【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「50数年ぶりに獲得した政権交代という“宝”をドブに捨てるな」と語る土肥隆一さんの肩書きは?

2010年12月11日 09時48分07秒 | その他

[写真]土肥隆一さん

 「民主党・無所属クラブ」所属の衆院議員で、衆議院政治倫理審査会(政倫審)会長の土肥隆一さんが、12月9日付でメルマガ68号を発信しました。

 土肥さんは「第176回臨時国会がようやく終了した。うんざりと言った気分である。補正予算は衆議院優位により成立はしたが野党の、参議院の問責決議の連発と個人攻撃に終始した」と本音をのぞかせました。

 そして、良識の府「参議院」での野党の問責決議連発に対して、「政府の瓦解を狙っているのだろうが、それよりももっと大事な政治的損失」があると指摘しました。私もその通りだと思います。

 そのうえで、「昨年の8月総選挙において50数年ぶりに獲得した”政権交代という宝”をドブに捨てる」野党の行為は許されないとして、

 「民主主義の成熟度は、政権交代可能な政治状況を国民がいつも保持するところにある」として、政権交代ある政治を守り抜く覚悟を示しました。そして、

 「皆さんはその政権交代の政治的変革の実をまだ味わっておられない」と達観した見方を示しながら、「もう少し時間をいただきたい」と“最後のお願い”でメルマガを締めくくりました。


 土肥隆一さんは1990年第39回衆院選初当選のいわゆる「岡田世代」。土肥さんは日本基督教団(にほんキリストきょうだん)の牧師さんです。カトリックは「神父」、プロテスタントは「牧師」ですから、土肥さんはプロテスタント系の教会の牧師さんということになります。政権交代をかけた第45回衆院選の兵庫3区では対抗馬の小泉チルドレンのタマが比較的いいとされていたことと、土肥さんが当時70歳ということで、選対に懸念があったようですが、日常活動の活発さで得票率50・0%で勝ち抜きました。目標とする人物はマーティン・ルーサー・キング牧師。

 与党になったということで、このブログも時々「幹事長経験者によると~~」という書き方がどうしても増えてしまっていますが、土肥さんも「幹事長経験者」。1998年4月に民主党の合流した4党派の一つである「民主改革連合(民改連)」で、連合の支持を受ける無所属的立場の議員たちと行動しており、幹事長を務めました。そして、政権交代可能な政治のために、民主党結党大会に参加したのです。代表だった参議院の笹野貞子(ささの・ていこ)さんは民主党初代副代表(4人)の一人となりました。笹野参議院議員の跡は福山哲郎官房副長官が継いでいます。議席数に関係なく、幹事長を務めたという経験はすごいと思います。また政権交代すれば、野党として一丸となるので、「幹事長経験者によると~~」というブログの書き方はしなくていいと思いますが、僕もそんなところで、与党としての政権としての重荷を背負うことの大変さを、応援団ながら感じるところです。

 土肥さんは福祉の専門家で、当選前から施設の設立・経営の経験があるんだと思います。衆院でも、厚労畑が長く、健康保険法改正案の長時間審議で伝説となった、1998年第140回通常国会の厚生委員会にも所属しました。このときのメンバーは、与党側が小泉純一郎厚相、町村信孝委員長、津島雄二筆頭理事で、野党側が岡田克也筆頭理事、山本孝史次席理事、委員に中野寛成さん、枝野幸男さん、坂口力さん、そして土肥さんという宝石箱のようなメンバーでした。

 第39回衆院選はベルリンの壁崩壊直後ということで、社会党が方針転換を迫られ、弁護士の細川律夫さん、仙谷由人さん、筒井信隆さん、議員秘書の松本龍さん、農協の鉢呂吉雄さんら民主党・無所属クラブのエース格が出ています。広島市長に転出した秋葉忠利さん、参議院に転出した岡崎トミ子さんも岡田世代です。おたかさん(土井たか子)ブームの社会党に危機感をいだいた対する自民党も、岡田克也さん、河村建夫さん、石原伸晃さんのほか、参議院に転出した増子輝彦さんら、久しぶりに非世襲議員が大量に初当選しました。松本さんは祖父(と父)が著名な参議院議員、河村さんは県議としては世襲、石原さんは別選挙区で父が衆院議員でした。

