【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【追記有】【5/14国会まとめ】野党目覚める、「消費者」は立共含む修正協議で提出した上で反対の戦術を初披露、入管法、自己負担2割、土地所有で猛攻を始める

2021年05月14日 18時06分00秒 | 第204通常国会令和3年2021年

[写真]左翼で無い人を中心に統率がとれた密の避け方でシットイン抗議活動をする人たち、写真はおとといの委員会開催時間帯に撮影したものです。

【追記 19:40】

 午後7時を過ぎてから、衆議院法務委員長解任決議案を、立憲、共産、社民の国対委員長が議長に提出。来週火曜日の午後1時の本会議以降まで、強行採決は先送りされました。【追記終】

 野党が目覚めました。連日、国会前の抗議運動が続く「入管法」は前日の1時間に続いて、30分だけ質疑に事前に応じました。そのうえで、午前10時から「10項目の修正提案」を立憲が提示し、修正協議。その間に、安住淳国対委員長は「打ち切り」に言及。森山裕国対委員長は「修正に合意して採決」の情報を流しましたが、委員会開催は遅れました。

 一方、消費者問題特別委員会では、初めての国会戦法が登場。ジャパンライフ問題をうけた預託法改正案で、野党は対案をひっこめ、政府原案に対する修正協議を開始。立憲、共産党も含む6党合意で、修正案を出したうえで、立共は反対に回りました。修正の内容は、クーリングオフ書面の電子交付について、公布から1年を超えない範囲内で政令で定める日に施行するという規定を2年に先送り。そして施行後2年で政府が見直す附則を設ける内容。つまり2023年から2025年まで施行されるけれども見直し規定があるし、それよりも前にある次の総選挙後に再改正できることになります。おそらく衆議院の何らかのスタッフの入れ知恵もあったのかもしれません。この戦術は、入管法にも使われる可能性があります。

 参議院では三原じゅん子副大臣の遅刻をとがめるという、かつては川口より子さん、片山さつきさんという有名どころの女性も被弾した手法で、年金入れて年収200万円の後期高齢者自己負担2割の法案が先送りになりました。参議院では、病床切り捨て法案、年収1200万円で児童手当ゼロの法案の3つが同時進行になってきます。

【衆議院法務委員会 きょう令和3年2021年5月14日(金)】

 前夜「入管難民法改正案」(204閣法36号)の対政府質疑を30分行うことを野党も合意して設定されました。これに先立ち、朝10時から、野党側筆頭理事の「10項目の修正要求」を出し、2つの党で修正協議が始まりました。その後、委員会は定刻になっても開催にこぎつけず。

【参議院本会議 同日】

 まず、岩井茂樹さんが辞職しました。

 次に関口昌一・自民党参議院議員会長らが提出した「平成30年公選法改正法のミス是正法案」(204参法28号参先議)が立維国反対、自公共賛成多数で可決し、衆議院に送られました。

 「改正国立大学法人法」(204閣法44号)が共のみ反対で可決し、成立しました。

 「特許法など一括改正法」(204閣法46号)が全会一致で可決し、成立しました。

 「海事産業基盤強化のための改正法」(204閣法24号)が全会一致で可決し、成立しました。

[画像]江崎孝・国土交通委員長、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 立憲民主党の「結党の兄」ぐらいのポジションながら来夏引退する江崎孝さんがさわやかな笑顔で登壇。後継者はきょうポスターを撮影した、とツイッターに投稿。前日は、最大派閥「サンクチュアリ」の会合が開かれましたが、赤松広隆会長が今年、江崎事務局長が来年引退することが確定したため、勢力図は激変し、選挙の結果に関係なく、代表・幹事長には追い風になります。

 水落議院運営委員長が登壇して、「参議院改革協議会」を設立することが議運委で決まった、と報告しました。来夏の選挙には間に合わないという観測が有力。私は選挙制度を簡素にできないなら、半数改選くじ引き方式にした方がいいと思います。

【衆議院消費者問題に関する特別委員会 同日】

 安倍晋三首相の桜を見る会=政治資金規正法罰金刑確定=を、ジャパンライフが破たん寸前に利用していた問題を立法事実にして、消費者庁が預託法などの改正を求めた「預託法及び特商法改正案」(204閣法54号)。桜批判の第一人者だった川内博史さんらが出した対案と同時に審議されてきましたが、前回政府案のみ質疑終局。その後の修正協議で6党合意ができました。今年引退する穴見陽一衆議院議員を筆頭発議者として提出されました。しかし、採決では、立憲・共産は政府案には反対に回り、自公維国の賛成多数で「修正すべきだ」との審議結果をまとめました。

【衆議院内閣委員会 同日】

 一般質疑。立憲民主党の森山浩行さんが高橋洋一内閣官房参与の「日本のコロナ感染者数はさざ波に過ぎず東京五輪はできる」という趣旨のツイッターに関して質問。菅義偉首相が、謝罪を受けたと発言したことの事実関係について、加藤勝信官房長官が答えましたが、要領を得ず、立憲が退席して休憩。再開後は、立憲欠席のまま、一般質疑を進める空回しをしました。法案が議題になっていないのに、空回しをするのは異例で、時間を積み上げたいのではなく、出席大臣が多くて調整が手間だから与党国対があわてたのかもしれません。この混乱で本会議で審議入りした法案の委員会審議入りは先送りになりました。

