【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎マイナンバー法成立へ 後藤祐一さんの「官房副長官めざす人のポイント」反映 「自公民維み」5党共同修正

2013年04月24日 22時40分53秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

[画像]民主党、自民党、公明党、日本維新の会、みんなの党5党共同提出のマイナンバー法案の共同修正案を説明する後藤祐一さん、2013年4月24日(水)、衆議院第1委員室。

【衆・内閣委 2013年4月3日(水)および24日(水)】


 マイナンバー(社会保障と税の共通番号制度)関連4法案の衆参での成立が確実になりました。

 24日(水)の審議の冒頭、民主党の後藤祐一さんが法案の修正案を朗読。これは、木原誠司君外4名提出で、自民党、公明党、民主党、日本維新の会、みんなの党の5党共同提出なので、衆参とも過半数になります。もともとマイナンバー法案は社会保障と税の一体改革3党合意にもとづく法案なので、「自公民3党協議路線」が続いており、これに「民維み」野党3党共闘が重なったものとみられます。民主党の「与野党を超えた国のための明日の責任(社会保障と税の一体改革)路線」と、民維み3党が、おはこをめざしてしのぎを削る「行政改革政党」路線があいまって実現したものでしょう。

 後藤修正では、閣法の「マイナンバー導入による行政運営の効率化をもって国民の生活の利便性の向上を図る」という趣旨の文言を「国民の生活の利便性の向上を図るために行政運営を効率化させる」というように「基本理念」を書き換えることなどを提案。そのうえで、現在まだ設置根拠法がない、政府CIO法案(内閣法の改正法案)の次の部分を書き換えます。

 

 総理以下全閣僚がつくる「本部」について、「本部は、(略)府省横断的な計画を(作成することなどを)本部員(閣僚)に行わせることができる」とある閣法を、後藤修正で「本部長は、(略)行わせることができる」となりました。この本部長はとは総理のことであり、総理が独断で、全閣僚に命令できるようになりました。

 この背景には、3日(水)の後藤質疑がありました。このときは、難しくて何が何やら分からなくて、傍聴記を起こせなかったのですが、会議録が出ました。

 かなり長くなりますが、後藤・山本問答の一部を紹介します。

2013年4月3日の衆議院内閣委員会の会議録から抜粋引用はじめ(衆議院ホームページ)]

(前略)

○後藤(祐)委員 このように、内閣官房と内閣府というのは違うんです。そこを余り甘く見ると大変なことになるんですよ。

 山本大臣、内閣法と内閣府設置法と国家行政組織法の関係についてお答えください。

○山本国務大臣 詳細についてはちょっとここでは申し上げられないんですけれども、内閣官房と内閣府のたてつけは違うということはもちろん存じ上げております。

 ○後藤(祐)委員 つまり、内閣法に定める総合調整権限は山本大臣にはないんです。先ほどの答弁も間違っているんですよ。実態上お手伝いすることはいろいろあります。ですが、法律上の権限はないんです。そこをしっかりわきまえて仕事をしていただきたいということなんです。その話をしたら、また間違えた答弁をしたから、今申し上げたわけでございます。

 こういったことを踏まえた上で、先ほど岡田委員からもいろいろお話がございましたけれども、今回の法案というのは、私は、政府CIOが力を持って、各省がなかなか言うことを聞かないというときに、おたくの省のこのIT投資はおかしいんじゃないかというようなお話を政府CIOなりプロの目で見て、きちっと報告していただいて、いやいや、それじゃ足りない、もっと教えてくれというようなやりとりをしていただいて、その上で、それでもおかしいとなったら、それを直しなさいというようなことをできるようにするための法案だというふうに思っておりますが、それでよろしいですか。

○山本国務大臣 流れとしてはそういうことだと思います。

○後藤(祐)委員 これまでそういう意味ではすごく進化してきていて、これは私、与党、野党とか、党とかいう議論を余りしたくないんですね。森大臣のときにIT基本法ができて、そのとき、イット発言とかがありましたけれども、若い方は御存じですか、イット発言。苦笑いが出ないところを見ると、知らない。ITのことをイットと読んだんですね、当時の森総理は。まあ、それはいいとして。

 そのころから各府省にCIOができて、ところが、最初のころは官房長だとか総務審議官だとかだけがこのCIOに当たって、そんな人にITがわかるわけがないんですね。そこで、ようやく途中から、プロの方を補佐官で入れようという話になって、これによって格段に進んだと思います。そして、政府全体を見る人間も必要だということになって、政府CIOには今、遠藤さんに来ていただいていて、プロの目で政府全体を俯瞰する立場から各府省に対してそういうチェックを既になされておられる。

(略)

○後藤(祐)委員 今回の法案で二十六条を改正します。二十六条は、また「本部は、」と書いてあるんですよ。つまり、「本部は、」長いので省略しますが、要するに、府省横断的な計画の作成ですとか、経費の見積もりの方針の作成ですとか、先ほどからおっしゃっている施策の評価ですとか、こういったものについて政府CIOに行わせることができるという規定が加わりますが、この主語は「本部は、」なんです。同じなんですよ。

