性ヨウ素が問題なのは、甲状腺内に蓄積して、体内被曝を起こすからであるが、放出される放射性ヨードの主要なのは131ヨウ素であり、この半減期は8日であるから、1ケ月すれば消失する。空気中でも同じである。しかし、他の放射性元素の半減期は2万年以上であるから、一旦汚染されてしまったら、半永久的に汚染は続く。それですぐの除染が必要なのである。放射性ヨードは空気中から汚染されるので問題になる。しかし、他の放射性元素も、同じで、もっと深刻なのは、チェルノブイリの経験では、土壌は表面から10cmまで汚染され、植物に取り込まれ、それを食べる動物たちも汚染される。
まだ、原発敷地内の高濃度汚染で止まっているようであるから、決死隊を作って、原子炉内への水の注入を続けていくしかない。炉心の核爆発は止まっても、温度は上昇し続けるから、原子炉を冷やさないと、原子炉の爆発は避けられない。上空も汚染されるから、ヘリコプターでは、高濃度汚染の危険がある。それで放水車による水の注入になる。原発の職員はまず現場から避難して、中にはいないと思う。だから原子炉への海水の注入はできない。外から入れるしかない。しかし、短時間での被曝で済ませるには多くの人員が必要になるであろう。旧ソ連では、国の命令で行われたが、日本でそれができるであろうか。1時間に100ミリシーベルトあびるとすると、30分が限度となろう。それを冷却するまで続けるのはどのくらいの時間と人員を必要とするか判らない。私は、ベラルーシで高濃度汚染が続いている地区に入り、汚染された機材や土壌が捨てられているのを見てきたし、広河隆一さんの写真で捨てられたヘリコプターやトラックの山を見た。そして、多くの決死隊員が死んでいった。
刻々と時間がたっている。今どの段階まで進んでいるのかは、誰も判らないのではないか。
慢性の、晩発性障害については、またの機会にしたい。急性障害では、6~7シーベルトあびたら、ほぼ死亡する。250ミリシーベルト以上あびると、急性障害の生じる確率が高くなる。