地図のいろいろ

半世紀も地図作りに携わっていましたので、この辺で振り返って地図を見直してみようかな~・・・。

イラワジ川河口

2008-05-10 10:15:04 | Weblog
“サイクロン「ナルギス」は5/2日夜から3日にかけて、ミャンマー中・南部のデルタ地帯を襲った。”との報道がありました。

中心の気圧は962hPa、中心付近の最大風速45m/s、
「非常に強い」台風ですが、1959年の伊勢湾台風は920 hPa、最大風速は中心からはなれた地点で45m/s。また2005年のアメリカ南部のハリケーン「カトリーナ」は902 hPa、中心付近の風速60m/s。決して他に例を見ない台風ではないのですが・・・。

然るに、死者6万人とも、それ以上ともいわれる被害が生じたのは、何故でしょうか。

その原因がいろいろ言われていますので羅列してみますと・・・

①、 「水多きところに雨降る」とはミャンマーの諺だそうです。
同じ国でもイラワジ川下流の、もともと水の豊かな地域にはたくさん雨が降るし、上流の乾燥地は雨に恵まれないという。世の中は公平でないというたとえの諺だそうですが・・・
上の地図でもわかるように、イラワジ川の河口付近は0m地帯の拡がる大規模なデルタ地帯です。とくに、蛇行した川筋に注目してください。河川改修の殆どおこなわれていない自然のままの状況が見られます。
そこに、ことわざ通りの雨が降ったのです。被害が起こるはずです。今まで大規模な災害がなかったのが不思議なくらいです。

②、 600万人が住むといわれるイラワジ川のデルタ地帯に3メートルの高潮が襲ってきたのです。
ご存知のように、波は深いところでは垂直な上下運動のみおこなっています。しかし、岸辺の浅いところに達すると、回転運動が海底に遮られて前に傾斜した運動になります。浅いほど酷くなります。3mの高潮は3mではなく、河口奥深くなるほど大きな規模で襲ってくるわけです。
ですから、高潮の時は、船は沖に出たほうは安全だそうです。
サイクロンで生じた高潮が内陸深くにまで達し、被害を増大させた分けです。

③、  「たどったコースが最悪だった」 と言われています。 
ナルギスの中心部は海岸に沿って西から東に移動しました。

④、 さらに、交通や通信も寸断され、被害の全容はまだつかめていないこと・・・等などです。