[画像]谷垣禎一影の首相、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
【2011年10月31日(月) 野田首相の所信表明と安住財務大臣の3次補正提出にあたっての財政演説に対する代表質問】
自民党総裁の谷垣禎一影の首相が代表質問の中で「主権者たる国民」という言葉を使いました。
日本国憲法前文の最初の文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、(略)ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とあります。天皇陛下は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、主権者は総理でも、その他三権の長や「先生」ではなく、私たち日本国民ということになります。この「国民」が全体で一つなのか、一人一人なのかは意見が分かれるところでしょう。
私がこのブログを始めた2007年夏以降、政権交代をめざし、「主権者は国民だ」と主張し、50年を越えた自民党政権から、民主党政権へと政権交代させるべきだとしました。安倍晋三首相の時代です。なお、様々な政治ブログがあり、政権交代を訴えていましたが、政権交代による二大政党制のスタート、すなわち民主党が勝って、そのうち負けて自民党政権に帰るべきだと主張していたのは当ブログだけです。
ただ、当ブログでは「主権者」という表現をあるときからやめました。それは小沢一郎(氏)が積極的に使い、”小沢信者”とも揶揄される人々が使い始めたことから、一定の距離を置くべきだと考えたからです。
で、この「主権者」という言葉や、「主権者たる国民」という言葉。
実際、前の国会で、参院本会議で木曜会(参院小沢グループ)の谷岡郁子さんが使っていました。
ただ、もっと遡って、衆院本会議を中心に検索したところ、どうやら自民党総裁(影の首相・首相とも)が使ったのは初めてのようです。
まず昭和から平成にかけては、やはり日本共産党や日本社会党など「権利を主張する政党」が使っており、共産党党首だった不破哲三さんのほか、後に首相となった社会党の村山富市さん、同じく首相となった社民連の菅直人さんのほか、公明党の浅井美幸(あさいよしゆき)さん、野党時代の新自由クラブの山口敏夫さんらが使っています。そして、自民党の与党時代では、衆院本会議では玉澤徳一郎さんが使っていますが、これは議員としての発言で、閣僚時代ではありません。そして、このブログがスタートする直前の第166通常国会で、日本国憲法改正の手続き法である国民投票法の「野党対案」を審議した平成19年4月13日の本会議で、枝野幸男さん、古川元久さんが連続して使っています。そして、自民党の浜田靖一さんなども委員会で使っており、日本国教育基本法案の審議では自民党議員もドンドン「主権者」という言葉を使い出し、伊吹文明さんも幹事長時代に福田康夫総理への質問のシメに使っています。そして、政権交代後の自民党では、最初の代表質問で政権交代ある二大政党政治の到来のファンファーレを高らかに鳴らした西村康稔さん(にしむら・やすとし、兵庫8区、現影の財務相)の「あの夏の悔しさをバネに」の質問演説の中で使ったのが、自民党としては本格的な使い方です。その後、長島忠美さん、額賀福志郎さんが使って、第177通常国会では8月11日の「平成23年度の特例公債法案への賛成討論」で石破茂政調会長が使いました。そして、きょうの谷垣影の首相となりました。やはり谷垣さんは自民党の底力を集約する能力のある総裁だということでしょう。
「主権者」という言葉を自由主義政党の議員が使うようになったきっかけは、安倍晋三首相が「戦後レジームからの脱却」と名付けた教育基本法、国民投票法などの審議ということになります。これについては、安倍さんは太平洋戦争開戦時の商工大臣で戦時経済体制をつくった岸信介の孫であり、安倍さんが総理大臣になること自体が戦後レジームです。安倍さんがそれから脱却するというのは自己矛盾した話で、安倍政権は参院選で惨敗し短命に終わりました。しかし、安倍首相は答弁の中で、「エヌシー(NC、民主党のネクスト・キャビネット)」という言葉を最初に使ってくれた総理・自民党総裁であり、4年経って、たしかに戦後レジームからの脱却を果たしたことになります。今国会から、憲法審査会が衆院にも、参院にもようやく設置され、社民党も召集日には委員名簿を提出しませんでしたが、数日で提出しました。何とも政治は奥深いものです。
谷垣さんは代表質問の冒頭で、「民主党になって3代目の首相だ。とはいえ、自民党も小泉総裁で解散してから、3人首相が代わったことも公平に言っておかねばなりません」と述べました。また本予算(案)を3回組んだ財務大臣だった谷垣さん。その当時、野党・民主党議員の衆・予算委での質疑で谷垣財務相は「えー、ご存じの通り、財投債は財投機関債に現在は変わりましたが~~」と答弁していて、おそらく質問者の民主党議員は分かっていないだろうなと思いながら傍聴していました。その谷垣さんがきょうは、第3次補正予算(案)の中の東日本大震災復旧・復興事業費について、例えば(新設された復興債がない)通常なら赤字公債と建設公債がどのくらいか?」と質問しました。このような質問が本会議場でなされたのは私の記憶にはありません。
また、TPPに参加する場合は、農業自給率の確保のためにも必要な農業者戸別所得補償の拡大について、「価格補償である程度、TPP参加による農業者へのデメリットは補える」との見解を示しました。私は少しホッとしました。
ことしは震災の影響による調査遅れでずれ込んだ人事院勧告。それと通常国会では審議がまったくされないまま継続審査にはっている「公務員給与改革関連4法案」。先日、連合会長と総理は人勧(引き上げ)の不実施と給与関連法案(引き下げ)の早期成立を約束しました。私はこれはどういうことかまったく分かりませんでした。谷垣影の首相は演説で「人勧不実施の実績をつくることで、よもや人勧(制度)を廃止して、労働協約締結権の確立に向けて動いているのではないか」と指摘しました。私は「へー」と思いました。仮にそれなら、それでもいいような気もしますが、谷垣さんの示唆はありがたい思い。この辺に政権交代ある政治のメリットを見た思いがしました。
で、上の方にも書いたとおり、やはり谷垣さんというのは、個人商店である自民党議員の、商店街の理事長ということで、力を引き出すことが上手い人で、ベテラン・中堅・若手・支部長の声をうまくすくい取っているんだなと感じます。自民党は確実に変わっています。また、原子力災害などで、自民党政権が長年隠蔽していた驚くべき事実に触れ、情報が表に出てくる政権交代ある政治の重要さを今さらながら知った国民が反省も込めながら、全否定に走らずに、民主党政権を見守り、自民党のこともけっこう見ている。衆参ねじれはなかなか理解できないようですが、参議院という存在への問題意識も芽生え始めている。
そういう意味では、自民党の情報をしっかりと報道せず、いまだに与党・民主党の幹部や閣僚に番記者を置いている新聞、テレビの政治部がイチバン変わっていないということでしょう。
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