 輿石東さん率いる参議院のようなすばらしい良識の府と違って、衆議院は政局の院です。政局の院は世論に敏感で、ダイナミックに時代を前に進めなければいけません。土肥牧師も政局にはかかわっていて、長年「国のかたち研究会」の会長をしています。新聞では、菅グループと表記されている政治団体(総務省届出済み)のことです。なぜ国研会長の土肥さんが菅総理から、官邸入りや政務三役入りを命じられないのよく分かりませんが、政倫審会長として、「われわれは懸命に国民の期待に答えようと励んでいるのである」(メルマガ)との決意表明をぜひ実践してほしいものです。

 政権交代ある政治を阻害する者。それは過去に、3桁の議席を持った野党第1党を一方的に解党したり、選挙による有権者の選択に基づかない保保連合に走ったり、有権者のチェックが行き届かない12月に政局を仕掛ける師走政局男の存在です。すなわち小沢一郎さんです。

 土肥さんは、昨年、「岡田さんを支える“95の会”をつくりたい」と呼びかけましたが、岡田さんはやさしく「ノー」と言いました。政権交代ある政治における与党内権力システムを見通すところまでは、なかなか難しいかもしれませんが、政権交代ある政治をめざす志は菅、土肥、岡田の3人は共有しています。

 民主党・無所属クラブが昨夏の信頼感を取り戻せるように、土肥さん、国難ですから、泰然自若として、どっしりと構えてください。頼んます。

[土肥隆一さんのメールマガジンから全文引用はじめ] 

どい隆一メールマガジン 68号 2010/12/09

国民の皆さんの期待に応えるために
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 第176回臨時国会がようやく終了した。
うんざりと言った気分である。補正予算は衆議院優位により成立はしたが。
野党の、参議院の問責決議の連発と個人攻撃に終始した。
今年の夏の参議院選挙で与野党が逆転しいわゆる「ねじれ国会」となった。
我々はたとえ参議院で不利であっても、国会は議論の場であり、できる限り誠意をつくせば、
修正協議も含めて結果は自ずから落ち着くものと考えてきた。

 完全に膠着してきたのは「尖閣諸島」事件がきっかけとなった。
首相は海外におり、仙谷官房長官が事件処理に当った。その処理は必ずしも上出来とはいえないが、
日本が議長国であるAPEC開催を直前にして早期に解決しようと考え、海保が撮ったビデオを非公開にしたのに、海保の中では、生の映像は全部(?)流れ出るという始末であった。
そこで国家の、つまり政府の「危機管理」が問われ、そのやり取りの中で、仙谷氏の発言や態度が問題となり、
仙谷氏の出席する会議には一切出席しないということで、
12月3日の国会締めくくり本会議にも欠席し、仙谷氏が大臣席を降りてから、ぞろぞろと議事場に入ってくるという
まことに陳腐な風景が見られたのである。

 仙谷氏に個人的に問題があるのではない。私も長い付き合いのある彼の人物を高く評価している。
大変優れた政治家でもある。識見、能力において民主党の中でも卓越した人物である。
そのユニークさ、個性の故にその発言が野党を刺激した。実は「この男には敵わない」と感じたのではないか。
官房長官はよく総理の女房役というが、稀に見る官房長官像と言えようが、やや出過ぎた女房とでもいうか、出過ぎたことは否めない。
しかし個性の範囲であり、彼を更迭する理由はどこにもないと思う。

 野党は、法務大臣、国土交通大臣と問責決議(参議院だけの辞職要求)を立て続けに出し、
それは政府の瓦解を狙っているのだろうが、それよりももっと大事な政治的損失を失わせるものと考えている。
つまり昨年の8月総選挙において50数年ぶりに獲得した政権交代という「宝」をドブに捨てるものと考えるからだ。
民主主義の成熟度は、政権交代可能な政治状況を国民がいつも保持するところにある。
政権交代から1年半。皆さんはその政権交代の政治的変革の実をまだ味わっておられないと思う。
もう少し時間をいただきたい。われわれは懸命に国民の期待に答えようと励んでいるのである。

土 肥 隆 一
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どい隆一HP:http://www.d-wa.co.jp/doi
どい隆一Blog:http://doiryuu2.exblog.jp/
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[土肥隆一さんのメールマガジンから全文引用終わり]