【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

宮崎礼壱元内閣法制局長官「集団的自衛権は違憲で内閣が自ら法的安定性を壊した」きょうの国会

2015年06月22日 21時42分43秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

[画像]参考人として意見を述べる、宮崎礼壱・元内閣法制局長官、2015年6月22日、衆議院第一委員室、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

【平成27年2015年6月22日(月) 衆議院我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】

 1月26日(月)に始まった第189回通常国会も、いよいよ、会期末週を迎えました。

 「2015年ガイドラインの国内実施のための安保法制2法案」(189閣法72号、189閣法73号)の参考人質疑が行われました。

 浜田靖一委員長は「これからも必要ならば2度、3度やっていきたい」と語り、採決の前提ではないとしました。維新の党の柿沢未途幹事長への答弁。

 これに先立つ、参考人の意見陳述。

 宮崎礼壱・元内閣法制局長官(法政大学法科大学院教授、昭和43年法務省司法修習所)は、「違法性除却事由によって認められる自衛権において、集団的自衛権は(個別的自衛権とは)異質の概念であり、大急ぎで我が国が追い付かないといけないものではない」とし、「集団的自衛権は認められないというのが我が国として確立されており、内閣が自ら法的安定性を壊そうとしている」としました。

 宮崎さんは、砂川判決について、「砂川判決は個別的自衛権について言及したものであり、日本国憲法第9条第2項の「不足」は米軍に駐留してもらうことで補うことは、裁判所としては一見極めて明白に違憲でない限りは判断になじまないとしたものだ。他国防衛である集団的自衛権を論じたものではない」と断言。

 維新の党の柿沢未途幹事長の質疑に答えて、宮崎参考人は、第1次安倍内閣の内閣法制局長官として「(第1次安保法制懇談会)4事例についてはできる法律はほかにあるので、粘り強く(安倍晋三首相を)説得した」とし、「報道されているように、辞表を叩きつけたということはない」と語りました。

 トップバッターとして陳述した、小林節・慶大名誉教授は「結論から言いますと、明確に違憲です」とし、アメリカは「戦争経済垂れ流しだ」とし、第2次世界大戦後の国際秩序をつくった「世界の警察官アメリカ」としての財政面での軽減を日本に求めているとの時代観を示しました。そして、「首相は1年間、「丁寧に説明する」とくりかえし、その言葉だけはクリアに入ってくるが、丁寧に説明したことは一度もない」と切り捨てました。民主党の大串博志さんの「フルセットの集団的自衛権」の問いに対して、「国際法の話だからもともとボサッとした話なんですが・・・」と話し始め、国際法は、国内法と比べて厳密なものではないという意味合いの国際法感覚を浮き彫りにしました。

 阪田雅裕元内閣法制局長官(昭和41年旧大蔵省)は、「集団的自衛権の行使は昭和47年見解の結論が変わるものだ」と分析し、「国民を守るというよりも進んで国民を危険にさらすように思える。中東で出番があれば、限定的でもなんでもない」としました。抑制的な意見が目立ちましたが、公明党の遠山清彦理事に対して「憲法を改正するのが政治の王道だ」と述べました。

 西修・駒大名誉教授は「(憲法第9条第2項の)芦田修正は、自衛のためなら軍を持てるとして、衆議院(と貴族院と枢密院)を通っている」と語りました。ただ、7月1日の閣議決定は、13条「幸福追求の権利」から集団的自衛権を導き出しており、9条2項を事実上無効とするものですので、第2次安保法制懇メンバーと7月1日の閣議決定との間に齟齬があることが明らかになりました。

 元防衛大臣の森本敏参考人は、「この法案は日米防衛協力のための指針(いわゆるガイドライン)を実施する法的根拠の法案だ」とし、「私がパネッタ国防長官に日米ガイドラインを「研究」したいと申し出た時には、日米とも、事務方には否定的な人も多かった。今回ガイドラインが見直されたのは、国際情勢の変化ではなく、日本側の政策変更だと思う」とし、「アメリカのリバランス政策を、この地域でどのように実現するか」が法案の眼目だと指摘しました。

 なお、宮崎参考人は、「(PKO協力法の改正条項でできるようにする)かけつけ警護については停戦合意が崩れれば、たちまち混乱に巻き込まれかねない」と語りました。これは、9条2項の「国の交戦権はこれを認めない」という規定があるので、PKOにおいて、当事国の政権が倒れれば、警察権が使えなくなるものの、交戦権が使える明確な法的根拠がないからということで、これは私は前々から問題視していたのですが、きょう初めて宮崎参考人の陳述で話が出てきました。ただ、安保特別委では集団的自衛権が中心になっており、PKO改正条項まで手が回らない情勢になっています。

 次回の開催は、衆議院公報で伝えることにして、きょうは散会しました。

【同日 参議院決算委員会】

 まず、衆議院から回ってきた、平成24年度・平成25年度の、一般会計や各特別会計の予備費使用調書について、麻生財務大臣から趣旨説明。

 この後、テレビ・ラジオ入りで、平成25年度決算のしめくくり総括質疑になりました。

 ただ、採決は見送り、質疑終局宣言だけで、散会しました。

【同日 衆議院本会議】
 
 既に別エントリー記事にも書きましたが、大島理森議長から「会期を9月27日まで95日間延長したい」と発議がありました。

 討論では、維新の党の落合貴之さんが「与党推薦の長谷部先生まで反対を唱えたので、審議が入口に戻り立ち往生している。だから審議時間が積み上がらない」「維新の党は対案を近く世に示すので、一定幅の延長は考えを保留していた。ところが与党から示された延長幅は、3か月」として反対を表明。「安倍内閣は野党に対して聞く耳を持たないから、国民の理解も深まらない」と指摘しました。共産党の塩川鉄也さんは「与野党幹事長会談では、農協法改正案の成立も図りたいという話があった。前代未聞の95日間延長。安保法制は憲法を根底から覆し、アメリカの言いなりになって、いつでもどこでも何度でも海外で武力行使する法案だ」と反対しました。

 採決の結果、維共の反対、自公の賛成多数で、会期延長が議決されました。

【同日 参議院本会議】

 流会しました。

以上
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