篆刻家・酒井子遠氏の作品は伝統的な作風から一線を画すものです。
とてもモダンで従来の篆刻作品とは別世界です。
例えて申せば画壇での岡本太郎風の如くと小生は感じます。
とても真似は出来ない斬新さがあります。
現代の書壇を代表する現代書道20人展(書家18人、篆刻家2人)でも酒井子遠氏の
落款印を使用されている方がおられるようです。
落款印は書作とのバランスが大切ですので勘案されてのご使用と思います。
随分と前ですが芸術新聞社発行の「篆刻の楽しみ」で酒井子遠氏の作品を拝見したときは
衝撃的でした。
「字法」「章法」とも従来とは全く異なり、戦国時代の「花押」を思い出しました。
掲載をご覧いただけばご理解いただけると思いますが
作品左の「幽谷」(奥深い静かな山)右側の「寸草心」{小さな草の心)
メモ風で恐縮ですが基本的な篆書体を掲載いたしました。
篆刻は線を伸ばしたり縮めたりできますので、この作法を利用されています。
「線質」は多少の肥痩を付けて平凡さを避けて居られます。
そして合字のごとくまるで1文字のように表現されています。
酒井子遠氏(1936-2003)
篆刻家の家系で3代目と記されています。
伝統的な古典主義を脱却し、時代の変化に合わせて表現方法を模索されチャレンジされて
きたものと思われます。
作風はまるで専売特許、真似をすることはとても躊躇してしまいます。
少なくても小生はマネをいたしません。失礼ですから。
伝統を守ること、そしてそこから創造していくこと、芸術の世界ではどの分野でも悩ましい
課題と思われます。
篆刻はコムツカシイ、とよく言われます。
時代も変化してきています。
いろいろあっていいんですね。
写真は芸術新聞社「墨」165号からの引用です。