 本部というのは全大臣なんです。つまり、どうしても嫌だった場合は拒否権がある。ここの本部は本部長とすべきではありませんか。本部長は内閣総理大臣です。内閣総理大臣は政府CIOに対してこういったことをやらせることができるという規定にすれば、どうしても抵抗した場合、総理大臣が、では政府CIO、この権限はあなたに任せるから、好きなだけ各省から資料をとってこいというふうにすべきではありませんか。この二十六条の主語は本部長とすべきではありませんか。

 これは、真面目に議論すれば必ずそうなるんです。政治家からすれば、筆頭理事うなずいておられますけれども、当たり前なことだと思うんです。が、霞が関の各省協議の中においては、この長の字、一文字を入れることができないんですよ、独走されちゃうから。

 こういうところは、政治家の皆さん、これからいろいろな党で、いろいろな政権に入って、政務三役に入り官房副長官になる方もおられるでしょう。こういうところで負けちゃうんですよ、こういうところで。だから、今、議員の議論の場で、長を入れようじゃないかという話にしているんです。

 この二十六条の本部は本部長とすべきではありませんか

(後略)

[引用おわり]

 つまり、本部が本部員に命令するとなると、全閣僚が決定して全閣僚に命令することになります。だから、例えば、仮に厚労省が嫌がれば命令できない可能性があります。なので閣法の「本部が、」を「本部長が、」としたきょうの後藤修正(案)の提出で、総理の一存で、資料を出すよう命じることに出来るということです。

 そうすれば、政府CIOにすでに就任している民間企業(リコー)出身の遠藤紘一さんが、総理1人に頼めば各府省庁から資料が出てきて、チェックすることができる設置法(改正内閣法)ができあがることが可能になりました。何事もはじめが肝腎。遠藤日本国初代CIOも、任命時とは違う上司になってしまいましたが、法律と3党合意がありますから、思う存分働けます。


[写真]遠藤紘一・政府CIO、リコーホームページから。

 上の方ですでに引用しましたが、後藤さんは3日(水)の質疑の中で「こういうところは、政治家の皆さん、これからいろいろな党で、いろいろな政権に入って、政務三役に入り官房副長官になる方もおられるでしょう。こういうところで負けちゃうんですよ、こういうところで」と語っています。官房副長官をねらっている内閣委員に、そのポイントを伝授する後藤さん・・・思わず、「おまえだろ!」とつっこんでしまいました。

 この審議の「本部は、」を「本部長は、」とする5党共同修正案づくりに後藤さんは成功。いつ寝てるんだから分かりませんが、質疑で対決した3週間後には、早くも山本大臣と同じ第1委員室の席に座り答弁者として第1委員室へ。


[画像]修正案提出者として席に座る後藤祐一さん、山本一太・国務大臣、甘利明・国務大臣、衆・内閣委、2013年4月24日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。

 召集以来、1日たりとも空転しない第183通常国会ですが、岡田克也さんが衆・内閣委員になったので、内閣委員会は重点的にみるようにしています。きょうは、初質問の直後に後藤さんが「スカウト」した、みんなの党の大熊利昭議員も野党1期生ながら、さっそく最初の通常国会で第1委員室の答弁者となりました。


[画像]修正案提出者として席に座る後藤祐一さんと、修正案提出者として答弁する大熊利昭議員、甘利明・国務大臣、衆・内閣委、2013年4月24日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。

 このように行革の専門家として、大熊さんが修正案の共同提出者に選ばれたようです。


[画像]昨年の通常国会で、自公民3党実務者で法案をまとめたとして、答弁席の後藤さんにライバル意識をむき出しにする民主党の岸本周平さん、2013年4月24日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。

 その一方、トップバッターとして質疑に立った民主党の岸本周平さんは「昨年の通常国会では、(自民党の)平井卓也委員長、(公明党の)高木美智代理事、私・岸本周平の3人が自公民3党の実務者として協議し、法案はほとんどまとまっていました」と語り、この法案の生みの親の一人は自分だとアピール。答弁席の後藤さんへのライバル心をむきだしにしました。

 「民自公」・「一体改革」の「プロフェッサー岸本」か、はたまた、「民維み」・「行政改革」の「副長官(候補)・後藤」か。

 ちなみに後藤さんはかつて「実現男・後藤」というニックネームがありましたが、これからは「自称・官房副長官(候補)、後藤」と呼ばせていただきます。

 さまざまなつばぜり合いが繰り広げられる第183通常国会。まさに平場で勝負する戦国時代の様相です。

 さて、未来の官房副長官はいったい誰なんでしょうか。

 なお、議論を聞いていて、「マイポータル」に関しては専用回線からインターネットに一度つながるのは確実なので、「なりすまし」など安全面での対策をもっとうまく政府は答弁する必要があるでしょう。

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