異教の地「日本」 ~二つの愛する”J”のために!

言論宗教の自由が保障され、ひとりひとりの人権が尊ばれ、共に生きることを喜ぶ、愛すべき日本の地であることを願う。

「共謀罪」が一般人にデメリットしかないワケ~怪しいと疑われた瞬間一般市民も対象に:髙山佳奈子教授に聞く 〔東京経済 中村陽子〕

2017-06-25 19:24:58 | 共謀罪 治安維持法

http://toyokeizai.net/articles/-/176668

「共謀罪」が一般人にデメリットしかないワケ

怪しいと疑われた瞬間一般市民も対象になる

「共謀罪」は、一般市民の側からすればデメリットしかない(写真:Toru Hanai/ロイター)
組織的犯罪処罰法改正案に新たに付け加えられる共謀罪、もしくはテロ等準備罪。国会で議論が十分に尽くされたとはいいがたく、その内容は茫漠としている。ただ漂ってくるのは、一般市民が監視される社会の不穏な気配だ。

『共謀罪の何が問題か』を書いた京都大学法科大学院の髙山佳奈子教授に問題点を聞いた。

テロに照準を合わせたものが1つもない

──表現がいろいろありますが、共謀罪=テロ等準備罪という認識でOKですか?

はい。

──では、そもそも共謀罪とは。

複数者で犯罪の計画について合意することです。過去3回廃案になり、今回は対象犯罪を半分以下に減らしたうえで、テロ対策であること、また国連の国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結に不可欠であることを訴えてきました。

ところがそれとは裏腹に、条文の中にテロに照準を合わせたものが1つもない。つまりテロ対策を含んでいない。しかも条約締結のための条件はすでに国内立法で完備され満たされています。日本では70を超える類型の予備・陰謀罪、準備罪、扇動罪が規定されていて、諸外国と比べても広い処罰範囲を持っている。単なる観念的な危険だけでは処罰できず、被害の発生やその科学的危険性を根拠とし、既遂・未遂・予備と処罰する体系が確立されているわけです。

そもそもTOC条約自体マフィア対策であり、ターゲットはマフィアが公権力に対し不当な影響力を行使しようとする行為や、組織的な経済犯罪。同条約締結のために共謀罪もしくはテロ等準備罪を立法する根拠はありません。

──共謀罪の対象犯罪の中身は?

関係ないものが多い。その選別にはかなり疑問がある。重く処罰される企業犯罪、公権力の私物化や警察などによる職権濫用・暴行陵虐罪、民間の汚職を含む経済犯罪などが除外され、政治家、警察、大企業に有利な感があります。

高山 佳奈子(たかやま かなこ)/1968年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科修士課程修了。同助手、成城大学法学部助教授、京都大学大学院法学研究科助教授を経て現職。専門は刑法の基礎理論、経済刑法、国際刑法。日本刑法学会理事、ほか幅広い役職を務める(撮影:今井康一)

──今回の共謀罪法案は、準備罪や予備罪より前の段階での処罰が可能になるわけですね。「内心の処罰」という言葉も出ました。

これまで日本はそこまでしていなかった。憲法の解釈として処罰規定を適用するためには危険が実質的に認められる場合である必要がある、と最高裁が判断している。想像上の危険、観念的な危険ではなく、実質的な危険、現実的な危険がなければならない。だからおよそ「計画を立てた」だけではダメで、それが実際に実行される危険がある場合だけ適用できるという考え方だったんですね。

だけど今般の共謀罪は違います。犯罪の計画はまだ皆の頭の中で内容を共有してるだけだし、「実行準備行為」と呼ばれる要件も単に資金や物品を手配するとか、ある場所を下見に行くだけで該当する。

──実行準備行為というのは、初めて導入された概念ですね。

ええ、国会でもビールや弁当を持ってれば「花見」だけど、地図と双眼鏡を持ってたら「現場の下見」か、って議論があったんですが(笑)。普通、どこへ行こうと自由な行為ですけど、それがまさに含まれるのが今回の法案なんです。

怪しい疑われたら、もはや一般人ではない

──共謀罪の対象は「組織的犯罪集団」としています。一般市民は関係ないんですよね?

いやいや、無限定です。すべての集団がある時点で組織的犯罪集団と疑われたら、その瞬間から適用されます。警察の恣意的な判断で摘発できる。

たとえば、合唱サークルが楽譜の違法コピーを計画していると疑われるケース。著作権法も共謀罪の対象ですから。ライバルチームが「あそこは過去に違法コピーをした」と通報すると、次もきっとやるのではと疑われる。実際にしていなくても虚偽の通報をすれば、それで十分捜査する要件になる。つまり一般人もやっぱり対象に入るといわざるをえない。疑われたらもはや一般人じゃないという論法ですね。

──逆に今回の立法で評価できる点は……。

いっさいないですね。現行法で条約には十分対応できるし。一般市民の側からすれば、捜査権限が爆発的に拡大しますから、デメリットしかない。共謀の疑いを理由に早期からの捜査が可能になる。

今、経済犯罪の手口を研究する会を催しているんですが、閉会後も居酒屋で議論が続く。隣席で怪しんだ人が、あの集団は毎月経済犯罪の手口を話し合ってる、と会話を録音したとするじゃないですか。まるで犯罪計画を練っているかのような証拠が録音され、しかもおカネを集めでもしたら、実行準備行為だとして、組織的犯罪集団としての証拠がそろってしまう。

国内犯罪件数は2002年をピークに半数以下に減りました。一方で警察職員は増えている。仕事の減った警察が権限を保持するため立法を後押ししてると私は疑っています。嫌疑が十分でなくても、実績作りのため対象を選ばず摘発することだって想定できる。

──プライバシー権担当の国連特別報告者からは公開書簡の形で今法案に対し懸念が示されました。

今般の法案は非常に漠たるもので、国連条約のために不必要な広い範囲で新しく処罰の範囲を広げることになっている。プライバシー権の侵害に対する歯止めとなるような制度的保障が入っていないと国際人権規約に違反する疑いがある、と。そしてNGO(非政府組織)など市民側からの意見聴取は行われているのか、などの質問です。国連側は、もし問題があるならどう修正すれば条約との整合性が取れるか提案する、と申し出までしたんですね。

それに対し政府は無視するどころか抗議した。本来ならいったん法案を撤回するか大幅会期延長しか合理的にはない。けど、国連に抗議したうえで強行採決ということになれば、人権理事会などさらに上の機関で問題になる。そうすると北朝鮮拉致問題などほかの問題の解決にも悪影響が及ぶ。

権利や自由を制限するだけの立法

『共謀罪の何が問題か』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

──安保法制に共謀罪など、ここ数年立法強行が相次いでいます。

法理論的には憲法に違反する法律は無効ですし、国際人権規約に反する法律も無効なんです。それが事実上強行されてる状態です。

テロ対策なら、国連条約を含む主要な国際条約13、加えて9.11以降に各国に求められた国内法整備を日本はもう全部済ませているので、非常に広範囲で処罰できる状態がすでにある。共謀罪は単に人権侵害を助長するだけ。国連が義務ではないと明言し諸外国も行っていない広範囲な、権利や自由を制限するだけの立法だと思います。

 

 

 

 


最新の画像もっと見る