【衆議院厚生労働委員会 同日】

 審議入りした閣法は議題とせず、初めから一般質疑だけとなりました。今年引退する公明党の元厚労副大臣の桝屋敬悟さんは前日、石井幹事長と官邸を訪れた際に、ワクチン接種が8月以降になる自治体があると、公明党地方議員から報告を受けていると聞かされた菅首相が「え、そんなにかかるの」と驚いたことを暴露しました。桝屋さんはきょうの質疑で、土生栄二老健局長に対して「土生局長、現場に行ったらいいです。ワクチン接種会場2、3か所。あなたの局は夜会合(銀座でクラスター)をやるんじゃなくて」と辛らつな言葉を浴びせました。

【衆議院経済産業委員会 同日】

 「産業競争力強化法改正案」(204閣法23号)の対政府質疑をし、次回も続けることになりました。

 昨年来、女性官僚に厳しいことを書くことが多いので、男性官僚の粗も探してみました。新原浩朗・経済産業政策局長は、政策減税の規定について「大企業だけ優遇ではありません。カーボンニュートラルとデジタルトランスフォーメーションは親和性がある。20%の税額控除をするということは、棒引き2割ということです」と答弁しました。黒字だとして20%税額控除をしてもその数字に法人税率がかかるのだから手元に2割のキャッシュが残るわけではありません。借金の元本の棒引き2割というリスケをする銀行はないと思います。元利返済が間に合わないときは、他の銀行から追加で借り入れるのが基本です。これはまったく頓珍漢な答弁です。

[画像]「税額控除20%は棒引き2割と同じこと」という全く頓珍漢な答弁をした男性官僚の新原浩朗・経済産業政策局長、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

【衆議院外務委員会 同日】

「日英原子力協定の承認案」(204条約8号)は共反対、自公立維国賛成多数で承認すべし。

 「太平洋のまぐろ類保存条約の改正の承認案」(204条約9号)、「国際航路標識機関条約承認案」(204条約10号)は全会一致で承認すべきだと決まりました。これで、岡田克也委員も属するこの委員会の通常国会は終わりました。次回開催は未定のまま散会。

【衆議院文部科学委員会 同日】

 「著作権法改正案」(204閣法57号)を全会一致で可決すべきだと決めました。質疑は、図書館のネット送信に限られ、テレビ局のネット配信で著作権の関係で表示できない部分を緩和する改正規定の方はほとんど取り上げられなかったようです。

 小学校全学年1学級35人以下を法定化した歴史的な国会となりましたが、政府提出法案の審議はすべて終わりました。但し、萩生田光一大臣が直前で提出を見合わせた、わいせつ教員の免許取り消しの情報の恒久化をめぐっては、自民党が議員立法の作業を進めており、おそらく残り1か月の間に審議されると思われます。この委員会の次回の開催は未定のまま散会。

【衆議院国土交通委員会 同日】

 「航空法改正案」(204閣法60号)は共反対、自公立国維賛成多数で可決すべきだと決まりました。今後は、参議院先議で回ってきた政府提出法案の審議があります。次回は来週水曜日9時に開催。

【衆議院環境委員会 同日】

 ●小泉大臣は今週全休

 月曜日に「虫垂炎の手術をして入院した」と環境省が発表した小泉大臣はきょうも出席できず。

 「廃プラ資源循環法案」(204閣法61号)と金子恵美さんら提出の「廃プラ削減法案」(204衆法17号)が同時審議に。政府は、笹川博義副大臣が答弁しましたが、もともとかなりの政策通で堂々と答弁しました。大臣不在のため採決できず、来週18日(火)9時。環境省の限れば、衆参ともピークの週に大臣不在となりました。

【衆議院議院運営委員会 同日】
【参議院議院運営委員会 同日】

 NHKテレビ中継も入って、緊急事態宣言とまん延防止重点措置の区域変更について。とくに北海道については知事の意向に反して政府は認定しないとされながらも、けさ7時の諮問委員会で急きょ緊急事態宣言を発出することに決まりました。当事者からは徒労感が出ていると漏れ伝わってきています。政権にはかなり大きなダメージとなりそうです。

【定例閣議 同日】
●衆議院理事懇談会 同日
●参議院理事懇談会 同日

 予備費の支出が決まり、理事懇で説明がありました。財務省主計局は、これまでの経緯について、多少しっかりした説明ペーパーを野党にも出しているようです。

【参議院地方創生及び消費者問題特別委員会 同日】

 「第11次地方分権一括法案」(204閣法51号)を共産反対、その他の賛成多数で可決すべきだと決定しました。

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総務省情報流通行政局、放送法の外資規制、地上波と衛星放送で比率を見直すなどの改正案提出も念頭の有識者会議設置へ

2021年05月14日 08時54分39秒 | 第208回通常国会 令和4年2022年1月
[写真]民放連本部前に立つ筆者=出演依頼お待ちしています=おととし、東京都千代田区の平河町・麹町地区で。

 総務省が、放送法の外資規制について、地上波と衛星放送で比率を変えるなども含めた見直しの有識者会議を、来月2021年6月にも立ち上げることになりました。きょうの読売新聞が1面トップで伝えました。

 しかし、開催中の国会の前半戦では、東北新社・フジテレビをめぐるの外資規制違反と接待との関連に紛糾。予算委員会初日から3月1日の元情報流通行政局長である山田内閣広報官の辞任へのつながり、参議院予算審議の途中で現職総務大臣を接待していたのはNTT社長だったという超大物が浮上したあたりで時間切れとなりました。

 特別職、次官級審議官を含めた局長経験者3人がきられましたが、まだ疑惑が晴れたわけではありません。まずは過去の外資規制違反の認識の経緯を洗いざらいヒアリングすることから始めるべきでしょう。

 アメリカの放送・通信監理委員会や、イギリスのBBS存続を問う定期住民投票などには踏み込まないと思われます。

 放送法改正案を含む改正条項が入った法案が出るとすれば、第49回衆議院選挙後の国会になります。

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