【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「夢は正社員になること」を実現できるのは民主党 テレビがひた隠すホントウの理由とは?

2014年12月04日 19時07分30秒 | 第47回衆院選2014年12月アベノミクス解散

 民主党はあす2014年12月5日(金)から、第47回衆院選テレビコマーシャル、「女性の味方編」(15秒バージョン)を放送します。

女性の味方編

 さて、なぜ女性は貧しくなったのでしょうか?

 実は、かなり単純な理由です。

 男女雇用機会均等法と労働者派遣法が成立し、プラザ合意があった日本の輝かしいバブル絶頂期の1985年を基準にします。

 丸めた数字では、雇用者数は男性が2800万人で、女性が1500万人でした。

  これが30年後の現在は、男性が3100万人、女性が2300万人となっています。

 その内数として、非正規雇用者はどうでしょうか。といっても、「非正規雇用」という法律用語はありません。法律用語では「パートタイム労働者」です。これには、年末年始の1日だけのアルバイトも入れて、すべて含めて「パートタイム労働者」です。

 このパートタイム労働者は、

 丸めた数字では、男性が500万人、女性が400万人でした。

 これが、30年経って、男性が500万人、女性が1000万人になっています。

 つまり、1985年以降、「女性の正社員」は減っていて、「女性のパートタイム労働者」は2倍以上に増えているのです。

 我が国はILO100号条約「同一労働同一賃金」を批准しているほか、1985年の男女雇用機会均等法(昭和60年法律45号)で賃金の男女差別が禁じられています。なので、この30年間に、女性が貧しくなったのは、長時間労働の正社員が減少し、短時間労働のパートタイム労働者が倍増したからです。だったら、貧しくなるのは当たり前の話です。

 一方、労働者派遣法の法律番号は、昭和60年法律88号です。男女雇用機会均等法は昭和60年法律45号です。なので、男女同一賃金が法定化された直後に、労働者派遣法ができたのです。派遣労働者は総数では100万人ほどですが、うち6割は女性です。ですから、正社員になれない女性は貧しくなるプログラムは1985年にすでに仕組まれていたのです。これは、華やかなサービス業、消費産業が増える「社会の高度化」において、労働者の総数が必要になるからです。だから、労働者派遣法の施行時から専門20業務(現在の専門26業務)にあった、「アナウンサー」は東京キー局正社員の輝く女性に憧れて、2年ないし3年勤務の輝けない女性を安く使うプログラムだったのです。

 このほか、ディレクター、カメラマン、サウンドマンも専門26業務なので、長くテレビ局が制作するニュース番組では、現場の士気にかかわるので、派遣労働の問題は取り扱われない傾向がありました。これは、テレビ局よりも、自民党が悪い。

 安倍晋三首相(自民党総裁)は今回の選挙戦で「派遣労働者もキャリアアップ助成金を使って正社員(無期転換)になれる」と言っています。厚生労働省のウェブサイトを見ていただければ分かります。キャリアアップの1番目に「有期契約労働者の正規雇用等への転換、または派遣労働者の直接雇用化を行う事業主に対して助成するものであり、有期契約労働者等のより安定度の高い雇用形態への転換を通じたキャリアアップを目的としています」とあります。こんな助成金を使わなくても、派遣先企業は正社員にしたい派遣労働者がいるならば、正社員にしたいと派遣元会社に申し入れればいいだけの話です。それに、キャリアアップは年に1回受けただけでも、派遣元の責任は果たしたことになります。

 派遣労働者は100万人ですが、これが、非正規で安く使える女性労働者の大元になっています。

 女性の活躍推進法案が廃案になりましたが、そもそも臨時国会が始まってから3週間後に提出しています。もともと来年出すものを官邸が内閣府男女共同参画局に急がせたもので、先の臨時国会で成立させたい気はあまりなかったと思われます。ただ、無いよりはましです。また、罰則規定がないとの指摘もありますが、労働法では、罰則があり刑事事件になるとその判決が出るまで民事裁判での救済ができないため、罰則をつけないことが流れとなっています。

 我が国は農村社会ですから、米びつの管理役は女性でしたから、女性の発言力はもともと強い社会だったといえます。

 ただ、内務省など国家権力が民間人を弾圧した治安維持法が大正15年法律46号、 納税による差別をなくした男性の普通選挙法の法律番号が大正15年法律47号と、並び順になっていることからも分かるように、権力者はいつも「アメとムチ」を使います。

 男女雇用機会均等法と労働者派遣法の法律番号がともに昭和60年であることも、アメとムチです。

 別に自民党が悪いとは言いません。時の今昔、洋の東西を問わず、アメとムチを使いわけた権力者は長く政権の座にいられます。

 まがりになりにも、1時間当たりの男女の賃金格差はわが国はあまりなく、諸外国の比較でも問題になる水準ではありません。 性別間の同一労働同一賃金はある程度実現しています。なによりも、改善しなければいけないのは、正規雇用と非正規雇用の賃金差別です。年齢による差別はやや改善されており、子育て世代の可処分所得が減るという問題が起きています。連合が民主党マニフェストの「同一労働同一賃金推進法の制定」に反対しないのは、「正社員だって大変」だから、短時間労働者が働きやすい環境を求めているからだと思われます。

 そして、子供を産めるのは女性、女の人だけです。

 今こそ、流れを変える時です。

 ◇

 民主党は、「女性の味方編」、「応援編A」、「応援編B」の3つのコマーシャルビデオのうち、「女性の味方編」1本だけをテレビ放映することにしました。民主党は「出稿量の関係」と説明しています。



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