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甲状腺がん8→15例(5/18) 発症率4.1~8.7人/10万人(2.5年で) 「増加」はほぼ確実に

2015年06月03日 | 東日本大震災・原発事故
過去の記事(一番下に列記)も読み返してみましたが、一貫して「わからない」という判断だったものが、今回初めて「2巡目での増加はほぼ確実」という判断に転じました。

データはチェックしてFBに載せてましたが、ブログでの解析が遅くなりました。解析といってもあくまで表面的なものですが、誰もやってくれないし、誰の意見もあてにできません。資料をパッと見てもわからないし、継続して比較することが肝要。

第19回福島県「県民健康調査」検討委員会資料(平成27年5月18日開催)
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-19-siryo.html


抜き出してまとめた表。(クリックして別ウインドウで拡大)

一番上の行(その上が切れている)は先行調査の前回分(2月)。
赤の有病率36.5が、今回(5月)37.1人/10万人になった。
 2月発表 確定86+疑い23=109人
 5月発表 確定98+疑い13=111人
この差には特段の意味はない。

これを、(これまでと同じ前提で)スクリーニング効果10年分とすると、発症率は3.7人/10万人。
(スクリーニング効果10年分が正しいかどうかはここでは論じない。あくまで仮定の数字としてこれを基に比較するための数字)

福島の甲状腺がん 2巡目で4人 発症率1.9~4.9人/10万人(2.5年分) ベラルーシ95年に相当 2014年12月27日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/478ebf3d0fad4878507b9afc0fe0064b
これも比較のために毎回用いているベラルーシの95年は、0-14歳が4.0、15-18歳が3.8、19-34歳が1.4。

先行調査の3.7とはベラルーシの95年に匹敵する数字。
2014年の12月ですでに2巡目もそのラインを超えてきていた。

本格調査(2014~2015)
 2月発表 確定1+疑い7=8人
 5月発表 確定5+疑い10=15人
 有病率 7.5→10.1/10万人

検査間隔を2.5年とすると、
発症率は、
(8×10万)/(106068×2.5)=3.0人(10万人あたり)
(15×10万)/(148027×2.5)=4.1人(10万人あたり)

一次検査の判定率や二次受診率を考慮しない段階で、先行調査を上回っている。

この二つを考慮に入れてみると、
 一次判定率 121997/148027
 二次受診率 593/1043
それぞれひっくり返してかける(=割る)

15/148027×(148027/121997)×(1043/593)×(10万/2.5)=8.7人(10万人あたり)

2014年12月の時点で発症率1.9~4.9人/10万人と言っていたものが、今回(2015年5月)は発症率4.1~8.7人/10万人に倍増。

これが4→8→15人の意味。
(単純に数が増えたと情緒的に怒っていてはいけない)

この「発症率4~8人」が「先行調査と同じ」だと仮定すると、先行調査(有病率37人)のスクリーニング効果は5年程度ということになるが、
5年と仮定すると、先行調査の発症率は、
 37/5=7.4人
となって、ベラルーシ95年の2倍近い数字になり、先行調査の時点で多発だということになる。

スクリーニング効果をあれほど喧伝したのだから、最低でも10年分はあると仮定して考えるのが普通。
(この仮定の数字を誰も言ってないので議論が噛み合わない)

だとしたら、今回の「発症率4.1~8.7人/10万人」は、先行調査の「発症率3.7人/10万人」との比較では「増加」は間違いないだろう。

ただし、この「増加傾向」がこの後の3巡目以降も続くかどうかはわからないし、今回のデータも年齢分布や、被曝線量、地域などでの比較が必要だろう。

そこまで調べる能力も時間もないが、大雑把な「先行調査と2巡目の比較」という数字だけで、ここまでは推論することができる。

最終的には、3巡目以降、おそらく10年は要するだろう。
その間に何かできることがあるなら別だが、それが考えられない現在、調査結果を毎回チェックしていくしかない。

肝腎なのは、検診の受診率が低下してしまっては何もわからなくなること。政府や県に不信感があるならなおのこと、検診を受けてデータを明らかにすべき。
わかってもらえるだろうか。

14) 福島県の甲状腺がん「2巡目で1例確定が大事件なのか」を考えてみる 2015年02月15日
13) 福島の甲状腺がん 2巡目で4人 発症率1.9~4.9人/10万人(2.5年分) ベラルーシ95年に相当 2014年12月27日
12) 福島県の甲状腺がん検診 確定57+疑い46=103人に 3年目の増加で懸念は減少 実施基準に疑問も 2014年08月25日
11) 福島の甲状腺がん「確定49+疑い40=89例」 増えたこと(2年目)も増えないこと(3年目)も懸念材料 2014年05月20日
10) 福島県の甲状腺がん検診「スクリーニング効果は試算してから論じるべき」「なし~30年で比較」 2014年04月08日
9) 福島の甲状腺がん「確定32+疑い42=74名」 3年目は低くなりそうだが、懸念材料にも… 2014年03月06日

過去の記事(2013.3-2013.11)

1) 福島の甲状腺がん検査の患者数は? 感度・特異度により3人?12人? (応用できる一般式付き) 2013年03月18日
2) 福島県外3市と福島県内の甲状腺検査結果の比較 考えられる推論2つはいずれも不可解 2013年04月03日
3) 福島の甲状腺がん検査の患者数の推計式を感度・特異度でグラフ化してみました 2013年04月04日
4) 「福島の小児甲状腺がん:確定12人、疑い15人」のニュースについて(現時点での判断) 2013年06月05日
5) 福島県の小児甲状腺がん:7~15人(確定~疑い)/10万人:2012年は2011年より減少傾向か:判断は数年後 2013年06月06日
6) 福島県の甲状腺がん検診結果をどう読むか 発生率1~2人/10万人はベラルーシと同じ(某紙掲載原稿) 2013年06月11日
7) 福島の甲状腺がん18+25=43例 発生率は2-3/10万人に増加 二次実施者中の割合は変わらず 2013年08月21日
8) 福島の甲状腺がん「確定26+疑い32=58名」発症率は約3人/10万人で8月と同じ。判断は出来ず(11/12) 2013年11月13日

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